※本記事は、シキボウ株式会社 の有価証券報告書(第212期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. シキボウってどんな会社?
創業130年超の歴史を持つ繊維メーカーです。繊維技術を応用した産業材や不動産事業など多角化を進めています。
■(1) 会社概要
1892年に有限責任伝法紡績会社として設立され、1944年に敷島紡績へ商号変更しました。1949年には東京・大阪・名古屋の各証券取引所に上場を果たしています。その後、産業材や不動産・サービス分野へ事業を拡大し、2002年に商号を現在のシキボウに変更しました。
同社の連結従業員数は2,175名、単体では572名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はシキボウ従業員持株会、第3位はシキボウ取引先持株会となっており、従業員や取引先が主要な株主となっているのが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.83% |
| シキボウ従業員持株会 | 4.47% |
| シキボウ取引先持株会 | 3.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員は尻家正博氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 尻家 正博 | 代表取締役社長執行役員 | 1988年入社。総務部長、執行役員コーポレート部門経営管理部長、同経営戦略部長兼財務経理部長などを歴任し、2021年6月より現職。 |
| 清原 幹夫 | 取締役会長 | 1983年入社。経営企画室長、代表取締役社長執行役員などを歴任。2021年に代表取締役会長となり、2023年6月より現職。 |
| 竹田 広明 | 取締役(常勤監査等委員) | 1984年入社。総務部長、執行役員複合材料部部長兼尾道事業所長、取締役上席執行役員コーポレート部門長などを歴任し、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、野邊義郎(公認会計士・税理士)、宇野保範(学校法人大阪青山学園理事長)、細田祥子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「繊維」、「産業材」、「不動産・サービス」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 繊維事業
糸、布、ニット、二次製品などの繊維製品の製造販売を行っています。創業以来の主力事業であり、衣料品から生活資材まで幅広い製品を提供しています。顧客はアパレルメーカーや量販店などが中心です。
収益は製品の販売代金です。運営は主に同社が担うほか、シキボウ江南、新内外綿、ナイガイテキスタイル、マーメイドソーイング秋田などの子会社が製造や販売を行っています。また、海外ではインドネシアや中国、ベトナムの現地法人が製造・販売拠点として機能しています。
■(2) 産業材事業
製紙用ドライヤーカンバスやフィルタークロスといった工業用品、加工機械、食品添加物などの製造販売を行っています。繊維技術を応用した高機能素材や産業用資材を提供しており、製紙会社や各種製造業が主な顧客です。
収益は製品の販売代金です。運営は同社のほか、敷島カンバス(工業用品)、大和機械製作所(産業機械)、シキボウ堺(化成品)などの子会社が行っています。中国にも製造販売拠点を持っています。
■(3) 不動産・サービス事業
不動産賃貸、リネンサプライ、倉庫業務などを行っています。所有不動産の有効活用や、ホテル・病院向けのリネンサプライサービスなどを展開しています。
収益は不動産の賃貸料やリネンサプライのサービス料などです。運営は同社のほか、シキボウサービス(不動産管理)、シキボウリネン(リネンサプライ)、シキボウ物流システム(配送・倉庫)などの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台で緩やかに増加傾向にあります。利益面では、経常利益は9億〜13億円程度で推移していますが、2024年3月期には最終赤字を計上しました。2025年3月期は売上が微増し、最終利益は黒字に回復しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 335億円 | 357億円 | 379億円 | 387億円 | 391億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 10億円 | 11億円 | 13億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 2.8% | 2.9% | 3.0% | 3.4% | 2.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 5億円 | 6億円 | -12億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
2025年3月期は前期と比較して、売上高は微増し、売上総利益率は若干低下しました。営業利益は減少しており、利益率は3%台半ばとなっています。コスト増の影響などにより、本業の収益性はやや低下傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 387億円 | 391億円 |
| 売上総利益 | 71億円 | 72億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.3% | 18.5% |
| 営業利益 | 14億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 3.7% | 3.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が22億円(構成比38%)、従業員賞与が3億円(同6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
繊維事業は輸出衣料などが好調で増収となりましたが、利益率は低水準です。産業材事業は売上が横ばいでした。不動産・サービス事業は堅調に推移し、安定的な収益源となっています。全社的には繊維事業の売上構成比が高いものの、利益面では不動産・サービス事業の貢献度が大きくなっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 繊維 | 199億円 | 202億円 |
| 産業材 | 135億円 | 135億円 |
| 不動産・サービス | 53億円 | 54億円 |
| その他 | - | - |
| 調整額 | - | - |
| 連結(合計) | 387億円 | 391億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金と財務活動による調達資金を合わせて、投資活動に充てている「積極型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 35億円 | 21億円 |
| 投資CF | -27億円 | -28億円 |
| 財務CF | -5億円 | 11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.6%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「シキボウグループのものづくり技術・ものづくり文化で新しい価値を創造します。」を経営理念として掲げています。安心・安全・快適な暮らしと環境にやさしい社会の実現を目指し、独自の機能や技術力を活かした商品づくりと、顧客ニーズに沿った商品・サービスの提案に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は、創立150周年にあたる2042年に向けた長期ビジョン「Mermaid 2042」を掲げています。「あなたにもっと寄り添い、愛されるシキボウグループへ」をテーマに、従業員、顧客、地球環境への貢献を重視する姿勢を示しています。従業員が安心して働ける環境や、持続可能な社会への貢献を大切にする文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年に目指す姿として、数値目標を掲げています。この目標からバックキャスティングして3カ年の経営戦略「TG25-27」を策定しています。また、2028年3月期に向けた経営指標も設定しています。
* 売上高:550億円(2030年目標)
* 営業利益:36億円(2030年目標)
* ROE:3.9%(2028年3月期計画)
■(4) 成長戦略と重点施策
新中期経営計画「TG25-27」では、「成長への変革」をテーマに掲げています。既存事業の収益力強化と新たな成長事業の育成を両輪とし、グローバル展開の加速やサステナビリティ経営の推進に注力します。
* 繊維・産業資材事業のグローバル販売強化
* 食品・化成品事業や複合材料事業(航空・宇宙分野等)の拡大
* 資本コストを重視した事業構造改革とDX推進
* GHG排出量削減やサステナブル商材の販売拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「シキボウグループ人的資本方針」に基づき、多様な人材の活用と育成を推進しています。性別や国籍等を問わず意欲ある人材の活躍を図り、OJTや社外学習を通じた自律的なキャリア形成を支援しています。また、安全衛生やハラスメント防止、働き方改革に取り組み、誰もが働きやすい職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.0歳 | 15.3年 | 5,010,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.7% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 58.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職採用比率(11.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市況変動に関するリスク
繊維、産業材、不動産・サービス事業を展開しており、それぞれの市場動向の影響を受けます。急激な世界経済情勢の変化や景気悪化により市況が変動した場合、製品やサービスの需要が減少し、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料・燃料価格の変動・調達リスク
製品の主原料である合成繊維や、燃料としての重油など、石油化学製品を使用しています。原油価格の急激な変動や、自然災害等による供給網の混乱が生じた場合、原材料や燃料の調達コストが上昇したり、調達自体が困難になったりすることで、業績に影響が出る可能性があります。
■(3) 為替相場の変動に関するリスク
原材料や製品の多くを海外から輸入しています。為替予約などでリスクヘッジを行っていますが、想定を超える大幅な為替変動が生じた場合、輸入コストの変動や在外子会社の財務諸表換算への影響などを通じて、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 金利変動に関するリスク
有利子負債による資金調達を行っています。借入金の金利変動リスクに対しては金利スワップ取引などで対策していますが、金利市場が急激に変動した場合、支払利息の増加などにより、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。



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