富士ピー・エス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士ピー・エス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・福証上場。PC(プレストレストコンクリート)技術を用いた土木・建築工事を主軸とする建設会社です。高速道路や橋梁などのインフラ整備に強みを持ちます。第73期は手持ち工事の順調な進捗により増収、資産売却益等の計上で親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な増益となりました。


※本記事は、株式会社富士ピー・エスの有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 富士ピー・エスってどんな会社?


PC(プレストレストコンクリート)技術を核に、橋梁などの土木工事や建築工事、製品製造を行う建設会社です。

(1) 会社概要


1954年に九州地区のPC事業の先駆けとして設立され、1993年に福岡証券取引所へ上場しました。1996年には大阪証券取引所市場第二部(現・東証スタンダード)に上場し、事業を拡大しています。2018年には東証一部銘柄に指定されましたが、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場へ移行しています。近年はメンテナンス事業や海外事業などへの展開も進めています。

同グループの従業員数は連結493名、単体437名です。筆頭株主はセメント製造大手の事業会社である太平洋セメントで、第2位は電線・ケーブル製造大手の住友電気工業、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。太平洋セメントとは製品購入等の取引関係があり、同社はその他の関係会社に該当します。

氏名 持株比率
太平洋セメント 17.88%
住友電気工業 13.23%
日本マスタートラスト信託銀行(退職給付信託口・九州電力及び九州電力送配電口) 12.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長執行役員社長は堤忠彦氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
堤 忠彦 代表取締役社長執行役員社長 1989年9月同社入社。技術製造本部副本部長、土木本部長などを歴任し、2019年4月より現職。
梅林 洋彦 取締役執行役員副社長管理本部長 1984年4月同社入社。経理部長、総務部長、九州支店長などを経て、2025年4月より現職。
油田 康生 取締役常務執行役員土木本部長 1984年4月同社入社。関西支店長、東北支店長、関東支店長、九州支店長を経て、2024年4月より現職。
田中 政章 取締役上席執行役員九州支店長 1987年4月同社入社。シーピーケイ代表取締役社長、鉄道事業部長、関西支店長などを経て、2024年4月より現職。
小宮 久文 取締役上席執行役員経営企画室長兼調達センター長 1979年4月同社入社。管理本部総務部長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、千田善晴(九州電力取締役)、松藤悟(西日本鉄道取締役)、的場哲司(太平洋セメント執行役員)、波多江愛子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木事業」「建築事業」「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 土木事業


PC(プレストレストコンクリート)技術を用いた土木工事の請負、企画、設計、施工監理およびPC土木製品の製造・販売を行っています。橋梁やタンクなどのインフラ構造物が主力です。また、コンクリート構造物の診断や補修・補強も手掛けています。

国や地方自治体、高速道路会社などの発注者から工事請負代金や製品代金を受領します。運営は主に富士ピー・エスが行い、連結子会社の駿河技建がコンクリート構造物の診断・補修等を担当しています。

(2) 建築事業


PC技術を用いた建築工事の請負、企画、設計、施工監理およびPC建築製品の製造・販売を行っています。物流倉庫やスタジアム、集合住宅などの建築物に強みを持ち、工期短縮や高品質化に寄与するプレキャスト工法を推進しています。

民間企業などの発注者から工事請負代金や製品代金を受領します。運営は主に富士ピー・エスが行っています。

(3) 不動産賃貸事業


保有する不動産の有効活用を目的として、賃貸および管理業務を行っています。

テナント等の賃借人から賃料収入を受領します。運営は富士ピー・エスが行っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、海外事業および建設資機材のリース等を行っています。

海外の顧客やリース先から対価を受領します。運営は富士ピー・エスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、第73期は338億円に達しました。利益面では、経常利益が前の期から回復し9億円となりました。第73期は保有資産の売却益などにより当期純利益が22億円と大幅に増加しています。利益率は変動がありますが、直近では改善傾向が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 273億円 268億円 286億円 338億円
経常利益 11億円 2億円 6億円 9億円
利益率(%) 4.1% 0.8% 1.9% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 1億円 4億円 22億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しました。一方、建設コストの上昇などにより売上総利益率は若干低下しています。営業利益は増収効果により増加し、営業利益率は2.6%へ改善しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 286億円 338億円
売上総利益 38億円 43億円
売上総利益率(%) 13.2% 12.8%
営業利益 6億円 9億円
営業利益率(%) 2.0% 2.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が16億円(構成比47%)を占めています。売上原価の内訳はHTMLに詳細な金額記載がありませんが、材料費、労務費、外注費などが含まれます。

(3) セグメント収益


主力の土木事業は手持ち工事の進捗や設計変更契約の獲得により増収増益となりました。建築事業は大型再開発現場の進捗等により大幅な増収となりましたが、建設コスト高騰の影響で利益は微減となりました。不動産賃貸事業は安定的に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
土木事業 216億円 227億円 29億円 34億円 15.0%
建築事業 67億円 108億円 8億円 7億円 6.8%
不動産賃貸事業 3億円 3億円 2億円 2億円 57.9%
その他 0.0億円 0.1億円 0.0億円 0.0億円 33.3%
調整額 - - - - -
連結(合計) 286億円 338億円 38億円 43億円 12.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはマイナス、投資CFはプラス、財務CFはプラスとなっています。営業CFのマイナスは、建設業特有の事情として工事途中での立替払いが発生することや、売上債権の増加などが影響しています。投資CFのプラスは有形固定資産の売却収入によるものです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -11億円 -23億円
投資CF -15億円 17億円
財務CF 24億円 15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「福祉国家建設の一翼を担って社会に奉仕する」「技術を究め創意をこらし自己の責任を完遂する」「和信協同し企業の繁栄と共に幸福を創り出す」という経営理念を掲げています。社会資本整備を通して国家建設に貢献するとともに、利益追求と社会的責任の調和を実現することを目指しています。

(2) 企業文化


「企業は社会の公器、企業の社会的責任遂行」を自覚し、株主、顧客、社員、協力会社、地域社会からの信頼獲得を重視しています。「信頼と利益」の調和を目指し、安全と安心の企業ブランドのもと、技術の研鑽と創意に努める風土があります。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「VISION2030」を策定し、2030年に向けて「稼ぐ力」を蓄える期間としています。2025年度までの中間ゴールとして以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:350億円超
* 営業利益率:5%超

なお、目標達成時期については、外的要因により1年遅れの2027年3月期に先送りする見通しです。

(4) 成長戦略と重点施策


「人材、生産設備、財務」の充実を主軸とし、以下の課題に取り組んでいます。
* 生産体制の拡充:工場の機械化・自動化など省人化技術の導入と設備投資。
* 人的リソースの拡充:健康経営の推進や働きやすい環境整備(リ・ブランディング活動)。
* 収益性の向上:工事工場利益改善プロジェクトの展開による原価低減。
* 財務体質の健全化:キャッシュ・フローの改善と保有資産の有効活用。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人材」を経営リソースの要と位置づけ、多様な人材が「プロフェッショナル」として働きがいを感じる環境づくりを進めています。女性・外国人・中途採用者の積極活用、シニア人材の活躍促進、資格取得支援や階層別研修による育成に注力しています。また、健康経営の推進やワークライフバランスの実現に向けた環境整備を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.0歳 16.0年 6,685,506円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育児休業取得率 88.9%
男女賃金差異(全労働者) 67.0%
男女賃金差異(正規雇用) 72.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 39.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術職員における女性技術者の割合(8.1%)、技術職員における外国人技術者の割合(8.7%)、新規雇用者における中途採用者の割合(34.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業への依存リスク


同社グループの事業は公共土木事業への依存度が7割程度と高いため、国の財政事情や公共事業関係費の動向に業績が左右される可能性があります。特に高速道路の大規模更新事業の動向や発注見通しが影響を与える要因となります。これに対し、民間建築事業の拡大や公共事業以外の受注強化を図っています。

(2) 労働災害と安全管理


建設業は高所作業など危険を伴う業務が多く、重大事故が発生するリスクがあります。万一、労働災害が発生した場合、指名停止処分などにより受注活動や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は「安全なくして生産なし」をスローガンに、安全パトロールや教育を通じて事故防止に努めています。

(3) 人材不足と施工能力


建設業界全体で技術者や技能労働者の不足が深刻化しており、適切な人材確保ができない場合、施工能力の低下や工期の遅延、受注機会の損失につながる可能性があります。同社はプレキャスト化による省人化や、女性・外国人技術者の採用強化、働き方改革による定着率向上に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。