ニチモウ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニチモウ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のニチモウは、水産物の漁獲から加工・販売までを一貫して手掛ける食品事業や、漁網・漁具を扱う海洋事業などを展開しています。2025年3月期は、主力である食品事業における販売拡大や機械事業の好調などにより、増収増益を達成しました。


※本記事は、ニチモウ株式会社 の有価証券報告書(第139期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニチモウってどんな会社?


水産業界を軸に、食品、海洋資材、機械、資材などを多角的に展開し、「浜から食卓まで」を支える専門商社です。

(1) 会社概要


1910年に下関にて創業した高津商店漁業部を起源とし、1919年に高津商会を設立しました。1962年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1967年に第一部へ指定替えとなりました。1972年には現社名であるニチモウに変更しています。近年では、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は1,050名、単体では195名です。筆頭株主は朝日生命保険相互会社で、第2位は個人株主の中村格彰氏、第3位は千葉県の水産加工会社である渡辺冷食となっています。創業以来の水産関連事業を基盤に、多角的な事業展開を行っています。

氏名 持株比率
朝日生命保険相互会社(常任代理人 株式会社日本カストディ銀行) 7.01%
中村 格彰 6.64%
株式会社渡辺冷食 4.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は青木 信也氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
松本 和明 代表取締役会長 1976年入社。食品事業本部長等を経て2014年代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。
青木 信也 代表取締役社長執行役員 1985年入社。執行役員福岡支店長、資材事業本部長、海洋事業本部長を経て2024年6月より現職。
土田 祥之 取締役常務執行役員食品事業部門管掌 1986年入社。執行役員大阪支店長、食品事業本部長を経て2025年6月より現職。
諏訪部 俊彦 取締役常務執行役員海洋・機械・資材事業部門管掌 1982年入社。執行役員食品事業部門担当、福岡支店長、大阪支店長を経て2025年6月より現職。
福井 豊 取締役執行役員機械・資材事業本部長 1989年入社。機械営業部長、執行役員機械・資材事業本部長を経て2025年6月より現職。
小島 章伸 取締役執行役員管理部門担当 1989年入社。食品第三営業部長、財務部長、執行役員総務部長兼財務部長を経て2025年6月より現職。
山本 敏夫 取締役(常勤監査等委員) 1982年入社。海洋第二営業部長、総務部長、日網興産代表取締役社長を経て2018年6月より現職。


社外取締役は、菊池 達也(朝日生命保険相互会社元代表取締役専務)、平田 淳(元清和クリエイト社長)、明石 仁成(日本測器社長)、吉江 由美子(東洋大学教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」、「海洋事業」、「機械事業」、「資材事業」、「バイオティックス事業」、「物流事業」および「その他」事業を展開しています。

食品事業


すり身、鮮魚、冷凍魚、魚卵などの水産物を中心に取り扱い、加工品の製造も行っています。国内外から調達した原料を加工し、食品メーカーや卸売業者などに販売しています。

収益は、製品および商品の販売代金です。運営は、ニチモウ、ニチモウフーズ、はねうお食品、ヤマイチ水産などが主に行っています。海外子会社からの輸入も活用し、グループ全体で製造・販売体制を構築しています。

海洋事業


漁網、ロープ、漁具の製造・販売に加え、養殖用資材や船舶機器なども取り扱っています。漁業会社や養殖業者などが主な顧客です。

収益は、漁網・漁具や関連資材の販売代金です。運営は、北海道ニチモウ、西日本ニチモウ、ニチモウワンマンなどの子会社が製造や仕立を行い、ニチモウおよびこれら子会社が販売を担っています。

機械事業


食品加工機械の製造および販売を行っています。食品メーカーなどの工場向けに、加工ラインや単体機械を提供しています。

収益は、機械設備の販売代金およびメンテナンス料などです。運営は、ビブンやソーエーといった子会社が製造を行い、ニチモウおよび子会社が販売を行っています。

資材事業


合成樹脂、包装資材、農畜資材の販売を行っています。食品包装用フィルムや農業用資材などを顧客に提供しています。

収益は、各種資材の販売代金です。運営は主にニチモウが行っています。

バイオティックス事業


発酵大豆製品などの健康食品素材および製品の製造・販売を行っています。健康食品メーカーや一般消費者が顧客となります。

収益は、製品および商品の販売代金です。運営は、ニチモウバイオティックスが行っています。

物流事業


物流および運送サービスを提供しています。グループ内の物流業務だけでなく、外部顧客の物流ニーズにも対応しています。

収益は、運送サービス料や物流管理料などです。運営は、ニチモウロジスティクスが行っています。

その他


人材派遣業、不動産業、石油製品の販売などを行っています。

収益は、派遣料、不動産賃貸料、石油製品の販売代金などです。運営は、日網興産(人材・不動産)や、持分法適用会社の日本サン石油(石油販売)などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で増加傾向にあり、特に直近2期は連続して増収となっています。経常利益は変動がありますが、当期は前期比で増加し、36億円となりました。当期利益も前期から増加し、安定した黒字を維持しています。全体として事業規模は拡大基調にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 1,133億円 1,155億円 1,268億円 1,278億円 1,339億円
経常利益 24億円 36億円 32億円 26億円 36億円
利益率(%) 2.1% 3.1% 2.5% 2.0% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 15億円 17億円 11億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、営業利益も前期比で大幅に伸長しました。営業利益率は2.2%に改善しています。コストコントロールと売上拡大が利益押し上げに寄与した形です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,278億円 1,339億円
売上総利益 108億円 122億円
売上総利益率(%) 8.4% 9.1%
営業利益 20億円 30億円
営業利益率(%) 1.6% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が44億円(構成比48%)、その他経費が24億円(同26%)を占めています。

(3) セグメント収益


食品事業と海洋事業が売上の大半を占めており、特に食品事業は全体の約6割を占める主力事業です。機械事業は前期比で売上が大きく伸長しました。資材事業も堅調に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
食品事業 823億円 841億円
海洋事業 218億円 224億円
機械事業 123億円 156億円
資材事業 85億円 90億円
バイオティックス事業 3億円 3億円
物流事業 25億円 24億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 1,278億円 1,339億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業CFと投資CFがマイナスで、財務CFがプラスであることから、本業の資金需要や投資資金を借入等で賄っている「勝負型」の状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 66億円 -13億円
投資CF 13億円 -20億円
財務CF -73億円 12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均(プライム9.4%)をやや下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.4%で市場平均(非製造業24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「会社は社会の公器であることの精神に立ち業界をリードする技術とサービスをもって広く社会の発展に貢献する。」ことを経営理念としています。また、パーパス(存在意義)として「浜から食卓までを網羅し、挑戦の歩みを未来へ」を掲げ、水産業のソリューションパートナーとして社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


100年以上にわたり時代の変化に柔軟に対応してきた「挑戦の歴史」と、その中で培った「経験」をもとに、「技術とサービス」を提供することを強みとしています。社員一人ひとりが「個の力を組織の力へ」と繋げ、ベストソリューションを追求する姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


新3カ年経営計画「第140期中期経営計画(Breaking Through Toward 2028)」において、2028年3月期の最終年度における数値目標を掲げています。

* 連結売上高1,550億円
* 連結営業利益43億円
* 連結経常利益45億円
* ROE10%以上
* ROIC4.5%以上
* D/Eレシオ1.0倍以内

(4) 成長戦略と重点施策


水産業界のパラダイムシフトに対応し、10年後を見据えたバックキャスト視点で「養殖、環境・資源保護分野、食品機械」などを新しい柱として構築することを目指しています。食品事業では高付加価値商品の開発、海洋事業では次世代水産業の構築、機械事業では海外展開などを推進し、事業ポートフォリオの再構築を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人(従業員)をより強い個に成長させて繋ぐ」を掲げ、人材育成と組織力の強化に取り組んでいます。各等級に求める能力の明確化や教育機会の拡充を行うとともに、女性管理職の登用やグループ間交流、ジョブローテーション制度の検討を進め、挑戦を促す環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.1歳 16.1年 8,512,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.2%
男女賃金差異(正規雇用) 67.3%
男女賃金差異(非正規) 60.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(4%)、女性採用比率(22%)、時間外労働時間(12.6)、有給休暇取得率(57.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品原料調達におけるリスク


売上の約6割を占める食品事業において、主要商材の調達は世界的な漁獲規制や水産物市況の影響を受けます。予期せぬ原料価格の高騰や漁獲量の変動により、商材の確保や販売が困難になった場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レートの変動によるリスク


食品事業の主要商材は原料の多くを海外から調達しており、為替変動の影響を受けます。為替予約などでリスクヘッジを行っていますが、予期せぬ急激な変動が生じた場合、業績に影響が出る可能性があります。

(3) 食品の安全性におけるリスク


食品の安全性を最重要課題とし、HACCPの導入や品質保証体制の強化に努めていますが、予期せぬ品質事故による回収や損害賠償が発生した場合、業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。

(4) 自然災害の発生によるリスク


食品事業の商材は国内外の広範な地域から供給されています。これらの地域で予期せぬ自然災害が発生した場合、調達や供給体制に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。