※本記事は、日本電技株式会社の有価証券報告書(第67期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 日本電技ってどんな会社?
空調自動制御などの空調計装関連事業および産業システム関連事業を展開する総合計装エンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
日本電技は1959年に空調計装工事の設計施工および自動制御機器の販売を目的に設立されました。1998年に現在のアズビルと特約店契約を締結して事業を拡大し、2004年にジャスダック証券取引所へ株式を上場しました。近年は2020年のジュピターアドバンスシステムズ設立など事業領域を拡大しています。
現在の同社グループは、連結従業員数989名、単体では954名の体制で事業を運営しています。大株主の構成をみると、筆頭株主は日本電技従業員持株会で、第2位は代表取締役社長の島田良介氏、第3位は個人の永田健二氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本電技従業員持株会 | 8.29% |
| 島田 良介 | 6.56% |
| 永田 健二 | 4.97% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は島田良介氏です。社外取締役の比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 島田 良介 | 代表取締役社長 | 1991年に日商岩井へ入社後、2006年に同社へ入社しました。2007年に常務取締役へ就任し、2009年より現職。 |
| 岡崎 功 | 取締役上席執行役員事業本部長 | 1989年に同社へ入社しました。2020年に執行役員東京本店長へ就任し、2025年に事業本部長および取締役上席執行役員となり現職。 |
| 小林 義明 | 取締役上席執行役員企画管理本部長兼経営企画部長兼電技アカデミー学長 | 1992年に富士銀行(現みずほ銀行)へ入行し、支店長などを経て2024年に同社へ入社。2026年より現職。 |
| 松浦 勝博 | 取締役上席執行役員技術本部長 | 1984年に東芝エンジニアリングへ入社後、2000年に同社へ入社。2022年に執行役員事業本部副本部長へ就任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、河村一二(元第一工業製薬常務取締役)、岸本史子(あずさ総合法律事務所弁護士)、工藤道弘(工藤公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「空調計装関連事業」および「産業システム関連事業」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。
■空調計装関連事業
オフィスビル、工場、病院、研究所などの非居住用建築物を対象に、新設や改修に伴う空調自動制御システムの設計や施工、保守を行う事業です。また、自動制御盤やセンサーなどの制御機器の販売も行っています。建築物のライフサイクルに合わせて、新設部門と既設部門に分けて事業を展開しています。
顧客である建設会社や施設オーナーから、工事の請負代金やメンテナンス費用、機器の販売代金を受け取る収益モデルです。事業の運営は主に日本電技が行っています。
■産業システム関連事業
主に工場や各種搬送ライン向けの計装工事、各種自動制御工事を手掛ける事業です。中でも食品工場向けに各種FA機械の据付や保守、生産管理システムの販売などを展開するほか、調節計や流量計、工業用バルブなどの制御機器類も販売しています。
工場などの顧客から、システム構築や工事の請負代金、機器の販売代金を受け取る収益モデルです。事業の運営は日本電技が行うほか、生産管理システム分野はジュピターアドバンスシステムズが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績をみると、旺盛な建設需要や再開発案件の獲得などにより、売上高は右肩上がりで成長しています。利益面でも、収益性を意識した受注戦略や利益率の改善が寄与し、経常利益および当期純利益は連続して増益を達成しており、堅調な業績拡大が続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 317億円 | 343億円 | 389億円 | 431億円 | 464億円 |
| 経常利益 | 41億円 | 46億円 | 63億円 | 93億円 | 121億円 |
| 利益率(%) | 13.1% | 13.4% | 16.3% | 21.6% | 26.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 31億円 | 32億円 | 47億円 | 64億円 | 84億円 |
■(2) 損益計算書
空調計装関連事業での既設工事の増加などにより売上高が増加しました。また、工事採算の改善効果により売上総利益が拡大し、販売費及び一般管理費の増加を吸収した結果、営業利益も大きく伸長しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 431億円 | 464億円 |
| 売上総利益 | 187億円 | 220億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.3% | 47.4% |
| 営業利益 | 91億円 | 118億円 |
| 営業利益率(%) | 21.2% | 25.5% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が45億円(構成比45%)、法定福利費が7億円(同6%)、地代家賃が6億円(同6%)を占めています。また、売上原価の主な内訳は、完成工事原価が大部分を占めています。
■(3) セグメント収益
空調計装関連事業は、新設工事が一部反動減となったものの、事務所や工場向け物件の既設工事が増加し、全体として増収となりました。また、産業システム関連事業も電気工事や生産管理システムの受注が好調に推移し、両セグメントで売上を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 空調計装関連事業 | 394億円 | 417億円 |
| 産業システム関連事業 | 37億円 | 47億円 |
| 連結(合計) | 431億円 | 464億円 |
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を投資や借入金の返済・株主還元に充てる「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 81億円 | 110億円 |
| 投資CF | -43億円 | -58億円 |
| 財務CF | -16億円 | -24億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「高い目標に挑戦する」「お客様に満足を提供する」「広く社会に貢献する」を経営理念とし、総合計装エンジニアリング企業として省エネ化や快適化された社会の実現を目指しています。また、経営ビジョン「New Design For The Next 「計装」の総合力で、未来を拓く」を制定し、新しい構想や設計で顧客に価値を提供して企業として永続的に成長する方針を掲げています。
■(2) 企業文化
「ND企業文化の成長」を成長戦略の課題に掲げ、人材の主体的な貢献意欲を高めるとともに、ウェルビーイング経営や働きやすい職場環境づくりを重視しています。また、全てのステークホルダーの期待に応える企業として成長するため、協力会社との共存共栄を目指し、積極的な情報開示やガバナンスの徹底など透明性の高い経営を重んじる文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2027年3月期の業績目標および全社の目標経営指標として以下の数値を掲げています。
・売上高:515億円
・営業利益:125億円
・当期純利益:87億円
・連結ROE:18.4%
■(4) 成長戦略と重点施策
長期経営指針に基づき、「既存事業の強化」「拡大戦略の実行」「ND企業文化の成長」を成長戦略課題として掲げています。空調計装関連事業では新設工事と既設工事の連携で安定的な収益確保を図り、DX推進による生産性向上を目指します。産業システム関連事業ではスマート工場提案や中央監視システムの受注を推進し、事業領域の拡大に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材は最も重要な資本であると位置づけ、「人材確保」「人材育成」「人材活躍」の3つを方針に掲げています。多様な人材を通年採用するとともに、「電技アカデミー」を通じた早期育成や資格取得支援でプロフェッショナルを育成します。また、働きやすい職場づくりに向けてウェルビーイング経営や健康経営を推進し、従業員のエンゲージメント向上に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.0歳 | 16.9年 | 9,466,928円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 59.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒入社3年以内定着率(88.6%)、障がい者雇用率(2.6%)、年次有給休暇取得率(81.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設工事の安全衛生・品質管理
建築現場での計装工事やメンテナンスにおいて、人的・物的事故や労働災害、施工後の不具合が発生した場合、多額の補修費用の負担や損害賠償義務を負う可能性があります。同社は関連する規程を整備し、品質管理部による指導や安全パトロールを実施してリスク低減に努めています。
■(2) 特定の仕入先への依存度
同社はアズビルと空調自動制御機器等の特約店契約を結んでおり、同社からの仕入高が全体の約65%を占めるなど依存度が高くなっています。万が一、仕入れが滞る事態が生じた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は良好な関係維持に努めるとともに、事業領域の拡大により影響度の軽減を図っています。
■(3) 建設資材価格の変動リスク
同社グループが取り扱う電設資材等の価格が社会情勢の変化により高騰し、それを請負金額に適切に反映させることが困難な場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、資材の特性に応じた在庫管理や代替品を含む調達力の強化を図り、リスクの軽減に努めています。



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