大成温調 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大成温調 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業で、空調・給排水衛生・電気設備などの設備工事事業を主力としています。2025年3月期は、国内及び海外での事業展開により、売上高は625億円、経常利益は35億円となり、前期比で増収増益を達成しました。


※本記事は、大成温調株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大成温調ってどんな会社?


設備工事事業を軸に、グローバル展開も進める「総合たてものサービス企業」を目指す企業です。

(1) 会社概要


1941年に創業し、1952年に大成温調工業を設立しました。1991年に店頭登録を果たし、2004年にはジャスダック証券取引所へ上場しています。2013年にはベトナムの設備工事会社と業務・資本提携を行い、海外展開を加速させました。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は784名、単体では581名です。筆頭株主は代表取締役社長の資産管理会社で、第2位は取引先持株会、第3位は関連財団となっています。

氏名 持株比率
アクアウェッジ 16.26%
大成温調取引先持株会 8.32%
一般財団法人大成温調奨学財団 5.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長執行役員は水谷憲一氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
水谷 憲一 代表取締役社長執行役員海外部門管掌 2003年入社。海外事業本部長、社長室長等を経て2015年より現職。
志田 憲彦 取締役副社長執行役員人財部門管掌 1979年入社。営業推進本部長、経営管理本部長、業務統括本部長等を経て2022年より現職。
玉置 雅幸 取締役専務執行役員コーポレート部門兼技術部門管掌 1974年入社。東京本店工事統括部長、技術本部長等を経て2022年より現職。
川上 徹 取締役専務執行役員企画部門管掌 1980年入社。首都圏事業本部副本部長、関東支店長、東京本店長等を経て2023年より現職。
岡田 浩二 取締役常務執行役員営業部門管掌 1985年入社。総合企画室長、コーポレート本部管掌等を経て2021年より現職。
冨岡 幸光 取締役常務執行役員システム部門兼業務改革プロジェクト管掌 1984年入社。品質・安全統括部長、技術本部長等を経て2024年より現職。
今井 康之 取締役(監査等委員) 1985年入社。横浜支店長、海外事業本部長等を経て2024年より現職。


社外取締役は、大江太人(Fortec Architects代表取締役社長)、松下香織(K&Lコンサルティング代表取締役社長)、村木高志(早川・村木経営法律事務所パートナー)、榎本幸子(榎本幸子公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米国」「中国」「オーストラリア」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

日本


国内における空気調和、給排水衛生、電気等の設備工事事業を展開しています。オフィスビルや商業施設、工場などの新築および改修工事における設計・施工管理を行います。

工事請負契約に基づき、顧客である施主やゼネコンから請負代金を受け取ります。運営は主に同社および温調エコシステムズ、ウッドテックが行っています。

米国


ハワイ州を中心に、ホテルやコンドミニアム、商業施設などの管工事、空調・衛生設備工事を行っています。

現地の施主や建設会社等から工事請負代金を受け取るビジネスモデルです。運営は主にALAKA'I MECHANICAL CORPORATIONが行っています。

中国


上海を中心に、日系企業の工場やオフィスなどの内装・設備工事、建築工事の設計・施工を行っています。

顧客である進出日系企業等から工事請負代金を受け取ります。運営は主に大成温調建築工程(上海)有限公司が行っています。

オーストラリア


オーストラリアにおいて不動産事業を展開しています。

保有する不動産の賃貸料等を収益源としています。運営は主にTAISEI ONCHO AUSTRALIA PTY. LIMITED等が行っています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、太陽光発電事業や冷暖房機器等の販売などを行っています。

売電収入や機器販売代金を収益源としています。運営は同社、温調エコシステムズ、ホライズン5などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円台後半から600億円台へと拡大基調にあります。特に2024年3月期以降は売上高が600億円を超え、経常利益も30億円台で推移するなど、収益性が向上しています。当期純利益も増加傾向にあり、順調な成長を見せています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 486億円 492億円 465億円 611億円 625億円
経常利益 14億円 17億円 20億円 31億円 35億円
利益率(%) 3.0% 3.5% 4.3% 5.1% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 10億円 12億円 19億円 25億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も拡大しました。売上総利益率および営業利益率ともに改善傾向にあり、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 611億円 625億円
売上総利益 83億円 91億円
売上総利益率(%) 13.6% 14.6%
営業利益 30億円 31億円
営業利益率(%) 4.9% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が約22億円(構成比37%)を占め、次いでその他経費が約15億円(同25%)となっています。売上原価においては、完成工事原価が約515億円(構成比96%)と大半を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは増収増益となり、全体の業績を牽引しました。米国セグメントは減収減益、中国セグメントは微減収ながら微増益となりました。オーストラリアセグメントは規模が縮小しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 453億円 474億円 22億円 25億円 5.2%
米国 129億円 123億円 7億円 5億円 4.3%
中国 28億円 27億円 1億円 1億円 4.7%
オーストラリア 0.8億円 0.3億円 0.5億円 0.1億円 19.0%
連結(合計) 611億円 625億円 30億円 31億円 5.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得たキャッシュに加え、借入等の財務活動でも資金を調達し、事業運営や投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 30億円 6億円
投資CF -8億円 -1億円
財務CF -32億円 11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「たてものを、いきものに」というブランドステートメントを掲げています。建物に空気・水・電気という命を吹き込み、誰もが過ごしやすく居心地の良い環境を形にすることで、人々の暮らしや地域の活気を下支えし、信頼される「総合たてものサービス企業」への飛躍を目指しています。

(2) 企業文化


安全・快適という当たり前を永続的に届けるために、一つひとつの業務に心を込めて手を尽くす姿勢を大切にしています。また、変化する社会ニーズに対応し、多様化する付加価値を提供し続けることで、顧客からの信頼を獲得し続けることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


長期経営ビジョン「LIVZON DREAM 2030」の実現に向け、2025年までの中期経営計画「LIVZON DREAM 2030 1st half!」を推進しています。「コア事業の収益性改善」と「成長のための土台作り」を目標とし、以下の数値目標を掲げています。

* 営業利益率:5.0%以上
* ROE:8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「基盤事業の深耕」「成長への投資」「経営基盤の整備」を基本方針としています。高付加価値セグメントへの資源配分や生産性向上を進めるとともに、DXや新規成長分野への投資を行います。また、人財育成やガバナンス強化により経営基盤を盤石にし、「総合たてものサービス企業」への進化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「エンゲージメントが高い組織づくり」を目標とし、人を競争力の源泉と位置付けています。多様な人材が専門性や創造性を発揮できるよう、公正な評価、充実した教育制度、キャリア支援、柔軟な働き方を推進し、心理的安全性の高い職場環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 17.4年 7,257,585円


※平均年間給与は、税込支払給与額であり、基準外賃金及び賞与を含めております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.7%
男女賃金差異(正規) 66.7%
男女賃金差異(非正規) 44.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇平均取得日数(13.2日)、定期健康診断受診率(100.0%)、エンゲージメントスコア(46.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の変動リスク


国内外の経済情勢により公共投資や民間投資が変動し、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、DX戦略の推進やグループ総合力の拡充、顧客基盤の拡大により、変動に強い経営体質の構築を図っています。

(2) 資機材調達のリスク


需給バランスの変化により資機材の調達遅延が発生した場合、工期遅延につながり業績に影響する可能性があります。購買体制の強化や調達先の多様化、早期発注の工夫などを行い、安定調達に努めています。

(3) 建設業従事者の不足リスク


業界全体での高齢化や熟練技術者不足により、施工体制に支障が出る可能性があります。若年層の採用・教育、ダイバーシティ推進、アウトソーシング活用、業務生産性向上への投資等を通じて人材確保と体制強化を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。