シキボウ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シキボウ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するシキボウは、繊維製品の製造販売を主力に、産業資材、機能材料、不動産・サービス事業を展開しています。直近の業績トレンドは、事業譲受などの寄与により売上高が増収となった一方、先行投資や関連費用の発生により営業利益および経常利益は減益、最終利益は増益となっています。


※本記事は、シキボウの有価証券報告書(第213期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シキボウってどんな会社?


繊維製品の製造販売を祖業とし、長年培った技術を活かして産業資材や機能材料など多角的に事業を展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1892年に設立された有限責任伝法紡績会社を起源とし、繊維事業を中心に成長を遂げてきました。1949年には東京証券取引所などに株式を上場しています。その後、事業の多角化を進め、産業資材や機能材料、不動産・サービス分野へと領域を広げてきました。近年は海外での生産・販売網の拡充や事業譲受を積極的に行っています。

現在の体制は、連結従業員数が2,306名、単体従業員数が674名となっています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位には従業員の福利厚生や資産形成を目的とした従業員持株会が名を連ねています。第3位も信託銀行となっており、機関投資家の保有比率が高い構成です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.20%
シキボウ従業員持株会 4.67%
日本カストディ銀行(信託口) 2.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は鈴木睦人氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
尻家正博 代表取締役会長 同社に入社後、総務部長や執行役員コーポレート部門経営戦略部長兼財務経理部長などを歴任。代表取締役社長執行役員を経て現職。
鈴木睦人 代表取締役社長執行役員 同社に入社後、海外子会社の代表取締役社長や繊維部門開発技術部長兼グローバル事業推進室長などを歴任し、現職。
竹田広明 取締役(常勤監査等委員) 同社に入社後、総務部長や執行役員複合材料部部長などを経て、取締役上席執行役員コーポレート部門長兼経営管理部長を歴任し、現職。


社外取締役は、野邊義郎(監査法人だいち代表社員)、宇野保範(学校法人大阪青山学園理事長)、細田祥子(弁護士法人淺田法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、繊維、産業資材、機能材料、不動産・サービスの各報告セグメントで事業を展開しています。

繊維


同セグメントでは、糸、布、ニットなどの繊維製品や二次製品の製造販売を行っています。主に日本およびアジア市場の顧客に対して、衣料用やユニフォーム用、寝装分野など幅広い用途に向けた高品質な製品を提供しており、サステナブル素材を使用した高付加価値商品の開発や販売にも注力しています。

収益源はこれらの繊維製品や加工品の販売代金から得ています。製品の製造および販売は、同社を中心に、シキボウ江南、新内外綿、マーメイドテキスタイルインダストリーインドネシアなどの国内外の子会社が連携して運営を行っています。

産業資材


同セグメントでは、製紙用ドライヤーカンバスやフィルタークロスなどの工業用品の製造販売を行っています。製紙会社向けのカンバス製品のほか、環境改善に寄与する水処理用や大気中のダスト集塵用のフィルタークロス、空気清浄装置などを提供し、国内の官公需や海外市場でも展開しています。

収益源は産業用資材や空気清浄装置などの販売代金から得ています。製品の製造および販売は同社のほか、敷島カンバス、東洋空気調和、敷島工業織物(無錫)有限公司などの子会社が担当しており、製品の開発からメンテナンスまでの一貫したサービスを提供しています。

機能材料


同セグメントでは、食品添加物や化成品のほか、航空機関連部品や複合材料などの製造販売を行っています。食品・化成品事業では食品用増粘安定剤などを提供し、複合材料事業では航空・宇宙分野やエネルギーインフラ分野向けに軽量化や耐熱性に優れた繊維強化複合材料を開発・提供しています。

収益源はこれらの食品添加物や化成品、各種複合材料の販売代金から得ています。食品・化成品事業は主にシキボウ堺が製造を担い、複合材料事業は同社の中央研究所などを拠点として、それぞれの製品の製造から販売までをグループ企業間で協力しながら運営しています。

不動産・サービス


同セグメントでは、保有する不動産の賃貸、宿泊施設等向けのリネンサプライ業、および繊維製品などの物流配送業を展開しています。大阪や兵庫、高知などで商業施設やオフィスビルを賃貸し、ホテルや病院、介護施設向けに高品質なリネン品のリースおよびクリーニングサービスを提供しています。

収益源は不動産の賃貸料収入や、リネンサプライ・クリーニングサービスの利用料、配送業務の受託手数料などから得ています。運営は同社のほか、シキボウサービス、シキボウリネン、Jリネンサービス、シキボウ物流システムなどの子会社がそれぞれの専門領域を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は、堅調な需要の取り込みや新規事業領域の拡大、および企業買収などの効果により増加傾向にあります。一方、利益面では原材料価格やエネルギーコストの高騰、事業再編に関連する一時的な費用の発生などが影響し、期によって増減が見られる状況となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 357億円 379億円 387億円 391億円 446億円
経常利益 10億円 11億円 13億円 10億円 7億円
利益率(%) 2.9% 3.0% 3.4% 2.7% 1.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 6億円 -12億円 14億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しているものの、製造コストの上昇や事業譲受に伴う費用の発生などが影響し、売上総利益率は低下して推移しています。また、積極的な事業展開に伴う販売費および一般管理費の増加が先行し、営業利益および営業利益率は低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 391億円 446億円
売上総利益 72億円 76億円
売上総利益率(%) 18.5% 17.2%
営業利益 13億円 10億円
営業利益率(%) 3.4% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が25億円(構成比37%)、従業員賞与が4億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


繊維事業はサステナブル素材の販売増や事業譲受の寄与により大幅な増収増益となりました。一方で、産業資材事業や機能材料事業は堅調に推移したものの、製造原価やエネルギー価格の高騰が響き減益または損失計上となり、不動産・サービス事業もコスト増により減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
繊維 202億円 246億円 3億円 5億円 1.9%
産業資材 73億円 75億円 2億円 2億円 2.6%
機能材料 61億円 69億円 -0億円 -2億円 -2.2%
不動産・サービス 54億円 55億円 20億円 19億円 34.5%
連結(合計) 391億円 446億円 13億円 10億円 2.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態である「積極型」に分類されます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 21億円 9億円
投資CF -28億円 -46億円
財務CF 11億円 43億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も38.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「わたしたちは、シキボウグループのものづくり技術・ものづくり文化で新しい価値を創造します。」という経営理念を掲げています。この理念のもと、他社には真似の出来ない独自の機能や技術力を活かした商品づくりを追求し、安心・安全・快適な暮らしと環境にやさしい社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、創立150年にあたる2042年に向けた長期ビジョン「Mermaid 2042」を掲げ、「あなたにもっと寄り添い、愛されるシキボウグループへ」という価値観を重視しています。従業員が仕事を通じて成長し安心して働ける職場環境の整備や、環境や人権に配慮したものづくりを通じて、社会課題の解決と持続可能な社会の実現を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期的な企業価値の向上と資本の効率性向上を目指し、中期経営計画「TG25-27」を推進しています。同計画では、長期ビジョンの実現に向けたマイルストーンとして、2030年に向けた目標を以下の通り設定しています。

* 売上高:680億円
* 営業利益:43億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「稼ぐ力の向上」「新中核事業の成長・拡大」「経営基盤の強化」「サステナビリティ経営への取組み」の4つを基本方針としています。繊維および産業資材事業のグローバル展開や、食品・航空宇宙分野への取組み拡大を推進し、資本コストを重視した事業の構造改革やDXによる業務効率化を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「シキボウグループ人的資本方針」を定め、多様な人材の活用と育成に取り組んでいます。様々な価値観を持つ人材が活躍できるよう職場風土の醸成を進め、教育制度と自律的なキャリア形成を支援しています。また、労働安全衛生の徹底やハラスメントの防止、健康経営の推進など、誰もが働きがいのある環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.0歳 12.7年 5,236,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全従業員) 65.1%
男女賃金差異(正規従業員) 66.9%
男女賃金差異(非正規従業員) 67.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市況変動に関するリスク


同社グループは多様な市場に向けて製品およびサービスを提供しています。市場の変化に的確に対応し競争力の維持拡大に努めていますが、急激な世界経済情勢の変化などにより景気が悪化し市況が変動した場合、同社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料・燃料価格の変動・調達リスク


同社グループの製品製造において、主・副原料として合成繊維や、燃料として重油などの石油化学製品を使用しています。原油価格の急激な変動や、自然災害などにより原材料の調達が困難になった場合、製造コストの上昇や生産活動の停滞を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 政治・地政学変動に関するリスク


同社グループはインドネシア、中国、ベトナムなどで生産・販売活動を展開し、中東地域への輸出も行っています。これらの進出国や輸出先における社会情勢の変化、テロや紛争の発生、各種法令の改廃、物流網の混乱などが生じた場合、事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。