オーベクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オーベクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するオーベクスは、微少な流量を制御するコア技術を基盤とし、サインペン先やコスメチック用ペン先などのテクノ製品および医療機器などのメディカル製品の製造販売を主力とするメーカーです。直近の業績は、テクノ製品のアジア向け販売が下期に減速したことなどにより、減収減益で推移しています。


※本記事は、オーベクスの有価証券報告書(第141期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オーベクスってどんな会社?


微少な流量を制御するコア技術を活かし、筆記具用・化粧品用ペン先から医療機器まで幅広く製造販売するメーカーです。

(1) 会社概要


1892年12月に日本最初の製帽会社として創立されました。長年の帽子製造で培った加工技術を応用して1958年にマーキングペン用ペン先の製造を開始しました。1996年には加圧式医薬品注入器の販売を開始し、医療機器分野へ事業を拡大。2022年の東京証券取引所の市場再編に伴い、スタンダード市場へ移行しました。

従業員数は連結で353名、単体で124名体制で事業を展開しています。筆頭株主は昭和化学工業で、第2位に麻生、第3位に若築建設などの事業会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
昭和化学工業 15.61%
麻生 14.76%
若築建設 14.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は栗原則義氏が務めています。取締役7名のうち社外取締役は2名です。

氏名 役職 主な経歴
栗原則義 代表取締役社長 1978年4月同社入社。経営企画部長、オーベクスメディカル代表取締役社長、取締役メディカル事業部長などを経て、2012年6月より現職。
村上弘成 取締役テクノ事業部長兼テクノセグメント統括 1983年4月同社入社。テクノ営業部長、テクノ営業部統括部長、執行役員テクノ副事業部長などを経て、2024年6月より現職。
作田隆太郎 取締役メディカル事業部長 1979年4月同社入社。メディカル事業部技術部長、オーベクスメディカル代表取締役社長、執行役員メディカル事業部長などを経て、2016年6月より現職。
塚越孝弘 取締役管理部長 1981年4月同社入社。管理セクション長、執行役員管理部長を経て、2018年6月より現職。
片山貴義 取締役テクノ副事業部長 1987年4月同社入社。テクノ事業部千葉工場長、執行役員テクノ事業部コアセンター長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、石橋健藏(昭和化学工業代表取締役社長)、中村誠(若築建設取締役兼常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「テクノ製品事業」および「メディカル製品事業」を展開しています。

テクノ製品事業


サインペン先およびコスメチック用ペン先の製造販売を行っています。長年培った精密加工技術を応用し、世界の人々に筆記やアートなどの文化的な活動の楽しさを広める筆記具分野や、美容・健康志向に応える化粧用途の部材を提供しており、アジア地域をはじめとするグローバル市場へ展開しています。

収益は、国内外の顧客に対する製品の販売によって得ています。運営は同社が製造販売を行うほか、オーベクステクノロジーが精密研削加工を担い、中国の天津奥貝庫斯技研有限公司が精密研削加工および現地での販売活動を行っています。

メディカル製品事業


医療機器の製造販売を行っています。独自の流量制御技術を採用した加圧式医薬品注入器(ベセルフューザー)や親水性コーティングを施した血管造影用ガイドワイヤーなどを主力製品としており、在宅医療分野や麻酔領域、化学療法領域の医療従事者および患者に提供しています。

収益は、付加価値を高めた医療機器を医療現場へ販売することで得ています。運営は主にオーベクスメディカルが製造を担い、同社が販売を行っています。また、一部の製品については他の医療機器メーカーへ製造委託を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は概ね50億円台後半から60億円台で堅調に推移しています。経常利益率は10%台から13%台を維持しており、安定した収益性を確保しています。当期はアジア向け販売の減速などにより、前期比で微減収となり、経常利益も減少する結果となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 55億円 53億円 54億円 60億円 60億円
経常利益 7.3億円 6.4億円 6.0億円 8.1億円 6.3億円
利益率(%) 13.3% 12.0% 11.2% 13.5% 10.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.4億円 3.7億円 2.6億円 3.9億円 3.8億円

(2) 損益計算書


売上高は横ばいで推移していますが、売上総利益および営業利益は前期と比較して減少しています。原材料・エネルギー価格の高騰やコスト増加などの影響が利益率の低下につながっているとみられます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 60億円 60億円
売上総利益 23億円 20億円
売上総利益率(%) 38.0% 33.4%
営業利益 8.4億円 6.2億円
営業利益率(%) 13.9% 10.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が5億円(構成比39%)、発送費が1億円(同9%)を占めています。売上原価については、当期製品製造原価が26億円(構成比64%)、当期商品仕入高が14億円(同35%)となっています。

(3) セグメント収益


テクノ製品事業はコスメチック用ペン先が復調傾向にあったものの、アジア向けの筆記具用ペン先の売上が下期に減速したことで減収となりました。メディカル製品事業は、積極的なプロモーション活動や拡販に注力した結果、増収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
テクノ製品事業 43億円 42億円
メディカル製品事業 17億円 18億円
連結(合計) 60億円 60億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスであり、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の健全型パターンに該当します。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6.4億円 3.3億円
投資CF -1.6億円 -4.4億円
財務CF -5.6億円 -1.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も71.3%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「真心をこめて、暮らしに欠かせない文化と科学を提案することにより、豊かな社会づくりに貢献できる企業を目指します。」を経営理念として掲げています。どんなに技術が進歩し高度な時代になろうとも、人と社会に対する正しい貢献の在り方を追求し、持続可能な社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


創業者である渋沢栄一の『論語と算盤』の精神を学び、企業の存続価値を「人と社会に対する正しい貢献の在り方」と考えています。従業員、顧客、取引先、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーとの適切な協働を重視し、常にたゆまぬモノづくりへの情熱を持ち、時代に応じた技術へと進化させ続ける文化があります。

(3) 経営計画・目標


第9次中期経営計画(オーベクスビジョン2027)において、2028年3月期の最終年度に以下の定量目標を掲げています。

* 売上高:70億円
* 営業利益:10億円
* ROE:9%以上
* 設備投資:15億円以上(3ヶ年合計)

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「強固な収益基盤の構築」「環境負荷低減活動の推進」「成長を支える人財育成」の3つの基本戦略に取り組んでいます。テクノ製品事業では高付加価値製品の開発と増産対応への設備投資を進め、メディカル製品事業では成長市場へのシフトや海外展開に向けた体制構築、新工場建設用地の取得を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


自律的な人材を育成し、能力・成果に応じた人事評価を行うことを基本方針としています。会社の持続的な成長には社員の能力向上が必要不可欠であるとし、階層別研修の実施や資格取得奨励による人材育成のほか、女性管理職の登用や中途・外国人採用を通じて多様性の確保に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.2歳 17.1年 5,942,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.7%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は有価証券報告書の記載項目において、男性育児休業取得率および男女賃金差異に関する公表義務の対象ではないため、本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める中途採用者の割合(33.3%)、労働者に占める外国人労働者の割合(2.4%)、有給休暇取得率(82.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外事業展開に関するカントリーリスク


販売先が世界各国にわたり中国にも販売拠点を有しているため、予期せぬ政治的・経済的変動やテロ、感染症などによる社会混乱が発生した場合、事業活動に支障をきたし、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格の変動及び調達に関するリスク


特殊性の高い原材料を用いており、市況や為替レートの変動により調達コストが想定以上に上昇した場合、販売価格への転嫁が困難になり収益を圧迫する恐れがあります。また、特定メーカーへの調達依存による供給中断などのリスクも存在します。

(3) 販売価格の変動に関するリスク


メディカル製品事業における公定償還価格の改定や、テクノ製品事業でのグローバル市場における低価格競争の激化により、製品の大幅な価格下落が生じた場合、収益性が低下し、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。