中村屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中村屋 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する老舗食品メーカー。中華まんやカリー等の製造販売を行う菓子・食品事業と、不動産賃貸事業を展開しています。当期の業績は、売上高が372億円で前期比減収となったものの、コスト削減や生産効率化により営業利益等の各利益段階では増益を達成しました。


※本記事は、株式会社中村屋 の有価証券報告書(第104期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中村屋ってどんな会社?


中華まんやインドカリーで知られる老舗食品メーカー。菓子・食品の製造販売と不動産賃貸事業を展開しています。

(1) 会社概要


1901年にパン製造販売店として創業し、1909年に新宿へ移転しました。1927年に喫茶部を開設し、名物となる「カリーライス」や「中華まん」などを発売しました。1957年に東京証券取引所へ上場し、2014年には商業ビル「新宿中村屋ビル」を開業しました。2019年には武蔵工場敷地内に「中華まんミュージアム」をオープンしています。

同社(単体)の従業員数は793名です。大株主の構成は、筆頭株主は取引先持株会、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は金融機関です。

氏名 持株比率
中村屋取引先持株会 11.40%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.30%
みずほ銀行 4.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名、計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は島田 裕之氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
島田 裕之 代表取締役社長 1993年入社。市販食品部長、菓子・食品事業部門統括部長、菓子・食品営業部門統括部長などを歴任。2022年に代表取締役兼社長執行役員に就任し、2024年より現職。
鍵山 敏彦 取締役兼専務執行役員経営全般担当兼品質保証室統括室長 1977年入社。菓子事業部統括部長、総務・人事部門統括部長、経営企画室統括室長などを歴任。2025年より現職。
弘中 雅裕 取締役兼執行役員経営推進部門統括部長兼海外事業開発室統括室長 1989年入社。FF事業マーケティング部長、執行役員経営推進部門統括部長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、中山 弘子(元新宿区長)、藤本 聡(元ファーストコーポレーション取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「菓子事業」「食品事業」「不動産賃貸事業」事業を展開しています。

菓子事業


和菓子類、洋菓子類およびパン類(中華まん含む)を製造販売しています。主力の中華まんビジネスでは、コンビニエンスストアや量販店向けに商品を展開しており、特に冬季の主力商品となっています。また、ギフト向けの和洋菓子や、日常使いの「デイリー菓子」なども取り扱っています。

収益は、量販店やコンビニエンスストアなどの取引先に対する製品販売から得ています。運営は主に中村屋が行っています。

食品事業


業務用食材類、市販用食品類および調理缶詰類を製造販売するほか、レストランの経営を行っています。「民族の味」として知られる純印度式カリーをはじめとするレトルト食品や、中華調理用ソースなどを展開しています。レストランビジネスでは、新宿中村屋本店等で直営店を運営しています。

収益は、食品の販売代金およびレストランにおける飲食代金から得ています。運営は主に中村屋が行っています。

不動産賃貸事業


同社が保有する商業ビルおよび土地の賃貸事業を行っています。新宿に位置する商業ビル「新宿中村屋ビル」のほか、工場の敷地の一部を活用した賃貸などを行っています。

収益は、テナントからの賃貸料収入から得ています。運営は主に中村屋が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績推移です。売上高は300億円台で推移しており、直近では原材料価格の高騰等の影響を受けつつも、価格改定や効率化により利益を確保しています。2025年3月期は減収ながらも、各利益段階で増益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 308億円 331億円 356億円 378億円 372億円
経常利益 -14億円 0.6億円 -0.8億円 10億円 13億円
利益率(%) -4.5% 0.2% -0.2% 2.6% 3.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -3億円 2億円 -0.3億円 4億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を分析します。売上高はわずかに減少しましたが、売上原価率の改善等により売上総利益は横ばいを維持しています。営業利益は増加し、利益率も向上しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 378億円 372億円
売上総利益 138億円 137億円
売上総利益率(%) 36.4% 36.8%
営業利益 8億円 11億円
営業利益率(%) 2.2% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運搬費が48億円(構成比38%)、給料手当(従業員給料)が28億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の業績です。主力の菓子事業は減収減益となりましたが、食品事業と不動産賃貸事業は増益となりました。食品事業はレトルト商品や業務用食品の展開強化、不動産賃貸事業は安定的な稼働が寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
菓子事業 275億円 268億円 26億円 25億円 9.5%
食品事業 94億円 95億円 4億円 5億円 4.8%
不動産賃貸事業 8億円 9億円 4億円 5億円 49.4%
連結(合計) 378億円 372億円 8億円 11億円 2.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


パターン:**健全型**
営業活動で得たキャッシュ・フローの範囲内で投資を行い、借入金の返済も進めている健全な状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 47億円 52億円
投資CF -1億円 -7億円
財務CF -47億円 -30億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は経営理念として「真の価値を追求し、その喜びを分かち合う」を掲げています。創業者の商業経営哲学を受け継ぎ、顧客が求める不変の価値と、時代の変化に応じた新たな価値を全従業員の力で実現することを目指しています。また、ミッションとして顧客には「感動と笑顔」を、従業員には「働く喜びが生まれる風土」を、社会には「持続可能な社会の実現」を提供することを定めています。

(2) 企業文化


同社は「変わらない「おいしい」を、いつもあたらしく。」というブランドステートメントのもと、創意工夫と挑戦を重視する文化を持っています。従業員一人ひとりが覚悟と熱意を持って仕事に挑戦し、成長することで働く喜びが生まれる風土づくりを目指しています。また、意思決定においては理念を判断軸にする「理念経営の実践」を基本方針として掲げています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期の業績目標として、以下の数値を掲げています。

* 売上高:377億円
* 営業利益:6.6億円
* 営業利益率:1.8%

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画-中村屋2027ビジョン-」に基づき、「くらしに溶け込む食」による価値創造を目指しています。中華まんビジネスでは通年商品化を推進し、菓子ビジネスでは高付加価値商品の展開を進めます。食品ビジネスでは「中食」提案やレストランでのブランド発信を強化し、不動産賃貸事業では保有資産の最大活用による安定収益確保を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「ブランド・人財育成への投資」を基本方針の一つに掲げ、独自価値の体現や顧客接点の強化を図っています。具体的には、「ものづくり」に関する技能伝承のためのマイスター制度や社内コミュニケーションの促進によりエンゲージメントを高め、人的資本の最大化を目指しています。一人ひとりの挑戦や成長を支援する制度・仕組みをつくり、真の価値を創造する担い手を育成する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.0歳 18.0年 5,792,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.8%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 53.8%
男女賃金差異(正規雇用) 71.0%
男女賃金差異(非正規) 82.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食の安全・安心に関するリスク


食品メーカーとして、品質保証体制の確立や各種検査の実施など、食の安全・安心を最優先課題として取り組んでいます。しかし、想定を超える事象が発生した場合、同社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料の調達価格変動に関するリスク


主力商品の原材料について、安定供給先の確保や計画的在庫の備蓄などにより価格変動リスクの抑制に努めています。しかし、天候不順や自然災害、海外での輸入規制、投機的な価格高騰などが発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 取引先への依存リスク


商品の多くを協力会社に生産委託しており、委託先での生産に支障が出た場合、製品供給に影響する可能性があります。また、特定の販売先(株式会社セブン-イレブン・ジャパン等)への売上依存度が高く、販売先の方針変更等により取引が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。