日本フエルト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本フエルト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、紙・パルプ用フェルト等の製造販売を行うフェルト事業と、保有不動産を活用した不動産賃貸事業を展開しています。直近の決算では、海外での販売減少や貸倒引当金の計上などが影響し、売上高は前期比3.8%減、経常利益は同29.5%減の減収減益となりました。


※本記事は、日本フエルト株式会社 の有価証券報告書(第161期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本フエルトってどんな会社?


紙・パルプ用フェルトの製造販売を主力とし、国内高シェアを誇る老舗企業です。不動産賃貸も手掛けています。

(1) 会社概要


1917年に設立され、抄紙用フェルトの製造を開始しました。1951年に東京証券取引所へ上場し、1968年には台湾に現地法人を設立するなど早期から海外展開を進めています。2011年には中国・上海に貿易会社を設立しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は557名、単体では400名です。筆頭株主は同社の主要取引先である製紙会社で、第2位も同様に製紙会社です。第3位には従業員持株会が入っており、取引先との関係維持と従業員の経営参加を重視する安定的な資本構成となっています。

氏名 持株比率
王子ホールディングス 9.44%
日本製紙 6.45%
日本フエルト従業員持株会 3.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は矢崎荘太郎氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
矢崎荘太郎 代表取締役取締役社長社長執行役員管理部門管掌 1980年同社入社。経営企画室長、総務人事部長、栃木工場長等を歴任。2021年取締役常務執行役員を経て、2023年6月より現職。
芝原誠一 代表取締役取締役会長 1976年同社入社。営業部統括部長、常務取締役等を歴任。2015年に社長就任後、2023年6月より現職。
富田協一 取締役常務執行役員 1984年同社入社。技術開発部長、埼玉工場長等を歴任。現在は生産・技術・研究開発部門を管掌。2023年6月より現職。
宮坂隆志 取締役常務執行役員 1984年同社入社。紙パ営業部統括部長、国内営業部門管掌等を歴任。現在は営業部門管掌兼海外営業部長。2025年5月より現職。


社外取締役は、緒方孝則(リバティ法律事務所所長)、河津司(一般社団法人日本貿易会専務理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「フェルト事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

フェルト事業


紙・パルプ用フェルト、工業用フェルト、シュープレス用ベルト、ワイヤー等の製造・販売を行っています。主力の紙・パルプ用フェルトは製紙工程のプレスパートで使用され、脱水や紙の平滑性向上に寄与します。主要顧客は製紙会社であり、国内およびアジア市場を中心に展開しています。

収益は、顧客への製品販売代金として受け取ります。運営は主に日本フエルトが行い、製造・販売の一部を東山フエルト、ニップ縫整、台湾惠爾得、日惠得造紙器材(上海)貿易などが担っています。また、環境配慮型製品の開発にも注力しています。

不動産賃貸事業


地域社会のニーズに応え、同社が所有する本社ビルの一部や、土地・建物を活用した賃貸事業を行っています。オフィスビル、賃貸駐車場、介護施設、保育園など多岐にわたる物件を保有し、安定的な収益源となっています。

収益は、テナントや不動産事業者等からの賃貸料として受け取ります。運営は日本フエルトが行っています。既存物件の資産価値維持に努めつつ、高稼働率を維持することで収益を確保しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は100億円前後で推移していましたが、直近では97億円まで減少しています。経常利益も増減を繰り返しつつ、直近では5億円弱の水準です。利益率も低下傾向にあり、国内需要の減少や海外販売の苦戦が影響しています。当期純利益は投資有価証券売却益などで一定水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 100.1億円 98.4億円 104.0億円 100.8億円 97.0億円
経常利益 4.8億円 8.3億円 10.6億円 6.6億円 4.7億円
利益率(%) 4.8% 8.4% 10.2% 6.6% 4.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.6億円 5.1億円 7.3億円 4.6億円 5.0億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減収となり、売上総利益および営業利益も減少しました。特に営業利益率は前期の4.7%から2.1%へ低下しています。売上減少に加え、貸倒引当金の繰入などが利益を圧迫しました。一方で、投資有価証券売却益の計上により、最終利益への影響は一定程度緩和されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 100.8億円 97.0億円
売上総利益 31.7億円 29.7億円
売上総利益率(%) 31.5% 30.6%
営業利益 4.7億円 2.0億円
営業利益率(%) 4.7% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が11億円(構成比39%)、貸倒引当金繰入額が1億円(同4%)を占めています。売上原価に関しては、原材料費や労務費などが含まれますが、詳細な内訳比率は注記情報からは限定的です。

(3) セグメント収益


フェルト事業は、国内では高シェアを維持したものの、中国やインドネシア等の海外販売が減少し、減収減益となりました。不動産賃貸事業は、高稼働率を維持し、売上・利益ともに堅調に推移しました。全社費用等の調整額が利益を押し下げています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
フェルト事業 94.7億円 90.8億円 8.0億円 5.1億円 5.6%
不動産賃貸事業 6.1億円 6.1億円 3.6億円 3.7億円 59.7%
連結(合計) 100.8億円 97.0億円 4.7億円 2.0億円 2.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6.1億円 10.6億円
投資CF -9.3億円 -7.5億円
財務CF -13.3億円 -6.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「『伝統の継承』と『新たな挑戦』の融合で豊かな未来を創造します」を企業理念として掲げています。この理念のもと、創業以来の技術や信頼といった伝統を守りつつ、変化する環境に対応するための新たな挑戦を行うことで、持続的な成長と社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「経営指針」および「企業行動指針」を制定し、役職員が遵守すべきガイドラインとしています。また、品質や環境に関する指針も定め、社会的責任の遂行を重視しています。これに基づき、環境配慮型製品の開発や省エネルギーへの取り組みなど、サステナビリティを意識した企業活動を推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2023年度から2025年度までの中期経営計画を策定し、最終年度である2025年度の目標数値を掲げています。既存事業の強化と安定収益の確保を目指し、以下の指標達成に向けて取り組んでいます。

* 売上高:109.1億円以上
* 営業利益:8.0億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、フェルト事業では国内シェア拡大とアジア市場(中国、東南アジア、インド)での拡販を推進しています。製品面では、ラインナップ拡充や環境配慮型製品の開発に注力しています。不動産賃貸事業では、保有物件の有効活用により、安定収益の確保とさらなる収益増を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」と「組織」の成長を重視し、多様性と専門性を活かす人材戦略を推進しています。「人材育成」「社内環境の整備」「女性活躍の推進」を柱とし、通年採用や多様な人材の確保、階層別・専門研修による育成を行っています。また、エンゲージメント調査の導入や健康経営の推進により、働きやすい環境づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.7歳 22.5年 6,646,427円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.6%
男女賃金差異(正規) 75.9%
男女賃金差異(非正規) 69.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一人当たり教育研修費(15,300円)、年次休暇取得率(80.9%)、女性総合職社員比率(10.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 紙・パルプ業界向け売上への依存


同社グループの売上高の約8割は紙・パルプ業界向けが占めています。そのため、同業界の景気後退による需要減少や市況の下落、競合他社との競争激化が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、重要な取引先に事業継続上の問題が生じた場合も同様に影響を受けるリスクがあります。

(2) 原材料の調達リスク


製品製造に必要な特殊な原材料の一部は特定の仕入先に依存しています。仕入先との取引関係の継続が困難になった場合や、国際情勢の影響による原燃料価格の高騰、物流の混乱が生じた場合、生産活動や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保


国内拠点を中心に事業展開しているため、少子高齢化による労働人口減少の影響を受けやすくなっています。従業員の高齢化や離職、採用競争の激化により必要な人材を十分に確保できない場合、事業活動が停滞し、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、健康経営やシニア人材活用などで対策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。