第一建設工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

第一建設工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

第一建設工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、鉄道を中心とした公共性の高い建設事業と不動産事業を展開する企業です。直近の業績は、建設事業の堅調な受注により増収を達成した一方で、販売費及び一般管理費等の増加により減益となりました。安全を最優先とし、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。


※本記事は、第一建設工業の有価証券報告書(第84期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 第一建設工業ってどんな会社?


鉄道を中心とした交通インフラなど公共性の高い建設事業と、不動産事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1942年9月に鉄道土木および建築工事の請負を目的として新鉄工業を設立しました。1950年8月に諸官公庁および民間の土木建築工事へ進出するとともに、1957年8月に現在の第一建設工業へ商号を変更しています。1972年には不動産に関する業務を開始しました。その後、2004年12月にジャスダックへ上場しています。

従業員数は単体で1004名です。筆頭株主は東日本旅客鉄道で、第2位は旭調査設計、第3位は第一建設工業社員持株会です。

氏名 持株比率
東日本旅客鉄道 20.52%
旭調査設計 8.10%
第一建設工業社員持株会 7.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長執行役員社長は内田海基夫氏です。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
内田 海基夫 代表取締役社長執行役員社長 1960年生まれ。東日本旅客鉄道の八王子支社長などを経て2019年より現職。
堀山 功 取締役常務執行役員線路本部長 1963年生まれ。東日本旅客鉄道の設備部長等を経て、日本線路技術代表取締役社長を務め、2022年に同社入社。2025年より現職。
佐々木 健一 取締役常務執行役員新潟支店長 1968年生まれ。1989年に同社入社。仙台支店副支店長、土木本部土木部長、仙台支店長などを経て、2023年より現職。
落合 美喜夫 取締役常務執行役員総務本部長 1961年生まれ。東日本旅客鉄道の設備部課長を経て2020年に同社へ出向。人事キャリア開発部長、監査部長などを経て2024年より現職。
早川 晴彦 取締役常務執行役員経営本部長 1969年生まれ。1989年に同社入社。経営企画室長、新潟支店副支店長兼総務部長、健康経営推進部長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、吉田至夫(新潟クボタ代表取締役会長)、長澤徹(東日本旅客鉄道新潟支社設備ユニットリーダー)、石塚かおり(フリーアナウンサー)、田宮武文(田宮合同法律事務所パートナー弁護士)、常松伸章(東日本旅客鉄道鉄道事業本部企画戦略ユニットリーダー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」および「不動産事業」の2つの報告セグメントを展開しています。

建設事業


同社および子会社が、建築および土木工事の施工を行っています。鉄道を中心とした地域の交通インフラなど公共性の高い建設工事を主力としており、東日本旅客鉄道が主要な取引先となっています。

収益源は、官公庁や民間企業、とくに東日本旅客鉄道を中心とした顧客からの建設工事の請負代金です。同社が主要な施工を担うほか、子会社のホームテック・旭やシビル旭が少額工事の施工を行っています。

不動産事業


同社および子会社が、賃貸商業施設や賃貸住宅等の不動産の賃貸ならびに不動産仲介業務などを行っています。

収益源は、保有する不動産の入居者等から受け取る賃貸収入や仲介手数料です。不動産の賃貸および仲介等の運営は、同社ならびにホームテック・旭が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は増収傾向が続いており、売上高は427億円から600億円へと着実に拡大しています。経常利益も成長を続けており、特に直近2期間は70億円台の高い水準で推移しています。利益率に関しても、7%台から12%台へと大幅に向上しており、収益力の強化が進んでいることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 427億円 474億円 540億円 580億円 600億円
経常利益 33億円 39億円 41億円 76億円 75億円
利益率(%) 7.8% 8.2% 7.6% 13.1% 12.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 26億円 26億円 28億円 52億円 52億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から20億円の増収となった一方で、営業利益は減少しました。売上総利益率は18.3%から17.8%へやや低下し、営業利益率も12.4%から11.5%へと低下しています。売上は堅調に推移したものの、コストの増加により利益率が圧迫された状況が伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 580億円 600億円
売上総利益 106億円 107億円
売上総利益率(%) 18.3% 17.8%
営業利益 72億円 69億円
営業利益率(%) 12.4% 11.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当(従業員給料手当)が14億円(構成比34%)、事務用品費が5億円(同12%)を占めています。売上原価の内訳は、完成工事原価が482億円(同98%)、不動産事業売上原価が8億円(同2%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高は、全体の大部分を占める主力の建設事業が569億円から589億円へと堅調に増加しました。不動産事業も11億円と小規模ながら安定した売上を維持し、微増となっています。建設事業の好調が全体の増収を牽引しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設事業 569億円 589億円
不動産事業 11億円 11億円
連結(合計) 580億円 600億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で負債返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 60億円 43億円
投資CF -38億円 -15億円
財務CF -28億円 -53億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、鉄道を中心とした交通インフラなど公共性の高い建設事業を柱に、社会資本の整備を担う企業として、「安全・安心」を常に最優先とする企業風土を構築し、地域社会の発展に貢献することを経営方針として掲げています。高品質で安全性に優れた成果物を提供し、社会とともに発展し続ける企業づくりに邁進しています。

(2) 企業文化


経営スローガンとして「変革と現状打破~ルールの目的・本質を理解し、コミュニケーションとチームワークで目指す、究極の安全と品質~」を掲げています。安全をトッププライオリティと位置づけ、全社員が安全意識を共有しながら、安全文化の醸成と安全レベルの継続的な向上に取り組む組織文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


2026年度から2030年度までを対象とする中期経営計画「変革2030」を策定し、持続的な成長に向けた中期経営目標(2030年度目標)を掲げています。

* 売上高:700億円
* ROE:9.0%以上
* 配当性向:50.0%以上
* DOE:3.5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


慢性的な建設技能者不足や労務費の高騰などの課題に対処し、将来に向けて持続的に成長するために、「4つの経営方針」を基盤としたダイナミックケイパビリティの向上を通じ、「4つの変革」と「成長戦略」を推進しています。また、ESG経営を通じたSDGsへの貢献や、資本コストや株価を意識した経営に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業価値を持続的に向上させるため、人材の価値を高めることが不可欠であると認識し、経営戦略と連動した人材戦略の構築を推進しています。社員満足・顧客満足の実現に向けた「ひとづくり」をコンセプトに、技術・スキル研修と階層別研修による人材育成を行うとともに、多様な人材が能力を最大限に発揮できる職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.1歳 14.1年 8,391,111円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.5%
男性育児休業取得率 84.4%
男女賃金差異(全労働者) 70.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 67.2%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 97.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の採用比率(7.5%)、特定健康診査受診率(89%)、喫煙者率(31%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の動向


同社の受注および売上高は国内の建設投資動向による影響を受けます。今後、想定以上に官公庁および民間の建設投資が急激に減少した場合は、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 工事事故の発生


同社は鉄道工事をはじめとする公共性の高い事業が多く、「安全の確保」を最優先とした取り組みを実施しています。万が一、死亡に直結するなどの重大事故が発生した場合、発注者からの信用・信頼の失墜につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料価格の高騰


主要建設資材等が急激に高騰し、請負金額に反映することが困難で価格へ転嫁できない場合や、想定以上に材料費や労務費等の価格が急騰したときは、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定の取引先への依存度


同社は鉄道工事に特性を有する総合建設業であり、東日本旅客鉄道からの売上高比率が高くなっています。同社が何らかの理由により設備投資額または同社との取引を削減しなければならなくなった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。