ニップン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニップン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ニップンは東京証券取引所プライム市場に上場し、製粉および食品事業を展開する企業です。直近決算では、価格改定や冷凍食品の販売好調により売上高・経常利益ともに過去最高水準で推移し、増収増益を達成しました。製粉事業の安定した基盤に加え、食品事業の拡大が業績を牽引しています。


※本記事は、株式会社ニップン の有価証券報告書(第201期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ニップンってどんな会社?


製粉業界のパイオニアとして創業し、現在は食品事業や海外展開も加速させる総合食品企業です。

(1) 会社概要


1896年に日本初の機械製粉会社として設立され、1949年に株式を上場しました。1955年には「オーマイ」ブランドが誕生し、家庭用食品分野へ進出しています。2000年には米国企業を買収して海外事業を強化し、2021年には社名を現在のニップンに変更しました。近年は冷凍食品事業の拡大にも注力しています。

連結従業員数は3,863名、単体では1,210名です。筆頭株主は資産管理を行う信託銀行で、第2位は取引先持株会、第3位は生命保険会社となっており、安定的な株主構成です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.60%
ニップン取引先持株会 5.60%
大樹生命保険 4.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は前鶴俊哉氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
前鶴 俊哉 代表取締役社長社長執行役員 1983年入社。生産・技術本部長、商品開発委員会委員長などを歴任し、2020年6月より現職。
木村 富雄 代表取締役専務執行役員社長補佐 1984年入社。製粉事業本部製粉営業部長、製粉事業本部長などを歴任し、2025年6月より現職。
川﨑 裕章 取締役常務執行役員 1986年入社。食品事業本部食品業務部長、食品事業本部長などを歴任し、2024年6月より現職。
小浦 浩司 取締役常務執行役員 1987年入社。人事・労務部長、執行役員人事・労務部長などを歴任し、2024年6月より現職。
大田尾 亨 取締役常務執行役員 1987年入社。総務部秘書室長、経理・財務部長などを歴任し、2025年6月より現職。
阿部 直樹 取締役常務執行役員 1988年入社。生産・技術本部生産・技術部長、生産・技術本部長などを歴任し、2025年6月より現職。
青沼 孝明 取締役(監査等委員) 1982年入社。関連事業部長、経理・財務部長、常務執行役員などを歴任し、2024年6月より現職。


社外取締役は、川俣尚高(丸の内総合法律事務所パートナー)、熊谷日登美(日本大学生物資源科学部特任教授)、髙岡美佳(立教大学経営学部教授)、吉田和彦(中村合同特許法律事務所代表パートナー)、葉山良子(葉山良子公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「製粉事業」「食品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 製粉事業


製粉事業では、小麦粉、ふすま、そば粉などを製造・販売しています。主な顧客は食品メーカーや製パン・製麺業者などです。

収益は主に特約店を通じた製品販売により得ています。運営は、ニップンが製造を行い、ニップン商事、ニップン商事コーポレーションなどのグループ会社が販売を担うほか、松屋製粉がそば粉の製造・販売を行っています。

(2) 食品事業


食品事業では、家庭用小麦粉、プレミックス、パスタ、冷凍食品、中食関連食品などを製造・販売しています。国内市場に加え、タイ、中国、米国、インドネシアなどの海外拠点でも展開しています。

収益は特約店や小売店への製品販売によって得ています。ニップンが製造・販売を行うほか、オーマイがパスタ類、日本リッチが冷凍食材、オーケー食品工業やナガノトマトが加工調理製品を製造・販売するなど、複数のグループ会社が事業を担っています。

(3) その他事業


その他事業には、ペットフード、健康食品、エンジニアリング、ドーナツ店経営、情報システム、物流などが含まれます。

収益は、製品販売、店舗売上、サービス提供の対価として得ています。ペットフードはエヌピーエフジャパン、プラント設計施工はニップンエンジニアリング、飲食店経営はニップンドーナツなどが運営を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近では4,000億円台に到達しています。経常利益も順調に推移し、直近2期は200億円を超える水準を維持しています。利益率も改善傾向にあり、当期純利益も高水準を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,883億円 3,213億円 3,655億円 4,005億円 4,109億円
経常利益 127億円 143億円 148億円 233億円 244億円
利益率(%) 4.4% 4.4% 4.1% 5.8% 5.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 86億円 93億円 103億円 264億円 248億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は23.5%から24.2%へと改善し、営業利益率も5%台を維持しており、収益性の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 4,005億円 4,109億円
売上総利益 940億円 996億円
売上総利益率(%) 23.5% 24.2%
営業利益 203億円 215億円
営業利益率(%) 5.1% 5.2%


販売費及び一般管理費のうち、販売運賃及び諸掛が265億円(構成比34%)、給与手当等が253億円(同32%)を占めています。

(3) セグメント収益


製粉事業は販売数量が増加したものの、売上高は前年を下回りましたが、営業利益は微増を確保しました。食品事業は外食需要の回復や価格改定、冷凍食品の好調により増収増益となりました。その他事業もペットフードや外食事業が好調で増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
製粉事業 1,253億円 1,217億円 92億円 92億円 7.6%
食品事業 2,267億円 2,384億円 84億円 93億円 3.9%
その他 485億円 509億円 28億円 32億円 6.2%
調整額 - - 0億円 -2億円 -
連結(合計) 4,005億円 4,109億円 203億円 215億円 5.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCF状況は、本業で稼いだ資金で借入返済と投資を行っている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 240億円 188億円
投資CF -95億円 -78億円
財務CF -72億円 -105億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「人々のウェルビーイング(幸せ・健康・笑顔)を追求し、持続可能な社会の実現に貢献します」を経営理念としています。創業以来の技術力とDXの融合によりイノベーションを起こし、変化を先取りした新しい時代の「食」を創造することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社員一人ひとりが創業以来のパイオニア精神を忘れず、創造性・多様性を育み、何事にも積極的に取り組める職場環境を重視しています。ESG経営を実践するレジリエント企業として、国内外のパートナーと共に「より良い社会」「より良い地球」の実現に力を注ぐ姿勢を掲げています。

(3) 経営計画・目標


同社は「長期ビジョン2030」において、2030年度までに売上高5,000億円、営業利益250億円の達成を目指しています。そのマイルストーンとして、2026年度までの中期目標では以下の数値を掲げています。

* 売上高:4,500億円
* 営業利益:210億円
* ROE:8%以上
* ROIC:5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期目標達成に向け、「マーケティング戦略の推進」と「生産拠点の新設・再配置」に注力しています。マーケティングでは株式会社刀との協業により組織力を高め、ブランド認知向上と収益拡大を図ります。生産拠点については、知多新工場の稼働や冷凍食品工場の新設、R&Dセンターの移転などを進め、国内外での供給体制を強化します。

* 冷凍食品事業:2030年までに売上高900億円を目指す
* 海外事業:2030年までに売上高600億円を目指す

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営戦略と連動した「人財ビジョン」を策定し、求める人材像につながる育成や人事制度改定に取り組んでいます。従業員の創造性と多様性を育み、積極的に取り組める職場環境を構築することで、個人と組織双方の持続的な成長を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.7歳 15.1年 7,469,682円


※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 88.2%
男女賃金差異(全労働者) 73.5%
男女賃金差異(正規) 79.7%
男女賃金差異(非正規) 66.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント調査結果(72.3)、経験者採用数(42人)、教育・研修投資金額(104,987千円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 貿易自由化の変動と麦政策の変更


TPP11や日欧EPAなどの貿易自由化の進展や、国の麦政策の見直しにより、小麦関連制度が変更される可能性があります。これによる輸入製品の増加や業界再編が、同社の基幹事業である製粉・食品事業に大きな影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 物流の委託


ドライバー不足や高齢化、2024年問題などの物流課題により、製品の納入遅延が発生するリスクがあります。これに対し、同社は作業改善や共同物流の拡大、積載効率の向上などの対策を講じています。

(3) 気候変動


気候変動による原材料調達への影響や、低炭素経済への移行に伴うコスト上昇が事業活動に支障をきたす可能性があります。同社はサステナビリティ委員会等を設置し、TCFD提言に沿った対応を進めることでリスク低減を図っています。

(4) 原材料の調達


地球温暖化や自然災害による収穫量減少、紛争や疫病による物流障害などで原材料調達が困難になるリスクがあります。また、価格高騰を適切に製品価格へ転嫁できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、調達先の複線化や適正な価格転嫁に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。