秋川牧園 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

秋川牧園 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の農業企業です。山口県を拠点に、抗生物質や抗菌剤を使用しない若鶏・卵・牛乳・野菜等の生産から加工・販売までを一貫して手掛けています。当期の業績は、売上高が過去最高を更新して増収となりましたが、飼料価格の高騰や戦略的投資の負担増により大幅な減益となりました。


※本記事は、株式会社秋川牧園 の有価証券報告書(第46期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 秋川牧園ってどんな会社?


山口県を拠点に、無投薬飼育の若鶏や卵、牛乳、加工食品等を生産し、生協や個人宅へ届ける農業企業です。

(1) 会社概要


1979年に秋川食品として設立され、健康鶏卵の製造販売を開始しました。1993年に現社名へ変更し、1997年に株式を店頭登録(後のJASDAQ、現東証スタンダード)しました。その後、株式会社チキン食品や有限会社菊川農場などの子会社化を通じて生産体制を強化し、2024年には中国の秋川牧園(常州)農業有限公司を完全子会社化しています。

同社グループは連結従業員332名、単体263名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は代表取締役社長の秋川正氏で、第2位は元取締役の秋川實氏、第3位は従業員持株会となっており、経営陣と従業員が主要な株式を保有する安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
秋川 正 21.50%
秋川 實 10.39%
秋川牧園職員持株会 6.41%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は秋川正氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
秋川 正 代表取締役社長 1989年同社入社。常務取締役、専務取締役を経て、2005年より現職。ゆめファーム代表取締役社長や秋川牧園(常州)農業有限公司董事長も兼務。
田村 次郎 取締役生産部長 1983年山口トヨペット入社。同社第一事業部長などを経て、2006年より現職。チキン食品および篠目三谷の代表取締役社長も兼務。
河村 洋亮 取締役製造部長 1995年同社入社。2015年に製造部長となり、2024年より現職。
原田 良人 取締役経営管理部長 1999年同社入社。2014年に経営管理部長となり、2024年より現職。


社外取締役は、内田恭彦(龍谷大学政策学部教授)、小野典子(株式会社アデリー代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「生産卸売事業」および「直販事業」を展開しています。

(1) 生産卸売事業

若鶏、加工食品、鶏卵、牛乳などの生産および販売を行う事業です。同社や協力農場で生産された農畜産物を、子会社の株式会社チキン食品などで加工し、生協や量販店、小売店向けに提供しています。中国においては子会社が若鶏の生産・販売を行っています。

収益は、主に生協や量販店等の取引先への製品販売代金から得ています。運営は、同社のほか、有限会社菊川農場、株式会社チキン食品、有限会社篠目三谷、有限会社むつみ牧場、秋川牧園(常州)農業有限公司などが担っています。

(2) 直販事業

生産卸売事業で製造された製品や、外部から仕入れたこだわりの商品を、会員(個人消費者)へ直接販売する事業です。安心・安全な食品を求める消費者に向けた宅配サービスを展開しています。

収益は、会員である個人消費者からの商品購入代金から得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では経常利益および当期純利益が減少傾向にあります。特に直近では、飼料価格の高騰やコスト増の影響を受け、利益率は低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 64億円 66億円 71億円 74億円 80億円
経常利益 2.9億円 2.4億円 2.4億円 1.5億円 0.5億円
利益率(%) 4.5% 3.6% 3.4% 2.1% 0.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.7億円 1.6億円 1.6億円 1.0億円 0.3億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業損益は若干のマイナスとなりました。売上総利益率は改善しているものの、コスト増が利益を圧迫している状況が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 74億円 80億円
売上総利益 17億円 19億円
売上総利益率(%) 23.6% 24.0%
営業利益 0.1億円 -0.0億円
営業利益率(%) 0.2% -0.0%


販売費及び一般管理費のうち、運賃が5.9億円(構成比31.0%)、給与手当が4.1億円(同21.4%)を占めています。物流コストや人件費の負担が大きい構造となっています。

(3) セグメント収益


生産卸売事業は、製品の値上げや販売増により増収増益となりました。一方、直販事業は会員増や注文率改善で増収となったものの、新物流センターの償却負担や人件費増により減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
生産卸売 57億円 63億円 4億円 4億円 6.6%
直販 17億円 17億円 1億円 0.3億円 1.8%
その他(調整額等) 0億円 0億円 -4億円 -4億円 -
連結(合計) 74億円 80億円 0.1億円 -0.0億円 -0.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持しており、本業で現金を獲得できています。投資活動はマイナスで、設備投資等を継続しています。財務活動はマイナスで、借入金の返済等を進めています。全体として、本業の利益で借入返済を行いつつ投資も賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4億円 7億円
投資CF -11億円 -5億円
財務CF 6億円 -0.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は30.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「持続可能で真に豊かな社会への変革に貢献します」「理想の農業を追求します」「一人一人の主体性を起点として、活力溢れる会社をつくります」という3つの企業理念を掲げています。食の健康と安全を大切にする消費者にとってのNo.1ブランドを目指し、価値創造に取り組んでいます。

(2) 企業文化


1970年代から先駆的に「食の安心・安全」に取り組み、農薬や化学肥料、抗生物質等に頼らない食品づくりを推進しています。有機農業や地域循環、農業の活性化など、サステナビリティを重視する価値観が根付いており、地球環境問題や地方創生といった社会課題の解決にも意欲的です。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画において、2033年3月期に向けた数値目標を設定しています。持続的な成長を実現し、ブランド力と事業競争力を高めることを目指しています。

* 売上高:120億円
* 売上高経常利益率:4%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画の7つの基本戦略を柱に事業を推進しています。人財力やブランド力の強化、事業構造の変革に注力し、厳しい事業環境下でも成長を目指す方針です。

* 人財戦略:社員が安心してチャレンジできる環境づくり、人財マネジメントの強化。
* ファン化戦略:情報発信強化によるブランド力の向上。
* 鶏肉・冷食事業の変革:機械化・IT化、商品開発強化による成長。
* 直販事業の強化:ユーザビリティ改善、会員限定商品開発などによる競争力強化。
* 中国鶏肉事業の基盤確立:販路拡大、品質管理強化による事業基盤の構築。
* サステナビリティ戦略:脱炭素、脱プラ、「土の分野」の事業化への挑戦。
* 食の信頼:品質・生産管理の強化と生産性向上。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長の鍵となる「人財力」を高めるため、多様な個性が活きる環境づくりを推進しています。成長環境・モチベーション環境の整備、事業成長に必要な人財の確保、そして一人一人が活き活きと働ける会社づくりを基本方針としています。具体的には、待遇改善、チャレンジしやすい組織づくり、採用力強化、MBO導入等のマネジメント強化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.5歳 13.1年 4,993,000円


※平均年間給与は、税込支払給与額であり、基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 12.5%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 60.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 85.8%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 97.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 飼料原料価格の変動

飼料原料価格は、相場や為替、世界情勢により大きく変動します。飼料安定基金制度による補填があるものの、価格高騰が長期化した場合にはコストが上昇し、製品価格への転嫁が必要となる可能性があります。

(2) 鶏病の発症および移動制限措置

鳥インフルエンザ等の家畜伝染病が発生した場合、生産・販売の減少等の影響を受ける可能性があります。自社農場での発症だけでなく、近隣農場での発症による行政の移動制限措置や風評被害によっても、業績に影響が及ぶリスクがあります。

(3) 特定取引先への依存

生活協同組合に対する売上構成比が高く、特にグリーンコープ生活協同組合連合会および生活クラブ事業連合生活協同組合連合会への依存度が高い状況です。これら主要取引先の業績動向が、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。