ダイドーリミテッド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダイドーリミテッド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。衣料用繊維素材の製造販売や「ニューヨーカー」「ブルックス ブラザーズ」等のブランドを展開する衣料事業と、商業施設等の不動産賃貸事業を行っています。当連結会計年度は不動産賃貸事業が好調だった一方、衣料事業の減収等により売上高は微減、特別損失の計上により親会社株主に帰属する当期純損失となりました。


※本記事は、株式会社ダイドーリミテッド の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダイドーリミテッドってどんな会社?


1879年創業の老舗企業で、毛織物製造から出発し、現在はアパレルブランド事業と不動産賃貸事業を展開しています。

(1) 会社概要


1879年に創業し、1949年に大同毛織として新発足、1950年に上場しました。1980年に既製服製造販売のニューヨーカーを吸収合併し衣料分野へ進出、1989年に現社名へ変更しました。近年では2021年にブルックス ブラザーズ ジャパンを連結子会社化し、ブランドポートフォリオを拡充しています。

連結従業員数は565名、単体では29名です。筆頭株主は染色整理加工を行う株式会社ソトーで、同社とは資本・業務提携関係にあります。第2位以降は三井住友海上火災保険、三井住友信託銀行と続き、金融機関や事業会社が上位を占めています。

氏名 持株比率
ソトー 5.64%
三井住友海上火災保険 2.28%
三井住友信託銀行 2.27%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長グループCEOは山田政弘氏、代表取締役社長執行役員グループCOOは成瀬功一郎氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
山田 政弘 代表取締役会長グループCEO 中央三井信託銀行、PwCコンサルタントを経て、ジェミニストラテジーグループ代表取締役CEOなどを歴任。2024年6月より同社代表取締役会長兼CEO。2025年6月より現職。
成瀬 功一郎 代表取締役社長執行役員グループCOO オプト、ホットリンク取締役COO、ひらまつ取締役COOなどを歴任。2024年6月より同社代表取締役社長執行役員兼COO。2025年6月より現職。
白子田 圭一 取締役上席執行役員グループCFO 1990年同社入社。経理財務部部長、執行役員などを経て、2024年6月取締役上席執行役員。2025年6月より現職。
今井 和俊 取締役執行役員 1989年同社入社。ニューヨーカー常務取締役、同社執行役員、中国・アジア事業推進室長などを経て、2024年6月取締役執行役員。2025年6月より現職。


社外取締役は、久保木大世(元ワールド取締役常務執行役員)、大澤道雄(元オンワードホールディングス代表取締役専務)、城戸真亜子(洋画家・タレント)です。

2. 事業内容


同社グループは、「衣料事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

(1) 衣料事業


事業者向けに衣料用繊維素材の製造販売を行うほか、消費者向けに「ニューヨーカー」や「ブルックス ブラザーズ」ブランドの紳士・婦人衣料製品等の製造販売を行っています。イタリアの子会社で高機能素材の製造も手掛けています。

収益は、卸売先や一般消費者からの製品販売代金および素材販売代金等です。運営は、国内販売等を担うダイドーフォワード、ブルックス ブラザーズ ジャパン、イタリアの製造子会社Pontetorto S.p.A.、中国の製造・販売子会社などが行っています。

(2) 不動産賃貸事業


神奈川県小田原市のショッピングセンター「ダイナシティ」における店舗賃貸のほか、東京都内やその他の地域において事務所用ビルやホテル施設等の賃貸を行っています。

収益は、テナントや入居者からの賃貸料収入です。運営は、主にダイドーフォワードが担っており、保有資産を有効活用して安定的な収益基盤としています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高はコロナ禍の影響を受けた2021年3月期を底に回復傾向にあり、近年は280億円前後で推移しています。利益面では、営業損失および経常損失が継続しており、厳しい状況が続いています。当期は減損損失等の計上により、親会社株主に帰属する当期純損失が大幅に拡大しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 173億円 246億円 282億円 287億円 286億円
経常利益 -22億円 -16億円 -4億円 -3億円 -2億円
利益率(%) -12.7% -6.6% -1.3% -1.2% -0.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -13億円 -11億円 0.5億円 6億円 -35億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は横ばいで推移していますが、売上原価の減少により売上総利益率は改善しました。しかし、販売費及び一般管理費が売上総利益を上回る状態が続いており、営業損失となっています。当期は営業損失の幅は縮小しましたが、依然として黒字化には至っていません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 287億円 286億円
売上総利益 149億円 155億円
売上総利益率(%) 52.0% 54.2%
営業利益 -4億円 -1億円
営業利益率(%) -1.5% -0.2%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が35億円(構成比23%)、手数料が32億円(同20%)、賃借料が23億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別に見ると、主力の衣料事業は減収となり、セグメント損失が継続しました。一方、不動産賃貸事業は、商業施設の新館オープンやオフィスビルの賃料収入通年寄与などにより増収となり、セグメント利益も倍増しました。不動産事業がグループの収益を下支えする構図となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
衣料事業 257億円 253億円 -0.4億円 -0.4億円 -0.1%
不動産賃貸事業 30億円 33億円 5億円 10億円 29.9%
調整額 -0.4億円 -0.4億円 -9億円 -10億円 -
連結(合計) 287億円 286億円 -4億円 -1億円 -0.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ダイドーリミテッドは、投資活動で得た資金を主に活用しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、減損損失等があったものの、減価償却費の計上等により収入超過となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却収入が取得支出を上回り、大幅な収入超過となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済等により支出超過となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -19億円 5億円
投資CF -79億円 28億円
財務CF 15億円 -9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様第一」「品質本位」を基本理念として共有し、事業運営にあたっています。原料から製品まで高い品質を追求したものづくりと、販売環境の整備やサービス力の向上により、顧客の高い評価と信頼を得て企業価値を増大させることを目指しています。

(2) 企業文化


1879年の創業以来の歴史を持ちながら、時流に応じて事業領域やビジネスモデルを進化させることで環境変化に適応してきました。創業150年、さらにその先の50年も社会に価値を創出し続けられるよう、「革新と進化」を続けることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


長期にわたる営業損失からの脱却を目指し、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「革新と進化」に取り組んでいます。グループ一丸となった改革と改善により、最終年度の数値目標達成を計画しています。

* 連結営業利益:15億円
* ROE:8%

(4) 成長戦略と重点施策


事業ポートフォリオの刷新を行い、成長事業への注力と不採算事業の縮小を進めます。衣料事業では「ブルックス ブラザーズ」の成長と「ニューヨーカー」の利益率改善、製造部門では高機能素材を扱う「ポンテトルト」の成長に注力します。また、M&Aによる非連続的な成長やDX/CRMの推進も図ります。

* ブルックス ブラザーズ:国内企画拡充とEC強化
* ニューヨーカー:発注精度向上システム導入等による利益率改善
* ポンテトルト:営業力およびマーケティング強化
* M&A機能の強化と推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営理念に基づき、自社で定めるSDGsの達成を目指すサステナブルな経営を推進しています。成長戦略の実現には優秀な人材の採用・育成が不可欠と考え、従業員が働きがいを感じ成長できる環境整備に注力しています。また、女性取締役の登用などダイバーシティの推進や、外部エキスパートとの協業によるノウハウ・人材の補完も行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 52.6歳 23.8年 6,186,000円


※平均年間給与は、諸手当及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 68.8%
男女賃金差異(正規雇用) 69.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 77.4%


※男性育児休業取得率の「-」について、HTML原文には具体的な理由の記載はありませんが、対象期間における取得該当者がいなかった可能性があります(なお、連結子会社のブルックス ブラザーズ ジャパンは100%です)。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の育児休暇取得率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 消費者の志向の変化にともなうリスク


消費者のファッションに対する志向は多様化しており、購買行動の変化や他社との競合、シェアリングエコノミーの進展などが進んでいます。こうした変化に対応できず、各ブランドの特徴を活かした商品開発や適切な商品構成が実現できない場合、衣料事業の収益確保が困難になり、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 気象状況・自然災害にともなうリスク


衣料事業の売上は気象状況の影響を受けやすく、冷夏や暖冬などの天候不順により売上が低下する恐れがあります。また、自然災害や感染症の発生により、小売店舗や小田原の商業施設が短縮営業や臨時休業を余儀なくされた場合、グループの経営成績および財務状況に悪影響を与える可能性があります。

(3) 海外事業にともなうリスク


中国やイタリアに連結子会社を有し事業を行っています。現地での天災、テロ、戦争、政変、感染症等の発生により事業継続が困難になるリスクや、経済情勢・為替レートの変動リスクがあります。これらが顕在化した場合、グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。