オーベクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オーベクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する同社は、筆記具用等のペン先を扱うテクノ製品と、医療機器を扱うメディカル製品の製造販売を主要事業としています。2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比12.0%増、経常利益が35.5%増となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、オーベクス株式会社 の有価証券報告書(第140期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オーベクスってどんな会社?


同社は、1892年創業の日本初の製帽会社を起源とし、現在は独自の加工技術を応用したペン先や医療機器を製造販売するモノづくり企業です。

(1) 会社概要


1892年に渋沢栄一らにより東京帽子として設立され、1949年に東京証券取引所に上場しました。1958年にペン先の製造を開始し、1985年に現社名へ変更しています。1996年には医療機器の販売を開始し、長年培った技術を応用して事業領域を拡大してきました。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は368名、単体では125名です。筆頭株主はその他の関係会社である昭和化学工業で15.43%を保有しており、第2位は麻生、第3位は若築建設となっています。

氏名 持株比率
昭和化学工業 15.43%
麻生 14.58%
若築建設 13.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は栗原 則義氏です。社外取締役比率は約28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
栗  原  則  義 代表取締役社長 1978年同社入社。経営企画部長、取締役メディカル事業部長などを経て、2012年6月より現職。
村  上  弘  成 取締役テクノ事業部長兼テクノセグメント統括 1983年同社入社。テクノ営業部統括部長、執行役員テクノ副事業部長などを経て、2024年6月より現職。
片  山  貴  義 取締役テクノ副事業部長 1987年同社入社。テクノ事業部千葉工場長、執行役員テクノ事業部コアセンター長などを経て、2024年6月より現職。
作  田  隆太郎 取締役メディカル事業部長 1979年同社入社。メディカル事業部技術部長、執行役員メディカル事業部長などを経て、2016年6月より現職。
塚  越  孝  弘 取締役管理部長 1981年同社入社。管理セクション長、執行役員管理部長を経て、2018年6月より現職。


社外取締役は、石橋 健 藏(昭和化学工業代表取締役社長)、中 村 誠(若築建設取締役兼常務執行役員経営管理部門長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「テクノ製品事業」および「メディカル製品事業」を展開しています。

(1) テクノ製品事業


サインペン先およびコスメチック用ペン先などの製造販売を行っています。独自の微少な流量を制御するコア技術を基盤とし、筆記具分野や化粧用途の部材を提供しています。国内だけでなく、中国やアジア諸国などの海外市場へも展開しています。

製品の製造および販売はオーベクスが行うほか、連結子会社のオーベクステクノロジーが精密研削加工を行い、中国の天津奥貝庫斯技研有限公司が精密研削加工および販売を行っています。顧客への製品販売により収益を得ています。

(2) メディカル製品事業


医療機器の製造販売を行っています。主力製品として、薬液注入器である「ベセルフューザー」や血管造影用ガイドワイヤーなどを取り扱っています。麻酔領域や化学療法領域などで使用される製品を展開しています。

製品の製造は連結子会社のオーベクスメディカルが行い、販売はオーベクスが担当しています。また、一部製品は外部医療機器メーカーへ製造委託しています。医療機関や代理店等への医療機器販売により収益を得ています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は48億円から60億円へと拡大傾向にあります。経常利益も3億円台から8億円台へと推移しており、利益率は概ね10%を超える水準を維持しています。特に当期は売上高、利益ともに過去5期間で最高水準となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 48億円 55億円 53億円 54億円 60億円
経常利益 3億円 7億円 6億円 6億円 8億円
利益率(%) 7.0% 13.3% 12.0% 11.2% 13.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 4億円 4億円 3億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。売上総利益率は30%台半ばから後半へと改善し、営業利益率も向上しました。コストコントロールと売上拡大が利益押し上げに寄与していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 54億円 60億円
売上総利益 19億円 23億円
売上総利益率(%) 34.8% 38.0%
営業利益 6億円 8億円
営業利益率(%) 10.4% 13.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が5億円(構成比36%)、発送費が1億円(同8%)を占めています。売上原価においては、詳細な内訳データはありません。

(3) セグメント収益


テクノ製品事業、メディカル製品事業ともに増収となりました。テクノ製品事業は大幅な増益となり利益率も向上しましたが、メディカル製品事業は増収ながら減益となりました。全社的にはテクノ製品事業の好調が業績を牽引しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
テクノ製品事業 38億円 43億円 7億円 11億円 24.5%
メディカル製品事業 16億円 17億円 2億円 1億円 7.3%
調整額 - - -3億円 -3億円 -
連結(合計) 54億円 60億円 6億円 8億円 13.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の営業活動で得た資金を用いて借入金の返済を進めつつ、投資活動も行っている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 11億円 6億円
投資CF -2億円 -2億円
財務CF -5億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も68.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは、「真心をこめて、暮らしに欠かせない文化と科学を提案することにより、豊かな社会づくりに貢献できる企業をめざします。」を経営理念として掲げています。微少な流量を制御するコア技術を基盤としたモノづくり企業グループとして、社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


創業者である渋沢栄一をはじめとする先人たちの知恵と努力、モノづくりへの情熱を重視しています。創業以来130年の歴史の中で培った技術を受け継ぎ進化させること、そして「論語とそろばん」の精神を学ぶことで、自律精神が高く専門スキルを有する社員の育成に努めています。

(3) 経営計画・目標


2025年度より第9次中期経営計画「オーベクスビジョン2027」をスタートさせました。最終年度である2028年3月期の連結数値目標として以下の指標を掲げています。

* 売上高:70億円
* 営業利益:10億円
* ROE:9%以上
* 設備投資(3ヶ年合計):15億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


「ESG経営を推進し、新たな価値創出と持続可能な成長を追求する」を基本方針とし、強固な収益基盤の構築、環境負荷低減活動の推進、成長を支える人財育成に取り組みます。テクノ製品事業では高付加価値製品の開発や海外拠点の拡充、メディカル製品事業では新分野への参入や海外展開準備などを重点施策としています。

* テクノ製品事業セグメント売上高目標:48億円
* メディカル製品事業セグメント売上高目標:22億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同グループは、自律的な人材を育成し、能力・成果に応じた人事評価を行うことを基本方針としています。定期研修や階層別研修の実施、資格取得奨励などにより人材育成を強化しています。また、性別や国籍等にかかわらず多様な人材が必要と認識し、女性管理職登用や中途・外国人採用などの多様性確保に向けた施策を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.1歳 18.1年 6,403,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める中途採用者の割合(32.1%)、労働者に占める外国人労働者の割合(3.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外事業展開に関するカントリーリスク


製品の販売先は世界各国にわたり、中国に販売拠点を有しています。そのため、予想できない急激な政治的または経済的変動、テロや戦争の勃発、感染症による社会混乱などが発生した場合、同社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保と育成に関するリスク


事業継続には優秀な人材の確保と育成が不可欠であり、採用活動の強化や研修などの対策を講じています。しかし、少子高齢化による労働力人口の低下などにより、計画通りに人材の採用や育成が進まない場合、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

(3) 原材料価格の変動及び調達に関するリスク


特殊性の高い原材料を使用しており、市況や為替変動により価格が上昇した場合、コスト削減や価格転嫁に限界があるため業績に影響する可能性があります。また、主要原材料は特定メーカーから調達しており、在庫確保等の対策を行っていますが、供給寸断や廃盤等で生産に支障が出た場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 販売価格の変動に関するリスク


メディカル製品事業では公定償還価格の改定や競争激化、テクノ製品事業ではグローバル市場での低価格化や競争激化により、販売価格が大幅に下落する可能性があります。生産性向上等の対策を講じていますが、想定以上の価格下落が発生した場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。