協和日成 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

協和日成 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

協和日成は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、東京ガスグループのガス設備・導管事業を主力とする総合設備工事会社です。建築設備や電設・土木事業も展開しています。直近の業績は、売上高が394億円と増収となった一方、一部工事での利益率低下や販管費の増加により営業利益は14億円の減益となっています。


※本記事は、協和日成の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 協和日成ってどんな会社?


同社は東京ガスグループ向けのガス設備・導管工事を中心に、人々の暮らしを支える総合設備工事会社です。

(1) 会社概要


同社は1948年に協和管工事として設立され、ガスの屋内外配管工事を開始しました。1952年に協和建興へ商号変更し、1981年に店頭登録銘柄に指定されています。2002年には日成と合併して現在の協和日成へと商号を変更しました。2004年にジャスダックへ上場し、2022年にスタンダード市場へ移行しています。

現在の従業員数は単体で797名です。筆頭株主は事業会社の城北興業で、同社に対して委託業務等の発注を行っています。第2位は主要顧客である東京瓦斯、第3位は事業会社の麻生です。安定した事業基盤とともに、主要取引先との強固な資本・業務関係を有していることが特徴です。

氏名 持株比率
城北興業 22.63%
東京瓦斯 8.85%
麻生 6.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は川野茂氏が務めています。社外取締役比率は21.4%です。

氏名 役職 主な経歴
川野 茂 代表取締役社長社長執行役員 1973年同社入社。ガス設備事業部長、営業本部長などを歴任し、2019年4月より現職。
福島 博喜 取締役専務執行役員 2006年同社入社。建築土木事業本部電設土木事業部長などを経て、2026年4月より現職。
森川 久男 取締役常務執行役員 1979年同社入社。パイプライン事業本部長などを歴任し、2026年4月より現職。
佐々木 靖彦 取締役常務執行役員 1983年東京瓦斯入社。2020年同社へ出向し、エンジニアリング事業本部長を経て2026年4月より現職。
桝田 博俊 取締役常務執行役員 1991年三菱銀行入行。2021年同社へ出向し、コーポレート本部経理部長を経て2026年4月より現職。
加藤 宏行 取締役常務執行役員 1986年同社入社。コーポレート本部総務部長等を経て、2025年6月より現職。
河野 文彦 取締役執行役員 1982年日成建設入社。エンジニアリング事業本部ガス設備部長などを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、安田直人(元リーガルコーポレーション社長)、下鳥正弘(朝日生命保険相互会社取締役常務執行役員)、奥山隆之(山根法律総合事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建築設備事業」「ガス・機器設備事業」「ガス導管事業」「電設・土木事業」および「その他」事業を展開しています。

建築設備事業


集合住宅等における給排水衛生設備工事や、学校等のガスヒートポンプエアコン(GHP)工事、工場での営繕工事などを提供しています。さらに、GHPメンテナンス事業における大規模修繕工事やリノベーション工事も手がけ、多様な顧客の建物内設備ニーズに対応しています。

主に建物のオーナーや管理者、各種法人を顧客とし、設備工事の請負代金やメンテナンス事業の委託料を収益源としています。新築建物の設備工事から維持管理・更新までをカバーしており、事業の運営は主に同社が単体で行っています。

ガス・機器設備事業


東京ガスグループをはじめとする取引先向けに、屋内配管工事や戸建・集合住宅の給湯・暖房工事を提供しています。また、脱炭素社会に向けた太陽光発電や蓄電池、ハイブリッド給湯器などの環境商材の拡販、および戸建住宅における給排水設備工事や電気工事も展開しています。

ガス事業者や一般消費者等から受け取る設備工事の請負代金や、ガス機器・環境商材の販売代金が主な収益源です。当セグメントの事業運営は、同社のほか、子会社のガイアテックなどが担っています。

ガス導管事業


都市ガス供給網の整備を支えるため、ガス導管の維持管理に関連する本支管埋設工事や供給管工事を行っています。経年管の取替工事などを通じて、インフラ設備の強靭性向上と予防保全型のインフラメンテナンス推進に貢献しています。

東京ガスネットワークをはじめ、静岡ガスや北海道ガスなどの主要なガス事業者から工事を受注し、その請負代金を収益源としています。当セグメントの事業運営は、主に同社が単体で担当しています。

電設・土木事業


電気管路洞道埋設工事や上下水道工事、一般土木工事を手がけています。具体的には、東京電力パワーグリッドの設備投資計画に伴う管路埋設工事や、東京都水道局関連工事、さらにはゴルフ場におけるイリゲーション工事(緑化散水設備工事)などを提供しています。

電力会社や水道局、ゴルフ場運営会社などの事業者を顧客とし、インフラや各種設備の整備に伴う工事請負代金を主な収益源としています。当セグメントの事業運営は、主に同社が実施しています。

その他


報告セグメントに含まれない事業として、工材の販売などを行っています。また、子会社の協和ライフサービスを通じて、車両のリース・整備および損害保険代理店業務なども展開しています。

主に同社グループ内外からの車両リース料や整備代金、保険代理店としての各種手数料を収益源としています。これらの事業は、同社のほか子会社の協和ライフサービスなどが運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は342億円から394億円へと着実な拡大傾向にあります。経常利益は13億円から17億円の範囲で推移し、利益率は約4%前後で安定しています。当期純利益も堅調であり、継続的に黒字を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 342億円 345億円 359億円 374億円 394億円
経常利益 14億円 13億円 15億円 17億円 16億円
利益率(%) 4.1% 3.9% 4.1% 4.5% 4.1%
当期純利益 11億円 9億円 11億円 11億円 12億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約20億円の増収となった一方、売上総利益は約1億円の減少となりました。これに伴い、売上総利益率は9.9%から9.1%へ低下しており、営業利益も15億円から14億円へと減少しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 374億円 394億円
売上総利益 37億円 36億円
売上総利益率(%) 9.9% 9.1%
営業利益 15億円 14億円
営業利益率(%) 4.0% 3.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比31%)、雑費が3億円(同12%)、役員報酬が2億円(同10%)を占めています。売上原価の主な内訳については、外注費が200億円(構成比56%)、経費が94億円(同26%)、材料費が63億円(同17%)となっています。

(3) セグメント収益


売上高の大半をガス関連事業が占めていますが、直近では建築設備事業が大きく伸長しています。当期はガス導管事業が減収減益となったものの、建築設備事業とガス・機器設備事業が好調に推移し、全体の売上成長を牽引しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
建築設備事業 42億円 61億円 -0.1億円 3億円 5.5%
ガス・機器設備事業 129億円 143億円 4億円 6億円 4.5%
ガス導管事業 183億円 169億円 12億円 6億円 3.6%
電設・土木事業 20億円 20億円 1億円 0.4億円 2.2%
調整額・その他 1億円 1億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 374億円 394億円 17億円 16億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 11億円 20億円
投資CF -10億円 -5億円
財務CF -12億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私たちは常に進化する強い意志を持ち、心一つにして一流に向かい羽ばたき続けます。」を企業スローガンとして掲げています。ガス・電気・水といった人々の暮らしや産業に欠かせないライフラインを支えることで社会に安心と心地よさを提供し、豊かな未来に貢献することを社会的使命としています。

(2) 企業文化


社会的使命を果たすため、確かな技術ときめ細かな感性でお客様の信頼に応え、選ばれ続けることを重視しています。また、社員が安心して働ける職場環境を提供し、「感じ・考え・自ら行動する」という企業風土を醸成していくことを基本方針とし、健全な経営の継続を目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年度から2027年度までを対象とする中期経営計画「Triple"S"」を推進しています。最終年度に向けて、以下の目標達成を目指しています。

* 売上高400億円以上
* 売上高経常利益率4.5%以上
* ROE6.5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、「SHINKA(進化・深化・新化)」を掲げて一括受注・施工体制の推進や既存事業の深耕拡大、人材育成強化と生産性向上を図ります。特に建築設備事業を新たな中核事業に育て、一社依存度の低減と事業ポートフォリオの多角化を進める戦略です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


現場の施工力や品質を支える人材こそが事業基盤であると認識し、人材の多様性確保や多機能化を含む人的資本の強化を重要な経営課題と位置づけています。働きがいのある職場環境の実現と多様な働き方の促進に取り組むとともに、ダイバーシティ推進や従業員の階層に応じた各種研修を実施する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.2歳 17.0年 7,001,465円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.4%
男性育児休業取得率 66.6%
男女賃金差異(全労働者) 70.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 35.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用正社員に占める女性労働者の割合(17.7%)、男女の平均継続勤務年数の差異(74.8%)、法定時間外労働および法定休日労働時間の合計平均(21.6時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注環境の変化による影響


主要顧客である東京ガスグループの売上が約5割を占めており、主要取引先の事業戦略の大幅な変更や住宅着工数減少による価格競争激化が起こった場合、受注量の減少や収益面への影響が生じる可能性があります。これに対し、建築設備事業の拡大により一社依存度の低減を図っています。

(2) 投資回収と戦略的M&Aのリスク


事業基盤確保に向けた戦略的M&Aや、事業所の移転、システム刷新などの大規模な投資を行う場合があります。事前の投資回収計画の検証や投資後の進捗確認を実施していますが、想定したシナジー効果や成果が得られなかった場合、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 組織力低下と人材確保に関するリスク


現場における施工力を支える人材こそが事業基盤であり、優秀な人材の確保と育成が重要課題です。働き方改革やIT活用による環境整備を進めていますが、少子化や大手企業の採用増加により必要な人材が確保できず、多機能化への対応が遅れた場合、事業展開に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。