※本記事は、株式会社ヤマウラ の有価証券報告書(第66期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヤマウラってどんな会社?
長野県を拠点に、建設・土木からエンジニアリング、不動産開発まで手掛ける総合建設企業です。
■(1) 会社概要
同社は1920年に山浦鉄工所として創業し、1960年に山浦鉄工株式会社を設立しました。1986年に現在の株式会社ヤマウラへ商号を変更し、1997年に株式を上場、1998年には東京証券取引所市場第一部に指定されました。2003年には独自商品「ブレインマンション」のフランチャイズ展開を開始し、全国的な事業拡大を進めています。
連結従業員数は449名(単体449名)です。筆頭株主は創業家資産管理会社と推察される株式会社信州エンタープライズで、第2位はヤマウラ従業員持株会、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。信州エンタープライズは同社のその他の関係会社であり、同社役員が兼務しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 信州エンタープライズ | 19.24% |
| ヤマウラ従業員持株会 | 9.52% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名、計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は山浦正貴氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山 浦 正 貴 | 代表取締役社長 | 2000年同社入社。駒ヶ根支店長、管理本部副本部長、代表取締役副社長を経て2019年より現職。ヤマウラ企画開発代表取締役社長を兼務。 |
| 保 科 茂 雄 | 取締役副社長建設事業部長 | 1982年同社入社。建築営業部長、建設事業本部長兼営業本部長などを歴任。2021年より現職。 |
| 藤 木 公 明 | 専務取締役営業本部長 | 1977年同社入社。松本支店長、長野支店長、営業本部副本部長などを経て2019年より現職。 |
| 赤 羽 一 成 | 常務取締役経営戦略室長 | 2003年同社入社。営業本部副本部長兼佐久支店長などを経て2024年より現職。 |
| 中 谷 亘 | 取締役技術本部長 | 1994年同社入社。辰野支店長、技術本部副本部長を経て2025年より現職。 |
| 萩 原 浩 一 | 取締役(常勤監査等委員) | 1981年駒ヶ根市役所入所。産業部長、総務部長を経て2018年同社入社。内部監査室長を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、中 坪 敬 治(税理士)、神 戸 美 佳(弁護士)、安 部 正 明(公認会計士・税理士)、中 村 文 雄(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設事業」、「エンジニアリング事業」および「開発事業等」事業を展開しています。
■(1) 建設事業
建築部門では民間・公共の建築工事や「ブレインマンション」等の独自商品を展開し、土木部門では一般土木、橋梁、防災工事等を手掛けています。また、建設DXを推進し、BIMやCIMを活用した設計・提案を行っています。
収益は、顧客からの工事請負代金が主な源泉です。運営は主に同社が行い、ブレインマンション事業では全国のライセンス契約ビルダーによる展開も進めています。
■(2) エンジニアリング事業
電気部門では自動制御装置や情報通信システムの設計・製造・メンテナンスを行い、工機部門では水管理機器、産業機械、水力発電設備などを一貫して提供しています。社会インフラ関連の技術力を活かし、メカトロ分野も強化しています。
収益は、顧客からの製品・設備の設計、製造、据付け、メンテナンスに伴う対価です。運営は同社が行っています。
■(3) 開発事業等
首都圏を中心とした不動産の売買、賃貸、宅地開発、分譲マンション、リノベーション事業を展開しています。また、太陽光発電や水力発電による再生エネルギー事業も行っています。
収益は、不動産の販売収入、賃貸収入、および売電収入です。運営は同社、子会社のヤマウラ企画開発株式会社、および関係会社の株式会社信州エンタープライズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2024年3月期まで順調に拡大してきましたが、2025年3月期は大型案件の反動等により減収となりました。利益面では、売上高の減少に伴い経常利益は微減となりましたが、利益率は11%台の高水準を維持しています。当期純利益は過去最高水準を更新し、安定した収益力を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 248億円 | 279億円 | 314億円 | 375億円 | 356億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 16億円 | 20億円 | 42億円 | 40億円 |
| 利益率(%) | 4.0% | 5.8% | 6.3% | 11.1% | 11.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 8億円 | 7億円 | 30億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高は減少しましたが、売上原価も抑制されたことで売上総利益率は概ね横ばい(微減)で推移しています。販管費も減少しましたが、減収の影響で営業利益は減少しました。しかし、営業利益率は依然として10%を超える高い水準を保っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 375億円 | 356億円 |
| 売上総利益 | 76億円 | 71億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.2% | 19.9% |
| 営業利益 | 43億円 | 39億円 |
| 営業利益率(%) | 11.5% | 10.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が8.0億円(構成比25%)、賞与引当金繰入額が2.7億円(同9%)、広告宣伝費が2.2億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建設事業は前期の大型案件の反動等により減収となりましたが、利益率は高水準を維持しています。エンジニアリング事業は増収増益となり、利益率も向上しました。開発事業等は販売物件の減少等により大幅な減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設事業 | 296億円 | 286億円 | 35億円 | 44億円 | 15.2% |
| エンジニアリング事業 | 36億円 | 40億円 | 6億円 | 7億円 | 16.7% |
| 開発事業等 | 44億円 | 30億円 | 4億円 | 2億円 | 7.6% |
| 調整額 | -0億円 | -0億円 | -2億円 | -14億円 | - |
| 連結(合計) | 375億円 | 356億円 | 43億円 | 39億円 | 10.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.5%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、地域に根差し「まちづくり」と「モノづくり」を通して地域の発展に貢献し続けることを目指しています。「価値共創とサステナ」をパーパスとし、「安全第一」「品質第一」「お客様満足度第一」を経営の要諦として実践しています。地域企業として社会に貢献するミッションを掲げ、企業価値の継続的向上に努めています。
■(2) 企業文化
創業100年以上の歴史の中で培われた「信頼される人づくり」を原点としています。多様性を活かした人材育成に力を入れ、個々の能力と組織力の融合により高い付加価値を生み出すことを重視しています。「地域と共に」の姿勢を大切にし、信州にゆかりのある品物を株主優待とするなど、地域・ステークホルダーとの信頼関係を深める文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2025年4月から2028年3月までの中期経営計画において、資本コスト(9%程度)を上回るROEの継続を掲げています。具体的には、以下の数値目標を設定しています。
* ROE:14%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「改善戦略」「差別化戦略」「積極戦略」の3本柱を中心に成長を目指します。改善戦略では組織のフレキシブル化やバックオフィス拡充を進め、差別化戦略では部門間シナジーの最大化や新商品開発、重点エリア開発に取り組みます。積極戦略では、成長エンジンとなる事業に投資し、収益基盤を拡大します。
* DX推進:BIM、CIM、3Dレーザースキャナー等の活用による生産性向上。
* ドメイン強化:「オイシールド」「イーファクト」等のブランド展開による新規顧客獲得。
* 新規事業:官民連携事業(PFI)やCREソリューション事業の推進。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「信頼される人づくり」を原点とし、パーパスに共感し誠実で向上意欲のある人材の育成に注力しています。「ヤマウラアカデミー」による教育研修体系を整備し、専門教育と一般教育を組み合わせたカリキュラムを提供しています。また、社員の健康づくり、資格取得支援、エンゲージメント向上、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を重点項目とし、働きがいのある環境づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.9歳 | 12.0年 | 8,003,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.6% |
| 男性育児休業取得率 | 44.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 102.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術士(18名)、一級建築士(55名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化のリスク
建設需要の減少や主要資材価格の急激な上昇、不動産市況の変動等が業績に影響を与える可能性があります。同社は需要や価格動向の先行管理を行い、受注・設計・施工体制の確保や工期短縮、購買機能の強化、適切な不動産仕入れ等により柔軟に対応する方針です。
■(2) 不適正品質のリスク
施工品質の問題が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜、工事遅延等により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は施工計画時の入念な事前検討や日々の記録管理、現場パトロールによるチェック体制の強化等により、品質不具合の防止に努めています。
■(3) 現場事故・環境汚染リスク
工事現場での第三者への加害事故、労働災害、環境汚染事故等が発生した場合、損害賠償や指名停止等により業績に影響を及ぼす可能性があります。ISO45001に基づくルールの徹底、安全教育、現場巡視等を通じて事故防止に努めています。
■(4) 担い手不足リスク
建設業界における技術者・技能労働者の減少や高齢化が進む中、人材不足による工期遅延や人件費上昇のリスクがあります。同社は「4週8閉所」等の働き方改革、ICT施工やパワーアシストスーツの導入による負担軽減、建設キャリアアップシステム活用等により、人材確保と定着に取り組んでいます。



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