東海染工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東海染工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・名証プレミア上場の繊維製品加工大手です。染色加工を主力に、子育て支援や洗濯事業など「生活関連創造事業」へ展開しています。当連結会計年度は、インドネシア子会社の受注回復や子育て支援事業の拡大により、売上高143億円(前期比8.6%増)、経常利益5.7億円(同320.0%増)の増収増益でした。


※本記事は、東海染工株式会社 の有価証券報告書(第105期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東海染工ってどんな会社?


染色加工事業を祖業とし、現在は子育て支援や洗濯事業などの生活関連サービスも展開する多角化企業です。

(1) 会社概要


同社は1941年に名古屋市で綿織物の染色加工を目的に設立されました。1963年にはタイ、1990年にはインドネシアへ進出し、早期から海外展開を進めてきました。国内繊維産業の変化に対応し、2010年には保育サービスを行うトットメイトを設立して子育て支援事業に参入しました。2017年からは洗濯事業を開始するなど事業ポートフォリオの転換を図り、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は782名、単体では190名です。筆頭株主は創業家に関連する資産管理会社のミソノサービスで、第2位はりそな銀行、第3位は三菱UFJ銀行と続いています。

氏名 持株比率
ミソノサービス 18.31%
りそな銀行 4.96%
三菱UFJ銀行 4.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は鷲裕一氏です。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
鷲 裕一 取締役社長(代表取締役)グループ技術担当 1984年同社入社。開発技術部長、染色加工事業本部長などを経て2019年より現職。
八代 健太郎 取締役専務(代表取締役)管理部長総務部長 アイシン精機(現アイシン)を経て2017年同社入社。国内染色加工事業部長などを歴任し2025年より現職。
川本 修 取締役海外染色加工事業部長製品事業部長 1990年同社入社。海外事業本部長、インドネシアT.T.I社長などを経て2020年より取締役。
石原 めぐみ 取締役 ジェイアール東海ホテルズ等を経てトットメイト入社。同社社長を務め2024年より現職。
八代 英次朗 取締役国内染色加工事業部長戦略推進部長テキスタイル事業部長 リクルートHRマーケティング東海を経て2014年同社入社。戦略推進部長を経て2025年より現職。


社外取締役は、古池威(元リクルートキャリアエグゼクティブ)、増田芳隆(元リクルート経理部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「染色加工」「縫製品販売」「子育て支援」「倉庫」「機械販売」「洗濯」「その他」の7つの報告セグメントおよび事業を展開しています。

染色加工事業

天然繊維や合成繊維の織物・編物に対する染色加工、および衣料品関連のテキスタイル販売を行っています。アパレルメーカーや商社が主な顧客です。
収益は、顧客から受託する染色加工料およびテキスタイル製品の販売代金から得ています。運営は、同社のほか、国内子会社のデッサン・ジュン、海外子会社のTOKAI DYEING CO.,(THAILAND)LTD.(タイ)、P.T.TOKAI TEXPRINT INDONESIA(インドネシア)が行っています。

縫製品販売事業

パンツ、パジャマ、カジュアルシャツなどの縫製品を販売しています。主にアパレル企業や小売店向けに商品を供給しています。
収益は、これらの縫製品の販売代金から得ています。運営は主に同社が行っています。

子育て支援事業

ベビーシッターサービスや、企業内託児所・病院内託児所等の運営受託、認可保育園の運営を行っています。
収益は、利用者からの保育料や委託元からの運営委託料から得ています。運営は、国内子会社のトットメイトおよびマミーズが行っています。

倉庫事業

主に繊維製品等の荷役・保管業務を行っています。
収益は、荷主からの保管料や荷役料から得ています。運営は、国内子会社のTKサポートが行っています。

機械販売事業

染色関連設備や薬液濃度制御装置などの販売を行っています。染色技術を応用した装置を異業種へも展開しています。
収益は、機器の販売代金から得ています。運営は、同社および国内子会社のTKサポートが行っています。

洗濯事業

ホテルやレジャー施設などで利用されるリネン類(シーツ、タオル等)のクリーニングサービスを提供しています。
収益は、ホテルや施設等の顧客からのクリーニング料金から得ています。運営は、同社および国内子会社のTKサポートが行っています。

その他事業

システム開発事業および不動産賃貸事業を展開しています。
収益は、システム開発の対価や保有不動産の賃貸料から得ています。運営は、同社および国内子会社のTKサポートが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は106億円から143億円へと着実に拡大傾向にあります。特に直近では4期連続の増収を達成しています。利益面では、原材料高騰等の影響を受け一時的に赤字や低収益となりましたが、当期は経常利益が大きく伸長し、利益率も改善しました。親会社株主に帰属する当期純利益も過去5期で最高水準となり、回復基調が鮮明です。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 106億円 111億円 131億円 132億円 143億円
経常利益 -0.7億円 1.2億円 1.9億円 1.4億円 5.7億円
利益率(%) -0.7% 1.0% 1.5% 1.0% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.7億円 0.5億円 -1.0億円 1.3億円 3.1億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益が大きく伸長しました。売上総利益率は前年の12.4%から14.8%へと改善しており、営業利益の大幅な増益(前期比約10倍)に寄与しています。販管費も増加していますが、増収効果と利益率改善がそれを上回り、本業の収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 132億円 143億円
売上総利益 16億円 21億円
売上総利益率(%) 12.4% 14.8%
営業利益 0.4億円 4.2億円
営業利益率(%) 0.3% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が5.8億円(構成比34%)、役員報酬が2.9億円(同17%)を占めています。売上原価においては、人件費や原材料費が含まれていますが、詳細は開示されていません。

(3) セグメント収益


当期は、主力の染色加工事業が海外子会社の受注回復等により増収増益となり、全社業績を牽引しました。子育て支援事業も施設数増加で増収となりましたが、コスト増により減益でした。洗濯事業や倉庫事業は堅調に推移し黒字を確保しています。一方、縫製品販売事業は減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
染色加工 89億円 98億円 -2.7億円 1.4億円 1.4%
縫製品販売 4.2億円 3.5億円 0.4億円 0.3億円 8.0%
子育て支援 35億円 39億円 1.8億円 1.4億円 3.6%
倉庫 0.4億円 0.4億円 -0.0億円 0.2億円 41.4%
機械販売 0.9億円 0.8億円 0.0億円 0.1億円 11.8%
洗濯 1.4億円 1.6億円 0.2億円 0.1億円 6.7%
その他 0.8億円 0.7億円 0.8億円 0.7億円 102.7%
調整額 -3.0億円 -3.1億円 0.0億円 0.0億円 -
連結(合計) 132億円 143億円 0.4億円 4.2億円 2.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東海染工のキャッシュ・フローの状況は、営業活動で大幅な収入を得ており、事業活動から潤沢な資金を生み出していることがわかります。投資活動では、資産の売却収入を上回る設備投資等で支出がありましたが、全体としては資金は増加しています。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払い等で支出がありましたが、これも含めて最終的な現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5.3億円 8.1億円
投資CF -0.2億円 -0.4億円
財務CF -4.4億円 -4.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ひとびとの生活をより楽しく、快適にすることをサポートします。」という企業理念を掲げています。常にお客様に満足と安心感を与え続けることを目標とし、営業・生産・開発の全部門がお客様の立場に立ち、ニーズに応えることを第一の目的として行動することを基本方針としています。

(2) 企業文化


開発型企業としてのポリシーを保ちながら、お客様が満足する商品を絶えず生み出し続けることを重視しています。また、サステナビリティへの取り組みとして、地球温暖化対策や循環型社会の形成を目指し、省エネ設備の導入や資源の再利用に努めるなど、環境負荷軽減に取り組むモノづくりの姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、更なる企業価値の向上を図るために、以下の経営指標を目標として掲げています。この指標を重要なものと位置づけ、国内外における各事業の収益性を高め、資本効率の向上に取り組む方針です。

* ROE(自己資本当期純利益率):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「生活関連創造事業」を中心に、非繊維事業の拡大と新規事業の創出を目指しています。子育て支援事業では企業内保育所の受託拡大や認可保育園への参入を進め、染色加工事業では海外での新規開拓や高付加価値化、国内での生産性向上を図ります。

* 子育て支援事業の拡大およびサービス強化
* 染色加工事業の収益改善(海外での新規開拓、国内での生産性向上)
* 非繊維事業(洗濯、機械販売等)の更なる拡大に向けた新規事業の創出

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


一人ひとりの人格・個性・知見を尊重し、それぞれの特性や能力が活かせる職場環境の整備を重視しています。性別・国籍・採用形態を問わず人物本位の採用を実施し、個人の能力・成果に基づいた積極的な中核人材への登用を行っています。また、染色加工事業においては「職人」的人材が不可欠であるため、技術・知識の継承にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.4歳 19.7年 4,937,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.9%
男女賃金差異(正規雇用) 73.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 86.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の採用割合(35.6%)、有給休暇の平均取得率(正規社員)(47.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 季節による変動の影響

同社グループの主力である染色加工事業および縫製品販売事業は、春夏向け素材が中心であるため、売上が下半期に偏る傾向があります。秋冬素材の強化も進めていますが、季節要因により経営成績が変動するリスクがあります。

(2) 海外取引・為替変動リスク

海外売上高比率は約3割を占め、また商品の多くを海外生産・輸入に依存しています。各国の政治経済情勢の変化や、為替レートの変動が、業績に影響を与える可能性があります。為替予約等でリスク回避を図っていますが、全てのリスクを排除できるわけではありません。

(3) 原材料調達価格の変動

染色加工事業では、バイオマス燃料(木屑チップ)や重油、染料・薬品などを使用しています。これら原材料やエネルギー価格の高騰、あるいは環境規制や災害等による需給バランスの崩れが、調達コストの上昇を招き、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。