ニチモウ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチモウ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するニチモウは、水産物の漁獲から加工・販売までをトータルサポートする事業を展開しています。主力の食品事業のほか、漁網等の海洋事業、食品加工機械事業、資材事業などを手掛けます。直近の業績は売上高が増加したものの、製造コスト上昇等の影響で増収減益となりました。


※本記事は、ニチモウ株式会社の有価証券報告書(第140期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニチモウってどんな会社?


水産物の漁獲から加工・販売までを網羅する多様な事業展開と企業体制を紹介します。

(1) 会社概要


1910年に山口県下関市で創業され、1919年に高津商会として設立された後、翌年に日本漁網船具へ社名を変更しました。1962年に東京証券取引所市場第二部に株式を上場し、1967年に市場第一部銘柄に指定されています。1972年に現在の社名であるニチモウに変更し、現在は食品や機械など幅広い分野で事業を展開しています。

従業員数は連結で1,036名、単体で201名です。筆頭株主は朝日生命保険相互会社(常任代理人 日本カストディ銀行)で、第2位は個人の上位株主である中村格彰氏、第3位は水産関連の事業会社である渡辺冷食となっています。

氏名 持株比率
朝日生命保険相互会社(常任代理人 日本カストディ銀行) 7.58%
中村 格彰 7.47%
渡辺冷食 6.35%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は青木信也氏、代表取締役会長は松本和明氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
青木 信也 代表取締役社長執行役員 1985年に同社へ入社。四国営業所長、執行役員福岡支店長、資材事業本部長、海洋事業本部長などを経て、2024年6月より現職。
松本 和明 代表取締役会長 1976年に同社へ入社。福岡支店長、食品第一事業部長、食品事業本部長などを経て、2014年に代表取締役社長へ就任。2024年6月より現職。
土田 祥之 取締役常務執行役員食品事業部門管掌 1986年に同社へ入社。食品第二営業部長、大阪支店長、執行役員食品事業本部長などを歴任し、2025年6月より現職。
諏訪部 俊彦 取締役常務執行役員海洋・機械・資材事業部門管掌 1982年に同社へ入社。食品第三営業部長、食品第二事業部長、福岡支店長、大阪支店長、海洋事業本部長などを経て、2025年6月より現職。
福井 豊 取締役執行役員大阪支店長 1989年に同社へ入社。機械営業部長、執行役員機械・資材事業本部長などを経て、2026年4月より現職。
小島 章伸 取締役執行役員管理部門担当 1989年に同社へ入社。食品第三営業部長、財務部長、執行役員総務部長兼財務部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、菊池達也氏(元朝日生命保険相互会社代表取締役専務執行役員営業総局長)、平田淳氏(元みずほマーケティングエキスパーツ代表取締役社長)、明石仁成氏(日本測器代表取締役)、吉江由美子氏(東洋大学生命科学部食品環境科学科教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、食品事業、海洋事業、機械事業、資材事業、バイオティックス事業、物流事業およびその他事業を展開しています。

食品事業


すり身、鮮魚、冷凍魚、魚卵、各種水産加工品の製造・加工・販売を行っています。スーパーマーケットなどの量販店や外食産業、業務用向けに付加価値の高い商品を供給しています。

収益は、国内外からの水産物の調達や加工品の販売による対価として得ています。運営は同社のほか、ニチモウフーズやはねうお食品などの子会社が行っています。

海洋事業


漁網・ロープ類などの漁具の製造・仕立・修理のほか、養殖用生簀や関連機資材、船舶機器の販売を行っています。水産業者や造船業者が主な顧客です。

収益は、各種漁具・機資材の販売や関連サービスの提供から得ています。運営は同社および、北海道ニチモウ、西日本ニチモウ、ノールイースタントロールシステムズなどの子会社が担っています。

機械事業


食品加工機械などの製造・加工・販売を行っています。国内外の食品製造工場における生産効率化や省力化に向けた設備投資需要に応えています。

収益は、自社子会社および主要な取引先で製造した加工機械の販売代金として得ています。ビブンやソーエーなどの子会社において製造が行われ、同社および子会社が販売を担当しています。

資材事業


印刷用フィルムやダンボールなどの包装資材、塩化ビニールシートなどの合成樹脂、および農業・畜産向けの資材の販売を行っています。

収益は、化成品や農畜資材の販売代金として顧客から得ています。この事業は主に同社が主体となって運営し、販売活動を展開しています。

バイオティックス事業


発酵大豆製品や健康食品の製造・加工・販売を行っています。医療関係者向けの販売や通信販売、薬局向けのOEM商品の提供などを手掛けています。

収益は、各種健康食品や関連製品の販売代金として得ています。運営および製造は、子会社のニチモウバイオティックスが担っています。

物流事業


グループ内外の貨物を対象に、物流および運送サービスを提供しています。慢性的な労働・物流コストの上昇に対応しながら、事業の選択と集中を進めています。

収益は、配送や運送に伴う物流サービス料として得ています。運営は子会社のニチモウロジスティクスが行っています。

その他


不動産の賃貸、人材派遣業、および石油製品の販売など、報告セグメントに含まれない周辺事業を展開しています。

収益は、不動産の賃貸料や人材派遣に係る手数料などから得ています。人材派遣や不動産業は日網興産が、石油製品の販売は持分法適用会社の日本サン石油が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は1,155億円から1,398億円へと拡大傾向にあります。一方、経常利益は26億円から36億円のレンジで推移しており、直近は製造コストの上昇や原材料価格の変動等の影響により、利益率が2%台となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,155億円 1,268億円 1,278億円 1,339億円 1,398億円
経常利益 36億円 32億円 26億円 36億円 30億円
利益率(%) 3.1% 2.5% 2.0% 2.7% 2.2%
当期利益 15億円 17億円 11億円 14億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高は増加していますが、売上総利益率はほぼ横ばいで推移しています。原材料価格の高騰や製造コストの上昇が利益を圧迫しており、営業利益率も若干の低下傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,339億円 1,398億円
売上総利益 122億円 124億円
売上総利益率(%) 9.1% 8.9%
営業利益 30億円 28億円
営業利益率(%) 2.2% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が47億円(構成比49%)と最も大きく、次いでその他経費が25億円(同26%)、旅費及び交通費が7億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である食品事業は販売が拡大した一方で、機械事業や物流事業などは減収となっています。海洋事業や資材事業は堅調に推移し、増収を達成しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
食品事業 841億円 898億円
海洋事業 224億円 246億円
機械事業 156億円 134億円
資材事業 90億円 93億円
バイオティックス事業 3億円 3億円
物流事業 24億円 23億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 1,339億円 1,398億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなる「勝負型」です。本業は赤字ではないものの、運転資金の増加等により営業CFがマイナスとなっていますが、将来成長のための借入による投資を行っています。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -13億円 -12億円
投資CF -20億円 -10億円
財務CF 12億円 30億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.8%で市場平均(非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業以来、「会社は社会の公器であることの精神に立ち業界をリードする技術とサービスをもって広く社会の発展に貢献する」ことを経営理念として掲げています。顧客のニーズに応え得る提案営業力(サービス)と商品開発(技術)をもって、主として「食」の分野で「健康な生活づくり」に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「浜から食卓までを網羅し、挑戦の歩みを未来へ」をパーパス(存在意義)として定めています。100年以上の歴史の中で時代の変化に柔軟に対応してきた「挑戦の歴史」と、培ってきた「経験」を重視し、「個の力を組織の力へ」と繋ぐことでベストソリューションを追求する組織文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、3カ年経営計画「第140期中期経営計画(Breaking Through Toward 2028)」を推進しており、2028年3月期の最終年において以下の目標を掲げています。

* 売上高:1,550億円
* 営業利益:43億円
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


水産業のサプライチェーンから発展したプラットフォーマーとしての機能拡大に取り組んでいます。コアビジネスである水産業のソリューションパートナーに注力する一方、養殖、環境・資源保護、食品機械などの新しい柱を構築し、成長領域への積極的な事業投資を通じてバランスの取れた収益構造へ事業ポートフォリオの再構築を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは「人をより強い個に成長させて繋ぐ」を人材戦略として掲げています。専門領域のプロフェッショナルを育成しつつ、各人の能力を向上させ組織として連携していくことを重視しています。階層別の教育強化、昇格要件の見直しのほか、多様な人材の定着に向けた働きやすい環境整備や処遇改善に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.0歳 16.0年 8,418,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 58.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(44%)、月平均時間外労働時間(12.9時間)、有給休暇取得率(58.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品原料調達におけるリスク


食品事業が全売上の約6割を占めており、世界的な漁獲規制や漁獲量の変動、水産物市況の影響を大きく受けます。予期せぬ原料価格の高騰や漁獲量の減少により、主要商材の調達や販売が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レートの変動によるリスク


食品事業の主要商材は、その原料の大部分を海外から買い付けており、為替レートの変動による影響を受けます。為替予約等のリスクヘッジを行っていますが、予期せぬ為替レートの急激な変動が生じた場合、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) 食品の安全性におけるリスク


食の安全性を最重要課題と位置付け、HACCPの導入や徹底した品質保証体制の確保に努めています。しかし、予期せぬ品質事故等による大規模な回収や製造物責任賠償等が発生した場合、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 海外事業・地政学的リスク


原料調達の安定確保や販路拡大のため海外での事業展開を進めていますが、現地の経済環境の変化や法規制の変更、地政学的リスクによるサプライチェーンの分断や物流の混乱などが発生した場合、生産・販売活動や業績に影響が生じるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。