※本記事は、東海染工株式会社の有価証券報告書(第106期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東海染工ってどんな会社?
染色加工事業を主力としつつ、子育て支援や洗濯事業など生活関連事業へも展開する開発型企業です。
■(1) 会社概要
1941年に名古屋市内で綿織物の染色加工を目的として設立されました。1954年に富士染絨の事業を継承し、1961年に名古屋証券取引所へ上場しました。その後、1963年にタイ王国、1990年にインドネシア共和国に合弁会社を設立し海外へ進出。2010年には子育て支援事業に参入しています。
現在の従業員数はグループ全体で811名、単体で178名となっています。同社の株式状況について、筆頭株主は法人のミソノサービスで、第2位および第3位は金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ミソノサービス | 17.33% |
| りそな銀行 | 4.97% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は鷲裕一が務めています。社外取締役は2名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鷲裕一 | 取締役社長(代表取締役)グループ技術担当 | 1984年に同社入社。開発技術部長などを経て、2019年に取締役社長へ就任。2020年より現職。 |
| 八代健太郎 | 取締役専務(代表取締役) | 2004年にアイシン精機入社。2017年に同社へ入社し、浜松事業所長などを経て、2026年より現職。 |
| 川本修 | 取締役グループ海外事業担当海外染色加工事業部長製品事業部長 | 1990年に同社入社。海外事業本部長やインドネシア子会社社長などを歴任し、2025年より現職。 |
| 石原めぐみ | 取締役子育て支援事業担当 | 2012年にトットメイトへ入社し、同社代表取締役社長に就任。2024年より同社取締役として現職。 |
| 八代英次朗 | 取締役国内染色事業担当国内染色加工事業部長浜松事業所長岐阜事業所長テキスタイル事業部長 | 2014年に同社入社。戦略推進部長などを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、古池威(元リクルートコミュニケーションエンジニアリング代表取締役)、増田芳隆(元リクルートホールディングス経理部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「染色加工事業」「縫製品販売事業」「子育て支援事業」「倉庫事業」「機械販売事業」「洗濯事業」および「その他」事業を展開しています。
■染色加工事業
綿・レーヨンなどの天然繊維および合成繊維の織物・編物に対する染色加工と、衣料品を中心としたテキスタイル販売を行っています。アパレルやユニフォーム向けなど、高い技術力に基づく高品質な生地を提供しています。
収益は、取引先からの加工料やテキスタイルの販売代金として得ています。運営は同社のほか、海外子会社のTOKAI DYEING CO., (THAILAND) LTD. や P.T. TOKAI TEXPRINT INDONESIAが担っています。
■縫製品販売事業
パンツ、パジャマ、カジュアルシャツ、リゾートウェアなどの縫製品を企画・販売しています。セレクトショップ向けの婦人衣料やキャラクター関連グッズなども幅広く手掛けています。
収益は、アパレル小売店や卸売業者等からの商品販売代金として得ています。同事業の運営は、主に同社が単独で行っています。
■子育て支援事業
ベビーシッターサービスや企業内保育所の運営受託、放課後児童クラブなどの託児所での保育サービス事業を展開しています。待機児童問題の解決や働きやすい環境づくりをサポートしています。
収益は、企業や自治体からの施設運営受託料や、利用者からの保育利用料として得ています。運営は、国内子会社のトットメイトおよびマミーズが行っています。
■倉庫事業
主に繊維製品等の荷役・保管などの倉庫管理業務を行っています。グループ内の物流を支えるとともに、外部顧客向けの保管ニーズにも対応しています。
収益は、顧客企業や同社からの荷役取扱料および保管料として得ています。運営は、国内子会社のTKサポートが行っています。
■機械販売事業
染色関連設備の開発で培った技術を活かし、国内外に向けて染色関連設備や薬液濃度制御装置などを提案・販売しています。異業種への技術転用を通じた販路拡大にも注力しています。
収益は、設備導入企業からの機器販売代金として得ています。運営は同社および国内子会社のTKサポートが行っています。
■洗濯事業
ホテルなどで利用されるリネン類(シーツ、タオルなど)のクリーニングサービスを提供しています。インバウンド需要に伴う宿泊施設の稼働率向上により、安定したサービス展開を行っています。
収益は、ホテルやレジャー関連施設からのクリーニング代金として得ています。運営は同社および国内子会社のTKサポートが行っています。
■その他事業
上記の報告セグメントに含まれない付随事業として、システム事業や不動産賃貸事業を行っています。
収益は、テナント企業や利用者からの賃貸料等として得ています。運営は同社および国内子会社のTKサポートが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は130億円から140億円台で推移していましたが、直近では減収に転じています。経常利益は増減を繰り返しており、直近は減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 111億円 | 131億円 | 132億円 | 143億円 | 138億円 |
| 経常利益 | 1億円 | 2億円 | 1億円 | 6億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 1.0% | 1.5% | 1.0% | 4.0% | 2.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | -2億円 | -1億円 | 1億円 | 1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を下回る結果となりました。利益率も低下傾向にあり、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 143億円 | 138億円 |
| 売上総利益 | 21億円 | 18億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.8% | 13.4% |
| 営業利益 | 4億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 1.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が6億円(構成比34%)、役員報酬が2億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の染色加工事業において、国内のユニフォーム分野の在庫過多や海外での受注苦戦により減収減益となりました。一方、子育て支援事業や洗濯事業などは堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 染色加工事業 | 98億円 | 88億円 | 1億円 | -1億円 | -1.3% |
| 縫製品販売事業 | 4億円 | 3億円 | 0.3億円 | 0.3億円 | 7.9% |
| 子育て支援事業 | 39億円 | 42億円 | 1億円 | 1億円 | 3.3% |
| 倉庫事業 | 0.4億円 | 0.4億円 | 0.2億円 | 0.1億円 | 19.2% |
| 機械販売事業 | 0.8億円 | 0.7億円 | 0.1億円 | - | 1.9% |
| 洗濯事業 | 2億円 | 2億円 | 0.1億円 | 0.3億円 | 13.5% |
| その他 | 0.7億円 | 0.7億円 | 0.7億円 | 0.8億円 | 104.7% |
| 連結(合計) | 143億円 | 138億円 | 4億円 | 2億円 | 1.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであるため「健全型」です。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 6億円 |
| 投資CF | -0.4億円 | -0.9億円 |
| 財務CF | -5億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.7%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も52.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「私たちは、ひとびとの生活をより楽しく、快適にすることをサポートします。」を企業理念として掲げています。常にお客様の立場に立ち、生きた情報を共有化し、その要求やニーズに的確に応えることを第一の目的として行動することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
従来からの「開発型企業」としてのポリシーを保つことを重視しています。お客様が満足される商品を絶えず生み出し続けることにより、安定的な業績を実現し、株主や取引先、社員等に貢献することを経営の基本とする文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、更なる企業価値の向上を図るため、資本効率を重視した目標数値を掲げています。国内および海外における各事業の収益性を高めることで、安定的な業績の実現を目指しています。
* ROE(自己資本当期純利益率)10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
人々の生活に直結する商品やサービスを取り扱う「生活関連創造事業」を中心に、非繊維事業(子育て支援、洗濯、機械販売など)の更なる拡大と新規事業の創出を図ります。主力の繊維事業においては、新たな素材への挑戦や機能性繊維への対応、海外での新規マーケット開拓を進め、事業基盤の強化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、一人ひとりの人格・個性・知見を尊重し、能力が活かせる職場環境の整備を重要視しています。性別や国籍、採用形態を問わない人物本位の採用を実施するとともに、社内研修制度の充実や、属人的な技術の体系化による技能継承を推進し、中核人材への登用を積極的に行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.4歳 | 21.3年 | 4,707,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 82.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 83.5% |
※男性労働者の育児休業取得率について、取得実績がない等の理由により数値が記載されていません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の採用割合(55.1%)、有給休暇の平均取得率(54.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 季節要因による業績変動リスク
同社の主力である染色加工事業および縫製品販売事業は、春夏型素材の天然繊維を主力としています。そのため、下半期に売上が増加する傾向があり、流行やトレンドにあったテキスタイルをタイムリーに提供できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外取引および為替変動リスク
海外売上高の比率が高く、商品の生産も海外への委託が主体となっています。各国の政治体制の変動や経済情勢、法規則の変更、物流費の高騰などが発生した場合や、為替相場の変動によるリスクを完全に回避できない場合、業績に悪影響を与える懸念があります。
■(3) 原材料およびエネルギー価格の変動リスク
染色加工の動力源としてバイオマスボイラーを活用していますが、木屑チップ価格の値上がりや重油価格の高騰は製造コストに直結します。また、染料や薬品などの輸入依存度も高く、環境規制や需給バランスの崩れによる調達価格の上昇が業績を圧迫する可能性があります。
■(4) 専門人材の確保リスク
染色加工には「色」や「風合い」といった感覚的な付加価値を与えるため、高い知識と経験を持つ職人的な人材が不可欠です。社内研修や技術の文書化・マニュアル化を通じて技能継承を進めていますが、優秀な人材の確保と育成が計画通りに進まない場合、競争力の低下につながるリスクがあります。



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