※本記事は、株式会社秋川牧園の有価証券報告書(第47期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 秋川牧園ってどんな会社?
秋川牧園は、農薬や化学添加物に頼らない安全な食品の生産卸売と直販を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1979年に無農薬無投薬の健康安全な自然食品の製造販売を目的に設立されました。1981年に健康若鶏の無投薬飼育技術を開発し、1993年に秋川牧園に商号変更しました。1997年に日本証券業協会に株式を店頭登録し、2022年の市場見直しを経て現在はスタンダード市場に上場しています。
現在の従業員数は連結348名、単体273名です。筆頭株主は同社代表取締役社長の秋川正氏で、第2位は秋川實氏、第3位には秋川牧園職員持株会が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 秋川 正 | 21.50% |
| 秋川 實 | 10.40% |
| 秋川牧園職員持株会 | 6.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は秋川正氏が務めており、社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 秋川 正 | 代表取締役社長 | 1989年入社。経理部長、経営企画室長等を歴任後、2005年より現職。2024年秋川牧園(常州)農業有限公司董事長就任。 |
| 田村 次郎 | 取締役生産部長 | 1988年入社。食鶏工場長、第一事業部長等を歴任。2005年チキン食品代表取締役社長、2006年より現職。 |
| 河村 洋亮 | 取締役製造部長 | 1995年入社。2015年製造部長を経て、2024年より現職。2026年チキン食品代表取締役社長就任。 |
| 原田 良人 | 取締役経営管理部長 | 1999年入社。2014年経営管理部長を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、内田恭彦(元山口大学経済学部教授)、小野典子(元アデリー代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「生産卸売事業」および「直販事業」を展開しています。
■(1) 生産卸売事業
同社グループは、農薬や抗生物質などの化学物質に頼らない安全な食肉、加工食品、鶏卵、牛乳等を生産し、主に産直型の生協、量販店、小売店向けに卸売販売を行っています。消費者の食の安全・安心への関心の高まりを背景に、質の高い食品を提供しています。
収益は製品の卸売による販売代金から得ています。事業の運営は同社のほか、若鶏の生産を担う有限会社菊川農場や秋川牧園(常州)農業有限公司、鶏卵生産の有限会社篠目三谷、牛乳生産の有限会社むつみ牧場など複数の子会社が連携して行っています。
■(2) 直販事業
生産卸売事業などで製造された自社製品や、外部の取引先から仕入れたこだわりの食品、生活雑貨などを、全国の個人会員向けに直接販売して届けるサービスを展開しています。食の安全を求める消費者のニーズに直接応える事業です。
収益は、会員である消費者からの商品購入代金として受け取る販売収益から成り立っています。この直販事業の運営は、主に同社が主体となって行い、商品の企画から顧客への配送までのプロセスを自社システムで一貫して管理しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は継続的に成長しており、直近5年間で着実な増収傾向を示しています。一方で利益面は、原材料や物流コストの上昇などの影響を受けて変動があり、直近では減損損失の計上により当期利益が赤字に転じていますが、経常利益ベースでは回復傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 66億円 | 71億円 | 74億円 | 80億円 | 83億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 2億円 | 2億円 | 0.5億円 | 2億円 |
| 利益率(%) | 3.6% | 3.4% | 2.1% | 0.6% | 2.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 1億円 | 0.9億円 | 0.4億円 | -0.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、製品の価格改定効果などにより売上総利益率も改善しています。前期は営業損失を計上していましたが、当期はコスト管理と販売増により営業利益を確保し、本業の収益性が回復する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 80億円 | 83億円 |
| 売上総利益 | 19億円 | 21億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.0% | 25.3% |
| 営業利益 | - | 1億円 |
| 営業利益率(%) | - | 1.7% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が6億円(構成比31%)、給与手当が4億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
生産卸売事業は、冷凍加工食品の販売好調や製品価格改定の効果により増収を牽引しています。一方、直販事業は消費者の節約志向の高まりなどにより新規会員数が減少し、やや減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 生産卸売事業 | 63億円 | 66億円 |
| 直販事業 | 17億円 | 17億円 |
| 連結(合計) | 80億円 | 83億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | 6億円 |
| 投資CF | -5億円 | -4億円 |
| 財務CF | - | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)と、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率のいずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「私たちは持続可能で真に豊かな社会への変革に貢献します」「私たちは理想の農業を追求します」「私たちは一人一人の主体性を起点として、活力溢れる会社をつくります」の3つの企業理念を掲げ、食の健康と安全を大切にする消費者にとってのNO.1ブランドを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは1970年代から先駆的に取り組んできた「食の安心・安全」を共通の価値観として重視しています。多様な人財の個性と主体性を尊重し、一人一人が活き活きと働くことのできる会社をつくることを目指す文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
持続的な成長に向け、2033年3月期までに売上高と経常利益率に関する数値目標を掲げ、価値創造に積極的に取り組んでいます。
* 2033年3月期売上高:120億円
* 2033年3月期経常利益率:4%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の7つの基本戦略(人財戦略、ファン化戦略、鶏肉・冷食事業の変革、直販事業の強化、中国鶏肉事業の基盤確立、サステナビリティ戦略、食の信頼)を推進しています。人手不足やコスト上昇に対応するため、機械化・IT化を進め、持続的な成長に向けてブランド力と事業競争力を高めていきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
成長の原動力として人財力を重視し、「成長環境・モチベーション環境の優れた会社」「事業が成長するための人財豊富な会社」「その人財がしっかりと活きる会社」を基本方針としています。待遇改善や採用力の強化に加え、資格支援制度などでチャレンジしやすい環境づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.3歳 | 13.5年 | 5,002,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 85.6% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 107.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 飼料原料価格の変動
飼料原料価格は作況や為替変動、世界的な需要動向により大きく変動します。価格高騰時には安定基金制度による補填があるものの、高騰が長期化する場合はコスト上昇が避けられず、製品価格への転嫁が必要となり業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 鳥インフルエンザ等の発症と行政措置
高病原性鳥インフルエンザなどが同社グループの農場や近隣農場で発生した場合、行政による生産物の移動制限措置や風評被害が生じる恐れがあります。万全の防疫対策を講じていますが、生産・販売の減少により影響を受ける可能性があります。
■(3) 特定取引先への依存
同社は食の安心・安全を共有する生活協同組合との取引が多く、売上構成比が高い状況にあります。互恵的な関係を築いていますが、グリーンコープや生活クラブなど主取引先の業績動向によっては、同社の業績も影響を受ける可能性があります。



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