大東港運 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大東港運 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。輸出入貨物取扱事業を中心に、鉄鋼物流事業や海外事業などを展開する総合物流企業です。直近の業績は、売上高にあたる営業収益が前期比で増収、経常利益も増益となりました。安定した財務基盤のもと、第8次中期経営計画の達成に向けた取り組みを推進しています。


※本記事は、大東港運株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大東港運ってどんな会社?


食品を中心とした輸出入貨物の取扱いや鉄鋼物流、海外物流を展開し、日本の貿易を支える物流企業です。

(1) 会社概要


1957年に港湾運送事業を目的として設立され、1969年に一般港湾運送事業免許を取得しました。その後、倉庫業や通関業へと業容を拡大し、2004年に株式を上場しました。近年では2017年にシンガポールの物流会社を子会社化するなど海外展開を進め、2022年には東証スタンダード市場へ移行しています。

同社グループの連結従業員数は430名、単体では323名です。筆頭株主は創業家資産管理会社と思われる協友商事株式会社で、第2位は同業の株式会社住友倉庫、第3位は主要取引先である神鋼物流株式会社です。安定株主により支えられた経営体制となっています。

氏名 持株比率
協友商事 14.33%
住友倉庫 9.22%
神鋼物流 6.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は曽根好貞氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
曽根 好 貞 代表取締役社長 1982年同社入社。取締役、常務取締役、代表取締役副社長を経て1999年より現職。
荻 野 哲 司 代表取締役副社長 元株式会社三菱銀行(現三菱UFJ銀行)。2009年同社入社、取締役、常務取締役、専務取締役等を経て2023年より現職。
日下部   正 専務取締役 1975年ダイトウマリタイムエージェンシー入社。1986年同社転籍。執行役員、取締役、常務取締役を経て2020年より現職。
伊 串   昇 常務取締役 1988年同社入社。総合企画部長、執行役員、取締役を経て2022年より現職。
北 田 寿 男 取締役監査等委員(常勤) 1990年同社入社。港運部長、執行役員、取締役、常務取締役を経て2022年より現職。


社外取締役は、岡島敦子(元内閣府男女共同参画局長)、増田賢紀(神鋼物流株式会社常務取締役)、鎌田栄次郎(元みずほ教育福祉財団常務理事)、松田竜太(弁護士法人小野総合法律事務所社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「輸出入貨物取扱事業」「鉄鋼物流事業」「海外事業」「国内不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。

輸出入貨物取扱事業


食品、鉄鋼・非鉄、化学工業品、機械、日用雑貨等の輸出入手続きにおける、検疫、検査、保税運送、輸出入通関等の一連の業務を提供しています。顧客は輸出入を行う商社やメーカー等が中心です。

通関料、取扱手数料、運送料などの対価を顧客から受け取ることで収益を得ています。運営は主に大東港運が担い、陸上運送についてはFDロジスティクス、眞榮ロジなどの子会社も行っています。

鉄鋼物流事業


国内鉄鋼製品の荷役、保管、配送等の物流サービスを提供しています。主な顧客は鉄鋼メーカーや商社です。

荷役料、保管料、配送運賃などを顧客から受け取ることで収益を得ています。運営は主に大東港運が行っています。

海外事業


海外における倉庫保管、貨物輸送、フレイトフォワーディング等の物流サービスを提供しています。

物流サービスに対する対価を顧客から受け取ります。運営は中国の大東港運(江陰)儲運有限公司、シンガポールのEver Glory Logistics Pte.Ltd.、Ong-Lim Express Pte.Ltd.等の海外子会社が行っています。

国内不動産賃貸事業


国内において保有する不動産(倉庫・事務所等)の賃貸を行っています。

テナントからの賃貸料収入が収益源となります。運営は主に大東港運および大東運輸倉庫が行っています。

その他事業


港湾荷役事業や水産物の買付・加工・卸売、損害保険代理業などを行っています。

港湾荷役料や商品の販売代金、保険手数料などを収益としています。運営は大東港運のほか、大東運輸倉庫、丸田運輸倉庫、水文、ダイトウ保険センターなどのグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高にあたる営業収益は160億円から170億円前後で推移しています。2021年3月期には200億円を超えていましたが、その後は収益認識会計基準の適用等もあり変動しています。利益面では、経常利益ベースで安定して黒字を確保しており、当期利益も継続して計上しています。2025年3月期は増収増益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 222億円 166億円 171億円 161億円 168億円
経常利益 9億円 12億円 12億円 8億円 8億円
利益率(%) 4.1% 7.2% 6.9% 5.0% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 8億円 8億円 5億円 6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の傾向を見ると、売上高は増加しており、これに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約28%と安定した水準を維持しています。営業利益および営業利益率は前年から改善しており、本業の収益性が向上していることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 161億円 168億円
売上総利益 46億円 46億円
売上総利益率(%) 28.4% 27.7%
営業利益 6億円 7億円
営業利益率(%) 4.0% 3.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が19億円(構成比48%)、賞与引当金繰入額が3億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は全ての主要セグメントで増収となりました。主力である輸出入貨物取扱事業は農畜水産物の取扱増加により増収増益となりました。鉄鋼物流事業も国内需要の増加により好調に推移し、大幅な増益を達成しました。海外事業は売上が大きく伸びましたが、倉庫取得関連費用等により損失となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
輸出入貨物取扱事業 120億円 124億円 15億円 16億円 13.2%
鉄鋼物流事業 19億円 20億円 1億円 2億円 8.8%
海外事業 5億円 7億円 -0.2億円 -0.2億円 -2.3%
国内不動産賃貸事業 3億円 3億円 1億円 1億円 36.8%
その他事業 14億円 14億円 -0.5億円 -1億円 -8.6%
調整額 -1億円 -2億円 -11億円 -11億円 -
連結(合計) 161億円 168億円 6億円 7億円 3.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:営業活動で稼いだキャッシュで借入金の返済を行いつつ、将来のための投資も実施している、財務的に健全な状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 10億円 9億円
投資CF -2億円 -15億円
財務CF 1億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「『ありがとう』にありがとう」というコーポレートフィロソフィーを掲げています。国民生活に欠かせない「食」の供給を中心とした日本の貿易を支える存在感のある物流企業として、社会環境の変化に向き合い、顧客から選ばれ続ける会社を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Be Sustainable ~サステナブルを目指して~」をテーマに掲げ、社会環境の変化に対応し、持続的に成長する企業となることを目指しています。グループ全体がワンチームとなり、笑顔で明るく、伸び伸びと仕事ができる環境づくりや、社員の自律的な学びを支援する文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


第8次中期経営計画(2023年4月~2026年3月)の最終年度において、以下の数値目標を掲げています。地政学的リスクや物価上昇などの環境変化に対応しながら、確実な企業価値向上を目指しています。

* 営業収益:175億円
* 営業利益:9.2億円
* 経常利益:10億円
* 当期利益:6.7億円

(4) 成長戦略と重点施策


「持続的価値の拡大」「営業組織力・人財力・IT力の強化」「環境課題・社会課題に配慮した事業推進」「グループの成長と発展」の4つを骨子としています。具体的には、既存商材のシェア拡大や新規商材開拓、事業投資・M&Aによる事業領域拡大、IT活用による生産性向上、グループ間シナジーの強化に取り組んでいきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を最大の財産と位置づけ、入社後約10年で次代を担う人材へ育成することを目指しています。計画的なOJTや適材適所の配置を行い、自律的な「リスキル」を促進します。また、テレワークなど多様な働き方を推進し、社員満足度と人材価値の向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 15.6年 6,506,954円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.3%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 74.0%
男女賃金差異(正規雇用) 73.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 48.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、通関士有資格者数(10年以内合格者29名)、係長級にあるものに占める女性労働者の割合(19.1%)、10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の継続雇用割合(48.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気・市場の動向の影響


同社グループは食品、鉄鋼、化学工業品などを扱っており、景気や市場動向による取扱量の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 食品の輸入停止措置・消費動向の影響


主力である食品輸入において、安全性確保のための輸入停止措置や、消費動向の変化による輸入量の抑制が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 原油価格高騰の影響


燃料油価格の上昇は輸送コストの増加に直結します。コスト削減に努めていますが、吸収しきれない場合は業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。