ヤマウラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 ヤマウラ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤマウラは、東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する企業です。長野県を拠点に建設事業、エンジニアリング事業、不動産開発事業を展開しています。直近の決算では売上高が約405億円、経常利益が約46億円と堅調な増収増益を達成し、安定した成長を続けています。


※本記事は、株式会社ヤマウラの有価証券報告書(第67期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤマウラってどんな会社?


長野県を拠点に建設事業を中心に、エンジニアリング事業や不動産開発事業を展開する総合企業です。

(1) 会社概要


同社は1920年に長野県で山浦鉄工所として創業し、1960年に法人化されました。1986年に現在のヤマウラへと社名を変更し、1997年に株式上場を果たしました。その後、1999年にヤマウラ企画開発を設立して不動産開発事業へ本格的に進出するなど、地域に密着した多角的な事業展開を進めています。

現在の従業員数は連結で458名、単体で458名となっています。筆頭株主は同社の関係会社である信州エンタープライズで、第2位はヤマウラ従業員持株会、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
信州エンタープライズ 18.90%
ヤマウラ従業員持株会 9.50%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は山浦正貴氏が務めており、取締役10名中4名が社外取締役(比率40.0%)となっています。

氏名 役職 主な経歴
山浦正貴 代表取締役社長 2000年11月同社入社。取締役副社長等を経て、2019年6月代表取締役社長。ヤマウラ企画開発代表取締役社長より現職。
藤木公明 専務取締役事業統括本部長兼建設事業部長 1977年3月同社入社。松本支店長、営業本部長等を経て、2026年4月専務取締役上席執行役員より現職。
赤羽一成 常務取締役経営戦略本部長 2003年8月同社入社。佐久支店長、経営戦略室長等を経て、2026年4月常務取締役上席執行役員より現職。
中谷亘 取締役技術本部長兼安全室長 1994年4月同社入社。辰野支店長、技術本部長等を経て、2026年4月取締役上席執行役員より現職。
保科茂雄 取締役 1982年3月同社入社。営業本部長、取締役副社長建設事業部長兼駒ヶ根支店長等を経て、2026年4月より現職。
萩原浩一 取締役(常勤監査等委員) 1981年4月駒ヶ根市役所入所。産業部長、総務部長を経て2018年4月同社入社。2024年6月より現職。


社外取締役は、中坪敬治(元関東信越国税局調査査察部調査第一部門統括国税調査官)、神戸美佳(神戸法律事務所所長)、安部正明(公認会計士安部正明事務所代表)、中村文雄(元水戸税務署長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」、「エンジニアリング事業」、「開発事業等」を展開しています。

建設事業


民間での事務所・工場・店舗等の新築や増改築、住宅・マンション等の建築工事、国・地方公共団体等が発注する公共工事などを幅広く展開しています。BIMなどの最新デジタル技術を活用した環境対応の設計や耐震・免震構造技術の提案に注力しています。

顧客からの工事請負代金が主な収益源です。建築部門および土木部門において、一括請負やデザイン&ビルド方式などで受注を獲得しています。本事業は同社が運営しています。

エンジニアリング事業


自動制御装置や情報通信システム等を扱う電気部門と、水管理機器、産業機械、橋梁上部工、小水力発電設備などを扱う工機部門を展開しています。社会インフラ関連設備で培った技術力を活かし、メカトロ関係分野も強化しています。

設備の請負から設計、製造・据付け、メンテナンスまでを一貫して提供し、顧客からの請負代金やメンテナンス費用が収益源となっています。本事業は同社が運営しています。

開発事業等


首都圏を中心とした不動産の売買、賃貸、宅地開発、分譲マンション、リノベーション事業を行っています。また、太陽光発電や水力発電などの再生可能エネルギー事業も展開しています。

不動産の販売代金や賃貸料、および再生可能エネルギーの売電収入などが主な収益源です。本事業は同社、子会社のヤマウラ企画開発、関係会社の信州エンタープライズが運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、売上高は概ね右肩上がりで推移しており、直近では400億円を突破しました。経常利益についても堅調な伸びを見せ、利益率は11%台へと向上しています。親会社株主に帰属する当期純利益も安定して30億円台に乗せるなど、収益力の強化と事業拡大がうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 279億円 314億円 375億円 356億円 405億円
経常利益 16億円 20億円 42億円 40億円 46億円
利益率(%) 5.8% 6.3% 11.1% 11.1% 11.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 7億円 30億円 30億円 32億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も増加しています。原価低減活動や生産性の向上により、売上総利益率は約18%を維持しており、販売費及び一般管理費を吸収して営業利益率も10%台へと着実に改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 356億円 405億円
売上総利益 66億円 72億円
売上総利益率(%) 18.5% 17.8%
営業利益 39億円 43億円
営業利益率(%) 10.9% 10.5%


販売費及び一般管理費(32億円)のうち、従業員給料手当が8億円(構成比26%)、賞与引当金繰入額が3億円(同9%)を占めています。また、売上原価(330億円)の中心となる完成工事原価においては、外注費が220億円(構成比67%)、材料費が43億円(同13%)となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力の建設事業が民間建築工事や公共工事の受注増により大幅な増収を牽引しました。一方で、エンジニアリング事業と開発事業等においては、大型案件の減少や市況の影響により減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建設事業 286億円 355億円
エンジニアリング事業 40億円 31億円
開発事業等 30億円 20億円
連結(合計) 356億円 405億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CF、投資CF、財務CFのすべてがマイナスとなっており、資金繰りが厳しくなっている末期型の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 0億円 -16億円
投資CF -6億円 -23億円
財務CF -3億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.8%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も72.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「まちづくり」と「モノづくり」を通して地域の発展に貢献し続けていくべく、サステナビリティを経営の軸とし、「安全第一」、「品質第一」、そして「お客様満足度第一」を経営の要諦として実践しています。「地域と共に」という企業理念のもと、地域社会やステークホルダーに信頼される環境に優しい企業を目指しています。

(2) 企業文化


一世紀を支え続けてきた骨太の創業精神という土壌の上に、変化する時代に合わせてニーズを的確に捉え、企業価値の継続的向上に努める文化を持っています。MVV(ミッション:地域企業として社会に貢献、ビジョン:成長戦略、バリュー:企業価値向上)を展開し、自然環境との共生を大切にしながら技術の研鑽に努めています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「Vision2030」を掲げ、資本効率の最適化と事業ポートフォリオの再構築を図ることで、持続可能な成長への基盤づくりを進めています。資本コスト(現状9%程度)を上回る収益力を継続していくため、最終年度には以下の目標達成を目指しています。

・自己資本当期純利益率(ROE):14%以上
・配当方針(株主還元):DOE3%

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として、「改善戦略」「差別化戦略」「積極戦略」の3本柱を推進しています。また、将来の収益基盤拡大に向けて、以下の課題を優先的に対処しています。

・最新デジタル技術(BIM等)を活用したDX推進による生産性向上と原価削減
・建築、土木、エンジニアリング各事業におけるドメインの強化とブランド確立
・官民連携事業(PFI事業)やCREソリューション事業など成長分野への積極投資

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「信頼される人づくり」を原点とし、パーパスに共感し経営理念を体現するプロフェッショナル集団の育成に注力しています。「入社3年で独り立ち」を目標に、自社制作の動画を活用した基礎教育やIT技術学習を導入するほか、国家資格取得の積極的な支援や多様な働き方の環境整備を通じて、社員の定着と成長を促進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.1歳 12.4年 8,243,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.6%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 63.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 93.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術士資格取得者(19名)、一級建築士資格取得者(56名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化リスク


想定を上回る建設需要の減少や主要資材価格の急激な上昇、不動産市場における需給状況や価格の大幅な変動が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は需要や価格動向の先行管理を行い、適切な受注・施工体制を確保することで環境変化へ柔軟に対応しています。

(2) 不適正品質のリスク


発注者の要求に満たない施工や設計と異なる施工、不適切な検査等により品質の問題が発生した場合、損害賠償や社会的な信用の失墜、工事遅延等により、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。現場パトロールによるチェック等により品質不具合の防止に努めています。

(3) 現場事故・環境汚染リスク


工事は市街地や山間地などの多様な環境で行われ、多数の作業員が同時に作業するため、第三者への加害事故や労働災害、環境汚染事故等が発生する可能性を有しています。これらにより損害賠償や工事の遅延が生じた場合、業績等に悪影響を及ぼすおそれがあります。

(4) 担い手不足リスク


建設業界において建設技術者・技能労働者が減少傾向であり、高齢化と労働者のさらなる減少が進むと、工期の遅れや人件費の上昇を招き業績等に影響を及ぼす可能性があります。同社はICT施工の導入等による労働者の負担軽減や労働条件の改善に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。