岩塚製菓 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岩塚製菓 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

岩塚製菓は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、国産米を100%使用した米菓の製造・販売を主力事業として展開しています。直近の業績は、主力商品の拡販や価格改定が浸透し売上高は288億円と増収となった一方、関連会社からの受取配当金の減少等により経常利益は29億円と減益に着地しています。


※本記事は、岩塚製菓株式会社の有価証券報告書(第73期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 岩塚製菓ってどんな会社?


国産米を100%使用した高品質な米菓の製造・販売を手がける老舗の菓子メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1947年に創業者が水飴等の製造を始めたことに起源を持ち、1954年に岩塚農産加工場を設立、1960年に現社名へ変更しました。その後、うるち米菓やもち米菓の専門工場を拡充し、1983年には台湾の企業(現・旺旺集団)と技術提携を開始しました。ジャスダック上場を経て、現在はスタンダード市場に上場しています。

現在の従業員数は連結で844名、単体で781名です。筆頭株主は岩塚製菓共栄会で、第2位は主要取引金融機関である第四北越銀行、第3位は創業者一族とみられる個人株主となっており、地域や関係者との結びつきを保ちながら事業を運営しています。

氏名 持株比率
岩塚製菓共栄会 6.23%
第四北越銀行 5.00%
槇政男 3.92%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長COOは槇大介氏が務めています。社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
槇春夫 代表取締役会長 CEO 1976年同社入社。1983年取締役営業本部長、1998年代表取締役社長等を経て、2023年より現職。
槇大介 代表取締役社長 COO 2006年同社入社。2013年経営企画室長、2021年常務取締役経営管理本部長等を経て、2024年より現職。
星野忠彦 常務取締役経営管理本部長 1984年同社入社。2011年取締役営業本部長、2018年旺旺・ジャパン代表取締役社長等を経て、2024年より現職。
小林晴仁 常務取締役購買・生産管理担当 1990年同社入社。2000年購買部長、2015年取締役購買部長等を経て、2024年より現職。
青山英之 取締役マーケティング本部長 1998年同社入社。2011年広域流通部長、2024年旺旺・ジャパン代表取締役社長等を経て、2024年より現職。
若月一彦 取締役製造本部長 1988年同社入社。2015年第二製造部長、2021年執行役員製造副本部長等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、髙橋隆二(元第四北越リース代表取締役副社長)、石川豊(元北越信用保証代表取締役社長)、深井一男(元関東信越国税局新潟税務署特別国税調査官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「菓子事業」および「その他事業」を展開しています。

(1) 菓子製造・卸売事業


同社グループの中核として、国産米を100%使用した米菓の製造・卸売を行っています。「田舎のおかき」「岩塚の黒豆せんべい」などの主力商品を展開し、高品質で安全・安心な製品を消費者に届けています。また、かりんとうの製造・販売なども手がけています。

収益源はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売・流通業者からの卸売代金です。主要な米菓の製造・販売は岩塚製菓が担うほか、かりんとうの製造・販売は田辺菓子舗が運営しています。

(2) 小売・通信販売・輸入事業


卸売以外の販売チャネルとして、直営店を通じた高級米菓の販売や、消費者向けの通信販売を展開しています。また、農産物や農産加工品の販売を行うほか、関連会社を通じて海外食料品の輸入販売なども実施し、多様な顧客ニーズに対応しています。

収益源は、エンドユーザーからの商品購入代金や通信販売の代金です。高級米菓の販売は瑞花、米菓の通信販売は新潟味のれん本舗、農産物の販売は里山元気ファーム、食料品の輸入販売は旺旺・ジャパンがそれぞれ運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が堅調に拡大を続けています。一方、利益面では関連会社からの受取配当金の変動等により経常利益に増減が見られますが、主力商品の拡販や価格改定等の施策により、着実な収益基盤の構築が進められています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 180億円 204億円 220億円 250億円 288億円
経常利益 14億円 55億円 28億円 40億円 29億円
利益率(%) 7.8% 26.8% 12.8% 15.9% 10.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 39億円 19億円 28億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しているものの、原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇等の影響を受け、売上総利益率は低下傾向にあります。一方で、販売費及び一般管理費の抑制等の企業努力により、営業利益は増益を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 250億円 288億円
売上総利益 70億円 73億円
売上総利益率(%) 27.9% 25.4%
営業利益 8億円 9億円
営業利益率(%) 3.3% 3.0%


販売費及び一般管理費のうち、発送配達費が22億円(構成比34%)、給料及び手当が10億円(同15%)を占めています。売上原価の主な内訳としては、材料費が101億円(構成比54%)、経費が47億円(同25%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は菓子事業を主力とし、同事業が全体の大部分を占めています。当期は定番商品の拡販や価格改定が奏功し、菓子事業の売上高が大きく伸長しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
菓子 242億円 283億円
その他 8億円 6億円
連結(合計) 250億円 288億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金で借入金の返済や積極的な設備投資を行う「健全型」の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 39億円 31億円
投資CF -21億円 -34億円
財務CF -7億円 -12億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は経営理念として、「我々は会社の事業を通じて、社会の人々に喜びと豊かさを提供し、その見返りとして、この事業に携わる者とその関係者の豊かな生活と社会的地位の向上を図り、併せて地域社会の経済的発展に貢献せんとするものである」と掲げています。日本の伝統ある食文化を世界に広め、顧客に安全・安心な価値ある商品を提供することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、創業精神である「米」「技」「心」の体現のため、サステナビリティを経営の根幹に据えています。また、社是として「仕事に責任を持とう」「創意工夫を活かそう」「総ての無駄を省こう」「共に憂い共に楽しもう」を定め、従業員の行動指針として日々の業務に取り組む文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年度を初年度とする中期経営計画「『米(マイ)ミライ』~私たちはお米の未来を創ります~」を推進しており、安定的な利益の確保と資本効率の向上を目標に掲げています。

* 売上高営業利益率:安定的な利益確保のための指標
* 自己資本利益率(ROE):資本効率の向上を測る重要指標

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、事業戦略として「企業成長(売上拡大・海外展開)」と「効率化(生産設備の自動化)」を掲げ、経営戦略として「社会貢献」「イノベーション(DX推進)」「人財育成」を進めています。

* 主力ブランド「TOP6+2」への集中販売とブランド価値の向上
* 生産設備の省力化・自動化による「ミライ工場」への挑戦
* 輸出事業の拡大を通じた「BEIKA」のグローバル展開

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続的成長の原動力は社員一人ひとりの力であると考え、「役割・業績に応じた公正な処遇」「チャレンジする活力あふれる職場作り」「積極的な人財育成」を人事基本理念としています。ジェンダーや年齢にとらわれず、多様な人材がそれぞれの思いをもって挑戦し、キャリア目標を実現できるような組織風土の醸成と仕組み作りに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.7歳 16.9年 5,232,404円


※平均年間給与は基準外給与及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 23.5%
男女賃金差異(全労働者) 73.5%
男女賃金差異(正規雇用) 77.6%
男女賃金差異(パート・有期) 107.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント・レーティング(B評価)、障がい者雇用率(2.98%)、労働災害強度率(0.04)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 商品開発と競合


同社は国産原料米を100%使用した高品質な商品展開を行っているため、他社に比べて割高なコスト構造となっています。競合他社とのシェア争いや廉価販売等の価格競争が激化し、同社が劣勢に立たされた場合、売上高や利益が伸び悩み、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格の高騰とサプライチェーン


主原料である国産米をはじめ、調味料や包装資材、エネルギーや物流費などのコストが上昇傾向にあります。特に米価格の高騰等により必要量を安定的かつ安価に確保することが難しくなっており、これらのコストアップ要因を企業努力で吸収できない場合、収益性が低下するリスクがあります。

(3) 人的資源の確保と育成


高品質で安全な商品を持続的に提供するためには、多様な人材の確保と職能に応じた教育が不可欠です。しかし、労働市場における人材獲得競争の激化などにより、必要な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、事業活動の遂行や経営戦略の実現に支障が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。