※本記事は、日本甜菜製糖株式会社 の有価証券報告書(第127期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本甜菜製糖ってどんな会社?
北海道のてん菜(ビート)を原料とする砂糖製造を主軸に、食品素材や飼料、農業資材等を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社のルーツは1919年設立の北海道製糖と1920年設立の旧日本甜菜製糖に遡り、1923年に明治製糖が旧日本甜菜製糖を合併しました。1947年に北海道興農工業から現社名へ変更し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。その後、1961年の十勝鉄道による貨物運送開始や2009年のサークル機工設立など事業を拡大しています。
同グループは連結子会社5社及び関連会社1社で構成され、連結従業員数は775名、単体では634名です。大株主については、筆頭株主は信託業務を行う信託銀行で、第2位は同社の主要取引先であり歴史的にも関係の深い食品メーカーの持株会社、第3位はニッテン共栄会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行㈱信託口 | 9.45% |
| 明治ホールディングス㈱ | 7.98% |
| ニッテン共栄会 | 7.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役取締役社長社長執行役員は石栗秀氏が務めています。社外取締役比率は約42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 惠本司 | 代表取締役取締役会長 | 1978年同社入社。常務取締役札幌支社長、代表取締役取締役社長などを歴任し、2022年6月より現職。 |
| 石栗秀 | 代表取締役取締役社長社長執行役員 | 1986年同社入社。食品事業部長、技術部長、取締役美幌製糖所長、常務執行役員などを経て、2022年6月より現職。 |
| 木山邦樹 | 取締役専務執行役員 | 1981年同社入社。農務部長、取締役経営企画室長、常務執行役員札幌支社長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 寺澤秀和 | 取締役常務執行役員 | 1982年同社入社。紙筒事業部長、取締役、上席執行役員などを経て、2022年6月より現職。現在は海外事業部長も務める。 |
社外取締役は、淺羽茂(早稲田大学大学院経営管理研究科教授)、橋本秀一(元Meiji Seika ファルマ執行役員)、中村規代実(オリゾン法律事務所パートナー弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「砂糖事業」、「食品事業」、「飼料事業」、「農業資材事業」、「不動産事業」および「その他の事業」を展開しています。
■砂糖事業
ビート糖、精糖、ビート糖蜜、精糖蜜、ポケットシュガー等を製造・販売しています。主な顧客は食品メーカーや一般消費者です。ビート糖は同社が製造し、精糖は関門製糖に製造を委託しています。
収益は、販売代理店や子会社ニッテン商事を通じた各得意先への製品販売代金から得ています。運営は主に日本甜菜製糖が行い、一部販売をニッテン商事が担っています。また、燃料購入をスズラン企業、輸送・保管の一部を十勝鉄道が担当しています。
■食品事業
イースト、オリゴ糖、ベタインなどの食品素材を製造・販売しています。主な顧客は製パン業者や食品メーカー等です。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営は日本甜菜製糖が製造・販売を行い、一部販売をニッテン商事が担っています。ニッテン商事は食品の仕入れ販売も行っています。
■飼料事業
配合飼料やビートパルプ(製糖副産物)を製造・販売しています。主な顧客は畜産農家等です。
収益は、製品の販売代金から得ています。配合飼料は関連会社とかち飼料に製造を委託し日本甜菜製糖が販売、ビートパルプは同社が製造しスズラン企業を通じて販売しています。輸送の一部は十勝鉄道が行っています。
■農業資材事業
紙筒(移植栽培用育苗鉢)、種子、農業用機械器具等を製造・販売しています。主な顧客は農家や農業関係者です。
収益は、製品及び仕入商品の販売代金から得ています。紙筒や種子は日本甜菜製糖が製造販売し、農業機材は同社が仕入販売しています。子会社サークル機工ではビート用移植機等の製造販売を行っています。
■不動産事業
社有地に商業施設等を建設し賃貸する事業を行っています。
収益は、テナントからの賃貸料等から得ています。運営は日本甜菜製糖及び子会社スズラン企業が行っています。
■その他の事業
貨物輸送、倉庫業、石炭・石油類及び自動車部品の販売、保険代理業、スポーツ施設の経営等を行っています。
収益は、輸送・保管料、商品販売代金、施設利用料等から得ています。運営は主に子会社十勝鉄道(輸送・倉庫)とスズラン企業(燃料販売・スポーツ施設等)が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は600億円台後半で推移していましたが、当期は減少に転じました。経常利益は減少傾向にあり、利益率も低下しています。一方、当期純利益については当期に増加が見られました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 548億円 | 585億円 | 650億円 | 693億円 | 648億円 |
| 経常利益 | 23億円 | 28億円 | 20億円 | 18億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | 4.3% | 4.8% | 3.1% | 2.6% | 1.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 23億円 | 10億円 | 19億円 | 30億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しました。売上原価も減少しましたが、売上総利益率は若干低下しています。営業利益は大きく減少し、営業利益率も低下しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 693億円 | 648億円 |
| 売上総利益 | 138億円 | 132億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.9% | 20.4% |
| 営業利益 | 9億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 1.3% | 0.8% |
販売費及び一般管理費のうち、運送・保管費が59億円(構成比47%)、賃金・賞与手当が23億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の砂糖事業は販売数量減少により減収となり、セグメント損失が拡大しました。飼料事業は増収増益となり利益貢献しました。不動産事業やその他の事業は減収となりましたが、その他の事業は増益を確保しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 砂糖事業 | 473億円 | 429億円 | -6億円 | -16億円 | -3.7% |
| 食品事業 | 26億円 | 27億円 | 2億円 | 2億円 | 8.2% |
| 飼料事業 | 127億円 | 129億円 | 1億円 | 12億円 | 9.5% |
| 農業資材事業 | 38億円 | 39億円 | 2億円 | -0.5億円 | -1.3% |
| 不動産事業 | 15億円 | 12億円 | 9億円 | 6億円 | 48.8% |
| その他 | 14億円 | 12億円 | 0.7億円 | 2億円 | 15.7% |
| 調整額 | -53億円 | -58億円 | 0.0億円 | -0.5億円 | - |
| 連結(合計) | 693億円 | 648億円 | 9億円 | 5億円 | 0.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日本甜菜製糖は、有形固定資産の売却等により投資活動で資金を調達しました。営業活動では、棚卸資産の増加等により資金が流出しました。財務活動では、借入金の収支差による資金流出が減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 130億円 | -31億円 |
| 投資CF | -13億円 | 22億円 |
| 財務CF | -95億円 | -36億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「開拓者精神を貫き 社会に貢献しよう」の社是のもと、北海道寒地農業の振興と国内甘味資源自給率確保の社会的使命を企業理念として掲げています。安全で高品質の砂糖の安定的供給を主たる目標に事業を遂行しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、2022年に目指す道標として「日甜アグリーン戦略」を掲げ、「てん菜糖業」から「てん菜産業」への飛躍を図り、農業を基盤とした成長事業への展開を目指しています。「アグリーン」はアグリカルチャーとグリーンを掛け合わせた造語です。
■(3) 経営計画・目標
同社は2024年3月期から5年間の「第2次日甜グループ中期経営計画」を策定しています。2027年度(2028年3月期)の数値目標として以下を掲げています。
* 営業利益:30億円
* ROE:5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「持続可能なてん菜産業の創造にチャレンジし、安全・安心で幸せな社会の実現に貢献していく」を基本方針とし、成長事業の拡大加速と基盤事業の収益構造改善に取り組みます。また、政策保有株式の縮減やキャッシュアロケーションの策定などの資本・財務戦略も推進します。
* 成長事業(飼料、農業資材、食品):独自素材の海外展開、有機農業用資材の新商品開発、BtoC市場での販売強化など。
* 基盤事業(砂糖、不動産):砂糖事業における省エネ・省人・省力化と販売強化、不動産事業における安定的な収益確保。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「日甜アグリーン戦略」実現のため、多様性確保を含む人材の採用と育成を重視しています。新規学卒者に加え、専門技能を有するキャリア採用を実施し、組織の厚みを増す方針です。育成面では、知識・ノウハウの継承とともに新しい技術を取り込む教育機会を増加させます。社内環境については、「安全な職場づくり」を最優先とし、DX推進による業務効率化や多様な働き方の選択肢普及を図ります。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.5歳 | 19.0年 | 6,734,184円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.8% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 60.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 60.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 58.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒総合職採用者に占める女性の割合(22.2%)、新卒採用者の定着率(83.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 砂糖事業への依存について
同社グループの売上の約7割を砂糖事業が占め、他事業も関連事業が中心です。消費者の低甘味嗜好や代替甘味料の増加による国内砂糖消費量の減少が、グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 農業政策の影響について
主力事業は国の農業政策と深く関わっており、食料自給率達成や北海道農業振興を使命としています。TPP等の国際協定の進展が農業政策に反映された場合、砂糖事業の業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 原料てん菜の生産状況について
ビート糖の原料であるてん菜は農産物であり、天候により生産量や品質が左右されます。これにより工場の操業度等が変動し、砂糖事業の業績に影響を及ぼすリスクがあります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。