※本記事は、中村屋の有価証券報告書(第105期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中村屋ってどんな会社?
同社は菓子・食品の製造販売とレストラン運営、不動産賃貸を展開する老舗企業です。
■(1) 会社概要
1901年に相馬愛蔵個人経営のパン製造販売店として創業しました。1909年に新宿へ本店を移転して日本菓子の製造を開始し、1923年に株式会社組織へ改組しました。1927年にはレストラン部門を開設し、1957年に東京証券取引所へ上場しました。その後も事業を拡大し、2014年には新宿中村屋ビルを開業しています。
従業員数は単体で780名です。筆頭株主は取引先の持株会で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は金融機関です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中村屋取引先持株会 | 11.40% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.80% |
| みずほ銀行 | 4.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は島田裕之氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 島田裕之 | 代表取締役社長 | 1993年同社入社。2014年市販食品部長、2019年執行役員菓子・食品事業部門統括部長などを経て、2024年より現職。 |
| 鍵山敏彦 | 取締役兼専務執行役員経営全般担当兼品質保証室管掌 | 1977年同社入社。2017年執行役員菓子事業部統括部長、2022年常務執行役員などを経て、2026年より現職。 |
| 弘中雅裕 | 取締役兼執行役員経営推進部門統括部長兼海外事業開発室統括室長 | 1989年同社入社。2013年FF事業マーケティング部長、2023年執行役員経営推進部門統括部長を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、中山弘子(元新宿区長)、藤本聡(元富士銀行常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「菓子事業」「食品事業」「不動産賃貸事業」を展開しています。
■(1) 菓子事業
同社が和菓子類、洋菓子類および中華まん類を製造販売しています。量販店向けに電子レンジで温められる中華まんを訴求するほか、カジュアルギフトなどの菓子類を展開し、日常使いの需要を開拓しています。
収益は顧客への製品販売により得ています。運営は同社が行っています。
■(2) 食品事業
同社が業務用食材類、市販用食品類および調理缶詰類を製造販売するほか、レストランの経営を行っています。レトルトカレーや中華調理用ソースなどの市販用食品を拡充し、多様化する消費者ニーズに対応しています。
収益は顧客への製品販売やレストランでの飲食代金から得ています。運営は同社が行っています。
■(3) 不動産賃貸事業
同社が商業ビルおよび土地の賃貸事業を行っています。新宿中村屋ビルなどで快適な商業空間を提供し、満室稼働を維持するほか、定期借地権による地代収入を確保しています。
収益は不動産の賃貸借契約に基づく賃貸料から得ています。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は330億円台から370億円台へと緩やかに拡大しています。利益面では一時期マイナスとなりましたが、その後は回復し、直近では経常利益が16億円まで伸長し、利益率も4.3%と改善傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 331億円 | 356億円 | 378億円 | 372億円 | 374億円 |
| 経常利益 | 0.6億円 | -0.8億円 | 10億円 | 13億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 0.2% | -0.2% | 2.6% | 3.4% | 4.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | -0.3億円 | 4億円 | 9億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりましたが、売上総利益および営業利益は増加しています。商品規格の見直しや自社工場の生産平準化などを進め、収益性の向上が図られています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 372億円 | 374億円 |
| 売上総利益 | 137億円 | 140億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.8% | 37.4% |
| 営業利益 | 11億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 3.5% |
販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が48億円(構成比38%)、販売費の従業員給料が29億円(同23%)を占めています。売上原価においては、当期製品製造原価が197億円(同84%)、当期商品仕入高が33億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
菓子事業は販促キャンペーンの減少などにより減収となりましたが、利益は増益を確保しました。食品事業はレトルト食品や業務用食品の拡販が奏功し、増収増益となっています。不動産賃貸事業は安定した収益を維持しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 菓子事業 | 268億円 | 262億円 | 25億円 | 27億円 | 10.2% |
| 食品事業 | 95億円 | 102億円 | 5億円 | 6億円 | 6.3% |
| 不動産賃貸事業 | 9億円 | 9億円 | 5億円 | 4億円 | 46.9% |
| 連結(合計) | 372億円 | 374億円 | 11億円 | 13億円 | 3.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 52億円 | 62億円 |
| 投資CF | -7億円 | -63億円 |
| 財務CF | -30億円 | 3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も57.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「真の価値を追求し、その喜びを分かち合う」を経営理念として掲げています。お客様が求める不変の価値と時代の変化に応じて変わる新たな価値を従業員全員の力で実現し、お客様とともに喜び、成長・発展していくことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「ひとりひとりが覚悟と熱意をもって仕事に挑戦し、成長することで働く喜びが生まれる風土をつくる」ことをミッションとしています。多様性を尊重し、挑戦する人が成長して力を発揮できる環境を整備するとともに、持続可能な社会の実現に貢献する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は「中期経営計画-中村屋2027ビジョン-」において、2027年3月期の業績目標を掲げて企業価値の向上を図っています。
・売上高:377億円
・営業利益:14億円
・営業利益率:3.7%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、事業戦略の実行、インフラ整備、組織文化の構築を促進する方針です。中華まんビジネスでは年間の定番商品化を目指し、食品ビジネスでは中食・内食向け商品の拡充を図ります。また、菓子ビジネスで日常使いの需要を取り込むとともに、基幹システムを活用した業務効率化を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「戦略を実行するのは人」という原則のもと、従業員に安心して働ける環境と成長する機会を提供することを目指しています。技能や技術の伝承を促す制度を推進し、多様な人材が活躍できる環境を整備するとともに、エンゲージメントの向上に注力して人的資本の最大化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.0歳 | 19.0年 | 6,074,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.8% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 82.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、サーベイ結果(良い職場の実感)(2.14%ダウン)、サーベイ結果(働く喜びの実感)(1.62%ダウン)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食の安全・安心の確保に関するリスク
同社は一貫した品質保証体制を確立し、食品安全規格の導入や自主検査を行っていますが、取り組みの範囲を超えた予期せぬ品質問題や衛生問題が発生した場合、同社の業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の調達価格変動リスク
同社が製造販売する商品の原材料について、産地の天候不順や自然災害、各種衛生問題による輸入規制、投機などによる想定以上の価格高騰が生じた場合、仕入れコストが増加し、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 取引先への依存リスク
同社の商品の多くは協力会社に生産委託しており、委託先での生産支障が供給に影響する恐れがあります。また、特定の販売先への売上依存度が高いため、販売先の営業方針変更などで取引が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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