田辺工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

田辺工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の総合エンジニアリング企業です。化学・医薬等の産業プラント設備工事を主力とし、海外では表面処理事業も展開しています。2025年3月期は、大型案件の進捗や施工効率の改善により、売上高は微減となりましたが、営業利益や経常利益は大幅な増益を達成しました。


※本記事は、株式会社田辺工業 の有価証券報告書(第57期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 田辺工業ってどんな会社?


産業プラントの設備工事を主力とするエンジニアリング企業です。国内での施工に加え、タイ等の海外拠点では表面処理事業も展開しています。

(1) 会社概要


1969年に田辺建設の機電事業部を分離して設立されました。1993年に株式を店頭登録し、1996年にはタイ国にタナベタイランド社を設立して表面処理事業を開始しました。2004年にジャスダック証券取引所へ株式を上場し、その後2010年にシンガポール子会社を設立するなど、海外展開を進めています。

連結従業員数は1,059名、単体では807名体制です。筆頭株主は田辺工業取引先持株会で、第2位は有限会社ケイアンドアイ、第3位は金融機関である第四北越銀行です。

氏名 持株比率
田辺工業取引先持株会 9.49%
有限会社ケイアンドアイ 8.19%
株式会社第四北越銀行 4.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は水澤 文雄氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
四月朔日 義雄 代表取締役会長 1969年入社。営業本部長、代表取締役社長、タナベタイランド社代表取締役等を経て2023年6月より現職。
水澤 文雄 代表取締役社長 1983年入社。タナベタイランド社社長、北陸支店長、大阪支店長等を経て2023年6月より現職。
山口 久行 取締役 1979年入社。千葉支店長、青海支店長、専務執行役員等を経て2024年4月より現職。
権守 勇一 取締役 1979年入社。事務部長、管理部長、常務執行役員等を経て2025年4月より現職。
青木 栄一 取締役 1985年入社。鹿島支店長、千葉支店長、常務執行役員等を経て2025年4月より現職。


社外取締役は、横田 猶一(元三菱電機新潟支店長)、野本 直樹(野本直樹公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備工事事業」「表面処理事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 設備工事事業


化学・医薬等のプラント設備、電気計装、送電設備などの設計・製作・施工・メンテナンスを行います。顧客は化学メーカーや電力会社等の民間企業および官公庁です。

収益は、顧客からの工事請負代金等です。運営は主に田辺工業が行い、海外ではタナベエンジニアリングシンガポール社、タナベテクニカルサービスマレーシア社、タナベエンジニアリングアジア社などが担当しています。

(2) 表面処理事業


タイ国内において、HDD部品や自動車部品、電子部品等に対する表面処理(メッキ)加工を行っています。主な顧客は現地の部品メーカー等です。

収益は、加工サービスの対価としての加工賃です。運営は、タイ国の子会社であるタナベタイランド社が行っています。

(3) その他


鋳造用工業炉(アルミ鋳物生産用工業炉)の製造・販売や産業機械の輸入・販売を行っています。なお、鋳造用工業炉事業については2025年末での事業廃止が決定しています。

収益は、製品の販売代金です。運営は田辺工業が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は380億円台から500億円台へと拡大傾向にあります。2025年3月期は売上高が前期比微減となりましたが、経常利益は39億円と過去最高益を更新し、利益率も7.7%へと向上しました。当期純利益も増益基調を維持しており、収益性が高まっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 381億円 425億円 429億円 518億円 508億円
経常利益 27億円 29億円 28億円 27億円 39億円
利益率(%) 7.2% 6.8% 6.5% 5.3% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 19億円 18億円 19億円 26億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比1.9%減の508億円となりましたが、売上総利益率は17.2%と前期から3.0ポイント改善しました。工事資材費や労務費の上昇があるものの、施工効率の改善や原価管理の徹底が奏功しました。販管費は増加しましたが、粗利益の増加がそれを上回り、営業利益率は7.5%へ大幅に上昇しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 518億円 508億円
売上総利益 73億円 87億円
売上総利益率(%) 14.1% 17.2%
営業利益 27億円 38億円
営業利益率(%) 5.2% 7.5%


販売費及び一般管理費のうち、その他が23億円(構成比48%)、従業員給料手当が13億円(同27%)を占めています。売上原価においては、外注費が234億円(構成比58%)、材料費が76億円(同19%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である設備工事事業は、大型案件の進捗や施工効率改善により、売上高は微減ながらセグメント利益は41.9%増と大幅に伸長しました。表面処理事業は、売上高が増加し黒字転換を果たしました。その他事業(鋳造用工業炉)は売上増ながら損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
設備工事事業 505億円 493億円 37億円 53億円 10.7%
表面処理事業 12億円 14億円 -1億円 0.4億円 2.9%
その他 0.9億円 1億円 -0.1億円 -0.5億円 -33.8%
調整額 - - -10億円 -14億円 -
連結(合計) 518億円 508億円 27億円 38億円 7.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスの「健全型」です。本業で得た現金を、設備投資や借入返済、株主還元に充当しており、財務体質は安定的です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -47億円 129億円
投資CF -11億円 -13億円
財務CF 29億円 -42億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様・従業員・株主・業務関係者そして社会の、みんなに喜ばれる親切で的確な仕事をしよう」を社是に掲げています。技術をもってお客さまの「ものづくり」への貢献を通じ、社会の発展に貢献することを経営理念として事業を展開しています。

(2) 企業文化


「現場、現実、現物の三現主義の徹底」をベースに技術や施工レベルを向上させる文化があります。技術力と総合力を強化し、顧客ニーズを的確に捉えた設備を提供することで「ものづくり」に貢献する姿勢を重視しています。また、親切で的確な仕事を通じてステークホルダー全員に喜ばれることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「TRY2030」において、2030年3月期までを「更なる飛躍への変革の時期」と定め、以下の目標を掲げています。

* 連結売上高 700億円
* 連結営業利益率 8%以上
* ROE 12%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「国内事業の進化」「海外事業の再生」「新規事業の探索」を事業戦略の柱としています。国内では大型EPC案件の拡大やメカトロニクス部門の強化を図り、海外ではタイの表面処理事業でEV関連需要を取り込みます。また、自動化・省力化装置などのオリジナル製品開発やデジタル技術を活用した新ビジネスモデル構築を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


大切な経営資源である「人」の確保と育成を重視しています。採用プロジェクトによる新人・中途社員の積極採用に加え、国内4拠点に設置した教育センターを活用し、「見て・触って・体験できる」実践的な教育訓練を行っています。また、人事部の新設や働き方改革、DX推進を通じて、従業員が高いパフォーマンスを発揮できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 15.4年 6,513,602円


※平均年間給与は税込支払給与額であり、基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 44.4%
男女賃金差異(全労働者) 67.4%
男女賃金差異(正規雇用) 72.3%
男女賃金差異(非正規) 36.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職における中途社員比率(35%)、1級施工管理技士資格保有者数(163名)、平均残業時間(20.1時間)、平均年休取得日数(13日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済の変化に伴うリスク


設備工事業界は国内外の経済変動や国際情勢の影響を受けやすい特性があります。景気低迷による顧客企業の設備投資抑制や、受注競争の激化による受注価格の下落が続いた場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(2) 製品及び施工の欠陥リスク


施工管理や製品製作には万全を期していますが、重大な瑕疵担保責任や製造物責任賠償につながる欠陥が発生した場合、損害賠償が生じる可能性があります。また、施工段階での想定外の追加原価発生により不採算工事が生じた場合も、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人材確保に関するリスク


設備工事業界において人材は重要な経営資源です。少子高齢化による労働人口減少や業界就労者の高齢化が進む中、採用や育成が計画通りに進まず、必要な施工体制を確立できない場合、事業展開や業績に支障をきたす可能性があります。

(4) カントリーリスク


アセアン諸国に海外連結子会社を有しており、各国の政治・経済情勢の変化や法的規制の変更等により事業継続が困難になるリスクがあります。予期せぬ政情不安や経済変動、天災等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。