寿スピリッツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

寿スピリッツ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の寿スピリッツは、地域限定の菓子ブランドを全国展開する「お菓子の総合プロデューサー」です。「ルタオ」「東京ミルクチーズ工場」などを運営。2025年3月期の連結業績は、インバウンド需要の回復や新規出店効果により、売上高723億円、経常利益177億円と過去最高を更新し、増収増益を達成しました。


※本記事は、寿スピリッツ株式会社 の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 寿スピリッツってどんな会社?


同社は、「ルタオ」等の菓子ブランドを地域別に展開する持株会社です。地域性と専門店性を追求しています。

(1) 会社概要


1952年に寿製菓として設立され、飴菓子の製造を開始しました。1994年に株式を店頭登録し、1996年には北海道千歳市に「ルタオ」を運営するケイシイシイを設立しました。2006年に純粋持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。2014年に東証一部(現プライム市場)へ指定され、M&Aや新ブランド開発を通じて事業を拡大しています。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は1,758名、提出会社(単体)の従業員数は7名です。大株主構成は、創業家資産管理会社と見られるエスカワゴエが筆頭株主であり、続いて信託銀行等の機関投資家が名を連ねています。

氏名 持株比率
エスカワゴエ 29.48%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.55%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 8.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は河越誠剛氏です。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
河越 誠剛 取締役社長(代表取締役) 1987年4月同社入社。1989年3月代表取締役副社長を経て、1994年6月より現職。純藍代表取締役社長を兼務。
松本 真司 常務取締役グループ経営管理本部長 1990年3月同社入社。経営企画部長、管理部長等を経て、2022年10月より現職。ケーエスケー代表取締役社長を兼務。
城内 正行 取締役 1991年3月同社入社。九十九島グループ営業本部長等を経て、2020年6月より現職。寿製菓、但馬寿、ケーエムエフ代表取締役社長を兼務。
阪本 良一 取締役 1987年11月但馬寿入社。シュクレイ専務取締役等を経て、2020年6月より現職。シュクレイ、九十九島グループ代表取締役社長を兼務。


社外取締役は、岩田松雄(元スターバックスコーヒージャパンCEO)、好本惠(フリーアナウンサー)、田中康裕(税理士法人田中事務所代表社員)、上田啓子(京橋・宝町法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「シュクレイ」「ケイシイシイ」「寿製菓・但馬寿」「販売子会社」「九十九島グループ」および「その他」事業を展開しています。

シュクレイ

「東京ミルクチーズ工場」「ザ・メープルマニア」「フランセ」などのブランドで菓子の製造・販売を行っています。首都圏を地盤とし、お土産やギフト需要に対応した商品を展開しています。
収益は主に一般顧客への製品販売代金から得ています。運営は主にシュクレイが行っています。

ケイシイシイ

北海道を拠点とし、「小樽洋菓子舗ルタオ」「ナウオンチーズ」などのブランドで菓子の製造・販売を行っています。店舗販売に加え、通信販売も主力チャネルの一つです。
収益は主に一般顧客への製品販売代金から得ています。運営は主にケイシイシイが行っています。

寿製菓・但馬寿

山陰地方および兵庫県但馬地方を拠点とし、「お菓子の壽城」「因幡の白うさぎ」「カノザ」などのブランドで菓子の製造・販売を行っています。地域特産品を活用した商品展開が特徴です。
収益は主に一般顧客への製品販売代金から得ています。運営は寿製菓、但馬寿、およびケーエムエフが行っています。

販売子会社

「コンディトライ神戸」などのブランドで菓子の販売を行っています。製造機能を持たず、販売に特化した事業を展開しています。
収益は主に一般顧客への製品販売代金から得ています。運営は寿堂、南寿製菓、寿香寿庵、ひだ寿庵、三重寿庵、せとうち寿、東海寿、寿庵、花福堂が行っています。

九十九島グループ

長崎県および福岡県を拠点とし、「赤い風船」「九十九島せんぺい」「アイボリッシュ」などのブランドで菓子の製造・販売を行っています。
収益は主に一般顧客への製品販売代金から得ています。運営は主に九十九島グループが行っています。

その他

損害保険代理業、健康食品の販売、台湾における菓子の販売などを行っています。
収益は保険手数料や製品販売代金から得ています。運営はケーエスケー、純藍、台灣北壽心股份有限公司が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間において、売上高は232億円から723億円へと大幅に拡大しました。コロナ禍の影響を受けた2021年3月期には経常損失および当期純損失を計上しましたが、その後は急激に回復し、2025年3月期には経常利益177億円、当期純利益121億円を達成しています。利益率も高い水準で推移しており、成長性と収益性を兼ね備えた業績推移を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 232億円 322億円 502億円 640億円 723億円
経常利益 -3億円 29億円 103億円 159億円 177億円
利益率(%) -1.4% 9.1% 20.5% 24.8% 24.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 5億円 16億円 41億円 82億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は640億円から723億円へ増加し、売上総利益も拡大しています。売上高の伸長に伴い利益額も増加し、営業利益率は24%台を維持しています。増収効果が人件費等のコスト増加を吸収し、高い収益性を確保していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 640億円 723億円
売上総利益 398億円 448億円
売上総利益率(%) 62.2% 61.9%
営業利益 158億円 176億円
営業利益率(%) 24.6% 24.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料・賞与が63億円(構成比23%)、支払手数料が47億円(同17%)、販売促進費が43億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで概ね堅調な推移を見せています。特に主力の「シュクレイ」と「ケイシイシイ」は大幅な増収増益を達成し、全体の成長を牽引しました。「寿製菓・但馬寿」も増収増益となりました。「九十九島グループ」は減収減益となりましたが、全体としてはインバウンド需要の回復や新規出店効果により拡大基調にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
シュクレイ 261億円 292億円 58億円 63億円 21.0%
ケイシイシイ 175億円 210億円 38億円 50億円 23.4%
寿製菓・但馬寿 87億円 99億円 28億円 32億円 22.3%
販売子会社 68億円 71億円 9億円 9億円 13.1%
九十九島グループ 42億円 45億円 8億円 4億円 6.1%
その他 7億円 7億円 1億円 1億円 7.9%
調整額 -億円 -億円 16億円 16億円 -%
連結(合計) 640億円 723億円 158億円 176億円 24.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

寿スピリッツは、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業成長を支えています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資等に資金を使用しました。財務活動では、株主還元や自己株式の取得等を行っています。これらの活動の結果、同社の資金残高は増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 108億円 132億円
投資CF -20億円 -34億円
財務CF -23億円 -74億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「喜びを創り喜びを提供する」を経営理念として掲げています。これは、利潤の追求のみならず、常に「人様に喜んでいただく」ことを最優先に考え、顧客に喜ばれる商品・サービスの提供を通じて地域社会への貢献、共存・共栄を図ることを企業の存在意義としています。

(2) 企業文化


同社は、「熱狂的ファン創り」を基本ポリシーとし、ひとつのお菓子、ひとりのお客様への接客を通じて、一生お付き合いができるファンを創ることに全従業員が徹しています。また、経営理念をベースとした「全員参画による超現場主義経営」を推進し、従業員一人ひとりが当事者意識を持って経営に参画する風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期経営目標「Value Up Vison2030」を策定し、2030年3月期に向けた数値目標を掲げています。
* 経常利益率:30%
* 経常利益:350億円
* 5カ年の平均売上成長率:10%
* ROE:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「お菓子の総合プロデューサー」として、「高い価値の創造」をテーマに、美味しさと地域性を追求した「プレミアムギフトスイーツ」の創造と育成を推進しています。具体的には、商品力・売場力・販売力および人財力のValue Up、インバウンド対策の強化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「全員参画による超現場主義経営」の実践により、活力ある企業集団を創ることを目指しています。そのために、女性の管理職登用推進、プロフェッショナル人財や外国人の採用、働き方改革と健康経営の推進、シニア人財の活躍環境整備など、多様性の確保と人財育成の強化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.6歳 12.5年 9,308,313円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 異常気象・大規模災害による影響


菓子類という嗜好品を扱っているため、季節変動や気象条件の影響を受けやすい傾向があります。猛暑や暖冬などの異常気象、地震や台風などの大規模災害、感染症の流行などが発生した場合、国内およびインバウンド需要の減少や、生産・物流拠点の被災による操業停止を通じて、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料の調達及び価格高騰


主原料である小麦粉、乳製品、砂糖などの農産物は、天候不順や世界的な需給変動により価格高騰や調達難が生じるリスクがあります。また、原油価格上昇による包装資材や燃料費の高騰も懸念されます。調達先の多様化などで対策していますが、想定を超えた価格上昇や調達不能が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 食品の安全性に関するリスク


食品表示偽装や異物混入など、食の安全に対する消費者の関心は高まっています。同社は品質管理体制を強化していますが、予期せぬ品質問題や表示不備、あるいは業界全体での風評被害などが発生した場合、ブランド価値の毀損や製品回収、損害賠償の発生などにより、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。