※本記事は、田辺工業株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
田辺工業は、日本国内を中心に設備工事事業を主体として展開しています。同社グループは、産業プラント設備工事から設備保全、電気計装、送電工事まで多岐にわたる設備工事を手掛けています。海外ではシンガポール、マレーシア、タイで設備工事事業や表面処理事業も展開しています。
単体従業員数は809名、連結従業員数は1,044名です。セグメントは設備工事事業、表面処理事業、その他の3つです。
国内においては田辺工業が設備工事事業(産業プラント設備工事、設備保全工事、電気計装工事、メカトロニクス、送電工事、管工事)を主体として展開しています。また、鋳造用工業炉の製造・販売も手掛けています。
なお、同社グループは当連結会計年度において鋳造用工業炉事業を廃止しました。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
田辺工業は、技術とエンジニアリングを基盤とする事業を展開しており、従業員の定着と育成に力を入れていることがうかがえます。働き方改革やDX化にも積極的に取り組み、多様な人材が活躍できる環境整備を進めているようです。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員の平均勤続年数が長く、安定してキャリアを築いている傾向が見られます。平均年齢も比較的高い水準であり、経験豊富な人材が多数在籍していることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 6,920,350円 |
| 平均勤続年数 | 15.5年 |
| 平均年齢 | 41.1歳 |
| 単体従業員数 | 809人 |
| 連結従業員数 | 1044人 |
| 単体のグループ内比率 | 77.5% |
確定給付型(給与や勤続年数に応じて給付額が決まる)と確定拠出型(会社が拠出した資金を従業員が運用する)の退職給付制度を採用しています。当社および一部の連結子会社が対象です。
退職一時金制度もありますが、支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。退職給付債務は19.0億円、年金資産は13.6億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
田辺工業グループは「技術は基本、人が資本」を教育方針に掲げ、従業員を企業価値向上の源泉となる「人財」と位置付けています。プラントエンジニアリング事業の持続的成長のため、技術力・現場力を支える人財の育成と技術継承を重視し、人的資本への投資を重要な経営課題と認識しています。
2027年4月を目途に新人事制度の導入を予定しており、従来の勤続年数に基づく考え方だけでなく、職務・役割・成果・行動を踏まえた評価・処遇を行うことで、従業員の主体的な挑戦と成長を促す方針です。階層別教育や教育センターを活用した専門教育、資格取得支援を通じて人材育成を強化しています。
定期昇給およびベースアップを継続的に実施し、従業員の生活基盤の安定と働きがいの向上に努めており、2021年から2026年までのベースアップにより新卒(学部卒)の初任給は2021年比19%上昇しています。業績向上による成果は賞与を通じて従業員へ積極的に還元し、会社の成長と従業員の成長が相互に高め合う好循環を目指しています。
また、リファラル採用等の施策を通じて人材確保に積極的に取り組み、教育センターを主要拠点に設置するなど、中途や専門外から入社する人材でもスキルを身に付け活躍できる仕組み・環境を整えています。従業員が高いパフォーマンスを発揮できるよう、「働き方改革」に向けた改善提案活動や社内のDX化にも取り組んでいます。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。各数値は、女性活躍推進法および育児介護休業法に基づき算出されています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合 | 2.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 65.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 68.0% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) | 74.8% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(パート・有期労働者) | 40.0% |
多様性・登用
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職における中途社員比率 | 28% |
健康・安全
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 平均残業時間 | 20.1時間 |
| 平均年休取得日数 | 13日 |
人材育成・エンゲージメント
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 1級施工管理技士資格保有者数 | 165名 |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
田辺工業は、設備工事事業を主軸に、表面処理事業やその他の事業を展開する総合エンジニアリング会社です。日本国内を中心に、産業プラント設備工事から設備保全、電気計装、メカトロニクス、送電、管工事まで幅広い分野の設備工事を手掛けています。また、海外ではシンガポール、マレーシア、タイでも事業を展開しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、主に設備工事事業と表面処理事業、そしてその他の事業セグメントで収益を上げています。設備工事業界は受注産業であり、顧客のニーズに合わせた設備の提案を積極的に行い、受注の確保・拡大に努めることで収益を確保しています。
設備工事事業
産業プラント設備工事、設備保全工事、電気計装工事、メカトロニクス、送電工事、管工事といった多岐にわたる設備工事を展開しています。半導体関連のプラント設備工事や電子材の製造設備等の設備増強工事、定期修繕工事などが主な収益源です。日本国内を中心に、シンガポールやマレーシアでも設備工事事業を営んでいます。
表面処理事業
タイ国において、自動車向けやHDD向けの表面処理(メッキ)事業を展開しています。近年ではEV向けの需要が堅調に推移しており、収益に貢献しています。
その他の事業セグメント
鋳造用工業炉の製造・販売を行っています。
同社グループの売上高は、特定の顧客に集中する傾向が見られます。当連結会計年度においては、デンカ株式会社への売上高が全体の21.0%を占めています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 設備工事事業 | 493億円 | 508億円 |
| 表面処理事業 | 13.7億円 | 14.8億円 |
| その他の事業セグメント | 1.5億円 | 96百万円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上高は緩やかに増加傾向にあります。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益は、直近の2期間で大きく伸長しており、収益性が改善していることがうかがえます。特に当連結会計年度は、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の全てにおいて前期を上回る結果となりました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 425億円 | 429億円 | 518億円 | 508億円 | 524億円 |
| 経常利益 | 29.0億円 | 27.9億円 | 27.3億円 | 39.1億円 | 48.1億円 |
| 経常利益率 | 6.8% | 6.5% | 5.3% | 7.7% | 9.2% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 18.7億円 | 16.6億円 | 19.0億円 | 25.9億円 | 34.5億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | 175.02 | 154.78 | 179.71 | 247.47 | 328.95 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたり売上高は、当連結会計年度において前期から増加しています。また、従業員1人あたり営業利益も前期から増加しており、生産性が向上している傾向が見られます。これは、工事資材費や労務費の上昇が続く中で、施工効率の改善やリスク管理の徹底といった取り組みが継続的に効果を発揮していることによるものと考えられます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 48.0百万円 | 50.2百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 3.6百万円 | 4.6百万円 |
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
田辺工業グループの財務状況は、事業活動で安定的に資金を生み出し、将来に向けた投資も行いつつ、手元に資金を残している状況を示しています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率がプライム市場の製造業平均を上回る水準で推移しており、安定した経営基盤を示しています。ROE(自己資本利益率)もプライム市場平均を上回る水準で、効率的な資本活用が進んでいることがうかがえます。手元資金も潤沢に確保されており、事業環境の変化に対する耐性がある状態です。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 250億円 | 280億円 |
| 自己資本比率 | 54.3% | 59.3% |
| ROE(自己資本利益率) | 10.9% | 13.0% |
| 現金及び預金 | 108億円 | 106億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費の収入があったものの、売上債権の増加や未成工事受入金の減少により、前期から減少しました。投資活動によるキャッシュフローは、有形固定資産の取得による支出がありましたが、前期に比べて支出額は減少しています。財務活動によるキャッシュフローは、配当金の支払いや長期借入金の返済により資金が流出しており、前期から支出額が減少しました。
結果として、フリーキャッシュフローはプラスを維持しており、本業で得た資金で投資を賄い、なお余剰資金を生み出している状況です。これは、事業活動が安定しており、将来に向けた投資も計画的に行われていることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 129.3億円 | 19.4億円 |
| 投資CF | △12.8億円 | △8.8億円 |
| 財務CF | △41.7億円 | △13.5億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | 116.5億円 | 10.6億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、国内外の経済変動や国際情勢に影響を受けやすく、景気低迷による設備投資の抑制や受注競争の激化が業績に影響を与える可能性があります。また、タイ国で展開する表面処理事業はHDD部品表面処理への依存度が高く、当該部品の売上減少が業績に影響を及ぼすリスクがあります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、設備工事業界における少子高齢化や就労者減少により、新たな人材の確保が困難になるリスクを認識しています。これにより、施工体制の確立に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
田辺工業は、「ものづくり」への貢献を通じて社会の発展を目指す企業です。お客様、従業員、株主、業務関係者、そして社会のすべてに喜ばれる親切で的確な仕事を目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループの経営理念は、「お客様・従業員・株主・業務関係者そして社会の、みんなに喜ばれる親切で的確な仕事をしよう」を社是に掲げ、技術をもってお客さまの「ものづくり」への貢献を通じ、社会の発展に貢献することです。長年培った技術の蓄積とエンジニアリングをコアに、顧客が求める製造設備やインフラ設備の企画・製作・建設からメンテナンスまで一貫して幅広く対応しています。
「常に世の中から必要とされ、存続する企業」として、ものづくりを通じてサステナブル社会の実現に貢献することを目指しています。技術力と総合力の強化により、企業価値を高めることを経営の基本方針としています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、現場、現実、現物の「三現主義」を徹底し、技術と施工レベルの向上に継続的に取り組む企業風土があります。企画から設計、開発、調達、施工、メンテナンスまで一貫したサービス提供を通じて、お客様が満足する製造設備を提供することを重視しています。
サステナビリティ基本方針として、「技術やエンジニアリングを通じて未来のものづくりを支え、『安心・安全・豊かなサステナブル社会の実現』に貢献する」ことを掲げています。従業員がさらに高いパフォーマンスを発揮できるよう、「働き方改革」に向けた諸施策の実施や社内のDX化に取り組むなど、効率的・効果的な働き方を追求しています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、社会構造の変化に対応した設備投資が加速する中で、成長分野の顧客ニーズを的確に捉え、エンジニアリングパートナーとしての関係構築を図ることを優先的に対処すべき課題としています。組織・業務改革においては、人材基盤の強化を掲げ、人事部の設立や採用プロジェクトによる新人・中途社員の積極的な採用を進めています。
また、教育センターを活用した人材育成と専門技術の伝承にも力を入れています。コーポレートガバナンス体制のさらなる強化や、ESG対応・財務基盤の強化も重点テーマとして推進しています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
田辺工業は、顧客、従業員、株主、取引先等のステークホルダーへの貢献を通じて、持続的な成長と企業価値の最大化を目指しています。コーポレート・ガバナンスの充実を経営の最重要課題と位置付け、経営の健全性・効率性・透明性の向上と、迅速かつ果断な意思決定による経営活力の増大を推進しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
田辺工業の株主構成を見ると、筆頭株主は田辺工業取引先持株会であり、同社の事業活動を支える取引先との関係性が資本面でも示されています。また、有限会社ケイアンドアイや第四北越銀行といった法人株主が上位に名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 田辺工業取引先持株会 | 9.48% |
| 有限会社ケイアンドアイ | 8.19% |
| 第四北越銀行 | 4.76% |
| 四月朔日義雄 | 3.06% |
| 田辺工業従業員持株会 | 2.98% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は11名(男性11名・女性0名)で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は水澤文雄氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 四月朔日 義雄 | 代表取締役 会長 | 1969年2月 同社入社、1998年10月 同社代表取締役社長、2023年6月 同社代表取締役会長より現職。 |
| 水澤 文雄 | 代表取締役 社長 | 1983年2月 同社入社、2003年6月 同社取締役産機エンジニアリング部長、2023年6月 同社代表取締役社長兼社長執行役員より現職。 |
| 山口 久行 | 取締役 | 1979年4月 同社入社、2014年6月 同社取締役兼上席執行役員青海支店長、2024年4月 同社取締役兼専務執行役員より現職。 |
| 権守 勇一 | 取締役 | 1979年4月 同社入社、2016年6月 同社取締役兼上席執行役員事務部長、2025年4月 同社取締役兼常務執行役員より現職。 |
| 青木 栄一 | 取締役 | 1985年4月 同社入社、2019年6月 同社上席執行役員千葉支店長、2025年4月 同社取締役兼常務執行役員より現職。 |
| 小野 哲也 | 取締役 | 1991年4月 同社入社、2011年1月 タナベエンジニアリングシンガポール社代表取締役社長、2025年6月 同社取締役上席執行役員海外事業部長兼幕張エンジセンター長より現職。 |
社外取締役は、横田猶一氏(元三菱電機ビルテクノサービス関越支社支社長付・新潟支店嘱託駐在)、野本直樹氏(野本直樹公認会計士事務所所長)です。
同社は監査役会設置会社であり、取締役会と監査役会により業務執行の監督及び監査を行っています。取締役会は8名(うち社外取締役2名)で構成され、経営方針や重要事項の決定、業務執行状況の監督を担っています。監査役会は3名の監査役(うち社外監査役2名)により設置され、経営の監視・監督を通じて企業統治体制の確立を図っています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の役員報酬制度は、各職責に応じた適正な水準を基本方針としています。業務執行取締役の報酬は、月額報酬と賞与の金銭報酬に加え、企業価値の持続的な向上を図るインセンティブとして譲渡制限付株式による非金銭報酬で構成されています。社外取締役の報酬は、その役割と独立性の観点から金銭報酬のみとなっています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 6名 | 2.2億円 | 36.1百万円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 15百万円 | 7.5百万円 |
| 社外役員 | 4名 | 25百万円 | 6.3百万円 |
なお、人数は事業年度中に報酬の支給対象となった人数であり、期中に退任した役員を含みます。
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