※本記事は、第一建設工業株式会社 の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
第一建設工業は、建設事業と不動産事業を主軸に事業を展開しています。同社グループは、第一建設工業と子会社2社で構成されており、建設工事の施工や不動産の賃貸・仲介等を行っています。
単体従業員数は1,004名です。セグメントは建設事業、不動産事業の2つです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
第一建設工業は、鉄道工事を基盤とする総合建設業として、社会インフラの整備を支える企業です。安定した事業基盤のもと、社員の専門性を重視し、長期的なキャリア形成を支援する働き方が特徴として挙げられます。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、社員の平均勤続年数が長く、平均年齢も比較的高い傾向にあります。これは、社員が長期にわたってキャリアを築き、専門性を深めていることを示しています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 8,391,111円 |
| 平均勤続年数 | 14.1年 |
| 平均年齢 | 39.1歳 |
| 単体従業員数 | 1,004人 |
同社は確定給付型の退職給付制度を設けており、給与や勤続年数に応じて給付額が決まる仕組みです。この制度は国内の従業員を対象としています。
退職一時金制度があります。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
なお、退職給付債務は26.1億円、年金資産は33.2億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
第一建設工業は、企業価値の持続的向上には人材の価値を高めることが不可欠であると認識し、経営戦略と連動した人材戦略を重要な課題と位置付けています。社員一人ひとりの職務・役割、知識・技能、経験、責任の程度に加え、人事評価制度を通じた業務成果や能力向上の状況を反映して給与を決定しています。鉄道や社会インフラを支える人材の確保と育成を競争力の源泉とし、資格取得支援や技術力向上を中長期的に支援する給与体系の構築に取り組んでいます。
同社は「ESG経営を通じてSDGsに貢献するとともに持続的成長と企業価値向上を実現」を基本方針とし、人的資本経営を推進しています。多様な人材の働き方に配慮した職場環境の整備や、知識・スキル・役割認識の向上に向けた人材育成に注力しています。具体的には、2022年3月より「働き方改革推進会議」を継続し、2026年4月からは「働き方改革推進委員会」に再編して組織力強化を図っています。
また、ワークライフバランスの実現と働きがいを実感できる企業を目指し、「真の働き方改革」を推進しています。人材育成においては、2021年度より「新しい研修プラン」を開始し、技術・スキル研修と階層別研修の2つを柱としています。研修スタイルには能動型・実践型のアクティブラーニングを導入し、集合研修とe-ラーニングを組み合わせたブレンディング研修を実施しています。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。同社の賃金構成は男女問わず同一であり、基本給における男女の賃金差異は、エリア外への転勤の有無や年代構成によって発生する傾向があります。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 0.5% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 84.4% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) | 70.5% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) | 67.2% |
| 労働者の男女の賃金の額の差異(非正規雇用労働者) | 97.2% |
健康経営
指標の基準日は当事業年度末です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 特定健康診査受診率 | 89% |
| 特定保健指導実施率 | 88% |
| 喫煙者率 | 31% |
| 1日8,000歩以上の歩行者率 | 28% |
人的資本経営
指標の基準日は当事業年度末です。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性社員の採用比率 | 7.5% |
| 育休取得率(男性) | 84.4% |
| 育休取得率(女性) | 100% |
| 育休平均取得期間(男性) | 53日 |
| 育休平均取得期間(女性) | 308日 |
| 障害者雇用率 | 1.9% |
有報に開示される平均年収は全社平均です。職種・年次・職位ごとの実際の給与水準は、社員・OBOGの給与明細データで確認できます。
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
第一建設工業は、建設事業と不動産事業を主軸に事業を展開しています。同社グループは、第一建設工業と2つの子会社で構成されています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
第一建設工業は、主に建設事業と不動産事業を展開し、収益を上げています。同社グループは、安全を最優先に、最良の総合品質を提供することで顧客満足度向上を目指しています。技術力の向上や厳密な原価管理にも取り組んでいます。
建設事業
同社の主力事業であり、建設工事の施工を行っています。子会社のホームテック・旭やシビル旭も建築および土木の少額工事を施工しており、一部は同社が発注しています。収益は、建設工事の受注と完成から得ています。運営は、第一建設工業、ホームテック・旭、シビル旭が行っています。この事業は、前期に比べて受注高と売上高が増加しましたが、セグメント利益は減少しました。東日本旅客鉄道が主要な取引先であり、売上高の大部分を占めています。
不動産事業
不動産の賃貸や仲介などを手掛けています。収益は、不動産の賃貸および仲介から得ています。運営は、第一建設工業とホームテック・旭が行っています。この事業は、前期に比べて売上高が増加しましたが、セグメント利益は大きく減少しました。
同社の売上高は主に国内の外部顧客からのものであり、海外比率は低い状況です。また、建設事業においては特定の取引先への売上集中が見られます。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 建設事業 | 569億円 | 589億円 |
| 不動産事業 | 10.8億円 | 11.2億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社の直近の業績は、売上高が増加傾向にある一方で、利益面では減少傾向を示しています。営業利益、経常利益、当期純利益は前期に比べて減少となりました。
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社の従業員数は1,004人です。平均年齢は39.1歳、平均勤続年数は14.1年となっています。平均年間給与は8,391,111円で、前期から増加しています。
業績データからは見えない「この会社で実際に働くとどうか」は、社員・OBOGの口コミで確認できます。
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
第一建設工業の財務状況は、事業活動を通じて安定した資金を生み出し、健全な財務基盤を維持していることを示しています。同社は本業で得た資金を適切に運用し、将来に向けた投資も行っています。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
第一建設工業の財務基盤は、自己資本と手元資金の厚みによって特徴づけられます。自己資本比率は高い水準にあり、同社の安定性を示しています。ROE(自己資本利益率)はプライム市場平均と比較してやや低い水準ですが、着実に利益を創出しています。手元資金も十分に確保されており、事業運営の安定性につながっています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産合計 | 716億6百万円 | 747億2百万円 |
| 自己資本比率 | 85.4% | 86.5% |
| ROE(自己資本利益率) | - | 7.1% |
| 現金及び預金等 | 173億6千万円 | 148億4千万円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
第一建設工業のキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローはプラスとなっています。これは税引前当期純利益の計上などによるものです。投資活動によるキャッシュフローはマイナスであり、有形固定資産の取得による支出など、将来に向けた投資を行っていることを示しています。その結果、事業活動と投資活動を合わせたフリーキャッシュフローはプラスとなっており、同社が本業で安定的に資金を創出している状況がうかがえます。財務活動によるキャッシュフローはマイナスで、配当金の支払いや自己株式の取得による支出が主な要因です。これらの資金の流れから、同社は安定した事業運営を行いながら、株主還元も積極的に実施していることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | - | 42億6千万円 |
| 投資CF | - | △14億8千万円 |
| 財務CF | - | △53億0百万円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | - | 27億8千万円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
第一建設工業は、国内の建設投資動向に業績が影響を受ける可能性があります。官公庁及び民間建設投資が急激に減少した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、鉄道工事に特性を有する総合建設業であり、東日本旅客鉄道株式会社からの売上高の比率が高い状況です。同社との取引が削減された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社は、感染症の流行に際して従業員等の安全を最優先に考え、衛生管理の徹底やテレワーク勤務規則を定めています。しかし、感染症の流行に伴う経済活動の制限等により、安全及び施工体制の維持・確保が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
財務指標だけでは分からない、実際の残業の実態や職場環境は、社員の声から確認できます。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
第一建設工業は、鉄道を中心とした公共性の高い建設事業を通じて社会資本の整備を担う企業です。同社は「安全・安心」を最優先とし、地域社会の発展に貢献することを目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
第一建設工業は、鉄道を中心とした地域の交通インフラなど公共性の高い建設事業を柱に、社会資本の整備を担う企業としています。同社は「安全・安心」を常に最優先とする企業風土を構築し、地域社会の発展に貢献することを目指しています。
また、環境変化に対応する技術革新や幅広い人材育成に努め、高品質で安全性に優れた成果物を提供することで、お客様からの高い満足と信頼を獲得し、社会とともに発展し続ける企業づくりに邁進する方針です。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
第一建設工業は、「安全・安心」を常に最優先とする企業風土の構築を重視しています。同社は「変革と現状打破~ルールの目的・本質を理解し、コミュニケーションとチームワークで目指す、究極の安全と品質~」を経営スローガンに掲げています。
ESG経営を通じてSDGsに貢献し、持続的成長と企業価値向上を実現することを基本方針としています。安全行動指針・安全行動規範を定め、安全文化の醸成と安全レベルの継続的な向上に取り組んでいます。
また、環境経営、健康経営、人的資本経営、ガバナンス強化を推進し、社員が能力を最大限に発揮できる職場環境の整備と、企業の透明性・信頼性確保に努めています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
第一建設工業は、建設技能者不足や作業員の高齢化、労務費・建設資材価格の高騰といった建設業界の課題に直面しています。これに加え、時間外労働の上限規制や地球環境問題の深刻化、働き方改革、デジタル化やAI技術の進展、少子高齢化への対応を喫緊の課題としています。
同社はこれらの課題に対処し、持続的に成長するため『中期経営計画 変革2030』を策定しました。「4つの経営方針」を基盤としたダイナミックケイパビリティの向上を通じて「4つの変革」と「成長戦略」の推進に取り組んでいます。
また、ESG経営を通じたSDGsへの貢献や、「資本コストや株価を意識した経営」による持続的成長と企業価値向上の実現に向けた取り組みを進めています。
会社が掲げる価値観と現場の実態が一致しているかどうかは、社員・OBOGの口コミが参考になります。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
第一建設工業は、取締役会の監督機能強化を通じてコーポレート・ガバナンスの充実と企業価値向上を目指しています。2025年6月25日開催の第83期定時株主総会で監査等委員会設置会社へ移行しました。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社は、東日本旅客鉄道株式会社が筆頭株主として経営を支える資本構成となっています。上位株主には事業会社や社員持株会が名を連ねており、特定の株主グループが経営に影響力を持つ傾向が見られます。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東日本旅客鉄道 | 20.52% |
| 旭調査設計 | 8.10% |
| 第一建設工業社員持株会 | 7.74% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は11名(男性10名・女性1名)で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長執行役員社長は内田海基夫氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 内田 海基夫 | 代表取締役社長 執行役員社長 | 2004年6月 東日本旅客鉄道株式会社盛岡支社設備部部長、2013年6月 同社監査部部長、2015年6月 同社執行役員八王子支社長、2019年6月 同社代表取締役社長、執行役員社長より現職。 |
| 堀山 功 | 取締役 常務執行役員 線路本部長 | 2009年6月 東日本旅客鉄道株式会社新潟支社設備部部長、2019年6月 同社鉄道事業本部設備部(株式会社日本線路技術出向)株式会社日本線路技術代表取締役社長、2022年6月 同社取締役、常務執行役員総合企画本部長、2025年6月 同社取締役、常務執行役員線路本部長より現職。 |
| 佐々木 健一 | 取締役 常務執行役員 新潟支店長 | 1989年4月 同社入社、2016年6月 同社土木本部土木部長、2017年6月 同社執行役員土木本部長、2023年6月 同社取締役、常務執行役員新潟支店長より現職。 |
| 落合 美喜夫 | 取締役 常務執行役員 総務本部長 | 2017年7月 東日本旅客鉄道株式会社鉄道事業本部設備部課長、2021年6月 同社執行役員社員・業務サポート本部副本部長兼総務部長兼人事キャリア開発部長、2024年6月 同社取締役、常務執行役員総務戦略本部長(現総務本部長)より現職。 |
| 早川 晴彦 | 取締役 常務執行役員 経営本部長 | 1989年4月 同社入社、2014年6月 同社経営企画室長、2018年6月 同社執行役員総合企画本部副本部長兼経営企画部長、2025年6月 同社取締役、常務執行役員経営本部長より現職。 |
社外取締役は、吉田至夫氏(株式会社新潟クボタ代表取締役会長)、長澤徹氏(東日本旅客鉄道株式会社新潟支社鉄道事業部設備ユニットリーダー)、石塚かおり氏(フリーアナウンサー)です。
同社は監査等委員会設置会社であり、取締役会の監督機能強化と意思決定の客観性向上を図っています。また、取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬委員会を設置し、手続きの客観性・透明性を確保しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の役員報酬は、月例の固定報酬、業績に基づくインセンティブとしての賞与、そして譲渡制限付株式報酬で構成されています。固定報酬は経験年数や担当職務、貢献度を考慮して算定され、業績連動報酬は中期経営計画の達成度や安全・品質・ESG経営への取り組みを評価指標としています。社外取締役には業務執行から独立した立場であることから、基本報酬等のみが支給され、業績連動報酬は支給されません。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(監査等委員及び社外除く) | 7名 | 1.4億円 | 20.2百万円 |
| 監査等委員(社外除く) | 1名 | 9百万円 | 9.0百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 4百万円 | 3.6百万円 |
なお、同社は2025年6月25日開催の第83期定時株主総会終結の時をもって監査等委員会設置会社に移行しています。監査役の報酬等は当該移行前の期間に係るものであり、取締役(監査等委員)の報酬等は当該移行後の期間に係るものです。
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