※本記事は、田辺工業株式会社の有価証券報告書(第58期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 田辺工業ってどんな会社?
産業プラント設備工事を主力とする総合エンジニアリング企業です。タイで表面処理事業も展開しています。
■(1) 会社概要
1921年に田辺鉄工所として創業し、1951年に法人化されました。1969年に田辺建設の機電事業部を分離し、田辺工業を設立しました。1996年にはタイにタナベタイランドを設立して表面処理事業を開始し、海外展開も進めています。2004年のジャスダック上場等を経て、現在は東証スタンダード市場に上場しています。
従業員数は連結で1,044名、単体で809名です。筆頭株主は田辺工業取引先持株会で、第2位は有限会社ケイアンドアイ、第3位は第四北越銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 田辺工業取引先持株会 | 9.48% |
| 有限会社ケイアンドアイ | 8.19% |
| 第四北越銀行 | 4.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は水澤文雄氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 四月朔日 義雄 | 代表取締役会長 | 1969年同社入社。常務取締役、代表取締役社長などを経て2023年6月より現職。 |
| 水澤 文雄 | 代表取締役社長 | 1983年同社入社。タナベタイランド代表取締役、同社取締役等を経て2023年6月より現職。 |
| 山口 久行 | 取締役 | 1979年同社入社。執行役員青海支店長、専務執行役員青海支店長等を経て2024年4月より現職。 |
| 権守 勇一 | 取締役 | 1979年同社入社。執行役員事務部長、常務執行役員管理部長等を経て2025年4月より現職。 |
| 青木 栄一 | 取締役 | 1985年同社入社。執行役員鹿島支店長、常務執行役員千葉支店長等を経て2025年4月より現職。 |
| 小野 哲也 | 取締役 | 1991年同社入社。タナベエンジニアリングシンガポール代表取締役等を経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、横田猶一(元三菱電機ビルテクノサービス)、野本直樹(野本直樹公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「設備工事事業」「表面処理事業」および「その他」事業を展開しています。
■設備工事事業
化学・医薬等の産業プラント設備、設備保全、電気計装、メカトロニクス、送電工事、管工事などの設計から施工、メンテナンスまでを提供しています。主な顧客は化学、食品、医薬品業界や公共インフラ分野です。
収益は、顧客からの工事請負代金として得ています。運営は主に田辺工業が担い、海外ではタナベエンジニアリングシンガポールやタナベテクニカルサービスマレーシアなどが担当しています。
■表面処理事業
タイ国内において、自動車部品やHDD(ハードディスクドライブ)部品、エレクトロニクス部品等への表面処理加工サービスを提供しています。
収益は、顧客である部品メーカー等からの表面処理加工代金として得ています。事業の運営は、子会社のタナベタイランドが行っています。
■その他
アルミ鋳物生産用工業炉などの鋳造用工業炉の製造や販売、産業機械の輸入と販売を提供していました。
収益は顧客からの製品販売代金として得ていましたが、同事業の運営を担っていた田辺工業において、当期に事業を廃止しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は400億円台から500億円台へと着実に成長しています。経常利益についても堅調に推移しており、特に直近2期は利益率が改善し、当期利益も大幅な増益を達成しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 425億円 | 429億円 | 518億円 | 508億円 | 524億円 |
| 経常利益 | 29億円 | 28億円 | 27億円 | 39億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 6.8% | 6.5% | 5.3% | 7.7% | 9.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 18億円 | 20億円 | 28億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が堅調に推移するなか、施工効率の改善やリスク管理の徹底により売上総利益率が上昇しています。販売費及び一般管理費は増加しましたが、売上総利益の伸びが大きく、営業利益率も向上しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 508億円 | 524億円 |
| 売上総利益 | 87億円 | 102億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.2% | 19.4% |
| 営業利益 | 38億円 | 48億円 |
| 営業利益率(%) | 7.6% | 9.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が13億円(構成比24%)、賞与引当金繰入額が8億円(同15%)を占めています。また、単体の売上原価では、外注費が構成比の60%、経費が20%、材料費が15%を占めています。
■(3) セグメント収益
設備工事事業は、半導体関連や設備増強工事の需要を取り込み、前期繰越工事の順調な進捗も寄与して増収となりました。表面処理事業も、EV(電気自動車)向けの需要が堅調に推移し、前年を上回る売上を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 設備工事事業 | 493億円 | 508億円 |
| 表面処理事業 | 14億円 | 15億円 |
| その他 | 1億円 | 1億円 |
| 連結(合計) | 508億円 | 524億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によって得た資金で借入金の返済や投資を賄っており、健全なキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 129億円 | 19億円 |
| 投資CF | -13億円 | -9億円 |
| 財務CF | -42億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.0%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も59.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「お客様・従業員・株主・業務関係者そして社会の、みんなに喜ばれる親切で的確な仕事をしよう」を社是として掲げています。技術を通じた顧客の「ものづくり」への貢献をベースに、社会の発展を支えることを経営理念に定め、総合エンジニアリング企業として事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社は、長年培った技術の蓄積とエンジニアリングをコアとして、設備の企画からメンテナンスまで一貫して対応する文化を持っています。また「現場、現実、現物」の三現主義を徹底しており、絶え間なく技術や施工レベルを向上させることで、企業価値を高めることを基本方針としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画「TRY2030」において、2030年3月期までを「更なる飛躍への変革の時期」と定めています。持続的な成長に向けて、以下の数値目標を掲げています。
・売上高:700億円
・営業利益率:8%以上
・ROE:12%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
厳しい経営環境や不透明な市況のなかでも社会構造の変化を見据え、成長分野の顧客ニーズを的確に捉える戦略を推進しています。国内事業の進化として大型EPC案件の拡大や地域エリアの拡大を進めるほか、海外事業の再生、新規事業の探索、組織・業務改革による人材基盤の強化、ESG対応や財務基盤の強化といった重点施策に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「技術は基本、人が資本」を教育方針に掲げ、従業員を企業価値向上の源泉である「人財」と位置付けています。教育センターを活用した専門教育や資格取得支援等を通じた人材育成の強化に取り組むほか、従業員が働きやすい環境を整備するため、DX推進や改善提案活動など働き方改革に関する施策を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.1歳 | 15.5年 | 6,920,350円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.9% |
| 男性育児休業取得率 | 65.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 74.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 40.0% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職における中途社員比率(28%)、1級施工管理技士資格保有者数(165名)、平均年休取得日数(13日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済環境の変動と市場リスク
国内外の経済変動や景気低迷による設備投資の抑制、受注競争の激化による受注価格の下落が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、表面処理事業においてはHDD部品などの需要減が影響を与える懸念があります。
■(2) 製品および施工の欠陥リスク
施工管理や製品製作には万全を期していますが、重大な瑕疵担保責任や製造物責任賠償につながる欠陥が生じた場合、損害賠償が発生する可能性があります。また、想定外の追加原価により不採算工事となるリスクもあります。
■(3) 労働災害や資材市況の変動
安全管理を徹底していますが、万が一労働災害や事故が発生した場合、信用の失墜により業績に影響する可能性があります。さらに、原材料価格の高騰や品不足によって資材価格が急激に上昇するリスクも存在します。



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