守谷商会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

守谷商会 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場し、長野県を地盤とする総合建設業者として建築・土木事業を展開しています。2025年3月期の業績は、売上高が503億円(前期比16.0%増)、経常利益が24億円(同4.4%増)となり、堅調な受注環境を背景に増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社守谷商会 の有価証券報告書(第71期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。


1. 守谷商会ってどんな会社?


長野県を拠点に、建築・土木事業および不動産事業を展開する老舗の総合建設会社です。

(1) 会社概要


1916年に長野市で創業し、1955年に設立されました。1962年には不動産事業を行う守谷不動産を設立し、多角化を進めています。2004年に日本証券業協会への店頭登録を取り消しJASDAQ市場へ上場、2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。

同グループの従業員数は連結で422名、単体で318名です。大株主は、筆頭株主が同社の従業員持株会であり、第2位は奨学金の給付事業を行う財団法人、第3位は取引先持株会となっており、従業員や関係者による持株比率が高いのが特徴です。

氏名 持株比率
守谷商会従業員持株会 9.05%
一般財団法人守谷奨学財団 8.83%
守谷商会取引先持株会 7.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性0名、計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員社長は伊藤由郁紀氏が務めています。社外取締役比率は約8.3%です。

氏名 役職 主な経歴
伊藤由郁紀 代表取締役社長執行役員社長 1985年同社入社。名古屋支店長、建築事業本部長等を経て、2024年6月より現職。
吉澤浩一郎 取締役会長 1979年同社入社。建築事業本部長、代表取締役社長執行役員社長等を経て、2024年6月より現職。
伊藤隆三 取締役相談役 1972年同社入社。東京支店長、代表取締役社長執行役員社長、会長を経て、2024年6月より現職。
吉澤正博 取締役専務執行役員 1985年同社入社。松本支店営業部長、東京支店長等を経て、2025年4月より現職。
山﨑光夫 取締役専務執行役員 1988年同社入社。長野建築本店長等を経て、2025年4月より現職。
山口和彦 取締役常務執行役員 1986年八十二銀行入行。2020年同社入社。長野建築本店副本店長等を経て、2025年6月より現職。
田下昌志 取締役執行役員 1985年長野県入庁。建設部長等を経て2023年同社入社。2023年6月より現職。
久保智 取締役執行役員 1987年同社入社。管理本部管理経理部長、松本支店長等を経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、舟見英夫(八十二証券代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建築事業」「土木事業」「不動産事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

建築事業


官公庁施設、教育施設、医療福祉施設、商業施設、工場、マンション、個人住宅などの建築工事全般を請け負っています。新築工事だけでなく、リニューアル工事や耐震補強工事なども手掛けており、地域のインフラ整備や住環境の向上に寄与しています。

主な収益は、発注者である官公庁や民間企業、個人からの工事請負代金です。運営は主に守谷商会が行っていますが、子会社の機材サービスが建設資材のリースを、未来ネットワークがユニットハウス事業等を担当しています。

土木事業


道路、橋梁、トンネル、河川、上下水道、ダム、造成などの土木工事全般を請け負っています。社会資本整備に関わる公共工事が主体ですが、民間造成工事なども行っています。地域社会の安全・安心を守るための防災・減災工事にも注力しています。

主な収益は、国、地方自治体などの官公庁および民間企業からの工事請負代金です。運営は主に守谷商会が行っていますが、子会社のアスペックが舗装工事等を、丸善土木が中南信地区での土木工事等を担当しています。

不動産事業


不動産の売買、賃貸、仲介、斡旋、管理業務などを行っています。自社保有物件の賃貸や、宅地分譲、マンション分譲なども手掛けています。

主な収益は、不動産の販売による売上代金、賃貸物件からの賃貸料収入、仲介手数料などです。運営は守谷商会および子会社の守谷不動産が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は368億円から503億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益も増減はあるものの、2025年3月期には24億円となり、利益率も4%台後半を維持しています。当期純利益も安定して推移しており、堅実な成長トレンドにあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 368億円 388億円 390億円 433億円 503億円
経常利益 9.5億円 17億円 13億円 23億円 24億円
利益率(%) 2.6% 4.3% 3.3% 5.2% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.5億円 13億円 8.5億円 15億円 16億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は前期比で約70億円増加し、売上総利益も約11億円増加しました。売上総利益率は10.2%へ向上しています。営業利益も増加していますが、販管費の増加により営業利益率は4.6%と若干低下しました。全体として増収増益基調を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 433億円 503億円
売上総利益 37億円 48億円
売上総利益率(%) 8.6% 10.2%
営業利益 22億円 23億円
営業利益率(%) 5.1% 4.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が12億円(構成比43%)、役員報酬が3億円(同9%)を占めています。売上原価においては、外注費が341億円(売上原価合計比76%)、材料費が29億円(同6%)となっています。

(3) セグメント収益


建築事業は前期からの豊富な繰越工事と順調な進捗により大幅な増収増益となりました。不動産事業も開発案件の引渡し増加で増収となりましたが、利益は減少しました。土木事業は繰越工事が少なかったこと等により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建築事業 318億円 389億円 21億円 35億円 8.9%
土木事業 87億円 78億円 8.4億円 5.4億円 6.9%
不動産事業 28億円 36億円 8.8億円 2.5億円 7.0%
連結(合計) 433億円 503億円 22億円 23億円 4.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

守谷商会は、営業活動により資金を獲得し、投資活動や財務活動で資金を使用しています。営業活動では、不動産事業の支出減少や売上債権の増加等により、前年度の使用から獲得へと転換しました。投資活動では、有形固定資産や子会社株式の取得等により、前年度より使用額が減少しました。財務活動では、主に配当金の支払いにより資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -19億円 31億円
投資CF -13億円 -3.6億円
財務CF -2.3億円 -2.1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「すべてのことに誠実に よりよい仕事をしよう」を社是としています。また、伝統ある信用を基礎とし、卓越した技術力を駆使して建設業界の先頭を歩み、国造りから街造りまで社会の発展に寄与することを経営理念に掲げています。さらに、信頼と技術で社会に貢献し、社員と家族が誇りと満足感を持てる「働きたい」企業を目指す長期ビジョンを持っています。

(2) 企業文化


同社は「斗志あふるゝ若さ」をもって、企業の成長繁栄と従業員の生活向上のために限りなき前進を続けることを理念の一部として掲げています。「オールモリヤ」の旗の下、グループ企業が一丸となって事業収益を確保・向上させる体制を目指しており、誠実な仕事を通じて信用を積み重ねる文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは「強靭な経営体質の確立」を目指し、「営業利益率」を重要な経営指標と位置づけています。生き残るための収益至上主義への変革を実現するため、工事粗利益率の向上と固定費の削減に注力し、安定した利益を確保する体制の構築と企業価値の向上に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


人材戦略による人的資本の最大化、DX推進による生産性向上、経営戦略の強化、事業ポートフォリオの再構築、社会的評価の向上を経営戦略として掲げています。具体的には、コンプライアンス遵守と安全・品質管理による損失防止、与信・施工リスク管理の徹底、有望企業の買収や首都・中京圏での事業強化、人材確保と育成、不動産開発投資の的確な実行などを重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「変化に適応する人的資本『人』の最大化」を重要戦略とし、人材を最も重要な資本と捉えています。中長期的な採用計画に基づき、性別や国籍にとらわれない人物本位の採用を行うほか、OJTや階層別・職務別研修、資格取得支援などの教育制度を充実させています。また、働き方改革によるワーク・ライフ・バランスの実現にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.7歳 16.9年 6,853,007円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.9%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 59.2%
男女賃金差異(正規雇用) 67.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 33.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 資材及び労務の調達


建設事業では多くの資材と外注労務費が必要です。鋼材やセメント等の資材価格の高騰や労務費単価の上昇は、見積価格の上昇による受注競争力の低下や、工事中のコスト増による利益圧迫を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経済・公共投資の動向


中核である建設事業は、営業地域の経済状況や公共投資の動向に大きく左右されます。景気後退や公共投資の削減が発生した場合、受注減少に直結し、業績および財務状況にマイナスの影響を与える可能性があります。

(3) 工事代金の回収


請負事業は受注から完成・引渡しまでに長期間を要するため、その間に発注者の経営状態が悪化したり、経済情勢が急変したりするリスクがあります。与信管理を行っていますが、万一回収遅延や貸倒れが発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人材の確保


建設事業の継続・拡大には、優秀な有資格者や技術者の確保が不可欠です。必要な人材を計画通りに採用・維持できなかった場合、施工能力の低下や技術継承の停滞を招き、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。