ソトー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソトー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソトーは東証スタンダード及び名証プレミア市場に上場する繊維製品の染色加工と製品販売事業を手掛ける企業です。ウールや複合素材の高級衣料向け染色加工を中核としつつ、アパレル製品等の企画や販売にも注力しています。直近の業績は、染色加工が苦戦したものの製品販売が牽引し、増収および最終増益を達成しました。


※本記事は、ソトーの有価証券報告書(第155期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ソトーってどんな会社?


同社は、繊維製品の染色加工事業と製品販売事業を中核として展開する東証スタンダード・名証プレミア上場企業です。

(1) 会社概要


1923年に愛知県で一宮整理として創立され、1924年に蘇東興業へ商号を変更しました。1950年に名証、1961年に東証へ上場し、1992年に現在のソトーへ社名を変更しています。直近では2025年にアパレル事業を展開するジェノなどを子会社化し、製品販売事業の領域拡大を推進しています。

現在、同社グループは連結で575名、単体で317名の従業員を擁しています。筆頭株主はミソノサービスで、第2位の日本毛織、第3位のダイドーリミテッドなど、繊維関連の事業会社が主要株主として名を連ねており、業務の円滑な推進を目的とした資本提携関係が構築されています。

氏名 持株比率
ミソノサービス 18.90%
日本毛織 9.50%
ダイドーリミテッド 7.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役取締役社長は上田康彦氏が務めており、2名の社外取締役を選任しています。

氏名 役職 主な経歴
上田 康彦 代表取締役取締役社長 1986年同社入社。テキスタイル事業部長や経営管理部長等を歴任し、2018年より現職。
棚橋 宣文 取締役染色加工事業部長 1987年同社入社。第一事業部長や一宮事業部長等を歴任し、2023年より現職。
小澤 活人 取締役経営管理部長 1987年同社入社。経営管理部長等を経て、2020年より現職。


社外取締役は、高塚良司氏(元地域経済活性化支援機構シニアディレクター)、吉野哲氏(ウォーターフロント代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「染色加工事業」「製品販売事業」「不動産事業」を展開しています。

染色加工事業


ウール及び複合素材を中心とした高級ファッション衣料やメンズ衣料、フォーマル、オフィスユニフォーム向けの素材の染色加工を行っています。起毛加工や光沢加工の表面加工、撥水やウォッシャブル加工等の機能加工により、素材の付加価値を高めています。

顧客であるアパレルメーカーや商社等から委託加工料を受け取ります。運営は主にソトーが行い、一部の染色加工工程を子会社のソトー興産に委託しているほか、ソトー商事が材料の購入業務を担っています。

製品販売事業


高級ファッション衣料やオフィスユニフォーム等の素材および製品の企画、製造、販売を行っています。染色加工事業との連携を強化し、付加価値を高めながら、素材から最終製品に至る領域の拡大を図っています。

製品の販売を通じて顧客から代金を受け取る収益モデルです。運営はソトーおよびソトージェイテック、Jファブリック・インターナショナル、兒玉毛織、ジェノの連結子会社4社が独立して製造・販売を行っています。

不動産事業


量販店等の流通業者を主要な顧客として、自社が保有する店舗や土地などの不動産物件を賃貸する事業を展開しています。

賃貸先である量販店等から店舗や土地の賃貸料を受け取る収益モデルです。当事業の運営は、主にソトーが主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、売上高は75億円から107億円規模まで回復傾向にあります。一方で経常利益は、原材料価格の高騰やアパレル市況の変化によりマイナス圏での推移が目立ち、収益性の安定確保が課題となっています。当期は投資有価証券売却益の計上などにより、最終利益は黒字を確保しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 75億円 98億円 107億円 100億円 107億円
経常利益 -4億円 -3億円 5億円 0.3億円 -0.4億円
利益率(%) -5.7% -3.0% 4.3% 0.3% -0.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -8億円 -4億円 29億円 4億円 3億円

(2) 損益計算書


直近2期間の売上高は100億円から107億円へと増収となりました。しかし、原材料高による売上原価の増加や、販売費及び一般管理費の上昇により、営業利益は連続してマイナスとなっており、本業の収益改善が急務となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 100億円 107億円
売上総利益 9億円 12億円
売上総利益率(%) 9.3% 11.2%
営業利益 -1億円 -2億円
営業利益率(%) -1.5% -2.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が3億円(構成比21%)、研究開発費が1億円(同8%)を占めています。一方、売上原価は95億円に上り、売上高に対する原価率は89%を占めており、コスト管理が重要な課題です。

(3) セグメント収益


主力である染色加工事業は、暖冬やアパレル業界の在庫抑制の影響で減収となりました。一方、製品販売事業は子会社化による収益寄与があり、大幅な増収に貢献しました。不動産事業は安定した推移を見せています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
染色加工事業 59億円 57億円
製品販売事業 37億円 45億円
不動産事業 4億円 5億円
連結(合計) 100億円 107億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスであり、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 5億円 10億円
投資CF -13億円 -6億円
財務CF -8億円 -11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「感性技術で未来を拓く」を企業理念のスローガンに掲げています。優れた感性と技術で新しい価値を創造し、人々の暮らしに新鮮な喜びや豊かさをもたらすことを使命としています。さらに、「地球は着替えることができないから」という環境理念のもと、環境負荷低減に邁進し、持続的な社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、SDGsへの取り組みを通じた企業価値向上と、地域社会やステークホルダーとの共存共栄を図る姿勢を重視しています。また、従業員一人ひとりが心身ともに健康で個性と能力を活かせるよう、適切な働き方の実現やストレスのない職場づくりを目指す「健康宣言」を掲げ、健全な組織文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、急速に変化する市場環境に柔軟に対応できる体制を確立し、安定的・持続的な利益基盤の確立と成長を目指しています。当面の数値目標として、以下の指標を掲げています。

・ROE(連結自己資本利益率)5%
・DOE(連結純資産配当率)3.5%

(4) 成長戦略と重点施策


染色加工事業では、柔軟な人員体制による生産性の向上と、環境負荷低減によるコストダウンを進め、安定的収益基盤を構築します。また、製品販売事業との連携によりオリジナル加工を開発し、自販強化を図ります。市場ニーズを的確に捉えた提案や、M&Aを視野に入れた水平・垂直展開を通じて、事業領域と利益の拡大を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本の強化を経営戦略の実現に不可欠と位置づけ、高度な加工技術を継承する技能人材や、生産性向上・品質安定化を支える専門人材の計画的育成を進めています。OJTや資格取得支援に加え、DX研修等を整備しています。また、労働時間管理の適正化や育児・介護との両立支援など、働きがいのある職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.5歳 20.9年 4,858,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 136.2%


※女性管理職比率については、具体的な数値の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受託加工における受注変動リスク


同社の染色加工事業は得意先の商品に加工を施す受託加工であり、売上高の過半を占めています。最終製品を扱うアパレルや百貨店などの販売状況や、在庫調整に伴う得意先の生産量見直しが行われた場合、翌年の生産量や業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。

(2) ファッショントレンドの変化


染色加工事業の顧客は尾州地区に集中しており、同地区はウール素材を主体としています。消費者の嗜好や素材のファッショントレンドの変化によって受注数量が大きく左右される傾向にあり、市場ニーズを的確に捉えられない場合、業績が悪化するリスクがあります。

(3) 原材料・エネルギー価格の高騰


染色加工事業で使用する原材料の多くは石油化学製品に依存しており、エネルギーもガスを主体としています。原油やガス価格が想定を超えて急騰した場合、加工単価への転嫁や省エネ対策だけでは吸収しきれず、利益率の低下など業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。