第一建設工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

第一建設工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の建設会社です。鉄道関連の建設事業と不動産事業を展開しており、主要取引先はJR東日本です。2025年3月期の業績は、売上高が前期比7.4%増、営業利益が同90.7%増と大幅な増収増益を達成しました。中期経営計画の目標値を前倒しで達成するなど好調に推移しています。


※本記事は、第一建設工業株式会社 の有価証券報告書(第83期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 第一建設工業ってどんな会社?


鉄道インフラを中心とした建設事業と不動産事業を展開する、JR東日本パートナーの総合建設会社です。

(1) 会社概要


1942年に鉄道省新潟鉄道局管内の工事請負を目的として新鉄工業が設立され、1957年に現在の第一建設工業へ商号変更しました。1994年に日本証券業協会へ店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2022年の東証市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。

同社(提出会社)の従業員数は1,004名です。筆頭株主は同社の主要取引先でもある東日本旅客鉄道(JR東日本)で、第2位は新潟県で建設コンサルタントを行う旭調査設計、第3位は第一建設工業社員持株会です。安定した株主構成のもと、鉄道関連工事を強みとして事業を展開しています。

氏名 持株比率
東日本旅客鉄道 19.35%
旭調査設計 7.64%
第一建設工業社員持株会 7.41%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長執行役員社長は内田海基夫氏が務めています。社外取締役比率は約45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
内田 海基夫 代表取締役社長執行役員社長 2004年東日本旅客鉄道盛岡支社設備部長などを経て、2015年同社執行役員八王子支社長。2019年より現職。
堀山 功 取締役常務執行役員線路本部長 2003年東日本旅客鉄道安全対策部課長などを経て、日本線路技術代表取締役社長を歴任。2025年より現職。
佐々木 健一 取締役常務執行役員新潟支店長 1989年第一建設工業入社。土木本部長、仙台支店長などを経て、2023年より現職。
落合 美喜夫 取締役常務執行役員総務本部長 2017年東日本旅客鉄道鉄道事業本部設備部課長などを経て、第一建設工業執行役員監査部長を歴任。2024年より現職。
早川 晴彦 取締役常務執行役員経営本部長 1984年第一建設工業入社。経営企画室長、新潟支店副支店長兼総務部長などを経て、2025年より現職。
本田 孝 取締役常勤監査等委員 2009年東日本旅客鉄道新潟支社新潟保線技術センター助役などを経て、第一建設工業常務執行役員経営企画本部長を歴任。2025年より現職。


社外取締役は、吉田至夫(株式会社新潟クボタ代表取締役会長)、長澤徹(東日本旅客鉄道新潟支社鉄道事業部設備ユニットリーダー)、石塚かおり(フリーアナウンサー)です。また、社外の監査等委員である取締役は、田宮武文(田宮合同法律事務所パートナー)、常松伸章(東日本旅客鉄道鉄道事業本部設備部門ユニットリーダー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」および「不動産事業」を展開しています。

(1) 建設事業


鉄道を中心とした地域の交通インフラなど公共性の高い建設工事を施工しています。具体的には、鉄道土木・建築工事、線路メンテナンス工事などを手掛けており、主要な取引先はJR東日本です。子会社において建築・土木の少額工事も行っています。

主な収益源は、発注者である鉄道会社や官公庁、民間企業からの工事請負代金です。運営は主に第一建設工業が行い、一部の工事については子会社のホームテック・旭、シビル旭が施工を担当しています。

(2) 不動産事業


所有する不動産の賃貸および仲介業務を展開しています。新潟県やその他の地域において、賃貸商業施設や賃貸住宅(マンション等)を保有し、有効活用を図っています。

主な収益源は、テナントや入居者からの賃貸料収入です。運営は第一建設工業および子会社のホームテック・旭が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は400億円台から500億円台後半へと堅調に推移しています。特に直近の2025年3月期は利益面での伸びが著しく、利益率は前年の7.6%から13.1%へと大きく改善しました。当期純利益も倍増近くまで伸長しており、収益性が高まっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 550億円 427億円 474億円 540億円 580億円
経常利益 54億円 33億円 39億円 41億円 76億円
利益率(%) 9.9% 7.8% 8.2% 7.6% 13.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 37億円 26億円 26億円 28億円 52億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が大幅に伸長しています。売上総利益率は12.3%から19.0%へと向上しており、採算性の改善が見て取れます。これに伴い営業利益も大きく増加し、営業利益率は7.0%から12.4%へと上昇しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 540億円 580億円
売上総利益 66億円 110億円
売上総利益率(%) 12.3% 19.0%
営業利益 38億円 72億円
営業利益率(%) 7.0% 12.4%


コスト構成を見ると、売上原価のうち外注費が約265億円(構成比57%)、経費が約137億円(同30%)を占めています。販売費及び一般管理費においては、給料手当が約14億円(構成比37%)、広告宣伝費が約4億円(同11%)となっています。

(3) セグメント収益


建設事業は、受注工事の増加により売上高が増加し、増収効果で利益も大きく伸長しました。不動産事業は、賃貸用不動産の売上増により増収となりましたが、利益面では減益となりました。全体としては建設事業の好調が業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 530億円 569億円 35億円 70億円 12.2%
不動産事業 10億円 11億円 3億円 2億円 22.0%
連結(合計) 540億円 580億円 38億円 72億円 12.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

第一建設工業は、建設事業および不動産事業において、堅調な受注・売上実績を上げています。当事業年度末の現金及び現金同等物は減少しましたが、これは主に投資活動における有形固定資産の取得や、財務活動における配当金の支払い、自己株式の取得によるものです。営業活動では、税引前当期純利益の計上等により資金を得ており、投資活動では有形固定資産の取得等で資金を使用しました。財務活動では、配当金の支払い等で資金が使用されました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 54億円 60億円
投資CF -23億円 -38億円
財務CF -12億円 -28億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


鉄道を中心とした地域の交通インフラなど公共性の高い建設事業を柱に、社会資本の整備を担う企業として、「安全・安心」を常に最優先とする企業風土を構築し、地域社会の発展に貢献することを掲げています。また、技術革新や人材育成に努め、高品質な成果物を提供することで社会とともに発展し続ける企業づくりを目指しています。

(2) 企業文化


「変革と現状打破」を経営スローガンとして掲げ、ルールの目的・本質を理解し、コミュニケーションとチームワークで究極の安全と品質を目指す文化を重視しています。ESG経営を通じたSDGsへの貢献や、株主資本コストを意識した経営により、持続的成長と企業価値向上の実現に向けて全社一丸となって取り組む姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


2024年度を初年度とする「中期経営計画 変革2028」を策定し、以下の目標を掲げています。
- 売上高:560億円
- 営業利益:50億円
- 配当性向:50.0%以上
- 総還元性向:100%以上(各年)
- ROE:5.0%
- 投資計画:営業CF260億円(戦略事業投資110億円、維持更新投資70億円、株主還元80億円以上)

(4) 成長戦略と重点施策


「4つの経営方針」を基盤としたダイナミックケイパビリティの向上を通じて、「4つの変革」と「成長戦略」を推進しています。建設業界の課題である労働者不足や原材料価格高騰、働き方改革への対応を喫緊の課題と捉え、技術革新や人材育成、ESG経営の推進に取り組んでいます。また、設備投資や人的資本投資の強化も図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の価値を高めることが企業価値向上に不可欠であるとし、多様な属性や経験を持つ社員の力を結集することを重視しています。各人が能力を最大限に発揮できる職場環境の整備と、知識・スキルの向上に向けた人材育成を重要な経営課題と位置付け、働き方改革や女性活躍推進、男性育児休業取得促進などに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.6歳 13.8年 8,084,270円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 81.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.6%
男女賃金差異(正規) 68.2%
男女賃金差異(非正規) 94.0%


※女性管理職比率については、有価証券報告書に記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の採用比率(6.8%)、男性の育休平均取得期間(73日)、女性の育休平均取得期間(244日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の動向


受注・売上高は国内の建設投資動向の影響を受けます。官公庁や民間の建設投資が想定以上に急激に減少した場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 工事事故の発生


鉄道工事をはじめとする公共性の高い事業を行っており、安全確保を最優先しています。しかし、万が一死亡事故等の重大事故が発生した場合、発注者からの信用・信頼を失墜させ、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 原材料価格の高騰


主要建設資材等の価格が急騰し、請負金額への転嫁が困難な場合や、労務費等が想定以上に上昇した場合には、同社の利益を圧迫し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 特定の取引先への依存


鉄道工事に強みを持つため、東日本旅客鉄道(JR東日本)からの売上高比率が高くなっています。同社の設備投資削減や取引方針の変更があった場合、第一建設工業の業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。