滝沢ハム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

滝沢ハム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

滝沢ハムは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、食肉加工品や惣菜等の製造販売、食肉の仕入・加工販売を主力とする企業です。当期は物価上昇に伴う消費減退で販売数量が減少し、売上高は減収となりました。原材料価格やエネルギーコストの高止まりにより、経常損益は改善傾向にあるものの依然として赤字となっています。


※本記事は、滝沢ハム株式会社の有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 滝沢ハムってどんな会社?


同社は食肉加工品や惣菜の製造販売、食肉の仕入・加工を手がけ、安全・安心な食品を提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1950年に食肉加工製造工場を基礎として設立され、1966年に現在の滝沢ハムへ商号を変更しました。1990年に日本証券業協会に店頭登録し、その後市場再編を経て、2022年より東京証券取引所スタンダード市場へ移行しています。2025年には監査等委員会設置会社へと移行しました。

同社グループは連結で303名、単体で301名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業家等の資産管理会社とみられる有限会社滝沢興産で、第2位には総合商社であり主要取引先でもある伊藤忠商事が名を連ねています。また第3位には取引先持株会が入っており、取引先との関係維持を図っています。

氏名 持株比率
有限会社滝沢興産 22.45%
伊藤忠商事 15.34%
滝沢ハム取引先持株会 7.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長は瀧澤太郎氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
瀧澤太郎 取締役社長(代表取締役) 1999年同社入社。2002年取締役就任。2003年代表取締役社長就任。営業本部長などを歴任し、2021年代表取締役会長に就任。2024年11月より現職。
山口輝 常務取締役管理本部長 2007年に足利銀行を退職後、同社へ入社し監査部長を務める。2008年管理本部長兼総務部長、2009年取締役管理本部長に就任。2018年6月より現職。
大橋晴夫 取締役(常勤監査等委員) 1975年同社入社。管理本部企画室長、経営企画室副部長、経営戦略室部長などを経て、2019年に監査役へ就任。2025年6月より現職。


社外取締役は、浜村恭弘(税理士法人浜村会計設立社員税理士)、鎌形俊之(税理士法人鎌形会計代表社員)、新田裕子(シンガポール国際調停センター日本代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食肉加工品」「惣菜その他加工品」「食肉」「その他」事業を展開しています。

(1) 食肉加工品


ハム・ソーセージ等の製造および販売を行っています。一般の消費者や業務用の外食産業向けに、安全・安心で価値ある商品の開発や需要変化に即応した商品ラインアップを提供しています。

収益源はハムやソーセージといった製品の販売代金です。生産性の向上とコスト削減を進めながら商品の絞り込みや効率化を図っており、当部門の事業運営は主に同社が担っています。

(2) 惣菜その他加工品


レトルト食品や惣菜等の製造販売および仕入販売を手がけています。中食や外食向けの業務用品に加え、コンビニエンスストア向けや通信販売向けなど、多様化するライフスタイルに対応した商品開発を行っています。

収益源は、自社で製造した惣菜製品やレトルト食品などの販売代金です。新商品の開発や外部との連携によるプライベートブランド商品の展開にも注力しており、当部門の運営は同社が担っています。

(3) 食肉


食肉の仕入、加工および販売を行っています。国内外の様々な産地から原材料を分散調達し、安定した数量の確保と特定の調達先への集中リスクの回避を図りながら、品質の安定した食肉を顧客へ供給しています。

収益源は、輸入ポークや輸入牛肉などを中心とした食肉の販売代金です。為替変動や地政学リスクに対応するため、原産地や規格の変更を含む柔軟な調達戦略を進めており、事業運営は同社が行っています。

(4) その他


外食部門として、コーヒーショップなどの飲食店経営を行っています。同社の製品を活用したメニュー提供なども視野に入れながら、地域に根ざした事業展開を進めています。

収益源は、運営する店舗からの飲食代金などです。コーヒー販売会社を通じて同社製品を同社子会社に販売する形態も取っており、事業運営は子会社であるワールドフードサービスが主に担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は緩やかな減少傾向にあります。利益面では、原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇、人件費の増加といったコストアップ要因を吸収しきれず、利益率が低下して赤字となる期が散見されます。当期もコスト削減や生産性向上に努めたものの、厳しい経営環境が続いています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 295億円 295億円 282億円 281億円 266億円
経常利益 2億円 -2億円 2億円 -4億円 -4億円
利益率(%) 0.6% -0.6% 0.6% -1.4% -1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 -2億円 1億円 -5億円 -2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減収となりました。売上原価率は高水準で推移しており、売上総利益も減少しています。販売費及び一般管理費の削減に取り組んだものの、原材料費や物流費などの負担が重く、営業利益は前期に続きマイナスとなりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 281億円 266億円
売上総利益 37億円 35億円
売上総利益率(%) 13.3% 13.3%
営業利益 -4億円 -4億円
営業利益率(%) -1.5% -1.4%


販売費及び一般管理費のうち、運送費が12億円(構成比30%)、給料手当が9億円(同23%)を占めています。また、当期の総製造費用の内訳としては、原材料費が139億円(構成比78%)、経費が23億円(同13%)を占めており、原材料関連コストが原価の大部分を占める構造となっています。

(3) セグメント収益


食肉加工品部門はハム・ソーセージ等の販売数量減により減収となりました。食肉部門も輸入ポークの取扱減少が響き減収となっています。一方、惣菜その他加工品部門は新商品の導入効果などにより微増収を確保し、その他部門の外食事業も堅調に推移しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
食肉加工品 110億円 102億円
惣菜その他加工品 51億円 52億円
食肉 119億円 111億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 281億円 266億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業活動や資産売却から得た資金を借入金の返済等に充てる「改善型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF - 5億円
投資CF -5億円 3億円
財務CF -2億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.7%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「より良い食品を通じて食文化の向上と健康増進に貢献する」を経営の基本理念として掲げています。安全・安心な商品を提供し、顧客から必要とされる企業を目指すとともに、安定した配当の継続や地域社会との共生を図ることを経営方針として定めています。すべてのステークホルダーから信頼される企業としての成長を追求しています。

(2) 企業文化


同社は、「消費者に感動を与え続ける商品をお届けし、地元愛と共に社員満足の高い食品企業への成長を続ける」というビジョンステートメントを掲げています。また、社員を無限の可能性を秘めた財産と位置づけ、チャレンジ精神、コミュニケーション、リーダーシップを重視した人材育成を行い、自己啓発や挑戦が尊重される企業風土の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営の目標達成状況を判断するための客観的な指標として、収益性と資本効率の向上を重視した経営目標を設定しています。具体的には以下の数値目標を掲げています。

* 営業利益率 2%
* 自己資本当期純利益率 10%以上
* 1株当たり当期純利益(EPS) 150円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は持続的な成長に向けて、消費者の節約志向に対応した商品開発力の強化と、ブランド価値の向上に取り組んでいます。また、生産ラインの集約や商品の絞り込みを通じたコスト構造改革を進めるほか、原産地の分散や調達先の多様化による安定供給体制の強化を図っています。中長期的には業務のDX化やサプライチェーンの見直しによる資本効率化を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を企業価値向上の源泉と位置づけ、多様な人材が能力を最大限に発揮できる組織づくりと専門性を備えた人材の育成を推進しています。商品開発や調達のノウハウを持つ人材を育成するとともに、社員の役割や成果を適切に評価する人事制度改革を進め、プロ意識の醸成を図っています。また、中途採用も積極的に行い、事業競争力の強化に繋げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.6歳 13.5年 4,919,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 80.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 88.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の市況変動リスク


同社は国内外から原材料を分散調達して安定確保に努めていますが、世界的な需給バランスの変化や為替相場の変動、さらには鳥インフルエンザ等の家畜疾病の発生により、仕入数量の制限や調達価格が上昇する可能性があります。これにより、原材料コストが大幅に変動した場合、業績に影響を及ぼす懸念があります。

(2) 製品の安全性に関するリスク


食品の安全確保のためFSSCやISO22000認証に基づき管理体制を強化していますが、製造工程での異物混入やアレルゲン問題などに起因する製品事故が発生するリスクが存在します。大規模な事故が発生した場合には、製品回収に伴う多額のコスト発生やブランドイメージの低下により、売上高が減少する可能性があります。

(3) 資金調達に伴う金利リスク


同社グループは、事業活動に必要な運転資金や設備投資資金を金融機関からの借り入れにより調達しています。そのため、将来的な金融市場の不安定化や金利水準の上昇が生じた場合、資金調達コストが増加し、収益性が圧迫されるなど同社の財務状況および経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。