※本記事は、岩塚製菓株式会社 の有価証券報告書(第72期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 岩塚製菓ってどんな会社?
国産米100%使用を貫く米菓の製造・販売を主力とし、台湾企業との技術提携や海外展開も行う企業です。
■(1) 会社概要
同社は1947年に創業し、1954年に新潟県長岡市で設立されました。1960年に現在の社名となり、1983年には台湾の宜蘭食品工業(現 旺旺集団)と技術提携を開始し、海外との結びつきを強めました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しにより現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。
同社グループの従業員数は連結で821名、単体で760名です。大株主の構成は、筆頭株主が岩塚製菓共栄会、第2位が地元の主要金融機関である第四北越銀行、第3位が槇政男氏となっています。創業の地である新潟県長岡市に基盤を置きながら、関係会社との連携を通じて事業を展開しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 岩塚製菓共栄会 | 6.03% |
| 第四北越銀行 | 4.93% |
| 槇 政男 | 3.87% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 COOは槇 大介氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 槇 春夫 | 代表取締役会長 CEO | 1976年入社。営業本部長、製造本部長等を経て1998年社長就任。2023年6月より現職。 |
| 槇 大介 | 代表取締役社長 COO | 2006年入社。経営企画本部長、製造本部長、経営管理本部長を経て2024年4月より現職。 |
| 星野 忠彦 | 常務取締役経営管理本部長 | 1984年入社。営業本部長、広域流通部長、旺旺・ジャパン社長、製造本部長等を経て2024年4月より現職。 |
| 小林 晴仁 | 常務取締役購買・生産管理担当 | 1990年入社。購買部長、製造管理部長、生産管理部長等を経て2024年4月より現職。 |
| 青山 英之 | 取締役マーケティング本部長 | 1998年入社。広域流通部長、西日本営業部長、旺旺・ジャパン社長等を経て2024年6月より現職。 |
| 若月 一彦 | 取締役製造本部長 | 1988年入社。関西営業部長、商品企画部長、製造副本部長等を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、髙橋 隆二(元北越銀行常務執行役員)、石川 豊(元北越銀行人事部長)、深井 一男(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「米菓事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 米菓事業
同社は、国産米を100%使用した米菓の製造・販売を行っており、「田舎のおかき」「黒豆せんべい」「味しらべ」などの主力商品を展開しています。一般消費者向けの販売に加え、連結子会社を通じた高級米菓の販売や通信販売も行っています。
主な収益源は製品の販売代金です。製造は岩塚製菓が行い、販売は同社のほか、連結子会社の瑞花(高級米菓)、新潟味のれん本舗(通信販売)、里山元気ファーム、田辺菓子舗(かりんとう製造販売)などが担っています。
■(2) その他
報告セグメントに含まれない事業として、持分法適用関連会社等を通じた食料品の輸入販売や、農産物・農産加工品の販売などを行っています。
主な収益源は商品の販売代金です。運営は、関連会社の旺旺・ジャパン(食料品輸入販売)、連結子会社の里山元気ファーム(農産物販売)などが行っています。また、米国子会社のIWATSUKA USA Inc.は現在営業を休止しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 222億円 | 180億円 | 204億円 | 220億円 | 250億円 |
| 経常利益 | 29億円 | 14億円 | 55億円 | 28億円 | 40億円 |
| 利益率(%) | 13.3% | 7.8% | 26.8% | 12.8% | 15.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 9億円 | 39億円 | 19億円 | 28億円 |
売上高は2022年3月期に一時減少しましたが、その後は回復・増加傾向にあり、直近では250億円に達しています。経常利益は変動が見られますが、直近では40億円と高い水準を記録しました。利益率は変動しつつも高い水準を維持しており、特に2023年3月期と2025年3月期は好調です。
■(2) 損益計算書
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 220億円 | 250億円 |
| 売上総利益 | 58億円 | 70億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.2% | 27.9% |
| 営業利益 | 6億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% | 3.3% |
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。売上総利益率、営業利益率ともに改善傾向にあり、収益性が向上しています。販売費及び一般管理費は増加していますが、増収効果がそれを上回りました。
販売費及び一般管理費のうち、発送配達費が21億円(構成比35%)、給料及び手当が9億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは単一セグメントですが、販売実績の内訳を見ると、主力の米菓販売が好調に推移し、全体の増収を牽引しました。主力商品の販売集中や認知度向上施策が奏功し、多くの商品で前年度を上回る実績となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 米菓 | 214億円 | 242億円 |
| その他 | 6億円 | 8億円 |
| 連結(合計) | 220億円 | 250億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
岩塚製菓は、米菓事業を単一セグメントとする企業です。当連結会計年度は、営業活動により潤沢な資金を得ており、これは主に本業の利益に加え、受取利息・配当金の増加が貢献しました。一方で、将来の成長を見据え、設備投資のために資金を使用しています。財務活動では、借入金の返済や株主への還元を行った結果、資金の使用額は減少しました。これらの活動の結果、期末の資金残高は増加しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 39億円 |
| 投資CF | -18億円 | -21億円 |
| 財務CF | -26億円 | -7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「社会の人々に喜びと豊かさを提供し、その見返りとして、この事業に携わる者とその関係者の豊かな生活と社会的地位の向上を図り、併せて地域社会の経済的発展に貢献せんとするものである」という経営理念を掲げています。日本の伝統ある食文化を世界に広めることを使命とし、安全・安心な商品とサービスの提供を通じて持続的成長と企業価値向上を目指しています。
■(2) 企業文化
創業精神である「米」「技」「心」を体現し、サステナビリティを経営の根幹に据えています。第73期経営計画においては、「現状の一歩先をカタチにしよう!」をスローガンに掲げ、「自分だったらどう思うか」「どうするか」と主体的に考えることを大切にしながら、お客様や社会の課題と真摯に向き合う姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年4月からの中期経営計画「『米(マイ)ミライ』~私たちは、お米の未来を創ります~」を策定し、売上高営業利益率を利益体質強化の指標としています。また、資産効率向上と株主資本の有効利用の観点から、ROE(自己資本利益率)も重要な指標と位置付けています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画では、「企業成長」「効率化」「社会貢献」「イノベーション」「人財育成」を方針としています。具体的には、主力商品の拡販による売上拡大、認知度向上、北海道事業や海外向け商品開発によるマーケット創造、米国市場開拓、生産設備の自動化による「ミライ工場」への挑戦、DX推進などを重点テーマとしています。また、旺旺集団との連携強化によるアジアへの販路拡大も目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人財育成」を経営戦略の柱の一つとし、自社の強みを生かせる人材の育成に取り組んでいます。エンゲージメント向上やキャリアプランが描ける環境づくり、DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進を重点テーマに掲げ、社員一人ひとりが力を発揮できる「働きがい」のある職場づくりを目指しています。また、健康経営や労働安全衛生にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.1歳 | 17.2年 | 5,300,567円 |
※平均年間給与は、税込支払給与額であり、基準外給与及び賞与を含めております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.5% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 108.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(3.18%)、ワーキングマザー比率(34.5%)、育児休業等に関する制度の利用率(61.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 商品開発と競合
国産原料米100%使用による高品質路線をとっていますが、他社と比較してコスト構造が割高になる傾向があります。競合他社とのシェア争いや価格競争が激化し、劣勢に立たされた場合、売上高や利益の伸び悩みにつながる可能性があります。同社は、岩塚価値の創造を指針として差別化を図る方針です。
■(2) 経済情勢と原材料価格
国内景気や海外経済政策、為替変動などの経済情勢の変化は経営成績に影響を与えます。特に、ウクライナ情勢や円安に伴う原材料価格、エネルギーコストの高止まりへの対応が課題です。工場設備の集約や生産性向上により、環境変化に対応していく方針です。
■(3) 市場動向と流通構造の変化
ドラッグストアやディスカウントストアの伸長、流通業者の大規模化により、価格競争が激化しています。生産品目の選別や高付加価値商品の開発に努めていますが、売上の伸び悩みや利幅縮小のリスクがあります。主力商品の集中販売や生産効率向上により競争力を高める方針です。
■(4) 原材料・商品の安全性
食品メーカーとして安全・安心な商品提供に注力していますが、品質面での不備や商品事故が発生した場合、信頼低下や回収費用などにより経営成績に影響を及ぼす可能性があります。厳格な衛生管理や国際規格の認証取得を進め、リスク低減に努めています。



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