日本甜菜製糖 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本甜菜製糖 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本甜菜製糖は東京証券取引所プライム市場に上場し、ビート糖や精糖を中心とした砂糖事業を主力に、食品、飼料、農業資材事業などを展開しています。直近の業績では、砂糖の販売増などにより増収となった一方、製造コストの高止まりなどの影響で減益となりました。持続可能なてん菜産業の創造に向けて成長分野を強化中です。


※本記事は、日本甜菜製糖株式会社の有価証券報告書(第128期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本甜菜製糖ってどんな会社?


ビート糖を中心とする砂糖事業を主力に、食品や飼料、農業資材など多彩な事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1919年に北海道製糖として設立され、1947年に現在の日本甜菜製糖に社名変更しました。1949年には東京証券取引所に株式を上場しています。その後、1991年にラフィノースやベタイン、2004年にDFAⅢの生産を開始するなど事業を多角化し、2009年にはサークル機工を設立して農業用機械器具事業も強化しています。

現在の従業員数は連結で771名、単体で635名です。大株主については、事業上の取引関係がある明治ホールディングスが筆頭株主となっており、第2位は取引先などで構成されるニッテン共栄会、第3位はESG投資事業組合となっています。

氏名 持株比率
明治ホールディングス 8.22%
ニッテン共栄会 7.98%
ESG投資事業組合 7.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は石栗秀氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
石栗秀 代表取締役社長 1986年同社入社。食品事業部長、技術部長等を経て2016年に取締役就任。常務執行役員等を経て、2022年より現職。
木山邦樹 取締役専務執行役員 1981年同社入社。農務部長等を経て2016年に取締役就任。サークル機工代表取締役社長等を務め、2024年より現職。
寺澤秀和 取締役常務執行役員 1982年同社入社。農業資材販売部長等を経て2018年に取締役就任。上席執行役員等を歴任し、2022年より現職。
白畑康 取締役上席執行役員 1990年同社入社。管理部長等を経て2022年に執行役員就任。経営企画室長等を務め、2025年より現職。


社外取締役は、淺羽茂(早稲田大学大学院経営管理研究科教授)、橋本秀一(元明治製菓)、中村規代実(オリゾン法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「砂糖事業」「食品事業」「飼料事業」「農業資材事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

砂糖事業

ビート糖や精糖のほか、ビート糖蜜などの製造を行っており、各種の得意先に販売しています。主力のビート糖は、原料であるてん菜の生産から携わり、国内の甘味資源の安定的な供給を担っています。
収益は、製造した砂糖類を代理店等を通じて得意先へ販売することで得ています。事業の運営は同社が主体となり、精糖の製造は関門製糖へ委託し、一部の販売は子会社のニッテン商事が担当しています。

食品事業

イーストやオリゴ糖、ベタインなどの食品素材を製造しています。国内唯一の国産ドライイーストの市場開拓や、オリゴ糖含有液状甘味料の拡販などを通じ、付加価値の高い機能性食品を提供しています。
収益は、これらの食品素材を得意先へ販売することによって得ています。事業の運営は同社が行っており、食品の仕入れ販売および一部の販売委託については子会社のニッテン商事が担っています。

飼料事業

付加価値の高い配合飼料やビートパルプなどの飼料を製造・販売しています。自社製造の食品素材を配合した製品や、地球温暖化に対応するメタンガス排出抑制効果を持つ新規飼料の開発も進めています。
収益は、これらの配合飼料やビートパルプなどを販売することで得ています。事業の運営は同社が担っており、配合飼料の製造については関連会社のとかち飼料へ委託しています。

農業資材事業

移植栽培用の紙筒や種子、農業用機械器具などを製造し、農業従事者向けに販売しています。省人省力化に貢献する移植機などのシステムを展開し、国内だけでなく海外の有機農業向けにも拡販しています。
収益は、製造・仕入れた農業資材や機械を販売することで得ています。紙筒等の運営は同社が行っており、農業用機械器具の製造・販売は子会社のサークル機工が担当しています。

不動産事業

所有する土地などを有効活用するため、社有地に商業施設などを建設し、テナント企業への賃貸を行っています。既存テナントとの友好的な関係維持に努め、安定的な収益確保を図っています。
収益は、商業施設等に入居するテナントからの賃貸料として得ています。事業の運営は同社および子会社のスズラン企業が主体となって行っています。

その他

グループ内の各事業を補完する機能として、貨物輸送や倉庫業、石炭・石油類および自動車部品の販売、保険代理業、さらにはスポーツ施設の経営などを幅広く行っています。
収益は、製品の輸送運賃や燃料等の販売代金、施設利用料などから得ています。事業の運営は、子会社の十勝鉄道やスズラン企業がそれぞれの専門分野を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は外部環境の変動による一時的な落ち込みがあったものの、概ね増加傾向で推移しています。一方、経常利益は製造コストの高止まりなどが影響し、利益率は低下傾向にあります。当期利益は投資有価証券の売却益などにより増加しており、本業の収益構造の改善が急務となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 585億円 650億円 693億円 648億円 687億円
経常利益 28億円 20億円 18億円 11億円 8億円
利益率(%) 4.8% 3.1% 2.6% 1.7% 1.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 13億円 18億円 27億円 50億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しているものの、営業利益は大幅に減少しています。売上総利益率は概ね横ばいを維持していますが、輸送費や保管費などの販管費の増加が利益を圧迫しており、営業利益率は低い水準にとどまっています。今後はエネルギーコストを含めた製造原価の低減と販売価格の適正化による収益性の改善が課題です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 648億円 687億円
売上総利益 132億円 139億円
売上総利益率(%) 20.4% 20.3%
営業利益 5億円 1億円
営業利益率(%) 0.8% 0.1%


販売費及び一般管理費のうち、運送・保管費が68億円(構成比49%)、賃金・賞与手当が24億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の砂糖事業は販売量の回復により増収となりましたが、安価な原料糖の販売割合が増加したことで営業赤字が拡大しています。一方、飼料事業は原料価格の低下やコスト削減により増益となり、農業資材事業も棚卸資産評価損の影響がなくなり黒字転換するなど、周辺事業が収益を下支えする構造となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
砂糖事業 429億円 467億円 -16億円 -26億円 -5.5%
食品事業 27億円 28億円 2億円 2億円 6.1%
飼料事業 129億円 127億円 12億円 14億円 10.7%
農業資材事業 39億円 40億円 -0.5億円 3億円 6.8%
不動産事業 12億円 12億円 6億円 6億円 51.0%
その他 12億円 13億円 2億円 3億円 22.5%
連結(合計) 648億円 687億円 5億円 1億円 0.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは営業利益や資産売却によって得た資金で借入の返済を進める「改善型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -31億円 43億円
投資CF 22億円 14億円
財務CF -36億円 -95億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は79.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「開拓者精神を貫き 社会に貢献しよう」という社是を掲げています。北海道寒地農業の振興と国内甘味資源自給率確保の社会的使命を企業理念とし、安全で高品質の砂糖を安定的に供給することを主たる目標として事業を遂行しています。持続可能な食料システム構築と新たな価値の創造を目指しています。

(2) 企業文化


同社は長年培ってきた技術を基盤とし、「てん菜糖業」から「てん菜産業」への飛躍を図る「日甜アグリーン戦略」を掲げています。農業を基盤とした成長事業への展開を図るとともに、環境に配慮したものづくりを重視し、脱炭素化や資源の循環利用など、持続可能な社会の実現に取り組む姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は2024年3月期からの5年間を対象とする「第2次中期経営計画」を推進し、資本コストや株価を意識した企業価値の向上に取り組んでいます。外部環境の著しい変化を受け、2025年5月に目標の見直しを行いました。資本収益性を意識したバランスシートの改善も目指しています。

* 営業利益:30億円(2027年度目標)
* ROE:5%以上(中長期的には8%以上を目指す)

(4) 成長戦略と重点施策


成長事業である飼料事業、農業資材事業、食品事業において、海外展開や新市場開拓、新製品開発を進め、収益体質の改善を図ります。基盤事業の砂糖事業では省エネや省人省力化によるコスト低減に努めます。持続可能な農業への貢献や気候変動対応などの非財務戦略も両輪で進めていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業を持続的に成長させるため、多様な専門性を有する人材の確保と育成、技能・技術の継承を重要な課題と位置付けています。新卒採用とキャリア採用を組み合わせ、計画的な教育や役職に応じた研修を実施するほか、労働災害ゼロを目指す安全な職場づくりや、柔軟な働き方を支援する環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.8歳 18.9年 6,704,520円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.9%
男性育児休業取得率 87.5%
男女賃金差異(全労働者) 62.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 62.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 58.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒総合職採用者に占める女性の割合(60.0%)、管理職に占めるキャリア採用者の割合(11.2%)、新卒採用者の定着率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 砂糖事業への高い依存度

同社の売上高の約7割を砂糖事業が占め、他の事業も多くが砂糖事業に関連しています。そのため、消費者の低甘味嗜好や代替甘味料の増加などによって国内の砂糖消費量が減少した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 農業政策や国際協定の変動

主力のビート糖事業は、国内甘味資源の自給率確保や北海道寒地農業の振興という使命から、国の農業政策と密接に関わっています。そのため、国の政策転換や国際経済協定の進展などが事業環境に変化をもたらし、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 原料てん菜の生産量と品質の変動

ビート糖の原料であるてん菜は農産物であるため、生産量や糖分、品質が天候に大きく左右されます。近年の気候変動に伴う低糖分や生育不良などが発生した場合、工場の操業度や生産効率が低下し、収益性が悪化するリスクがあります。

(4) 燃料および製糖資材の調達コスト上昇

ビート糖の製造に必要な燃料などの資材は多くを海外からの輸入に依存しています。地政学的要因による需給の逼迫、国際市況の高騰、円安などの為替変動により調達コストが大幅に上昇した場合、製造原価を押し上げ、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。