※本記事は、寿スピリッツ株式会社の有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 寿スピリッツってどんな会社?
プレミアムギフトスイーツブランドをプロデュースし、菓子の製造・販売を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1952年に寿製菓を設立し、飴菓子等の製造を開始したのが同社の始まりです。1994年に日本証券業協会へ株式を店頭登録し、2006年に純粋持株会社体制への移行に伴い寿スピリッツに商号を変更しました。その後、2011年にシュクレイを設立するなどブランドポートフォリオを拡充し、2014年には東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されています。
現在の従業員数は連結で1,801名、単体で7名です。筆頭株主は創業者関係の資産管理会社であるエスカワゴエで、第2位および第3位には信託業務等を行う金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エスカワゴエ | 29.46% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.88% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 3.68% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は河越誠剛氏が務めており、4名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 河越誠剛 | 取締役社長(代表取締役) | 1987年4月同社入社。代表取締役副社長を経て、1994年6月より現職。純藍代表取締役社長を兼務。 |
| 松本真司 | 常務取締役グループ経営管理本部長 | 1990年3月同社入社。経営企画部長や取締役経営企画部長を経て、2022年10月より現職。ケーエスケー代表取締役社長を兼務。 |
| 城内正行 | 取締役 | 1991年3月同社入社。九十九島グループ営業本部長、寿製菓営業部長等を経て、2020年6月より現職。寿製菓などの代表を兼務。 |
| 阪本良一 | 取締役 | 1987年11月但馬寿入社。ケイシイシイ常務、シュクレイ代表取締役社長等を経て、2020年6月より現職。シュクレイなどの代表を兼務。 |
| 山根理道 | 取締役(監査等委員) | 1990年9月同社入社。寿製菓総務本部長、取締役グループ経営管理本部長等を経て、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、岩田松雄(元スターバックスコーヒージャパン代表取締役CEO)、好本惠(フリーアナウンサー・大学教授)、田中康裕(税理士法人代表社員)、上田啓子(弁護士・法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「シュクレイグループ」「ケイシイシイ」「寿製菓グループ」「販売子会社」および「その他」の事業を展開しています。
■シュクレイグループ
「ザ・メープルマニア」や「東京ミルクチーズ工場」などのブランドを展開し、首都圏や交通拠点を中心にプレミアムギフトスイーツの製造・販売を行っています。
収益は、直営店舗や通信販売を通じた消費者からの販売代金、および卸売先からの代金として受け取ります。運営はシュクレイおよび九十九島グループが行っています。
■ケイシイシイ
「ルタオ」や「ナウオンチーズ」などのブランドを展開し、北海道を拠点に生ケーキやチョコレート菓子などの製造・販売を行っています。
収益は、直営店舗や通信販売での消費者からの代金、および全国の百貨店催事や卸売先からの代金として受け取ります。運営はケイシイシイが行っています。
■寿製菓グループ
「お菓子の壽城」や「カノザ」などのショップブランドを展開し、山陰や沖縄など地域特性を活かした菓子の製造および販売を行っています。
収益は、主要代理店や販売子会社に対する卸売代金、および直営店舗での販売代金として受け取ります。運営は寿製菓、但馬寿、ケーエムエフが行っています。
■販売子会社
「コンディトライ神戸」などの地域ブランドを展開し、全国各地の特性にマッチしたお土産やギフトスイーツの販売に特化した事業を行っています。
収益は、各地域の販売拠点や催事、通信販売を通じた消費者からの代金として受け取ります。運営は寿堂、寿香寿庵、東海寿、花福堂などの販売子会社複数社が行っています。
■その他
損害保険代理業、健康食品の販売、および台湾を中心とした海外での菓子の販売事業を展開しています。
収益は、保険代理店手数料や健康食品・菓子の販売代金として受け取ります。運営はケーエスケー、純藍、台灣北壽心股份有限公司が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加を続けており、5年間で大きく事業規模を拡大しています。利益面でも力強い成長を見せており、経常利益は継続的に増加し、利益率も20%台を安定して維持する高収益体質となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 322億円 | 502億円 | 640億円 | 723億円 | 788億円 |
| 経常利益 | 29億円 | 103億円 | 159億円 | 177億円 | 187億円 |
| 利益率(%) | 9.1% | 20.5% | 24.8% | 24.4% | 23.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 16億円 | 41億円 | 82億円 | 120億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において売上高が順調に伸びており、売上総利益や営業利益もそれに伴って増加しています。利益率はわずかに低下したものの、引き続き高い水準を維持し、強固な収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 723億円 | 788億円 |
| 売上総利益 | 448億円 | 484億円 |
| 売上総利益率(%) | 61.9% | 61.4% |
| 営業利益 | 176億円 | 186億円 |
| 営業利益率(%) | 24.3% | 23.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料・賞与が70億円(構成比23%)、販売促進費が51億円(同17%)、支払手数料が51億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに好調に推移しており、特に主力であるシュクレイグループと寿製菓グループが新規出店や販路拡大により増収増益を牽引しました。ケイシイシイも増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| シュクレイグループ | 347億円 | 371億円 | 68億円 | 71億円 | 19.1% |
| ケイシイシイ | 215億円 | 232億円 | 50億円 | 48億円 | 20.7% |
| 寿製菓グループ | 145億円 | 163億円 | 32億円 | 38億円 | 23.3% |
| 販売子会社 | 72億円 | 78億円 | 9億円 | 11億円 | 14.1% |
| その他 | 7億円 | 7億円 | 1億円 | 0億円 | 4.2% |
| 調整額 | -63億円 | -62億円 | 15億円 | 17億円 | - |
| 連結(合計) | 723億円 | 788億円 | 176億円 | 186億円 | 23.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のパターンです。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 132億円 | 138億円 |
| 投資CF | -34億円 | -55億円 |
| 財務CF | -74億円 | -52億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は28.5%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も79.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
経営理念として「喜びを創り喜びを提供する」を掲げています。利潤の追求のみを目的とせず、会社が未来永劫発展し続けるためには常に「人様に喜んでいただく」ことを最優先に考え、顧客に喜ばれる商品とサービスを提供し続け、地域社会への貢献や共存・共栄を図ることが会社の存在意義であり使命であるとしています。
■(2) 企業文化
基本ポリシーとして「熱狂的ファンづくり」を掲げています。ひとつのお菓子、ひとりのお客様への接客で、一生お付き合いができる熱狂的なファンを今日一人創ることに全従業員が徹することをモットーとしています。経営哲学を明文化した「こづち」を活用し、全員参画による超現場主義経営を実践する文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
中長期経営目標「Value Up Vison2030」において、全国各地のプレミアムギフトスイーツブランドを創造する「お菓子の総合プロデューサー」となることを目指しています。
* 経常利益率 30%(2030年3月期)
* 経常利益 350億円(2030年3月期)
* 5カ年の平均売上成長率 10%
* ROE 30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「全員参画による超現場主義経営」の更なる推進を成長テーマとし、美味しさと品質に徹底的に拘り、「地域性」と「専門店性」を追求した独創性のあるブランドの育成に注力します。
* 商品力、売場力、販売力のValue Up
* インバウンド対策のValue Up
* 人財力のValue Up
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「全員参画による超現場主義経営」の実現に向け、人財採用と教育を最も重要な経営課題と位置づけています。「少数精鋭主義による高賃金低人件費率の実現」をテーマに、従業員一人ひとりの給与を引き上げつつ人員配置を最適化し、個人の成長とグループ全体の持続的な業績拡大が循環する「喜びの連鎖」の仕組みづくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 49.6歳 | 14.6年 | 10,244,628円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 22.2% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 82.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 105.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用の管理職比率(60.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 異常気象や大規模災害による需要減少
同社の主力である菓子類は季節変動や気象変動の影響を受けやすい性質があります。猛暑や暖冬などの異常気象、大規模な自然災害、あるいは新型インフルエンザ等の感染症拡大に伴う外出自粛などが発生した場合、国内外の需要減少を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 食品の安全性にかかわる問題発生
食品の品質・安全性の確保を経営上の最重要課題と認識し、法令遵守やマニュアル整備に取り組んでいます。しかし、原材料や製造工程で想定外の問題が生じた場合や、業界全般にわたる衛生的な問題が発生した場合には、社会的信用の失墜やブランド価値の毀損を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 原材料の調達難および価格高騰
小麦粉、小豆、砂糖、油脂などの農産物を主要原料として使用しており、天候不順や自然災害、世界的な需給状況の変化により価格高騰や安定調達が困難になる可能性があります。また、為替変動や原油価格の高騰により包装資材等のコストが上昇し、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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