オーテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 オーテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オーテックは東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、建物の自動制御システムや放射冷暖房システムの設計・施工を担う環境システム事業と、管工機材事業を展開しています。直近の業績は、既設工事の売上増加や原価管理の徹底などが寄与し、売上高は約337億円、営業利益は約51億円と増収増益で推移しています。


※本記事は、株式会社オーテックの有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. オーテックってどんな会社?


建物の自動制御システムの設計や施工、管工機材の販売などを手がける環境システムの専門企業です。

(1) 会社概要


1948年に建設用配管材料の販売を目的として設立され、1960年に空調自動制御機器の販売および工事に進出しました。1989年に現在のオーテックへ商号を変更し、2004年に上場を果たしています。近年は同業他社の買収によりグループの施工・メンテナンス体制を強化し、事業の拡大を続けています。

現在の従業員数はグループ全体で573名、単体で439名です。筆頭株主は同社と事業上の関係がある日本継手で、第2位および第3位には投資事業を行う組合が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本継手 19.25%
UHPartners2投資事業有限責任組合 7.48%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は市原伸一氏が務めています。社外取締役の比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
市原伸一 代表取締役社長 1980年同社入社。システム事業本部東京支店長、管理本部長などを経て、2017年6月より現職。
曳沼宏之 専務取締役営業担当 1979年同社入社。システム事業本部長などを歴任し、子会社の取締役も兼務。2026年4月より現職。
安野進 取締役管理担当 常務取締役管理担当 1990年北海道拓殖銀行入行。1998年同社入社。経理部長や管理本部長を務め、2026年6月より現職。
松尾伸二 取締役環境システム事業部・管工機材事業部統括 常務取締役環境システム事業部・管工機材事業部統括 1987年同社入社。環境システム事業部長などを経て、2026年6月より現職。関係会社の取締役も兼任。
伊藤晴史 取締役管工機材事業部長 1988年同社入社。管材事業本部東京支店長を経て、2019年より管工機材事業部長。2024年6月より現職。
村瀬孝志 取締役環境システム事業部長 1995年同社入社。環境システム事業部東京支店長等を経て、2026年6月より現職。


社外取締役は、藤藁貴夫(元日本継手取締役)、酒井昌弘(弁護士・鍛治・酒井法律事務所共同代表)、小池德子(公認会計士小池事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「環境システム事業」および「管工機材事業」を展開しています。

環境システム事業


建物の自動制御システムや放射冷暖房システムの設計・施工・保守を行っており、新設および既設建物に対する計装工事、電気工事、管工事を請け負っています。

顧客からの工事請負代金や保守契約料が主な収益源です。運営は同社のほか、フルノ電気工業、道東オーテック、インターセントラルなどの子会社が行っています。

管工機材事業


設備工事業者や二次卸売業者に対して、衛生陶器、住設機器、冷暖房機器、産業機器、継手、バルブなどの販売を行っています。

商品の販売代金が主な収益源となります。運営は同社を中心に、インターセントラルやオーテック環境などのグループ会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高・利益ともに拡大傾向にあります。特に直近2期間は、既設工事の増加や提案力の強化などが奏功し、売上高が着実に成長する一方で利益水準が大幅に向上しており、高収益体質への転換が進んでいることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 254億円 261億円 294億円 314億円 337億円
経常利益 20億円 20億円 22億円 42億円 54億円
利益率(%) 8.0% 7.8% 7.4% 13.4% 15.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 12億円 13億円 29億円 36億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。売上総利益率は29.2%から31.3%に改善し、営業利益率も12.8%から15.1%へと大きく向上しており、原価管理の徹底や業務効率化の成果が現れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 314億円 337億円
売上総利益 92億円 106億円
売上総利益率(%) 29.2% 31.3%
営業利益 40億円 51億円
営業利益率(%) 12.8% 15.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が14億円(構成比26%)を占めています。また、環境システム事業の完成工事原価では、外注費が45億円(同39%)、経費が38億円(同32%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である環境システム事業は、DX推進や現場支援体制の整備により既設工事が伸び、増収および大幅な増益を達成しました。一方、管工機材事業は販売力の強化で増収となったものの、仕入原価上昇分の価格転嫁が追いつかず営業赤字となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
環境システム事業 200億円 217億円 48億円 61億円 28.0%
管工機材事業 114億円 120億円 0.6億円 -0.8億円 -0.7%
連結(合計) 314億円 337億円 40億円 51億円 15.1%


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も67.5%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 35億円 46億円
投資CF -9億円 -12億円
財務CF -6億円 -14億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「信頼(未来を支える共感)」「進取(革新的な未来への挑戦)」「創意(個々の成長と社会の豊かさの提供)」の3つの経営理念を掲げています。関係先との誠実なコミュニケーションで信頼を築き、高い技術力で価値を創造し、会社の成長を通じて社会の豊かさに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


経営理念にもある「進取」の姿勢を原動力として、新たなアイデアや革新的なアプローチを常に追求しています。また、多様な人材がいきいきと働ける職場環境づくりを重視し、高い技術力や倫理観、チャレンジ精神を発揮できる自律した人材の育成に注力しています。

(3) 経営計画・目標


2034年3月期を対象とする長期ビジョン「長期ビジョンV100」を掲げています。

* 連結売上高 450億円
* 連結営業利益 45億円
* ROE 10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


サステナブル建築に貢献する事業の推進や、専門商社としての機能充実を通じた高収益構造への改革を進めています。環境システム事業ではカーボンニュートラルに貢献するサービスやZEB推進に取り組み、管工機材事業では提案営業の強化とワンストップサービスの推進に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


意欲と能力を伸ばす機会を提供し、技術力とチャレンジ精神を発揮する自律した人材の育成を方針としています。文理を問わない新卒採用を基本としつつ女性技術者の採用も強化し、段階的な研修や現場実践を通じて早期戦力化を図るとともに、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.9歳 15.3年 9,119,836円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.8%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 65.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 66.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 60.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 不採算工事発生によるリスク


工事途中の設計変更や資材・労務費の高騰などにより、不採算工事が発生するリスクがあります。物件の完工時期や予算金額を精査した受注活動を行うことで、リスクの回避に努めています。

(2) 工事原価総額の見積りに係るリスク


長期にわたる工事において、施工条件の変更や資機材価格の高騰などにより、事前の見積り額が変動するリスクがあります。適時に案件ごとの見積原価や工事期間の見直しを実施し、影響の最小化を図っています。

(3) 取引先の信用リスク


得意先の経営状態悪化などにより、売上債権の貸倒れが発生するリスクがあります。これに対して同社は、与信管理を徹底することで信用リスクの回避と低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。