富士ピー・エス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士ピー・エス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士ピー・エスは東証スタンダード及び福岡証券取引所に上場する、PC技術を用いた土木・建築工事を主力とする建設企業です。直近の業績では売上高がわずかに減少したものの、工事採算性の改善により営業利益、経常利益ともに大幅な増益を達成しています。国土強靱化などの需要を背景に安定的な成長を続けています。


※本記事は、富士ピー・エスの有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 富士ピー・エスってどんな会社?


PC(プレストレストコンクリート)技術を用いた土木事業と建築事業を展開し、社会インフラ整備に貢献する建設企業です。

(1) 会社概要


1954年に九州地区のPC事業の先駆けとして設立され、PC製品の製造を開始しました。1991年に富士ピー・エスへ社名を変更し、1993年に福岡証券取引所、1996年に東証二部へ上場しました。近年は2021年の駿河技建の株式取得など事業を拡大し、2022年には東証スタンダード市場へ移行しています。

同社グループの従業員数は連結で491名、単体で434名です。筆頭株主は事業会社である太平洋セメントで、第2位も事業会社の住友電気工業、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
太平洋セメント 17.88%
住友電気工業 13.23%
日本マスタートラスト信託銀行(退職給付信託口・九州電力及び九州電力送配電口) 12.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長執行役員社長は堤忠彦氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
堤 忠彦 代表取締役社長執行役員社長 1989年同社入社。技術本部長、土木本部長などを歴任し、2019年4月より現職。
梅林 洋彦 取締役執行役員副社長兼管理本部管掌 1984年同社入社。経理部長、管理本部長などを経て、2026年4月より現職。
油田 康生 取締役安全品質管理室長 1984年同社入社。関西支店長、九州支店長、土木本部長等を経て、2026年4月より現職。
田中 政章 取締役常務執行役員九州支店長 1987年同社入社。関西支店長や子会社社長などを歴任し、2026年4月より現職。
小宮 久文 取締役考査室長 1979年同社入社。総務部長、経営企画室長兼調達センター長を経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、田中康徳(九州電力執行役員)、松藤悟(西日本鉄道取締役常務執行役員)、的場哲司(太平洋セメント執行役員)、波多江愛子(あかつき法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「土木事業」「建築事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 土木事業


PC技術を用いた橋梁などの土木工事の請負、企画、設計、施工監理、およびPC土木製品の製造・販売を提供しています。主な顧客は官公庁や高速道路会社であり、社会のインフラ整備や老朽化対策のニーズに応えています。

収益源は、顧客からの工事請負代金やPC製品の販売代金です。運営は主に富士ピー・エスが行い、コンクリート構造物の診断や補修・補強工事については子会社の駿河技建が担っています。

(2) 建築事業


PC技術を用いた建築工事の請負、企画、設計、施工監理、およびPC建築製品の製造・販売を提供しています。マンションや大型再開発施設、防衛関連施設などに向けて、独自製品による省力化技術を提供しています。

収益源は、顧客からの建築工事請負代金やPC建築製品の販売代金です。運営は主に富士ピー・エスが担っており、都市部の再開発需要や人手不足を背景としたプレキャスト化のニーズに対応しています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、不動産の賃貸・管理、海外事業、および建設資機材のリース等を行っています。事業の多角化を通じたグループ全体の収益基盤の安定化を図っています。

収益源は、テナントからの不動産賃貸料や、建設現場向け資機材のリース料などです。これらの事業運営は主に富士ピー・エスが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は260億円台から330億円台にかけて拡大基調にありましたが、直近は大型案件の反動減などにより微減となりました。一方で、経常利益は原価管理の徹底や工事採算性の改善により直近で大幅な増益となり、利益率も4.6%へと好転しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 273億円 268億円 286億円 338億円 322億円
経常利益 11億円 2億円 6億円 9億円 15億円
利益率(%) 4.1% 0.8% 1.9% 2.5% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 1億円 4億円 22億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、原価低減と適正な価格転嫁が進んだことで売上総利益は増加しています。結果として、営業利益は大幅な増益となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 338億円 322億円
売上総利益 43億円 51億円
売上総利益率(%) 12.8% 15.9%
営業利益 9億円 16億円
営業利益率(%) 2.6% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が18億円(構成比49%)を占めています。

(3) セグメント収益


土木事業は手持ち工事が順調に進捗し、設計変更等の獲得により増収となりました。建築事業は前期の過去最高売上の反動で減収となりましたが、価格転嫁が進み収益性は改善しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
土木事業 227億円 231億円
建築事業 108億円 91億円
その他 3億円 0.9億円
連結(合計) 338億円 322億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型と判定されます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -23億円 4億円
投資CF 17億円 -11億円
財務CF 15億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.9%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「企業は社会の公器、企業の社会的責任遂行」を明確に自覚し、「福祉国家建設の一翼を担って社会に奉仕する」「技術を究め創意をこらし自己の責任を完遂する」「和信協同し企業の繁栄と共に幸福を創り出す」を掲げています。社会資本整備を通して「信頼と利益」の調和の取れた企業経営を目指しています。

(2) 企業文化


技術の研鑽と創意に努め、「安全と安心」の企業ブランドのもと、社会インフラの整備を通じて国家建設に貢献する文化を重視しています。また、企業である限り競争は必然であると認識し、高度で特化した技術の追求と人材教育を推進する風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


第5次中期経営計画「VISION2030」を推進し、2030年に「価値を創造するエンジニアリング企業」「顧客の要望にワンストップで応える企業」等を目指しています。通過点に向けた中間目標として以下を掲げています。

* 売上高:350億円超
* 営業利益率:5%超
* ROE:8%超
* 配当性向:40%を目指す

(4) 成長戦略と重点施策


人的リソースの拡充と定着を最優先課題とし、教育研修を通じた個々の質の向上や健康経営の深化を図ります。また、大豊建設との業務提携の実装を加速させ、PC技術の相互補完により新事業分野への展開や競争力強化を実現します。さらに、工場再編の検討や徹底した原価管理により高収益体制を確立します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


担い手不足が深刻化する中、人材戦略を従来の「量」の確保から個々の「質の向上」へ転換しています。多様な人材がプロフェッショナルとして働きがいを感じる環境づくりに向け、実践に即した教育研修を充実させています。また、働き方改革や健康経営の推進を通じ、既存社員の定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.2歳 15.9年 7,956,439円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.4%
男性育児休業取得率 88.9%
男女賃金差異(全労働者) 68.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 39.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性技術者の割合(9.2%)、外国人技術者の割合(8.0%)、中途採用者の割合(41.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業への高い依存度と市場縮小


同社グループの事業は公共土木事業への依存度が約7割を占めています。国土強靱化策により現在は増加基調にありますが、財政事情などにより中長期的に市場が縮小した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。民間建築分野の受注拡大などによりリスク軽減を図っています。

(2) 建設現場における労災事故の発生


建設業界は高所作業などの危険な業務が多く、労災事故の発生リスクが伴います。重大な事故が発生した場合、工事成績評点へのマイナス影響や発注機関からの指名停止措置を受ける可能性があり、業績に影響を及ぼす懸念があります。安全衛生教育やパトロールを通じて防止に努めています。

(3) 契約不適合責任および製造物責任


「安全と安心」を掲げ品質管理には万全を期していますが、万が一、施工した工事や製造したPC製品において重大な欠陥が生じ、契約不適合責任や製造物責任を問われた場合、多額の補修費用の発生や指名停止による受注機会の喪失など、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 建設技術者および技能労働者の不足


少子高齢化や建設産業の構造的な問題により、技術者や労働者の不足が顕著になっています。人材を十分に確保・育成できず、適切な施工体制を維持できない場合、施工能力の低下や労務コストの高騰を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。プレキャスト化の推進等で対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。