オーテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 オーテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。建物の自動制御システム等を扱う環境システム事業と、管工機材の販売を行う管工機材事業を展開しています。2025年3月期は、環境システム事業における工事完成高の増加に加え、売上総利益率が改善したことなどが寄与し、大幅な増収増益を達成しました。


#記事タイトル:オーテック転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社オーテック の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オーテックってどんな会社?

1948年設立の建設設備関連企業。空調自動制御システムの設計施工と管工機材販売の2事業を展開し、高年収が特徴です。

(1) 会社概要

1948年に大石商事として設立され、建設用配管材料の販売を開始。1960年に計装部を設置し空調自動制御分野へ進出しました。1989年に現社名へ変更し、2004年にジャスダックへ上場。2022年には東証スタンダード市場へ移行しました。M&Aによりフルノ電気工業などを子会社化し、事業基盤を拡大しています。

現在の従業員数は連結530名、単体406名です。筆頭株主は、取引先でもある日本継手の退職給付信託口である日本カストディ銀行です。第2位は事業会社の光通信、第3位は投資会社のUH Partners 2となっており、事業関係者や投資家が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本カストディ銀行(りそな銀行再信託分・日本継手退職給付信託口) 20.05%
光通信 7.64%
UH Partners 2 7.48%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は市原伸一氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
市原 伸一 代表取締役社長 1980年入社。システム事業本部東京支店長、取締役管理本部長、常務取締役などを歴任し、2017年6月より現職。
曳沼 宏之 専務取締役 1979年入社。システム事業本部長などを経て、2019年4月より管工機材事業部・環境システム事業部統括として現職。
安野 進 取締役 1990年北海道拓殖銀行入行。1998年同社入社。経理部長、管理本部長などを経て、2021年4月より管理本部長として現職。
松尾 伸二 取締役 1987年入社。システム事業本部東北支店長、環境システム事業部東京支店長などを経て、2024年6月より環境システム事業部長として現職。
伊藤 晴史 取締役 1988年入社。管材事業本部札幌支店長、東京支店長などを経て、2019年4月より管工機材事業部長として現職。


社外取締役は、藤藁貴夫(元丸昌工業社長)、酒井昌弘(弁護士)、小池德子(公認会計士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「環境システム事業」および「管工機材事業」を展開しています。

(1) 環境システム事業

主にオフィスビルや工場、病院などの建物に対し、空調・熱源・電気などを最適にコントロールする自動制御システムの設計・施工・メンテナンスを行っています。また、放射冷暖房システムの施工や、自動制御機器の販売も手掛けています。

収益は、建物の施主や建設会社(ゼネコン)、サブコン等から受け取る工事代金や機器販売代金、保守契約に基づくメンテナンス料が柱です。運営は主にオーテックが行い、一部工事をフルノ電気工業などの連結子会社が請け負っています。

(2) 管工機材事業

衛生陶器、住設機器、冷暖房機器、バルブ、継手、鋼管などの建設設備資材を販売しています。幅広い商品ラインナップを持ち、必要な資材をワンストップで供給できる体制を整えています。

収益は、設備工事業者や二次卸売業者への商品販売代金となります。運営は主にオーテックが行い、一部商品の製造・販売を連結子会社のインターセントラルなどが担っています。また、ECサイト「O/tegaru(おてがる)」を通じた販売も行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に2025年3月期は、売上高が300億円を突破し、経常利益も前期比で倍増近くまで伸長しました。利益率も大幅に向上しており、収益性が高まっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 235億円 254億円 261億円 294億円 314億円
経常利益 21億円 20億円 20億円 22億円 42億円
利益率(%) 9.1% 8.0% 7.8% 7.4% 13.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 13億円 13億円 13億円 27億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に加え、売上総利益率が大きく改善したことで、各段階利益が大幅に増加しました。増収効果と利益率改善の相乗効果により、高い収益性を実現しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 294億円 314億円
売上総利益 74億円 92億円
売上総利益率(%) 25.2% 29.2%
営業利益 20億円 40億円
営業利益率(%) 6.9% 12.8%


販売費及び一般管理費のうち、その他が29億円(構成比56.4%)、従業員給料が13億円(同26.1%)を占めています。

(3) セグメント収益

環境システム事業は、新設・既設工事ともに好調で増収増益となり、全社利益を牽引しました。管工機材事業は、売上高は減少したものの、物流コスト低減などに努めた結果、黒字を確保しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
環境システム事業 166億円 200億円 31億円 48億円 24.0%
管工機材事業 128億円 114億円 -5億円 0.6億円 0.6%
調整額 -0.1億円 -0.0億円 -6億円 -8億円 -
連結(合計) 294億円 314億円 20億円 40億円 12.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は「健全型」です。本業の儲けである営業キャッシュ・フローがプラスで、投資および借入返済を賄っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 28億円 35億円
投資CF -8億円 -9億円
財務CF -2億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、「信頼(未来を支える共感)」「進取(革新的な未来への挑戦)」「創意(個々の成長と社会の豊かさの提供)」の3つを経営理念として掲げています。これらを通じて、建物環境の快適性、利便性を図り、持続可能な社会に貢献することを基本方針としています。

(2) 企業文化

同社は、創業100周年に向けた長期ビジョン「V100」の中で、「建物を快適に、未来をサステナブルに。」というミッションステートメントを掲げています。サステナブル建築への貢献や、専門商社としての機能充実、高い収益構造への改革を目指す姿勢を打ち出しています。

(3) 経営計画・目標

第4次中期経営計画(2025年度~2027年度)を策定しており、最終年度である2027年度の経営数値目標を設定しています。また、長期ビジョン「V100」では、10年後の財務目標も掲げています。

* 2027年度目標:売上高340億円、営業利益37億円、ROE10.0%以上
* 長期ビジョン目標:連結売上高450億円、連結営業利益45億円、ROE10%以上

(4) 成長戦略と重点施策

第4次中期経営計画では、「エンゲージメント強化」「DX推進による生産性向上」「コーポレートガバナンスの強化」を全社方針としています。環境システム事業ではソリューション提供による最適化やZEB推進、管工機材事業では提案営業による領域拡大やワンストップサービス体制の推進に注力します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「多様な人材がいきいきと働ける職場環境づくり」を掲げ、ヒューマンスキル研修や技術研修など階層別教育を充実させています。採用では新卒に加え経験者採用も実施し、女性技術者の採用も積極的に進めています。また、ワークライフバランスの向上や育児・介護との両立支援にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.6歳 16.0年 9,093,088円


※平均年間給与は、賞与、基準外賃金及び「株式付与ESOP信託」による給与課税額を含んでいます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.9%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.9%
男女賃金差異(正規雇用) 70.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 58.6%

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自然災害の発生によるリスク

予期しない大地震等の自然災害が発生した場合、同社グループの資産の毀損や人的・物的被害により、事業活動の継続が困難になり業績に影響を与える可能性があります。これに対し、各拠点での防災計画の整備等により影響低減に努めています。

(2) 感染症に関するリスク

新たな感染症等が拡大した場合、建設現場の一時停止等により事業活動が困難となり、業績に影響を与える可能性があります。衛生管理の徹底やテレワーク等の実施により、影響の低減に努めています。

(3) のれんの減損に係るリスク

M&A等により計上したのれんについて、対象会社の事業計画が未達となったり、事業環境の変化等により期待する成果が得られないと判断された場合、減損損失が発生し、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。事業計画の進捗把握によりリスク回避に努めています。

(4) 施工中の事故、災害リスク

環境システム事業では工事施工現場での作業を行うため、人的・物的事故や災害が発生する可能性があります。万一の事故に備えて各種保険に加入していますが、補償範囲を超える損害賠償義務を負う可能性も否定できません。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。