※本記事は、ニップンの有価証券報告書(第202期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ニップンってどんな会社?
製粉事業を祖業とし、小麦粉やパスタ、冷凍食品など幅広い食の領域で事業を展開する総合食品企業です。
■(1) 会社概要
1896年に日本製粉として設立され、日本初の欧米式機械製粉を開始しました。1949年に株式上場を果たし、1955年にはパスタ等で知られる「オーマイ」ブランドを立ち上げています。2003年には冷凍パスタ「オーマイプレミアム」を発売して中食市場の開拓を進め、2021年には現在のニップンに社名を変更しました。
同社グループは連結で3,935名、単体で1,244名の従業員を抱える体制で事業を運営しています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位には取引先持株会、第3位には生命保険会社が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.00% |
| ニップン取引先持株会 | 5.30% |
| 大樹生命保険 | 4.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は前鶴俊哉氏が務めています。社外取締役の比率は全体の約4割を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 前鶴俊哉 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1983年入社。福岡工場長や生産・技術部長を歴任し、2020年4月に専務執行役員に就任。同年6月より現職。 |
| 木村富雄 | 代表取締役専務執行役員社長補佐 | 1984年入社。関東支店長や札幌支店長を歴任。製粉事業本部長等を経て2024年に専務執行役員となり、2025年6月より現職。 |
| 川﨑裕章 | 取締役常務執行役員 | 1986年入社。小樽工場長や食品業務部長を歴任。食品事業本部長等を経て2022年に常務執行役員となり、2024年6月より現職。 |
| 小浦浩司 | 取締役常務執行役員 | 1987年入社。人事・労務部副部長、同部長を経て2020年に執行役員に就任。2023年に取締役となり、2024年6月より現職。 |
| 大田尾亨 | 取締役常務執行役員 | 1987年入社。総務部秘書室長、経理・財務部長を歴任。2022年に執行役員に就任し、2024年に取締役となり、2025年6月より現職。 |
| 阿部直樹 | 取締役常務執行役員 | 1988年入社。生産・技術部長などを歴任し、2022年に執行役員に就任。生産・技術本部長を経て2025年6月より現職。 |
| 青沼孝明 | 取締役(監査等委員) | 1982年入社。関連事業部長や経理・財務部長を歴任。常務執行役員や専務執行役員を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、川俣尚高(丸の内総合法律事務所パートナー)、熊谷日登美(日本大学生物資源科学部特任教授)、髙岡美佳(立教大学経営学部教授)、吉田和彦(中村合同特許法律事務所代表パートナー)、葉山良子(葉山良子公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「製粉事業」「食品事業」および「その他」の事業を展開しています。
■製粉事業
主力事業として、小麦粉、ふすま、そば粉などを製造し、特約店を通じたBtoB販売を中心に展開しています。ベーカリーや製麺などの食品メーカー向けに高品質な製粉素材を提供し、国内の食インフラを支えています。
主な収益源は、顧客である特約店や食品メーカーからの製品販売代金です。事業の運営は、親会社であるニップンを中心に、松屋製粉やニップン商事などのグループ各社が共同で担当しています。
■食品事業
家庭用小麦粉、プレミックス、パスタ、冷凍食品、中食関連食品などを製造・販売しています。家庭用では「オーマイ」ブランドなどで知られ、業務用では外食産業やインバウンド需要に対応する多様な食材を提供しています。
収益モデルは、国内外の特約店や小売店を通じた食品の販売代金です。事業の運営はニップンのほか、オーマイ、畑中食品などの国内子会社や、NIPPN(Thailand)Co.,Ltd.などの海外子会社が連携して行っています。
■その他事業
ペットフードの製造販売や健康食品の提供、食品関連プラントの設計・施工、飲食店経営、さらにはグループの物流・情報システムサービスの提供など、幅広い周辺領域で事業を展開しています。
収益源は、消費者や法人顧客に対する製品の販売代金およびサービス提供の対価です。運営はニップンをはじめ、エヌピーエフジャパンやニップンエンジニアリング、ニップンロジスなどの関連会社がそれぞれ専門領域を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の推移を見ると、売上高は3,213億円から4,184億円へと堅調に拡大を続けています。経常利益も142億円から248億円へと増加基調にあり、特に直近2期は200億円台の高い水準を維持するなど、着実な成長を実現しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,213億円 | 3,655億円 | 4,005億円 | 4,109億円 | 4,184億円 |
| 経常利益 | 143億円 | 148億円 | 233億円 | 244億円 | 249億円 |
| 利益率(%) | 4.4% | 4.1% | 5.8% | 5.9% | 5.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 102億円 | 34億円 | 222億円 | 220億円 | 168億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の伸長に伴い、売上総利益は996億円から1,048億円へと増加し、利益率も24.2%から25.0%に向上しています。営業利益についても215億円から221億円へと手堅く伸ばしています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,109億円 | 4,184億円 |
| 売上総利益 | 996億円 | 1,048億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.2% | 25.0% |
| 営業利益 | 215億円 | 221億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 5.3% |
販売費及び一般管理費のうち、販売運賃が139億円(構成比17%)、役員報酬及び給与が62億円(同8%)、賞与諸手当が58億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
食品事業はブランド強化などにより増収となりましたが、コスト増加の影響で減益となりました。一方で製粉事業やその他事業は販売が好調に推移し、増収増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 製粉事業 | 1,217億円 | 1,200億円 | 92億円 | 95億円 | 7.9% |
| 食品事業 | 2,384億円 | 2,437億円 | 93億円 | 91億円 | 3.7% |
| その他 | 509億円 | 547億円 | 32億円 | 37億円 | 6.7% |
| 連結(合計) | 4,109億円 | 4,184億円 | 215億円 | 221億円 | 5.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 188億円 | 253億円 |
| 投資CF | -78億円 | -271億円 |
| 財務CF | -105億円 | 245億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人々のウェルビーイング(幸せ・健康・笑顔)を追求し、持続可能な社会の実現に貢献します」を経営理念に掲げています。食を通じた健康と笑顔の提供を目指し、ESG経営を実践する企業として社会課題に真摯に向き合うことを使命としています。
■(2) 企業文化
創業以来のパイオニア精神を忘れず、創造性と多様性を育む企業文化を重視しています。フェアでオープンな環境のもと、従業員一人ひとりが熱意を持って事業に取り組み、新しいデジタルトランスフォーメーション(DX)との融合によりイノベーションを起こす風土が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン2030のもと、総合食品企業として売上高5,000億円、営業利益250億円規模までの成長を目指しています。また、2026年度を最終年度とする中期目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高4,500億円
* 営業利益210億円
* ROE8%以上
* ROIC5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
基盤事業の収益力強化を図りつつ、冷凍食品や海外展開などの成長領域に戦略的投資を推進しています。知多工場の稼働や新冷凍食品工場の建設といった生産拠点の拡充を進めるほか、DXを活用した業務効率化や企業競争力の向上に取り組んでいます。
* 冷凍食品事業:2030年までに売上高900億円
* 海外事業:2030年までに売上高600億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ワクワクする未来に向けて価値提供に挑み続けるプロフェッショナル」を人財ビジョンに掲げています。従業員の健康を経営の基盤とし、専門性の向上や多様な人財を活かすマネジメント力の育成を重視し、性別や国籍などに関わらず誰もが能力を発揮できる職場環境づくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.2歳 | 14.4年 | 7,579,460円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.0% |
| 男性育児休業取得率 | 93.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 65.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント調査結果(73.1)、経験者採用数(33人)、年次有給休暇平均取得日数(14.0日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 貿易自由化の変動と麦政策の変更
通商政策の動向や政府による小麦の売渡価格の変動により、基幹事業である製粉事業の調達コストが上昇するリスクがあります。同社は生産拠点の集約や差別化可能な製品の開発を進めることで、競争力の強化を図っています。
■(2) 製品市況の変動
国内市場は人口減少や少子高齢化によって競争が激化しており、消費者の節約志向や景気動向の影響を受けやすくなっています。これらに対応するため、市場動向に応じた適正な価格設定や高付加価値製品の開発に注力しています。
■(3) 物流の委託(物流課題)
ドライバー不足や物流関連法規制の厳格化、燃料費等の上昇により、運送会社の輸送能力が縮小し、製品納入が滞るリスクがあります。同社はトラックの待機時間削減や共同輸送の拡大など、物流の効率化策を進めています。



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