ソトー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ソトー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・名証プレミア上場企業です。毛織物産地である尾州地区を拠点に、繊維製品の染色加工、テキスタイル販売、不動産賃貸事業を展開しています。当期の業績は、主力事業での受注減少やコスト増に加え、特別利益の減少などにより、売上高は減少、利益面でも大幅な減益となりました。


※本記事は、株式会社ソトー の有価証券報告書(第154期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ソトーってどんな会社?


染色加工の老舗企業であり、テキスタイル販売や不動産事業も展開する、尾州地区の有力企業です。

(1) 会社概要


1923年に一宮整理として設立され、1950年に名証、1961年に東証二部(現スタンダード)へ上場しました。染色整理業を祖業とし、数々の合併や再編を経て現在の事業体制を構築しています。2023年には事業部制を廃止し染色加工事業部を新設、2025年には株式会社ジェノ等を子会社化し事業領域を拡大しています。

2025年3月31日現在の連結従業員数は586名、単体では329名です。筆頭株主は不動産管理等を行うミソノサービスで、第2位はアパレルメーカーのダイドーリミテッド、第3位は繊維メーカーの日本毛織となっており、事業会社や創業家関連企業が上位を占めています。

氏名 持株比率
ミソノサービス 18.52%
ダイドーリミテッド 10.25%
日本毛織 9.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役取締役社長は上田康彦氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
上田 康 彦 代表取締役取締役社長 1986年同社入社。テキスタイル事業部長、開発部長、経営管理部長などを歴任し、2012年常務取締役。2018年6月より現職。グループ会社の代表取締役も兼務。
棚 橋 宣 文 取締役染色加工事業部長 1987年同社入社。第一事業部長、一宮事業部長などを歴任。2018年取締役に就任し、技術管理担当等を経て、2025年3月より現職。
小 澤 活 人 取締役経営管理部長 1987年同社入社。2018年経営管理部長に就任。2020年6月より現職。ソトー興産株式会社の代表取締役も兼務。


社外取締役は、髙塚良司(元CDIメディカル執行役員)、吉野哲(元福助代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「染色加工事業」、「テキスタイル事業」、「不動産事業」を展開しています。

(1) 染色加工事業


ウール及び複合素材を中心とした高級ファッション衣料、メンズ衣料、フォーマル、オフィスユニフォーム向け素材の染色加工を行っています。起毛加工や光沢加工などの表面加工、撥水やウォッシャブルなどの機能加工を提供し、素材の付加価値を高めています。

収益は、顧客である繊維商社やアパレルメーカー等からの委託加工料等により構成されています。運営は主に同社が行い、連結子会社のソトー興産株式会社が工程の一部を受託しています。また、ソトー商事株式会社が材料等の購入業務を行っています。

(2) テキスタイル事業


高級ファッション衣料やオフィスユニフォーム等の素材および製品の企画、製造、販売を行っています。染色加工事業との連携や、子会社間の連携により、素材から最終製品に至るまで領域を拡大しています。

収益は、アパレルメーカーや商社等への製品・素材の販売代金です。運営は同社のほか、連結子会社である株式会社ソトージェイテック、株式会社Jファブリック・インターナショナル、兒玉毛織株式会社、株式会社ジェノ、G-STAGE・JAPAN株式会社が行っています。

(3) 不動産事業


同社が保有する不動産資産を活用し、量販店等に対する店舗ならびに土地の賃貸等を行っています。

収益は、テナントからの賃貸料収入等です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2023年3月期にかけては経常損失が続いていましたが、2024年3月期には黒字転換を果たしました。しかし、直近の2025年3月期は、売上高が減少し、利益面でも縮小しています。当期純利益については、2024年3月期に大幅な黒字を計上した後、2025年3月期は減少しましたが黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 75億円 75億円 98億円 107億円 100億円
経常利益 -4.7億円 -4.3億円 -3.0億円 4.6億円 0.3億円
利益率(%) -6.2% -5.7% -3.0% 4.3% 0.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -3.0億円 -7.5億円 -4.3億円 29億円 4億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は減少し、売上原価率は上昇しました。これにより売上総利益が減少し、営業損益は赤字に転落しています。販売費及び一般管理費は増加傾向にあり、コスト負担が重くなっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 107億円 100億円
売上総利益 13億円 9.4億円
売上総利益率(%) 12.2% 9.3%
営業利益 3.4億円 -1.5億円
営業利益率(%) 3.2% -1.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2.2億円(構成比19.9%)、研究開発費が1.1億円(同10.0%)を占めています。売上原価については、内訳の記載がないため詳細は不明ですが、売上高に対する比率は90.7%となっています。

(3) セグメント収益


染色加工事業は冬物需要の減少等により減収となり、営業損失が拡大しました。テキスタイル事業は売上が微増したものの、経費増やM&A費用等の影響で減益となりました。不動産事業は増収増益となり、安定した収益源となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
染色加工事業 66億円 59億円 -0.5億円 -5.0億円 -8.5%
テキスタイル事業 37億円 37億円 1.1億円 0.5億円 1.4%
不動産事業 4.1億円 4.5億円 2.8億円 3.0億円 66.6%
連結(合計) 107億円 100億円 3.4億円 -1.5億円 -1.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローを基本に将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達していく考えです。

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の減少等により増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が主な要因で減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い、短期借入金の減少、自己株式の取得等により減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5.6億円 4.8億円
投資CF 19億円 -13億円
財務CF 0.6億円 -8.0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「感性技術で未来を拓く」をスローガンとしています。優れた感性と技術で新しい「価値」を創造し、人々の暮らしに新鮮な喜びや豊かさをもたらすことを企業の使命としています。事業領域と輸出の拡大を図り、安定的かつ持続的な成長の実現を目指しています。

(2) 企業文化


「地球温暖化防止」と「地球環境の保全」を活動の最重要課題と位置づけ、環境負荷を最小限にする取り組みを推進しています。また、地域社会やステークホルダーとの共存共栄を図る姿勢を重視しています。SDGs活動を積極的に進め、持続可能な社会への貢献を目指す風土があります。

(3) 経営計画・目標


急速に変化する市場環境に対応し、安定的・持続的な利益基盤の確立と成長を目指しています。当面の経営指標として以下の目標を掲げています。

* ROE(連結自己資本利益率):5%
* DOE(連結純資産配当率):3.5%

(4) 成長戦略と重点施策


染色加工事業とテキスタイル事業等の連携により、自社販売の強化を成長戦略として掲げています。具体的には、化合繊のオリジナル加工開発による事業領域の拡大、市場ニーズを捉えた高付加価値商品の提案、独自素材・加工によるブランド確立と輸出拡大を目指しています。また、M&Aを視野に入れた水平・垂直展開による利益拡大も進めています。

構造改革としては、染色加工事業における安定的収益基盤の構築に向け、全体最適な生産体制による工場運営、染色改革と環境負荷低減によるコストダウン、柔軟な人員体制による生産性向上に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「サステナビリティ推進室」の人権労働部会において、人材育成・活性化、働き方改革・健康づくりを推進しています。健康宣言のもと、適切な働き方の実現やストレスのない職場づくりに取り組み、女性活躍宣言により採用・職域の拡大や組織内の意識改革を進めています。また、社員教育の充実を通じて従業員の意識改革を図り、生産性の向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.2歳 20.5年 4,857,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.2%
男女賃金差異(正規) 78.1%
男女賃金差異(非正規) 106.0%


※女性管理職比率は、算出されているものの数値が「―」と記載されています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受託加工業について


主力である染色加工事業は、得意先の商品に対する受託加工を行っています。そのため、アパレルや百貨店等の市場販売動向や在庫状況に応じた得意先の生産調整により、同社グループの受注・生産量が変動し、業績に影響を与える可能性があります。

(2) トレンドの変化について


染色加工事業の顧客はウール素材を主体とする尾州地区に集中しており、素材のファッショントレンドの変化により受注数量が左右される傾向があります。素材の多様化に対応した差別化加工の提案等を進めていますが、消費者の嗜好動向によっては業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 原油・ガス価格の変動について


染色加工事業の原材料やエネルギーは石油化学製品やガスに依存しています。価格転嫁や省エネ対策に努めていますが、想定以上の原油・ガス価格の上昇があった場合、コスト増により業績に影響を与える可能性があります。

(4) 不動産賃貸先の状況について


不動産事業は主に流通業者への賃貸を行っていますが、同業界の競争激化により賃貸料の値下げ圧力や、不採算による店舗閉鎖のリスクがあります。これらが発生した場合、賃貸収入の減少等により業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。