オーミケンシ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オーミケンシ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する企業です。繊維、不動産、食品、その他事業を展開しています。2025年3月期は、不動産事業が好調に推移し、売上高は前期比12.5%増となりました。また、固定資産売却益の計上などもあり、営業利益、経常利益、当期純利益はいずれも黒字転換を果たしています。


※本記事は、オーミケンシ株式会社 の有価証券報告書(第160期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オーミケンシってどんな会社?


繊維製品の加工・販売を祖業とし、現在は不動産賃貸や食品製造など多角的に事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1917年に近江絹綿として設立され、1949年に株式を上場しました。1968年に現社名へ変更し、2004年には不動産事業を会社分割するなど組織再編を進めてきました。2018年には宇美フーズを買収し食品事業へ参入。2022年の市場区分見直しにより、現在はスタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は83名、単体では48名です。筆頭株主は法人で、第2位、第3位は大株主として個人が名を連ねています。

氏名 持株比率
東洋商事 29.92%
龍寶 裕子 7.60%
丸山 三千夫 3.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は髙口 彰氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
髙口  彰 取締役社長(代表取締役) 1989年入社。環境素材事業本部長等を経て2022年6月より現職。
大野 泰由 取締役管理部長 1986年入社。経営企画部長、管理部長を経て2022年6月より現職。


社外取締役は、廣田 直人(元三菱UFJ銀行専務取締役)、竹前  賢(経営コンサルタント)です。

2. 事業内容


同社グループは、「繊維」「不動産」「食品」および「その他」事業を展開しています。

(1) 繊維


レーヨン綿、紡績糸、編織物等の加工および販売を行っています。また、環境配慮型素材の開発にも注力しており、海外子会社を通じて繊維原料や製品の卸売販売も手掛けています。顧客は主に繊維関連企業や商社などです。

収益は、製品の販売代金が主な柱です。運営は主に同社および連結子会社である近絹(上海)商貿有限公司が行っています。

(2) 不動産


保有する不動産の賃貸および販売を行っています。オフィスビルや商業施設、土地などの賃貸による安定的な収益確保を目指すとともに、遊休資産の有効活用や売却も進めています。

収益は、テナントからの賃貸料収入や不動産の売却代金です。運営は同社および連結子会社であるオーミケンシソリューション株式会社が行っています。

(3) 食品


食料品等の製造および加工を行っています。主な製品として、パン粉やその関連製品などを扱っており、食品メーカーや流通業者へ供給しています。

収益は、製造した食料品の販売代金です。製造・加工は連結子会社である株式会社宇美フーズが担い、同社がそれらの販売を行っています。

(4) その他


上記セグメントに含まれない事業として、電子機器等の仕入れ販売やソフトウェアの開発を行っています。顧客ニーズに合わせたシステム開発や機器提供を手掛けています。

収益は、機器の販売代金やソフトウェア開発費、保守料などです。運営は連結子会社であるオーミケンシソリューション株式会社が行い、同社が販売を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年3月期をピークに減少傾向にありましたが、2025年3月期は回復基調にあります。利益面では、過去に大幅な赤字を計上する時期もありましたが、直近では黒字転換を果たし、収益性の改善が見られます。

項目 2025年3月期 2024年3月期 2023年3月期 2022年3月期 2021年3月期
売上高 34.1億円 30.3億円 31.2億円 39.8億円 67.9億円
経常利益 0.1億円 -0.4億円 0.2億円 0.3億円 -3.5億円
利益率(%) 0.2% -1.5% 0.7% 0.8% -5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.0億円 -24.2億円 -11.1億円 -3.8億円 10.4億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益率も安定して40%台を維持しています。営業利益は前期の赤字から黒字へと転換しており、本業の収益力が回復しています。コスト管理や事業構造の見直しが奏功している様子がうかがえます。

項目 2025年3月期 2024年3月期
売上高 34.1億円 30.3億円
売上総利益 13.9億円 12.4億円
売上総利益率(%) 40.7% 41.0%
営業利益 2.4億円 -0.7億円
営業利益率(%) 6.9% -2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料賃金が3.4億円(構成比約30%)を占めています。その他、賞与引当金繰入額が0.3億円(同2%)、退職給付費用が0.2億円(同2%)となっています。

(3) セグメント収益


不動産事業が全体の利益を牽引しており、高い利益率を誇っています。繊維事業と食品事業は依然として赤字が続いていますが、繊維事業は売上が伸長しています。その他事業は小規模ながら黒字を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
繊維 14.8億円 16.9億円 -1.3億円 -1.3億円 -7.6%
不動産 11.2億円 12.4億円 7.4億円 8.5億円 68.4%
食品 1.1億円 1.4億円 -0.8億円 -0.8億円 -56.3%
その他 3.2億円 3.4億円 -1.0億円 0.1億円 1.5%
調整額 - - -4.9億円 -4.1億円 -
連結(合計) 30.3億円 34.1億円 -0.7億円 2.4億円 6.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は12.1%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2024年3月期
営業CF -5.2億円 -14.0億円
投資CF 33.9億円 2.9億円
財務CF -26.8億円 3.0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人と地球と暮らしへの優しさを追求」を経営理念として掲げています。環境に配慮した事業活動を通じて、地球環境を守る企業としての存在感を高めるとともに、素材メーカーとしての技術を活かし、人々の生活に心のゆとりと豊かさを提案することを目指しています。

(2) 企業文化


環境配慮型の事業構造を構築し、持続可能な社会の実現に貢献することを重視する文化があります。また、素材から製品までを一貫して提案する姿勢を持ち、収益性と企業価値の向上を追求しています。逆風下でもサステナビリティへの意識を高く持ち続けることを大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、安定した収益基盤の確立と財務体質の強化を目指し、客観的な経営指標として売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益を掲げています。2026年3月期の目標値は以下の通りです。

* 売上高:35億円
* 営業利益:3億円
* 経常利益:0.5億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:0.5億円

(4) 成長戦略と重点施策


環境配慮型企業としての地位確立と収益基盤の早期確立を戦略の柱としています。具体的には、環境負荷低減を目指した素材開発や生産技術の早期具現化に注力します。また、加古川工場跡地等の不動産開発においては、賃貸や売却による有効活用を進め、地域社会への貢献と収益最大化の両立を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働きがいのある会社づくり」を目指し、人材育成や安全・安心な職場環境の整備に取り組んでいます。社員が自律的にキャリアを形成できるよう、eラーニング等の研修制度を充実させるとともに、育児・介護制度によるワークライフバランスの推進や、人権尊重、ハラスメント防止にも努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.8歳 18.6年 5,256,460円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.8%
男女賃金差異(正規) 71.3%
男女賃金差異(非正規) 106.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制や環境規制の影響


工場における生産活動は、水質汚濁防止法や大気汚染防止法などの法的規制を受けています。現在は設備面で十分な対応を行っていますが、将来的に規制が強化された場合、追加の設備投資が必要となり、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(2) 災害や感染症による操業停止


国内外に拠点を展開しており、地震や火災などの大規模災害、または感染症の流行などが発生した場合、事業運営が困難になるリスクがあります。これにより製品供給の遅延や停止が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 金利変動と資金調達


借入金の圧縮を進めていますが、金利情勢が大幅に変動した場合には支払利息が増加し、業績に影響を与える可能性があります。また、資金調達環境の変化により、必要な資金の確保が困難になるリスクも考慮する必要があります。

(4) 不動産事業の収益変動


事業用土地を多く保有しており、不動産賃貸契約の解約による収益低下や、地価の大幅な下落による減損損失が発生する可能性があります。これらは不動産事業の収益性を損ない、全社の業績に影響を与える要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。