塩水港精糖 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

塩水港精糖 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

塩水港精糖は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、砂糖事業とオリゴ糖などのバイオ事業を展開する企業です。直近の業績は売上高が約330億円、経常利益が約33億円と増収増益を達成し、過去最高益を更新しています。独自のバイオ技術を活かし、健康社会に貢献する「おなかにやさしい会社」を目指しています。


※本記事は、塩水港精糖株式会社の有価証券報告書(第93期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 塩水港精糖ってどんな会社?


砂糖やオリゴ糖などの機能性素材を製造・販売し、おなかの健康に貢献する老舗精糖企業です。

(1) 会社概要


同社は1904年に台湾で塩水港製糖会社として創立され、1950年に現在の塩水港精糖として新たに発足しました。1961年に東京証券取引所に上場し、1964年には「パールエース印」ブランドを誕生させています。1990年からは乳糖果糖オリゴ糖の生産を開始し、1994年には主力製品「オリゴのおかげ」の全国販売をスタートさせるなど、事業の多角化を進めてきました。

現在の従業員数は連結で83名、単体で44名となっています。筆頭株主は事業提携先である大東製糖で、第2位は同じくアライアンス契約を結ぶフジ日本、第3位はみずほ銀行です。

氏名 持株比率
大東製糖 14.76%
フジ日本 4.94%
みずほ銀行 4.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性2名の計17名で構成され、女性役員比率は12.0%です。代表取締役社長は木村成克氏が務めています。社外取締役比率は17.6%です。

氏名 役職 主な経歴
久野修慈 代表取締役会長 1963年大洋漁業入社。1990年同社代表取締役社長、2012年代表取締役会長などを経て2023年6月より現職。
木村成克 代表取締役社長 1998年グロービス入社。2000年大東製糖理事、2005年同社代表取締役社長などを経て2023年6月より現職。
酒井英喜 専務取締役 1986年同社入社。事業本部砂糖事業部長などを経て2023年6月専務取締役に就任。2024年5月より現職。
波多野雅 常務取締役 1989年大洋漁業入社。パールエース代表取締役社長などを経て2020年2月常務取締役に就任。2023年6月より現職。
伊藤哲也 常務取締役 1994年同社入社。糖質研究所部長、同社代表取締役副社長統括などを経て2025年12月より現職。
小田俊一 常務取締役 1992年同社入社。砂糖事業部長、専務取締役管理本部長などを経て2024年5月より現職。
田畑貴史 常務取締役 1991年日本興業銀行入社。みずほ銀行リスク統括部長などを経て2025年12月より現職。
杉山拓也 取締役 1992年同社入社。常務取締役営業推進・物流・糖類担当などを経て2024年5月より現職。
和田守真 取締役 1993年同社入社。常務取締役オリゴ・バイオ事業部長などを経て2024年5月より現職。
濱保健一 取締役 1992年同社入社。常務執行役員事業・販売推進本部砂糖事業部長などを経て2024年5月より現職。
赤星礼子 取締役 1994年同社入社。執行役員経理財務部経理担当部長などを経て2025年6月より現職。


社外取締役は、三和彦幸(公認会計士事務所開設)、加藤敦広(大東製糖取締役)、阿部奈美(元日本経済新聞社編集委員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「砂糖事業」、「バイオ事業」および「その他」事業を展開しています。

砂糖事業


砂糖製品の製造および販売を行っています。家庭用から業務用まで幅広い顧客層に対して、長年親しまれている「パールエース印」ブランドなどの砂糖製品を安定的に提供しています。

同事業は、顧客からの製品販売代金を主な収益源としています。製品の製造は同社が太平洋製糖、関西製糖、ナルミヤの各社に加工を委託しており、主に販売子会社のパールエースを通じて市場へ供給されています。

バイオ事業


乳糖果糖オリゴ糖(「オリゴのおかげ」シリーズなど)やサイクロデキストリン、ビーツ製品などの機能性素材・製品を製造・販売しています。健康や美容への関心が高い個人顧客や、食品メーカーなどの業務用顧客向けに展開しています。

バイオ事業も、顧客からの製品販売代金を収益源としています。製品の製造は同社が関西製糖に加工を委託して行い、製品の販売はパールエースが担当しています。

その他


不動産の賃貸など、主要セグメント以外の事業活動を行っています。

同事業の主な収益源は、同社が所有するニューESRビル(東京都中央区)の一部を第三者へ貸し出すことによる賃貸料収入です。運営は同社自身が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間において、売上高は右肩上がりで成長を続けており、約251億円から約330億円へと拡大しています。経常利益も直近3年間で順調な伸びを見せ、利益率も2.6%から10.1%へと大きく改善しており、収益力の向上が顕著です。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 251億円 280億円 316億円 325億円 330億円
経常利益 9億円 7億円 21億円 31億円 33億円
利益率(%) 3.6% 2.6% 6.7% 9.4% 10.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 2億円 12億円 18億円 24億円

(2) 損益計算書


直近の業績では、増収に伴い売上総利益が増加し、利益率も改善しています。営業利益ベースでも増益を達成しており、本業における堅調な収益獲得能力が伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 325億円 330億円
売上総利益 62億円 65億円
売上総利益率(%) 19.0% 19.7%
営業利益 29億円 30億円
営業利益率(%) 8.9% 9.2%


販売費及び一般管理費のうち、製品保管輸送費が10億円(構成比29%)、給与手当賞与金が5億円(同15%)、役員報酬が4億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の砂糖事業は、業務用製品の需要増加や適正価格での販売努力により売上が伸長しています。一方、バイオ事業は一部製品の販売が低調で微減となりましたが、全社としては砂糖事業の成長が牽引し、増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
砂糖事業 308億円 313億円
バイオ事業 16億円 16億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 325億円 330億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」に該当します。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 37億円 27億円
投資CF -5億円 -11億円
財務CF -22億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.8%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


Purpose(存在意義)として、「おなかにやさしい会社」を掲げ、食を通して広く社会に貢献する会社を目指しています。また、Vision(目指す姿)として「ユーモアな食品を提供し、未来を創る会社」をテーマに、砂糖・オリゴ糖事業をはじめとする各事業の推進に取り組んでいます。

(2) 企業文化


Value(行動指針・規範)として、「共創・創意・進歩」「周到・果敢」「誠意・公正」「奉仕・献身」を定めています。独立系精糖企業としての120年の信頼を礎に、「おなかにやさしい」を軸として健康社会に貢献し、未来を創る企業集団への変革を目指しています。品質管理や危機管理体制を強化し、非常時においても安全安心な製品を安定供給することを使命と捉えています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「NEXT 2030」を策定し、最終年度となる2031年3月期に向けて具体的な経営目標を定めています。

* 売上高:375億円
* 経常利益:33億円
* 当期利益:23億円
* ROE:9.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的な経営戦略として4つの重点戦略を推進しています。砂糖事業では独立系精糖企業として効率化を進めコスト競争力を向上させます。バイオ事業では製品ラインナップの拡充や高付加価値製品の創出で第2の柱を確立し、さらに「食×バイオ」領域での新規事業やM&Aによる第3の柱の確立を目指します。また、ブランド戦略や販売戦略の再構築にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


自律型人財の育成を重視し、社員の主体的な成長を支援するため、公的資格取得支援や自己啓発支援等の学習機会を提供しています。また、女性活躍の推進、柔軟な働き方の導入、福利厚生制度の拡充、健康増進支援などを通じて、多様な価値観を尊重し心身ともに健康で活躍できる職場環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.1歳 17.0年 7,097,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.4%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には一部項目の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 糖業政策や制度の変更


砂糖業界は「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づく糖業政策や制度の制約を受けています。国の農業政策や砂糖制度の見直し、経済連携協定の進捗状況などにより、同社グループの事業展開や業績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料コストの変動と調達環境


海外粗糖の仕入価格は、為替相場や主要生産国の天候、地政学リスク等の影響を受け変動します。海外粗糖やその他原材料、エネルギー等の調達コストの急激な上昇を自助努力で吸収できない場合や、適正な販売価格へ反映できない場合は業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 食品の安全性に関する問題発生


高品質で安全な製品の安定的供給を基本方針とし、品質保証体制の強化に努めています。しかし、予想を超える異常な事態の発生や、風評によるブランドイメージの低下、補償範囲を超える製造物責任上の事故などが発生した場合は、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。