芦森工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

芦森工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライムに上場する自動車安全部品および機能製品メーカーです。自動車用シートベルトやエアバッグ、管路補修用ホースなどを展開しています。当連結会計年度は、売上高656億円(前期比22.6%増)、経常利益28億円(同316.7%増)と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、芦森工業株式会社 の有価証券報告書(第123期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 芦森工業ってどんな会社?


1878年創業の老舗メーカーで、自動車用安全部品と管路補修等の機能製品を二本柱として展開しています。

(1) 会社概要


同社は1878年に創業し、日本で初めて伝導用綿ロープの製造を開始しました。1935年に株式会社芦森製綱所を設立し、1944年に現在の芦森工業へ改称しています。1961年に東証一部へ上場(2022年にプライム市場へ移行)しました。事業面では、1962年に自動車用シートベルト、1980年に管路補修工法「パルテム」、1989年にエアバッグの製造を開始するなど、多角化を進めています。

現在の従業員数は連結2,451名、単体443名です。筆頭株主は事業会社である日本毛織で、第2位は同じく事業会社の豊田合成、第3位は芦森工業取引先持株会となっています。

氏名 持株比率
日本毛織 14.48%
豊田合成 13.89%
芦森工業取引先持株会 8.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長は鷲根 成行氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
鷲根 成行 取締役社長(代表取締役)社長執行役員 1981年日本毛織入社。同社取締役常務執行役員などを経て、2018年6月より現職。
槇本 太司 取締役常務執行役員機能製品事業本部長 1987年同社入社。パルテム営業部部長、執行役員などを経て、2019年6月より現職。
鳥山 秀一 取締役常務執行役員管理統括本部長、情報システム部長 1983年日本毛織入社。同社衣料繊維事業本部管理部長などを経て、2023年6月より現職。
永冨 薫 取締役常務執行役員自動車安全部品事業本部長 2019年豊田合成入社。同社セイフティシステム技術部主監などを経て、2023年6月より現職。
伊藤 和良 取締役執行役員パルテム統括部長、東京支社長、芦森エンジニアリング株式会社取締役社長 1988年同社入社。執行役員、パルテム統括部長などを経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、関岡 英明(元農林水産省中国四国農政局長)、清水 春生(元株式会社エクセディ取締役会長)、岡田 靖(豊田合成株式会社執行役員)、小川 尚(元株式会社デンソーテン取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車安全部品事業」「機能製品事業」および「その他」事業を展開しています。

自動車安全部品事業


自動車用シートベルト、エアバッグ、後部車室用カバー(トノカバー)、電動リアサンシェードなどを製造・販売しており、主要な顧客は自動車メーカーです。

収益は、自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は、同社および芦森工業山口、ASHIMORI (Thailand) CO.,LTD.などの国内外の子会社が行っています。

機能製品事業


高機能資材織物、消防用ホース、防災用品、管路補修用ホース(パルテム)および関連工事などを提供しており、顧客は官公庁や民間企業など多岐にわたります。

収益は、製品の販売や管路補修工事の施工などから得ています。運営は、同社およびオールセーフ、芦森エンジニアリング、ジェット商事などの子会社が行っています。

その他


太陽光を活用した売電事業や、不動産の賃貸などを行っています。

収益は、電力会社への売電収入やテナントからの賃貸料などから得ています。運営は、同社および子会社のジェット商事が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2019年3月期から2023年3月期までの業績を見ると、売上高は500億円台から600億円台で推移していましたが、直近の2023年3月期には656億円まで伸長しています。利益面では、2021年3月期に赤字を計上しましたが、その後回復傾向にあり、2023年3月期は大幅な増益となっています。

項目 2019年3月期 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期
売上高 610億円 583億円 512億円 535億円 656億円
経常利益 23億円 7億円 4億円 7億円 28億円
利益率(%) 3.8% 1.1% 0.8% 1.3% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 9億円 -15億円 7億円 -1億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は前期比で大きく増加し、売上総利益も拡大しています。これに伴い、営業利益および利益率も大幅に改善しており、収益性が向上していることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期
売上高 535億円 656億円
売上総利益 66億円 90億円
売上総利益率(%) 12.3% 13.7%
営業利益 5億円 22億円
営業利益率(%) 1.0% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料賃金手当が17億円(構成比25%)、荷造運送費が17億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


自動車安全部品事業は、受注回復と円安効果により大幅な増収となり、利益面でも大幅に改善しました。機能製品事業は、パルテム関連が順調に推移し増収となりましたが、利益は微減となりました。

区分 売上(2022年3月期) 売上(2023年3月期) 利益(2022年3月期) 利益(2023年3月期) 利益率
自動車安全部品事業 357億円 467億円 -13億円 6億円 1.2%
機能製品事業 178億円 189億円 23億円 22億円 11.7%
その他 0億円 0億円 0億円 0億円 32.3%
調整額 0億円 0億円 -5億円 -6億円 -
連結(合計) 535億円 656億円 5億円 22億円 3.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金で借入金の返済を行い、投資についても手元の範囲内でコントロールしていることから、健全型のキャッシュ・フロー状態にあると言えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期
営業CF -10億円 63億円
投資CF -42億円 -15億円
財務CF 17億円 -27億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社是」として「信用を重んじ、堅実を旨とする」「人の和と開かれた心で活力ある企業を築く」「創意を生かし、社業を通じて社会に貢献する」を掲げています。また、ミッションとして「私たちの使命は、命と暮らしを守る製品を提供することです」を定めています。

(2) 企業文化


同社はバリューとして「私たちは、誠実に、ルールを守り、品質最優先のものづくりに取り組みます」を掲げています。また、スローガンとして「つむぐ技術(ちから)、つなげる未来」を策定し、ミッション・ビジョン・バリューと一体となって社内の意思統一を図っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2023年3月期から2025年3月期までの3カ年にわたる中期経営計画を策定しています。この計画では、事業評価の指標としてROIC(投下資本利益率)を導入し、経営効率と財務体質の改善を図ることとしています。

* 2024年3月期 連結売上高:650億円
* 2024年3月期 連結営業利益:23億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「新たな成長軌道への挑戦」として、成長市場である自動車分野と管路更生分野に経営資源を集中させる戦略を掲げています。自動車分野では豊田合成との協業深化やセーフティシステムの開発推進、管路更生分野では新工法の開発や適用領域の拡大に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、従業員を公正・適切に処遇し、安全で働きやすい職場環境を確保することを基本方針としています。また、「芦森グループ人材 Vision」を策定し、成果や努力を公正に評価する仕組みや、社員教育の充実、風通しの良い職場風土の構築を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2023年3月期 41.5歳 15.3年 6,137,690円


※平均年間給与は、税込支給額で、基準外賃金及び賞与が含まれております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 60.0%
男女賃金差異(全労働者) 77.1%
男女賃金差異(正規) 77.1%
男女賃金差異(非正規) 52.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定販売先への依存について


同社グループの事業は自動車安全部品の売上高構成比率が高く、特定の主要顧客2社への依存度が約47%に達しています。そのため、当該販売先の取引方針の変化や業績動向が、同社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

(2) 製品の欠陥について


自動車安全部品は製品の特性上、極めて高い品質が求められます。万が一、大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥が発生した場合、多額のコスト発生や社会的信用の低下により、経営成績等に影響を与える可能性があります。

(3) 原材料等の供給不足・供給価格の高騰について


事業において原材料や部品の安定調達は不可欠ですが、供給業者での事故や天災等による供給中断のリスクがあります。また、原油価格上昇等による原材料・部品価格の高騰が発生した場合、経営成績等に悪影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。