日本電技 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電技 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証スタンダード市場に上場し、空調計装エンジニアリングを主力事業としています。オフィスビルや工場等の自動制御システムの設計・施工で強みを持ち、アズビル製品の特約店としても知られます。直近の業績は、大型新設案件の計上や収益性向上により、売上高431億円、経常利益93億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、日本電技株式会社 の有価証券報告書(第66期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本電技ってどんな会社?


同社は、空調自動制御システムの設計・施工・保守を一貫して行う「空調計装エンジニアリング」のパイオニア企業です。

(1) 会社概要


同社は1959年9月に空調計装工事の設計施工および自動制御機器の販売を目的として設立され、翌月には山武ハネウエル計器(現アズビル)と特約店契約を締結しました。2004年12月にジャスダック証券取引所へ上場し、2020年2月には食品工場向けシステムを手掛ける連結子会社ジュピターアドバンスシステムズを設立しました。2022年4月の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しています。

同社グループの従業員数は連結939名、単体903名です。大株主の構成は、筆頭株主が従業員持株会であり、次いで社長の島田良介氏、個人の永田健二氏と続きます。従業員や経営陣が主要株主となっており、経営への参画意識が高い資本構成といえます。

氏名 持株比率
日本電技従業員持株会 8.71%
島田 良介 6.54%
永田 健二 4.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は島田良介氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
島田 良介 代表取締役社長 日商岩井入社、日商岩井米国会社出向を経て日本電技に入社。常務取締役などを歴任し、2009年6月より現職。
眞明 良信 取締役常務執行役員関係会社担当 日本電技に入社後、執行役員、上席執行役員、大阪支店長、事業本部長などを経て、2020年6月より現職。
田村 春夫 取締役上席執行役員事業本部営業担当 山武ハネウェル入社、アズビル執行役員を経て日本電技に入社。上席執行役員、横浜支店長などを経て、2021年6月より現職。
小林 義明 取締役執行役員企画管理本部長兼総務部長 富士銀行入行、みずほ銀行審査第一部長などを経て日本電技に入社。常勤顧問を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、河村一二(元第一工業製薬常勤監査役)、岸本史子(弁護士)、工藤道弘(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「空調計装関連事業」および「産業システム関連事業」を展開しています。

(1) 空調計装関連事業


オフィスビル、工場、病院、学校などの非居住用建築物を対象に、空調自動制御システムの設計、施工、保守、点検を行っています。新築建物向けの「新設部門」と、既存建物の改修や保守を行う「既設部門」に分かれ、自動制御盤やセンサーなどの機器販売も手掛けています。

収益は、顧客である施主や建設会社等から受け取る工事代金および機器販売代金が中心です。運営は主に日本電技が行っており、アズビルの特約店として同社製品を活用したエンジニアリングサービスを提供しています。

(2) 産業システム関連事業


主に工場や搬送ライン向けの計装工事や各種自動制御工事を手掛けています。特に食品工場の生産・搬送ライン向けには、FA機械の据付や保守、生産管理システムの販売・保守などを行っています。また、調節計や工業用バルブなどの制御機器販売も行っています。

収益は、工場を持つエンドユーザーやプラントメーカー等からの工事代金、システム販売・保守料などから構成されます。運営は日本電技および連結子会社のジュピターアドバンスシステムズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高、利益ともに右肩上がりの傾向にあります。特に直近の2025年3月期は売上高が430億円を超え、利益率も20%を超える高い水準を記録しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 341億円 317億円 343億円 389億円 431億円
経常利益 47億円 41億円 46億円 63億円 93億円
利益率(%) 13.7% 13.1% 13.4% 16.3% 21.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 33億円 31億円 32億円 47億円 64億円

(2) 損益計算書


前期から当期にかけて、売上高は約42億円増加し、営業利益も約29億円増加しました。売上総利益率および営業利益率が大きく改善しており、収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 389億円 431億円
売上総利益 145億円 187億円
売上総利益率(%) 37.4% 43.3%
営業利益 62億円 91億円
営業利益率(%) 16.1% 21.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が45億円(構成比47%)を占めており、人的リソースへの投資が中心です。売上原価については、外注費や材料費が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


主力の空調計装関連事業は、新設・既設ともに好調で大幅な増収増益となりました。特に利益率が改善しています。産業システム関連事業は減収となりましたが、利益面では増益を確保し、利益率が向上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
空調計装関連事業 349億円 394億円 97億円 135億円 34.4%
産業システム関連事業 40億円 37億円 3億円 4億円 11.6%
調整額 - - -37億円 -48億円 -
連結(合計) 389億円 431億円 62億円 91億円 21.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 43億円 81億円
投資CF -21億円 -43億円
財務CF -21億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「高い目標に挑戦する」「お客様に満足を提供する」「広く社会に貢献する」を経営理念としています。創業以来、「空調計装エンジニアリング会社」のパイオニアとして培った技術力と顧客基盤を活かし、省エネ化や快適化された社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は長期経営指針として「ND For The Next『計装』の総合力で、未来を拓く」を制定しています。「New Design(新しい構想、新しい企画、新しい設計)」で顧客に価値を提供し、企業として成長し、永続的な企業を目指すという価値観を掲げています。また、「確かな計装力で、想いをカタチに」をミッションとしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年度に向けた長期経営指針の第2フェーズとして、成長基盤の拡大と生産性の向上に取り組んでいます。経営指標としては連結ROE(自己資本利益率)を重視しています。

* 2026年3月期 売上高:435億円
* 2026年3月期 営業利益:92億円
* 2026年3月期 当期純利益:64.5億円
* 2026年3月期 連結ROE:15.5%

(4) 成長戦略と重点施策


「既存事業の強化」「拡大戦略の実行」「ND企業文化の成長」を成長戦略課題として掲げています。空調計装では中長期的な全社最適と環境ソリューションの推進、産業システムでは一括受注の推進やスマート工場領域の拡大を目指しています。また、DX推進や人的資本経営にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「2030年度単体1,100名体制」を目標に、新卒・中途採用を強化しています。人材育成においては、新設した「電技アカデミー」での通年研修により早期育成と資格取得を推進しています。また、新人事制度の導入や健康施策を通じたウェルビーイング経営を推進し、活力ある組織づくりを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.2歳 17.2年 10,020,054円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.9%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.3%
男女賃金差異(正規) 71.7%
男女賃金差異(非正規) 66.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒入社3年以内定着率(86.9%)、障がい者雇用率(2.7%)、有給休暇取得率(76.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の仕入先への依存について


同社はアズビルと空調自動制御機器等の仕入れに関する特約店契約を結んでおり、長年にわたり取引関係にあります。仕入高の約6割をアズビル製品が占めており、高い依存度となっています。仕入れが滞った場合、同社の業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術者や協力会社の確保・育成について


エンジニアリング技術を実践できる技術者や協力会社の確保が事業継続に不可欠です。人材確保が困難な場合、受注機会の減少など業績に影響を及ぼす可能性があります。建設業の残業上限規制への対応や少子高齢化による人手不足も課題であり、採用強化や教育制度の充実に取り組んでいます。

(3) 建設資材価格の変動リスク


同社グループが取り扱う電設資材等の価格が、素材相場の変動などにより高騰するリスクがあります。これらのコスト上昇分を請負金額に十分に転嫁できない場合、利益率の低下など業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。