塩水港精糖 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

塩水港精糖 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。「パールエース印」の砂糖事業を主力とし、オリゴ糖などのバイオ事業も展開。2025年3月期は、砂糖の業務用販売やバイオ事業の家庭用製品が堅調に推移。適正価格での販売も寄与し、売上高は前期比3.1%増、経常利益は43.5%増と増収増益を達成しました。


※本記事は、塩水港精糖株式会社 の有価証券報告書(第92期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 塩水港精糖ってどんな会社?


「パールエース印」の砂糖や「オリゴのおかげ」等のバイオ製品を展開する、創業120年超の製糖メーカーです。

(1) 会社概要


1904年に台湾で創業し、1950年に塩水港精糖として再発足しました。1961年に東証二部へ上場し、1964年には「パールエース印」ブランドが誕生しました。1994年にオリゴ糖製品の販売を開始し、2005年には三菱商事と資本提携を行うなど、製糖事業とバイオ事業を軸に発展してきました。

連結従業員数は82名、単体では43名です。筆頭株主は業務提携先である製糖会社の大東製糖で、第2位は金融機関のみずほ銀行、第3位は外国法人のINTERACTIVE BROKERS LLCとなっています。

氏名 持株比率
大東製糖 14.79%
みずほ銀行 4.93%
INTERACTIVE BROKERS LLC 2.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性2名の計18名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役会長は久野修慈氏、代表取締役社長は木村成克氏です。社外取締役比率は約17%です。

氏名 役職 主な経歴
久野 修慈 代表取締役会長 1963年大洋漁業(現マルハニチロ)入社。同社代表取締役専務を経て、1990年同社代表取締役社長、2005年会長。2023年6月より現職。
木村 成克 代表取締役社長 1998年グロービス入社。大東製糖代表取締役社長を経て、2021年同社代表取締役副社長。2023年6月より現職。大東製糖代表取締役社長を兼任。
酒井 英喜 専務取締役 1986年同社入社。管理グループ長、関西製糖代表取締役社長、太平洋製糖代表取締役社長等を歴任。2024年5月より生産統括部長。
波多野 雅 常務取締役 1989年大洋漁業入社。パールエース代表取締役社長等を経て、2020年同社専務取締役。2023年6月より営業担当。
伊藤 哲也 常務取締役 1994年同社入社。生産統括部長、代表取締役副社長等を歴任。2025年6月より事業推進・研究担当。
小田 俊一 常務取締役 1992年同社入社。砂糖事業部長、専務取締役管理本部長等を歴任。2024年5月より総務人事部長。
田畑 貴史 常務取締役 1991年日本興業銀行入社。みずほ銀行リスク統括部長等を経て、同社常勤監査役。2025年6月より統括兼事業推進・調整担当。
杉山 拓也 取締役 1992年同社入社。パールエース執行役員、同社常務取締役砂糖事業部長等を歴任。2024年5月より砂糖事業部長兼食品事業部長。
和田守 真 取締役 1993年同社入社。パールエース常務取締役、同社常務取締役オリゴ・バイオ事業部長等を歴任。2024年5月よりオリゴ事業部長。
及川 智明 取締役 1991年日本興業銀行入行。みずほ銀行ストラクチャリング第一部部長等を経て、同社執行役員。2024年5月より経理財務部長。
濱保 健一 取締役 1992年同社入社。砂糖事業部原料担当執行役員、常務執行役員砂糖事業部長等を歴任。2024年5月より原料資材部長。
赤星 礼子 取締役 1994年同社入社。管理本部経理担当部長、執行役員等を経て、2025年6月より経理財務部経理担当部長。


社外取締役は、三和彦幸(公認会計士)、加藤敦広(大東製糖取締役)、阿部奈美(元日本経済新聞社編集委員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「砂糖事業」「バイオ事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 砂糖事業


「パールエース印」ブランドの砂糖製品を提供しています。家庭用の上白糖やグラニュ糖から業務用製品まで幅広く展開し、生活必需品として消費者に安定供給を行っています。

収益は主に株式会社パールエースが製品を販売し、代金を受け取ることで得ています。製造に関しては、同社が太平洋製糖、関西製糖およびナルミヤにそれぞれ加工を委託する体制をとっています。

(2) バイオ事業


「オリゴのおかげ」シリーズをはじめとするオリゴ糖製品や、サイクロデキストリン、ビーツを使用した製品などを提供しています。健康志向の高まりに応え、おなかの健康に役立つ商品を展開しています。

収益は主に株式会社パールエースが製品を販売することで得ています。製造は同社が関西製糖に加工を委託して行っています。

(3) その他


同社が所有する不動産の有効活用を行っています。東京都中央区にある「ニューESRビル」の一部を第三者へ賃貸する事業です。

収益はテナントからの賃貸料収入です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で増加傾向にあり、特に2024年3月期以降は300億円台で推移しています。利益面でも、経常利益率が4%台から9%台へと大きく改善しており、2025年3月期には経常利益31億円、当期純利益18億円と、過去最高の利益水準を達成しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 237億円 251億円 280億円 316億円 325億円
経常利益 11億円 9億円 7億円 21億円 31億円
利益率(%) 4.7% 3.6% 2.6% 6.7% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 4億円 2億円 12億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率は14.7%から19.0%へ上昇しました。これに伴い営業利益も大幅に伸長し、営業利益率は4.7%から8.9%へと改善しています。コストコントロールと適正価格での販売が奏功し、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 316億円 325億円
売上総利益 46億円 62億円
売上総利益率(%) 14.7% 19.0%
営業利益 15億円 29億円
営業利益率(%) 4.7% 8.9%


販売費及び一般管理費のうち、製品保管輸送費が10億円(構成比30.0%)、給与手当賞与金が5億円(同15.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の砂糖事業は、業務用製品の販売好調や適正価格での販売により増収増益となり、全社利益の牽引役となっています。バイオ事業は、家庭用製品が堅調な一方、一部部門の売上減により減収減益となりました。その他事業は安定的に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
砂糖事業 297億円 309億円 23億円 39億円 12.5%
バイオ事業 18億円 16億円 4億円 3億円 19.4%
その他 1.4億円 1.2億円 0.7億円 0.8億円 64.7%
調整額 △1.1億円 △1.1億円 △13億円 △14億円 -
連結(合計) 316億円 325億円 15億円 29億円 8.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

塩水港精糖グループは、運転資金を自己資金や短期借入、設備投資資金を長期借入で調達する方針です。

営業活動では、税金等調整前当期純利益の増加や仕入債務の増加により、前連結会計年度を上回る資金を得ました。投資活動では、貸付金の回収があったものの、有形固定資産の取得により資金支出となりました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払いにより、資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 21億円 37億円
投資CF -2億円 -5億円
財務CF -18億円 -22億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、生活必需品である砂糖を安全安心かつ安定的に届けるという供給責任を果たすとともに、おなかの健康に役立つ商品を提供する「おなかにやさしい会社」の実現を通じて、社業の発展と社会への貢献を目指すことを基本方針としています。

(2) 企業文化


「選択と集中、挑戦」をキーワードに掲げ、グループ一体となったガバナンス機能の強化や、コンプライアンス、環境問題への対応など社会的責任を果たすことを重視しています。また、人材育成や組織の活性化を通じて、競争力を強化する風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


将来のゆるぎない収益基盤の構築を基本方針とし、砂糖事業とバイオ事業を中心とした事業基盤の強化に取り組んでいます。収益基盤の強化・拡大と成長戦略への取り組みにより、存在感のある強い企業集団への変革を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


砂糖事業およびバイオ事業において、新商品・新技術の開発を推進するために経営資源を積極的に投入し、既存商品の品質改善や新たな付加価値製品の創出に取り組んでいます。また、大東製糖との業務提携による協業体制の早期構築や、グループ経営資源の最大限の活用による多面的な事業モデルの構築を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員一人ひとりが心身ともに健康で、多様な価値観や働き方を尊重しながら活躍できる環境の整備を目指しています。適正な人員配置に向けた採用活動の推進、自己啓発支援や福利厚生の充実、女性活躍推進などを重点施策として掲げ、組織の持続的成長を支える人材の育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.3歳 18.8年 7,309,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は従業員規模が300人以下のため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 糖業政策の影響


砂糖業界は関連法規に基づく政策や制度の制約を受けています。同社グループは砂糖事業を基幹としているため、国の農業政策や糖業政策、砂糖制度の見直し、経済連携協定の進捗などにより、事業展開や業績、財政状態に影響を受ける可能性があります。

(2) 原料・製品価格の変動


海外粗糖の仕入価格は海外相場や為替相場の影響を受けます。円安の進行や気候変動、地政学的リスクによるエネルギーコスト高騰などが仕入価格に影響を及ぼしており、これらの変動を販売価格に転嫁できない場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 食品の安全性


安全・安心な製品供給のため品質保証体制を強化していますが、予期せぬ事態や風評被害によるイメージ低下、製造物責任賠償保険の補償範囲を超える事故が発生した場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。