※本記事は、株式会社ナカボーテックの有価証券報告書(第83期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ナカボーテックってどんな会社?
社会インフラの腐食や劣化を防ぐ防食技術の提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1951年に中川防蝕工業として設立され、防食・防錆・防水に関する事業を開始しました。1956年には三井金属鉱業(現三井金属)と資本・技術提携を結び、防食用亜鉛陽極の販売を開始しました。1991年に現在の社名へと変更し、1995年に株式を店頭登録(後のJASDAQ、スタンダード市場)しています。
同社単体の従業員数は282名です。筆頭株主は事業会社(提携先)の三井金属で、第2位はナカボーテック取引先持株会、第3位は事業会社の麻生となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井金属 | 31.85% |
| ナカボーテック取引先持株会 | 8.38% |
| 麻生 | 6.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員は宮地誠氏が務めています。取締役7名中、社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮地 誠 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1986年三井金属鉱業入社。機能材料事業本部電池材料事業部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 南 正信 | 代表取締役専務取締役専務執行役員管理本部長技術本部長 | 1987年同社入社。事業統括部技術部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 濱田 昌宏 | 取締役常務執行役員事業本部長東北支店長 | 1988年同社入社。東北支店長などを経て、2026年6月より現職。 |
社外取締役は、中川哲央(元三井物産地球環境室次長)、若井健太郎(三井金属執行役員)、柴田幸一郎(弁護士)、岸利治(東京大学生産技術研究所教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「港湾事業」「地中事業」「陸上事業」および「その他」事業を展開しています。
■港湾事業
港湾施設(岸壁、桟橋、護岸、防波堤など)や船舶等に対して、電気防食、被覆防食、塗装工事を提供しています。環境や対象施設に最も適した工法を選定し、長期間にわたって構造物を腐食から守ります。
主に官公庁や民間企業からの工事請負により収益を得ています。また、防食関連の材料や装置の製造・販売も行っています。運営は同社が行っています。
■地中事業
ガス、水道、農業用水、石油などの地中埋設管や、地上・地下タンク、基礎杭等に対する電気防食工事を提供しています。周辺の土壌環境の変化等に対応した維持管理も行います。
主に官公庁や民間企業からの工事請負により収益を得ています。防食工事の提供に加え、関連製品等の販売も手掛けています。運営は同社が行っています。
■陸上事業
復水器や熱交換器、ポンプ、水処理施設などの陸上施設・プラント装置等に対し、電気防食、被覆防食、塗装工事などを提供しています。電気防食技術を応用した電解鉄イオン供給や防汚工事も手掛けています。
主に民間企業からの工事請負により収益を得ています。冷却管内面の防食や海生生物の付着防止システム等の提供を行い、運営は同社が行っています。
■その他
岸壁、桟橋、橋梁などの鉄筋コンクリート構造物に対する電気防食や被覆防食を提供しています。コンクリート中の塩化物イオンによる鉄筋腐食を抑制する技術などを展開しています。
主に官公庁や民間企業からの工事請負により収益を得ています。リボンメッシュ方式や独自開発のNAKAROD方式などを活用し、運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は129.1億円から149.0億円へと緩やかな増収傾向にあります。経常利益は11.0億円から15.0億円の範囲で推移し、利益率も8〜10%台で安定した収益力を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 129.1億円 | 141.6億円 | 137.8億円 | 147.3億円 | 149.0億円 |
| 経常利益 | 11.0億円 | 12.7億円 | 12.0億円 | 15.0億円 | 13.8億円 |
| 利益率(%) | 8.5% | 9.0% | 8.7% | 10.2% | 9.3% |
| 当期純利益 | 7.6億円 | 9.0億円 | 8.3億円 | 10.5億円 | 11.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は147.3億円から149.0億円へ増収となり、売上総利益率も15.9%から18.1%へと向上しています。一方で、販売費及び一般管理費の増加等により、営業利益率は9.9%から8.8%へ低下しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 147.3億円 | 149.0億円 |
| 売上総利益 | 23.4億円 | 27.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.9% | 18.1% |
| 営業利益 | 14.6億円 | 13.1億円 |
| 営業利益率(%) | 9.9% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が9.8億円(構成比37.3%)、賞与引当金繰入額が2.9億円(同10.9%)を占めています。また、売上原価の合計109.8億円に対し、完成工事原価が92.6億円となっており、そのうち外注費が45.5億円(完成工事原価に対する構成比49.1%)、経費が29.3億円(同31.6%)、材料費が17.8億円(同19.2%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の港湾事業は反動減等により前年比で減収となりましたが、地中事業およびその他事業において前事業年度からの繰越案件が順調に進捗し、全社的な増収を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 港湾事業 | 92.7億円 | 87.7億円 |
| 地中事業 | 28.6億円 | 31.2億円 |
| 陸上事業 | 10.8億円 | 10.4億円 |
| その他 | 15.2億円 | 19.8億円 |
| 連結(合計) | 147.3億円 | 149.0億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益と資産売却等で借入返済を進める改善局面となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6.9億円 | 16.9億円 |
| 投資CF | -1.1億円 | 0.3億円 |
| 財務CF | -5.9億円 | -7.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も77.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ひたむきに防食技術を追求し、社会基盤の価値をまもり続けることにより、安全安心な日常を次代につなげます」というパーパスを掲げています。また、「いまある“価値”を次代へ!」をスローガンとし、インフラ施設の長寿命化に貢献することで持続可能な社会の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
経営方針の最重要項目に「安全第一」を掲げ、収益や納期・工期よりも常に安全を優先することを基本姿勢としています。また、働き方改革を通じて従業員間のつながりや協働の風土を培うべく、オフィス環境の整備やコミュニケーションの活性化に注力しています。
■(3) 経営計画・目標
創業75周年を迎える2026年度を初年度とする中期経営計画「26中計」を策定し、2051年の創業100周年に向けた長期成長軌道を描いています。また、内部留保を確保しつつ、配当性向70%を目途とした継続的な株主還元に努める方針を示しています。
・配当性向70%
■(4) 成長戦略と重点施策
「インフラの主治医」として、従来の工事売り切り型中心から、75年にわたり蓄積した防食データを活用した知識集約型中心のビジネスモデルへの転換を図ります。既存事業の堅実な業績確保に加え、洋上風力発電分野や橋梁RC分野といった新規事業の基盤形成、DX推進による業務効率化を重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
電気防食という専門性の高い分野において、多様な視点や価値観をもつ人材を広く採用・活用することを重要な経営課題と位置付けています。また、パーパスを基軸とした体系的な教育プログラムを展開し、基盤技術の育成と継承、従業員エンゲージメントの向上を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.9歳 | 15.9年 | 9,389,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 90.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の年平均採用比率(13.8%)、キャリア採用者の管理職登用比率(14.3%)、ハイブリッド車の導入率(51.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 公共投資への依存度
基幹事業である港湾関連施設の防食事業は主に官公庁を対象としており、公共投資の動向に大きく左右されます。設備の延命化需要は中長期的に追い風となるものの、需要の一時的な増減に対しては、コスト削減や生産性向上、新たな防食対象の掘り起こし等により対処しています。
■(2) 与信リスク
同社の防食工事は、ゼネコン等の建設業者が元請し、同社が下請けとなる形態が多くあります。小規模の建設業者が元請となる場合等には与信リスクが伴うため、社内与信管理システムの強化により、与信問題の発生を最小限に抑えるよう努めています。
■(3) 原材料の高騰
製品の主要原材料であるアルミニウム地金等の価格が上昇し、製品価格への転嫁が遅れた場合に売上利益が減少するリスクがあります。調査会等への情報提供を通じたタイムラグのない価格反映や、地金取扱商社からの情報収集による購入調整等でリスク軽減を図っています。
■(4) 海外・異業種からの事業参入
海外からの防食材料の流入や、国内異業種からの事業参入リスクが存在します。これに対し、調査から設計、製造、施工までを一貫して行う防食専業者として長年培った技術力と営業力、および継続的なコスト削減により競争力の維持を図っています。



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