※本記事は、大東港運株式会社の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 大東港運ってどんな会社?
輸出入貨物取扱事業を主力とし、食の安定供給を支える総合物流企業です。
■(1) 会社概要
1957年に港湾運送事業を目的に巽海運として設立され、1961年に大東港運へ商号変更しました。1969年に一般港湾運送事業免許を取得し、2004年にジャスダック(現スタンダード市場)へ上場しました。2012年にAEO認定通関業者として認定を受け、近年は海外事業を積極的に拡大しています。
現在の従業員数は連結で426名、単体で323名体制となっています。筆頭株主は事業会社の協友商事で、第2位は同業である住友倉庫、第3位は社外取締役を派遣しているコベルコロジスティクスが名を連ねており、安定した関係性を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 協友商事 | 13.37% |
| 住友倉庫 | 9.20% |
| コベルコロジスティクス | 6.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は曽根好貞氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 曽根好貞 | 代表取締役社長 | 1982年同社入社。取締役、常務取締役、代表取締役副社長等を経て、1999年より現職。 |
| 荻野哲司 | 代表取締役副社長 | 三菱銀行入行後、2009年同社入社。社長室長、取締役、専務取締役等を経て2023年より現職。 |
| 伊串昇 | 常務取締役 | 1988年同社入社。総合企画部長、執行役員総合企画部長、取締役を経て、2022年より現職。 |
| 二瓶昭夫 | 取締役 | 1989年同社入社。営業推進室長や常務執行役員営業部門担当などを歴任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、岡島敦子(元内閣府男女共同参画局長)、増田賢紀(コベルコロジスティクス常務取締役)、鎌田栄次郎(元みずほ教育福祉財団常務理事)、松田竜太(弁護士法人小野総合法律事務所社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「輸出入貨物取扱事業」「鉄鋼物流事業」「海外事業」「国内不動産賃貸事業」「その他事業」を展開しています。
■輸出入貨物取扱事業
農畜水産物や化学工業品、日用雑貨などの輸出入手続きにおける検疫、検査、保税運送、輸出入通関等の一連の業務を提供しています。食品の安定供給を支える物流基盤として、顧客の利便性向上を図っています。
顧客へのサービス完了時に、顧客から受け取る対価を収益として認識しています。運営は大東港運のほか、子会社のFDロジスティクスや眞榮ロジが担っています。
■鉄鋼物流事業
国内鉄鋼製品の荷役、保管、配送などの業務を提供しています。鉄鋼製品の国内需要に応じた安定的な物流サービスを展開し、顧客との信頼関係強化に努めています。
顧客へのサービス完了時に、顧客から受け取る対価を収益として認識しています。運営は主に親会社である大東港運が単独で行っています。
■海外事業
海外子会社を通じた陸上運送事業、倉庫業、フレイトフォワーディングなどの物流インフラの強化と輸送力の確保を展開しています。
顧客へのサービス完了時に、顧客から受け取る対価を収益として認識しています。運営は中国の大東港運(江陰)儲運有限公司や、シンガポールのEver Glory Logistics Pte.Ltd.などが担っています。
■国内不動産賃貸事業
国内における不動産賃貸業を展開しています。相場に合わせた適切な家賃設定や新規案件の獲得を通じて、安定した収益基盤の構築に努めています。
賃貸サービス等の完了時に、顧客から受け取る対価を収益として認識しています。運営は大東港運のほか、大東運輸倉庫が行っています。
■その他事業
港湾荷役事業やその他の国内物流事業のほか、水産物の買付・加工・卸売、損害保険代理業などの周辺事業を展開しています。
顧客へのサービス完了時に、顧客から受け取る対価を収益として認識しています。運営は大東港運のほか、丸田運輸倉庫、水文などが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、経常利益は一時的に減少した時期もありましたが、直近では大きく回復しています。当期利益についても安定的に推移しており、堅調な事業運営がうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 12億円 | 12億円 | 8億円 | 8億円 | 12億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 8億円 | 5億円 | 6億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2年間において、営業利益は前年度から大幅に増加しました。これは主力事業における取扱量の増加が寄与し、本業の収益力が向上したことを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 7億円 | 11億円 |
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力である輸出入貨物取扱事業が農畜水産物の取扱増加により順調に売上を伸ばしています。また、海外事業や国内不動産賃貸事業も好調に推移し、全セグメントにおいて前年度を上回る増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 輸出入貨物取扱事業 | 124億円 | 132億円 |
| 鉄鋼物流事業 | 20億円 | 21億円 |
| 海外事業 | 7億円 | 10億円 |
| 国内不動産賃貸事業 | 3億円 | 3億円 |
| その他事業 | 14億円 | 14億円 |
| 連結(合計) | 168億円 | 181億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で安定した資金を獲得し、借入金の返済や事業投資を賄う「健全型」となっています。本業での継続的な現金創出力を背景に、健全な財務基盤を維持しながら将来の成長に向けた投資を行っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9億円 | 9億円 |
| 投資CF | -15億円 | -8億円 |
| 財務CF | -2億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.0%となり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「『ありがとう』にありがとう」のコーポレートフィロソフィーの下、国民生活に欠かせない“食”の供給を中心とした日本の貿易を支える存在感のある物流企業として環境の変化に向き合っています。顧客から選ばれ続ける会社を目指し、食を基本とした港湾運送物流により社会に貢献し、長期的な企業価値の向上を掲げています。
■(2) 企業文化
「人が笑顔で明るく、のびのびと仕事ができる環境の整備」と「自律的な学びの支援による社員満足度と人財価値の向上」を重視し、社員の自発的な学びや意欲を高める環境を整えています。「オール大東」としての組織力アップを図るため、ワンチームとなって持続的な成長に取り組む文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
第9次中期経営計画(2029年3月期を最終年度)において、「暮らしと産業の未来を支えるロジスティクス・パートナー ~Stronger Together~」をテーマに掲げ、持続的な成長を目指しています。最終年度の目標として以下の数値を掲げています。
* 営業収益:200億円
* 営業利益率:7.0%
* 経常利益:15億円
* ROE:9.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
多様化する顧客ニーズにワンストップで応えるため、営業体制を変革し既存業務の深化・多角化を図るとともに、新たな派生事業領域への進出に挑戦します。また、納期や温度帯に柔軟に対応できる輸送基盤の強化、デジタルを取り入れたオペレーティング・モデルの再設計、海外展開を支える専門知識を備えた人材の育成を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
入社後おおむね10年で次代を担う人材へ成長させるため、計画的なOJTや適材適所の配置を行い、自発的な学びを促す環境を整備しています。社員の自律的なリスキリングを推進するとともに、時間や場所にとらわれない多様な働き方としてリモートワークとリアルワークの最適な組み合わせを図り、組織全体の総合的な価値向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.5歳 | 15.9年 | 6,870,920円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.7% |
| 男性育児休業取得率 | 133.3% |
| 男女間の賃金差異(全労働者) | 77.5% |
| 男女間の賃金差異(正規雇用労働者) | 76.5% |
| 男女間の賃金差異(非正規雇用労働者) | 53.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、通関士有資格者数(83名)、新卒採用者の継続雇用割合(46.7%)、係長級にあるものに占める女性労働者の割合(20.0%)、テレワーク実施率(3.85%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品の輸入停止措置・消費動向の影響
同社が主力とする食品の輸入貨物取扱において、食品の安全性を確保する観点から関係当局による輸入停止措置が取られるリスクがあります。また、消費動向の変化によって輸入量が抑制された場合、同社の取扱量が減少し、業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原油価格高騰の影響
原油価格の高騰による燃料油価格の上昇は、取扱貨物の輸送コストの増大に直結するリスクがあります。輸送の効率化などコスト削減に努めていますが、増加したコストを十分に吸収できない場合、収益性が圧迫され、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 景気・市場の動向の影響
港湾運送において食品、鉄鋼・非鉄、化学工業品、機械、日用雑貨などを幅広く取り扱っているため、国内外の景気や市場の動向により取扱量が大きく変動するリスクがあります。市況の低迷が長引いた場合、貨物取扱量の減少を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。



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