※本記事は、滝沢ハム株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 滝沢ハムってどんな会社?
創業以来、ハム・ソーセージの製造販売を軸に、食肉の仕入加工販売や惣菜事業を展開する食品メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1950年に食肉加工製造工場を基礎として設立されました。1976年には国際食肉ハムオリンピックで日本初の金メダルを受賞しています。1990年に日本証券業協会に店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所に上場しました。その後、2007年の惣菜専門工場新設や物流センターの整備などを経て事業基盤を強化しています。
連結従業員数は319名、単体では317名です。筆頭株主は有限会社滝沢興産で、第2位は総合商社であり重要な取引先でもある伊藤忠商事です。第3位には取引先持株会が名を連ねており、創業家関連や取引関係者による安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社滝沢興産 | 22.45% |
| 伊藤忠商事 | 15.34% |
| 滝沢ハム取引先持株会 | 8.13% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は瀧澤太郎氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 瀧澤 太郎 | 取締役社長(代表取締役) | 1999年入社。商品開発部長、常務取締役を経て2003年代表取締役社長就任。各本部長を歴任し、2021年代表取締役会長を経て2024年11月より現職。 |
| 阿部 竹男 | 専務取締役食肉本部長 | 1977年入社。品質保証部長、経営企画室長を経て2009年取締役就任。経営戦略室長、営業本部長、生産本部長等を歴任し2025年3月より現職。 |
| 山口 輝 | 常務取締役管理本部長 | 足利銀行を経て2007年入社。監査部長、管理本部長兼総務部長を経て2009年取締役就任。2018年6月より現職。 |
社外取締役は、浜村恭弘(税理士法人浜村会計代表社員税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、食肉及び食肉加工品の製造販売を主な内容とし、「食肉加工品」「惣菜その他加工品」「食肉」「その他」の各部門で事業を展開しています。
■(1) 食肉加工品事業
ハム・ソーセージ等の製造及び販売を行っています。自社工場で製造された製品は、スーパーマーケットや百貨店などの小売店を通じて一般消費者に提供されるほか、業務用としても販売されています。
この事業の収益は、小売店や卸売業者などの顧客に対する製品販売代金です。運営は主に滝沢ハムが行っており、伝統的な技術と品質管理に基づいた製品展開を進めています。
■(2) 惣菜その他加工品事業
レトルト食品や惣菜等の製造販売および仕入販売を行っています。多様化する食生活に対応し、簡便性や即食性の高い商品を提供しており、コンビニエンスストア向けの惣菜なども取り扱っています。
収益は、製品の販売による対価です。運営は主に滝沢ハムが担当しており、市場ニーズに合わせた商品開発と製造を行っています。
■(3) 食肉事業
食肉(牛・豚・鶏など)の仕入、加工および販売を行っています。国内外から食肉を調達し、一次加工などを施した上で、小売店や外食産業、加工メーカーなどに供給しています。
収益源は、食肉および加工肉の販売代金です。運営は主に滝沢ハムが行っており、原材料の安定確保と品質維持に努めています。
■(4) その他
飲食店の経営を行っています。具体的にはコーヒーショップの運営などが含まれ、関連会社を通じて同社製品の提供も行っています。
この事業の収益は、飲食店の来店客からの飲食代金などです。運営は連結子会社のワールドフードサービスが行っており、コーヒー販売会社を通じて同社製品を販売する形態をとっています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は300億円前後から280億円台へと緩やかに減少傾向にあります。利益面では、経常利益が黒字と赤字を繰り返しており、原材料価格の変動やコスト増の影響を受けやすい不安定な推移となっています。直近の2025年3月期は大幅な赤字を計上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 304億円 | 295億円 | 295億円 | 282億円 | 281億円 |
| 経常利益 | 1.0億円 | 1.7億円 | -1.7億円 | 1.7億円 | -4.1億円 |
| 利益率(%) | 0.3% | 0.6% | -0.6% | 0.6% | -1.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.9億円 | 1.8億円 | -1.9億円 | 1.2億円 | -5.0億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は微減となりましたが、売上原価が増加したことで売上総利益が減少し、利益率が低下しています。販売費及び一般管理費は横ばいで推移しましたが、粗利の減少を吸収できず、営業損益は黒字から赤字へと転落しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 282億円 | 281億円 |
| 売上総利益 | 43億円 | 37億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.3% | 13.3% |
| 営業利益 | 1.4億円 | -4.3億円 |
| 営業利益率(%) | 0.5% | -1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費が12億円(構成比30%)、給料手当が9億円(同22%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各部門の売上動向を見ると、主力の食肉加工品部門はハム・ソーセージ等の販売数量減により減収となりました。惣菜その他加工品部門もコンビニ向け惣菜の減少で減収です。一方、食肉部門は輸入・国産ともに取扱量が増加し増収となりましたが、全体としては微減収となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 食肉加工品 | 113億円 | 110億円 |
| 惣菜その他加工品 | 53億円 | 51億円 |
| 食肉 | 115億円 | 119億円 |
| その他 | 1.4億円 | 1.0億円 |
| 連結(合計) | 282億円 | 281億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラスですが僅少で、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、営業活動で得たわずかな資金と手元資金を取り崩して投資や借入返済を行っている「健全型」に近い動きですが、営業CFの水準が低く、業績回復が課題と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.0億円 | 0.0億円 |
| 投資CF | -2.5億円 | -5.0億円 |
| 財務CF | -4.8億円 | -1.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-13.2%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「より良い食品を通じて食文化の向上と健康増進に貢献する」を経営の基本理念としています。これに基づき、「安全・安心な商品をお客様に提供する」「お客様に必要とされる企業になる」「安定した配当をし続ける」「地域社会との共生を図る」という4つの経営方針を定めています。
■(2) 企業文化
すべてのステークホルダーから信頼される企業を目指し、事業活動に取り組む姿勢を重視しています。また、人材育成においては「チャレンジ精神」「コミュニケーション」「リーダーシップ」を掲げ、自己啓発やチャレンジが尊重される社風を目指しています。多様な人材が個性を活かせる環境整備にも取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、経営上の目標達成状況を判断するための客観的指標として、以下の数値目標を掲げています。
* 営業利益率:2%
* 自己資本当期純利益率(ROE):10%以上
* 1株当たり当期純利益(EPS):150円
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的には、資本効率化や新基盤構築、自社販売力の強化などを重点施策として推進します。具体的には、業務のDX化やスリム化、商品ごとの収益管理体制の構築、チャネルの新規開拓などに取り組みます。また、市場需要に合わせた商品開発や、提携企業との関係強化も進めていく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、社員を無限の可能性を秘めた財産と位置づけ、人材の能力開発と向上に努めています。企業価値を最大化するため、新卒採用に加え即戦力となる中途採用も積極的に行っています。また、国籍や性別等を問わず多様な人材が活躍できるよう、働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.8歳 | 13.3年 | 5,139,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 14.1% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 77.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 81.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 88.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市況変動リスク
原材料等の調達において、世界的な需給バランスの変化や為替変動、家畜疾病の発生、セーフガードの発動などにより、仕入数量の制限や価格上昇が起こる懸念があります。これにより原材料価格が大きく変動した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 製品の安全性に関するリスク
安全な食品づくりに取り組んでいますが、原材料の問題や異物混入、アレルゲン問題などで製品事故が発生する可能性はゼロではありません。大規模な製品事故が発生した場合、回収コストの発生や売上減少により、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 法的規制に関するリスク
食品衛生法や製造物責任法など、多岐にわたる法規制の適用を受けて事業を行っています。将来的な法改正や規制強化により事業活動が制限された場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。また、コンプライアンスを重視していますが、予期せぬ事態への対応も求められます。



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