日本フエルト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本フエルト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本フエルトは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、紙・パルプ用フェルトや工業用フェルトの製造・販売および不動産賃貸事業を展開しています。直近の業績では、需要縮小による販売数量の減少で減収となったものの、生産体制の見直しや効率化を進めたことで営業利益・経常利益は大幅な増益を達成しました。


※本記事は、日本フエルト株式会社の有価証券報告書(第162期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本フエルトってどんな会社?


紙・パルプ用フェルトや工業用フェルトなどの製造・販売と不動産賃貸事業を展開しています。

(1) 会社概要


1917年に設立され、抄紙用フェルトの製造を開始しました。1951年に東京証券取引所へ株式上場を果たし、1968年に台湾で台湾惠爾得を設立するなど海外展開も推進しています。2011年には中国・上海に日惠得造紙器材(上海)貿易を設立し、アジア市場を中心にグローバルな事業基盤を構築してきました。

現在の従業員数は連結で541名、単体で391名です。筆頭株主は事業会社であり主要顧客でもある王子ホールディングスで、第2位は証券金融業務を行う日本証券金融、第3位には同様に事業会社の日本製紙が名を連ねています。

氏名 持株比率
王子ホールディングス 9.66%
日本証券金融 4.64%
日本製紙 4.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役取締役社長社長執行役員は矢崎荘太郎氏です。取締役7名のうち社外取締役は3名で、その比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
矢崎荘太郎 代表取締役取締役社長社長執行役員管理部門管掌 1980年同社入社。経営企画室長、総務人事部長などを経て、2013年取締役に就任。上席執行役員栃木工場長、常務執行役員などを歴任し、2023年6月より現職。
芝原誠一 代表取締役取締役会長 1976年同社入社。営業第1部長、営業部統括部長などを経て、2011年取締役に就任。常務取締役、代表取締役社長社長執行役員などを歴任し、2023年6月より現職。
富田協一 取締役常務執行役員生産部門・技術部門・研究開発部門管掌 1984年同社入社。研究開発部長、技術開発部長、埼玉工場長などを経て、2020年に取締役執行役員。2023年6月より現職。
宮坂隆志 取締役常務執行役員営業部門管掌 兼海外営業部長 1984年同社入社。紙パ営業第2部長、営業企画部長などを経て、2020年に取締役執行役員。2023年6月に取締役常務執行役員に就任し、2025年5月より現職。


社外取締役は、緒方孝則(リバティ法律事務所所長)、河津司(元通商産業省・一般社団法人日本貿易会専務理事)、小野田春佳(Bytedance HR Legal)です。

2. 事業内容


同社グループは、「フェルト事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

フェルト事業


紙・パルプ用フェルトおよび一般工業用フェルト製品、それに付随する商品の製造・販売を行っています。主な顧客は製紙会社などの紙・パルプ業界や、各種工業用フィルターや防塵マスクなどを必要とする一般産業の企業です。

顧客からフェルト製品等の販売代金を受け取る収益モデルです。この事業の運営は同社のほか、東山フエルト、ニップ縫整、台湾惠爾得、日惠得造紙器材(上海)貿易などのグループ子会社が各地域や機能を分担して行っています。

不動産賃貸事業


同社が所有する本社ビルの一部を活用したテナント事業や、駐車場の賃貸事業、介護施設事業者および不動産事業者等に向けた土地・建物の貸与を行っています。

テナント入居者や駐車場利用者、不動産事業者などから受け取る不動産賃貸料を安定的な収益源としています。この事業の運営については、同社が単独で展開・管理を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高はペーパーレス化など国内の構造的な需要減少を背景に減少傾向にありますが、利益面では直近で大幅な回復を見せています。原価率の低減や生産体制の見直しによる効率化に取り組んだ結果、経常利益や当期利益が増益に転じ、強靭な収益構造の構築が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 98億円 104億円 101億円 97億円 94億円
経常利益 8億円 11億円 7億円 5億円 7億円
利益率(%) 8.4% 10.2% 6.6% 4.8% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 8億円 5億円 4億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となりましたが、営業利益は大幅な増益を達成しました。原価の低減や販売活動の効率化、諸費用の見直しなど、収益基盤の強化に向けた各種施策が奏功し、売上総利益率および営業利益率の改善に寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 97億円 94億円
売上総利益 30億円 29億円
売上総利益率(%) 30.6% 30.4%
営業利益 2億円 4億円
営業利益率(%) 2.1% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が8億円(構成比32%)、賞与引当金繰入額が2億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内の新聞紙や印刷用紙などの生産縮小の影響を受け、主力のフェルト事業の売上高は減少しました。一方、不動産賃貸事業は本社ビルのテナントが満床を維持するなど堅調に推移しており、安定した収益を継続的に確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
フェルト事業 91億円 88億円
不動産賃貸事業 6億円 6億円
連結(合計) 97億円 94億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」と判定されます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 11億円 7億円
投資CF -8億円 -5億円
財務CF -6億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「『伝統の継承』と『新たな挑戦』の融合で豊かな未来を創造します」を企業理念として掲げています。また、10年長期ビジョンとして「業界の先駆者として磨き上げた独自の価値・技術を活かし、永く広く社会の発展に寄与し続ける企業へ」を定め、社会の発展に寄与する存在となることを目指しています。

(2) 企業文化


「伝統の継承」と「新たな挑戦」を融合させる姿勢を重んじ、多様な経験や価値観をもった人材を積極的に採用して、その個性を活かす文化を醸成しています。また、すべての役員および従業員が遵守すべきガイドラインとして「企業行動指針」を制定し、法令遵守や企業倫理の徹底、社会的な責任の達成を重視する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2026年度〜2028年度)において、「現状を乗り越え、長期にわたって持続可能な収益モデルの構築へ挑戦する」ことを方針としています。2028年度には以下の数値目標の達成を目指しています。

* 営業利益:4.7億円以上
* ROE(自己資本当期純利益率):4.0%以上
* DOE(純資産配当率):2.5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


コア事業であるフェルト事業の収益性改善と収益基盤の強化を最重要課題と位置づけ、原価率低減や部門横断型プロジェクトによる最適化を推進します。あわせて、板紙や家庭紙向け製品の品質向上、アジア市場やインドでの拡販に取り組みます。また、事業収益や資産効率の改善により資本収益性を高め、積極的な株主還元を継続していく戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


様々な環境変化に柔軟に対応できる社員一人一人の「多様性」と「専門性」を活かすことを人材戦略の重要な柱としています。「人」への投資を通じて、「人材育成」「社内環境の整備」「女性活躍の推進」を継続的に強化し、従業員がイキイキと働き続けられる環境の構築とエンゲージメントの向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.2歳 21.5年 6,567,481円


※平均年間給与は、税込平均額で基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 92.3%
男女賃金差異(全労働者) 71.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 67.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一人当たり教育研修費(10,100円)、年次休暇取得率(70.5%)、女性役職者比率(13.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 紙・パルプ業界の動向による影響


同社の売上高の大半は紙・パルプ業界向けであり、ペーパーレス化の進展による国内需要の減少や市況の下落、競争の激化が業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、原価率低減を中心とした強固な収益構造の構築に取り組んでいます。

(2) 原材料調達の不安定化


製品の製造に使用する原材料は石油由来のものが多く、中東情勢や為替相場の変動による価格高騰リスクがあります。また、特殊な原材料は調達先が限定されるため、特定の仕入先への依存リスクを軽減し、在庫確保などに努めています。

(3) 情報セキュリティとサイバー攻撃


情報資産を保護するため情報セキュリティポリシーを策定していますが、巧妙化するサイバー攻撃や不正アクセス、自然災害等によりシステム停止や情報漏洩が発生した場合、事業の中断等を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。