富士紡ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

富士紡ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場しており、超精密加工用研磨材を扱う研磨材事業、化学工業品事業、生活衣料事業を展開しています。直近の業績は、半導体市場の回復やAI関連需要の増加により研磨材事業が好調で、売上高は429億円(前期比18.8%増)、営業利益は65億円(同129.8%増)と大幅な増収増益です。


※本記事は、富士紡ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第205期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 富士紡ホールディングスってどんな会社?


研磨材、化学工業品、生活衣料(B.V.D.等)を展開する多角化企業です。持株会社体制でニッチトップを目指しています。

(1) 会社概要


1896年に富士紡績として設立され、1949年に東京証券取引所等へ上場しました。1975年にフジボウアパレル、1977年にフジボウ愛媛を設立するなど事業を分社化し、2005年には持株会社制へ移行して現社名に変更しました。2022年には東京証券取引所のプライム市場へ移行し、事業ポートフォリオの変革を進めています。

同グループの従業員数は連結で1,319名、単体で109名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は外国証券会社となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.73%
日本カストディ銀行(信託口) 8.17%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL(常任代理人 ゴールドマン・サックス証券) 6.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表取締役社長は井上雅偉氏です。取締役9名中4名が社外取締役であり、社外取締役比率は約44%です。

氏名 役職 主な経歴
井上 雅偉 取締役社長(代表取締役) 1987年同社入社。フジボウテキスタイル社長、柳井化学工業社長、近未来商品開発統括部機能品開発部長などを歴任。2020年取締役就任を経て、2022年6月より現職。
豊岡 保雄 取締役(代表取締役) 1981年同社入社。秘書室長、フジボウアパレル社長などを歴任。2019年取締役就任を経て、2021年6月より現職。
平野 治 取締役(代表取締役)秘書室長 1984年同社入社。人財育成室長、総務部長などを歴任。2018年より秘書室長。2022年取締役就任を経て、2023年6月より現職。
望月 吉見 取締役 1989年同社入社。フジボウ愛媛壬生川工場長を経て、2019年同社社長に就任。2021年6月より現職。
佐々木 辰也 取締役 1988年三菱銀行入行。三菱東京UFJ銀行広報部長、三菱UFJリサーチ&コンサルティング常務執行役員などを経て2022年同社入社。2023年6月より現職。


社外取締役は、ルース・マリー・ジャーマン(ジャーマン・インターナショナル代表取締役社長)、小林久志(元コスモ石油代表取締役社長)、佐藤梨江子(東京パワーテクノロジー常任監査役)、壷田貴弘(元アネスト岩田代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「研磨材事業」「化学工業品事業」「生活衣料事業」および「その他」事業を展開しています。

研磨材事業


半導体デバイス(CMP)、シリコンウエハー、ハードディスク、液晶ガラスなどの製造工程で使用される超精密加工用研磨材や、不織布、合皮を提供しています。世界中のITデバイス関連企業が主な顧客です。

主な収益源は製品の販売代金です。製造はフジボウ愛媛や台湾富士紡精密材料股份有限公司が行い、販売はフジボウ愛媛、フジケミ、台湾富士紡精密材料股份有限公司が担当しています。

化学工業品事業


医薬原料、農薬、電子材料、機能性化学品など、有機合成品の中間体を受託製造しています。大手化学メーカーなどが主な顧客であり、多品種・小ロットの生産体制でニーズに応えています。

主な収益源は受託製造による対価です。製造および販売は、主に柳井化学工業が担当しています。

生活衣料事業


インナーウエアを中心とする繊維製品(「B.V.D.」「アサメリー」等)や、高機能繊維素材(糸、編物等)の製造・加工・販売を行っています。一般消費者やアパレルメーカー、産業資材ユーザーが顧客です。

主な収益源は製品および素材の販売代金です。製造はフジボウテキスタイルやタイフジボウテキスタイル等が担い、販売はフジボウテキスタイル、フジボウアパレル、富士紡(上海)商貿有限公司等が行っています。

その他


デジタルカメラや医療機器、自動車用部品の射出成形を行う化成品事業、プラスチック用射出成形金型の設計・制作を行う金型事業、中米カリブ海地域への自動車輸出などを含みます。

主な収益源は製品・金型の販売代金や輸出売上です。化成品や自動車関連はフジケミ、金型は東京金型やIPMが運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は360億円前後で推移してきましたが、当期は400億円台へと大きく伸長しています。利益面では、前期に利益率が低下しましたが、当期は回復し、高い水準に戻しています。全体として、当期は売上・利益ともに大きく成長した年度となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 369億円 359億円 377億円 361億円 429億円
経常利益 55億円 60億円 50億円 33億円 67億円
利益率(%) 14.8% 16.8% 13.4% 9.1% 15.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 22億円 18億円 8億円 14億円

(2) 損益計算書


前期と比較して売上高が増加し、売上総利益率も改善しています。これに伴い、営業利益率は大幅に上昇しており、収益性が高まっていることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 361億円 429億円
売上総利益 106億円 149億円
売上総利益率(%) 29.4% 34.7%
営業利益 28億円 65億円
営業利益率(%) 7.8% 15.1%

(3) セグメント収益


研磨材事業は半導体市場の回復やAI関連需要により大幅な増収となりました。化学工業品事業も電子材料市場の回復等により増収です。一方、生活衣料事業とその他事業は横ばいまたは微減となりました。主力事業の好調が全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
研磨材事業 134億円 193億円
化学工業品事業 125億円 135億円
生活衣料事業 70億円 70億円
その他 32億円 32億円
調整額 - -
連結(合計) 361億円 429億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで得た資金を投資CFへ回しつつ、財務CFでは借入返済や配当支払いを行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 50億円 87億円
投資CF -31億円 -65億円
財務CF -18億円 -24億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、一世紀を超える歴史の中で培った技術と経験を生かし、常に時代が求める新しい技術・製品を提供することで先端産業を支えることを目指しています。人・社会・地球環境にとってより豊かで持続可能な未来の創造に貢献し続けることを企業理念としています。

(2) 企業文化


同社は「個を尊ぶ、和を育む~労働環境の指針」をビジョンとして掲げています。社員一人ひとりに公平な機会と公正な評価を与え、切磋琢磨して共に向上し合える環境を創造すること、個を尊重することで競争力とチームワークが育つ職場を創ることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2021年度から2025年度を計画期間とする中期経営計画『増強21-25』を実行中です。未来のありたい姿から導出した2025年像とのギャップを特定し、事業ポートフォリオの積極的な見直しと持続可能で儲かるビジネスへの転換を図っています。

* 2026年3月期 売上高目標:600億円
* 2026年3月期 営業利益目標:100億円
* 2026年3月期 営業利益率目標:16.7%
* 2026年3月期 ROE目標:10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「圧倒的なニッチナンバーワン企業」を目指し、収益機会の増加と提供価値の強化により「稼ぐ力」を強化します。DXの深化やサステナブルな社会への対応も進めます。研磨材事業ではAI関連等の半導体需要に対応し、化学工業品事業では新プラント建設を進め、生活衣料事業ではEC強化や海外販路拡大に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「圧倒的なニッチナンバーワン企業」の実現に向け、多様性を受容し個々の能力を最大限発揮できる環境づくりを進めています。課題解決型人財、グローバル人財、次世代リーダーの育成を掲げ、教育研修機会を積極的に提供しています。また、健康経営や安全衛生の徹底にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 13.1年 6,716,760円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.2%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 72.2%
男女賃金差異(正規雇用) 74.0%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※労働者の男女の賃金の差異については、「―」は、女性非正規雇用労働者がいないため比較できないことを示しております。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性総合職比率(16.2%)、外国人管理職比率(11.2%)、キャリア採用者管理職比率(20.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 重要な契約に伴うリスク


生活衣料事業の主力ブランド「B.V.D.」について、FTLジャパンと商標使用権や製造・販売権の契約を締結しています。良好な関係にありますが、予期しない事態による契約の非更新は、業績や財務状況に悪影響を与える可能性があります。

(2) 知的財産に関するリスク


新製品の特許出願において、ノウハウ漏洩防止のため出願を控える場合がありますが、競合他社に特許を取得されるリスクがあります。また、独自の技術を完全に保護することは困難であり、第三者による類似商品の製造を防止できない場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 人財確保に関するリスク


「圧倒的なニッチナンバーワン企業」を目指す上で、多様な価値観や専門性を持つ高度な人財の確保が重要です。しかし、少子高齢化による獲得競争の激化等により必要な人財を確保・育成できない場合、事業活動に支障が生じ、成長の阻害要因となる可能性があります。

(4) 気候変動に関するリスク


異常気象による操業停止や原材料調達コストの上昇、環境規制の強化による炭素税導入や投資負担などが想定されます。これらは中長期的に事業活動へ重要な影響を与え、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。