日本製麻 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本製麻 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、黄麻製品等の産業資材、自動車用マット、パスタ等の食品製造を展開しています。当連結会計年度は、マット事業の国内販売や食品事業が堅調に推移し増収となりましたが、物流費や人件費等のコスト上昇が響き、経常利益は前期比で減益となりました。


※本記事は、日本製麻株式会社 の有価証券報告書(第97期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本製麻ってどんな会社?


創業からの黄麻製品に加え、自動車用マット製造や「ボルカノ」ブランドのパスタ食品事業を展開する多角化企業です。

(1) 会社概要


1947年に中越紡織として設立され、1949年に上場しました。1959年に現社名へ変更し、1961年には兵庫工場で麻袋生産を開始、1971年にはパスタ専門の関西工場を完成させ事業を多角化しました。1997年にタイ国のサハキット社を子会社化しマット事業の海外拠点を強化、2022年にスタンダード市場へ移行しました。

連結従業員数は279名、単体では81名です。筆頭株主は米国に拠点を置く投資会社のリオモインクで、第2位は「ゴーゴーカレー」を展開し同社と取引関係もあるゴーゴーカレーグループ、第3位は投資組合のGAD有限責任事業組合です。近年、第三者割当増資により株主構成に変化が見られます。

氏名 持株比率
リオモインク 16.80%
ゴーゴーカレーグループ 16.04%
GAD有限責任事業組合 9.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は森 欣也氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
森  欣 也 代表取締役社長 東芝に入社し、社会インフラ部門やグループ会社の社長等を歴任。アジアゲートホールディングス代表取締役社長を経て、2024年11月より現職。
高 橋 賢 作 常務取締役ボルカノ食品事業部長 三井化学に入社し、ヘルスケア事業本部理事などを務める。三井化学ファイン代表取締役社長を経て、2020年に入社。2024年7月より現職。
植 杉 泰 久 取締役 大和証券を経て、ship shape合同会社代表社員。スターシーズ(旧シーズメン)、チチカカの代表取締役社長を歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、佐々木 健郎(マネージポート会計事務所代表取締役)、滝川 好夫(関西外国語大学教授)、牧野 大輔(IAAトラベル代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「産業資材事業」「マット事業」「食品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 産業資材事業


同社にて、主として黄麻商品(麻袋など)、大型包装資材(紙袋、フレコンなど)の販売を行っています。環境に配慮した素材としての黄麻製品や、農業・工業用途の包装資材を顧客に提供しています。

収益は、これらの製品の販売代金として顧客から受け取ります。黄麻製品は主にインド・バングラデシュ地域から輸入しています。運営は主に日本製麻が行っています。

(2) マット事業


自動車用フロアマット等の製造販売を行っています。主な顧客は自動車メーカーや自動車用品販売会社で、国内および海外(特に東南アジア、中東など)に向けて製品を提供しています。

収益は、自動車用マット等の製品販売代金となります。製品の製造はタイ国の連結子会社であるサハキット ウィサーン カンパニー リミテッドが行い、その一部を日本製麻が販売するほか、同社へ原材料の一部を供給しています。

(3) 食品事業


日本最古のパスタブランドの一つである「ボルカノ」ブランドにて、スパゲッティ、マカロニ、レトルトソース(カレー、パスタソース等)の製造販売を行っています。業務用および家庭用として、外食産業や小売店を通じて消費者に提供されます。

収益は、食品の販売代金となります。主要株主であるゴーゴーカレーグループとはレトルトカレーの販売等の取引関係があります。製造販売の運営は主に日本製麻が行っています。

(4) その他


報告セグメントに含まれない事業として、不動産賃貸事業などを行っています。

収益は、保有する不動産の賃貸収入等です。運営は主に日本製麻が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は30億円台前半から40億円台へと拡大傾向にあります。経常利益も一時大きく伸長しましたが、直近ではコスト増等の影響により増減が見られます。当期利益は変動があるものの黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 33億円 32億円 37億円 43億円 44億円
経常利益 0.2億円 0.7億円 1.8億円 3.2億円 2.6億円
利益率(%) 0.6% 2.4% 4.8% 7.4% 5.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.3億円 0.4億円 0.6億円 0.6億円 0.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しており、結果として営業利益および営業利益率は低下しました。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 43億円 44億円
売上総利益 10億円 11億円
売上総利益率(%) 24.1% 24.0%
営業利益 3.1億円 2.6億円
営業利益率(%) 7.1% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賃金が2.5億円(構成比31.0%)、運賃諸掛が1.3億円(同16.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


マット事業は国内販売やBEV車向けが回復したもののコスト増で減益、産業資材事業は輸入コスト増や物流費高騰で営業損失となりました。一方、食品事業は業務用パスタやレトルトカレーが好調で増収増益となり、セグメント間の明暗が分かれました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
産業資材事業 5億円 5億円
マット事業 25億円 25億円
食品事業 13億円 14億円
その他 0億円 0億円
連結(合計) 43億円 44億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日本製麻は、株式発行による収入や短期借入金の増加により、財務活動によるキャッシュ・フローが大きく増加しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権や棚卸資産の減少があったものの、仕入債務の減少などが影響し、収入となりました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が増加したため、支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3億円 2億円
投資CF -0.5億円 -5億円
財務CF -0.7億円 6億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


ステークホルダーとの関係を重視しながら取引基盤を拡大することを基本方針とし、取引先や個人との関係深化による豊かな生活の提供、自然環境保護と持続可能な社会への貢献、時代を先取りした世界市場への貢献、人間性を尊重し活力ある企業をつくることを目指しています。

(2) 企業文化


「法令を遵守し、社会に貢献する」を経営理念に掲げ、健全で透明性が高い経営体制の確立を重視しています。また、コンプライアンスやリスクマネジメントの強化を図り、顧客や社会からの信頼獲得に努める姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


これまでは「収益拡大」に重点を置き、売上高営業利益率4.0%以上を経営指標として推進してきました。中期目標であった売上高37億円、営業利益率4.0%は達成しています。今後はM&A等による付加価値向上のための経営資源再配分を行うため、特定の数値目標は定めていませんが、引き続き売上高や営業利益等を総合的に勘案して企業価値向上を目指します。

(4) 成長戦略と重点施策


持続的な成長と高収益体質への転換を図るため、各事業の基盤強化に加え、新事業開発やM&Aを推進します。特に食品事業では、需要増に対応するため北陸工場のレトルト工場増設・増強に着手しています。産業資材事業ではコスト高騰への対応として合理化を、マット事業では新車リニューアル時の受注獲得に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


サステナビリティ戦略において人的資本を最重要視し、性別や国籍、年齢等に関わらず多様な人材を採用・起用する方針です。就労しやすい環境の整備、管理職層の教育、評価制度の見直しなどを通じて、組織力や人材力の向上を図り、イノベーションを生み出せる体制づくりを進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.5歳 13.5年 3,985,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は従業員規模が300人以下のため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(提出会社7.69%)、女性管理職比率(連結子会社16.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 産業資材事業のコスト・調達リスク

為替変動や原材料価格の高騰が価格競争力に影響する可能性があります。また、製品の主な輸入元であるインド・バングラデシュ地域のカントリーリスク、自然災害、物流状況の悪化などが経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) マット事業の市場環境変化

自動車業界の景気動向、各メーカーのリコール問題、生産調整やサプライチェーン変更等が経営成績に影響する可能性があります。また、販売先である中東諸国の政治経済情勢によるカントリーリスクも存在します。

(3) 食品事業の原材料・品質リスク

小麦等の原材料価格やエネルギー価格の高騰、人件費・物流費の上昇が利益を圧迫する可能性があります。また、異物混入等の品質問題により製品回収が発生した場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外子会社のカントリーリスク

マット事業の主要拠点であるタイ子会社については、現地の政治経済の激変、法改正、テロ、社会的混乱、自然災害などが同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。