養命酒製造 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

養命酒製造 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場する養命酒製造は、「養命酒」を中心とする製造販売事業および「くらすわ」ブランドによる小売り・サービス事業を展開しています。2025年3月期は、主力製品の販売不振や新施設開業に伴う費用増などにより、減収減益となりました。


※本記事は、養命酒製造株式会社 の有価証券報告書(第107期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 養命酒製造ってどんな会社?


「養命酒」の製造販売を主力とし、長野県発の「くらすわ」ブランドで体験型施設や飲食事業も展開する企業です。

(1) 会社概要


1923年6月に株式会社天龍舘として設立され、300年余り続く養命酒の事業を継承しました。1951年に養命酒製造へ商号を変更し、1955年に東京証券取引所へ上場しました。2010年には商業施設「くらすわ」を開設し、2024年10月には長野県駒ヶ根市に体験型施設「くらすわの森」をオープンしました。

同社の従業員数は単体で314名です。大株主については、筆頭株主は湯沢株式会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。湯沢株式会社は、2025年3月に大正製薬ホールディングスから同社株式の譲渡を受けて筆頭株主となりました。

氏名 持株比率
湯沢株式会社 23.70%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 5.62%
三菱UFJ信託銀行株式会社 4.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長COOは田中 英雄氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
川 村 昌 平 代表取締役会長CEO 1962年同社入社。管理本部長、生産事業本部長、事業開発本部長などを歴任し、2011年代表取締役会長に就任。2024年より現職。
田 中 英 雄 代表取締役社長COO 1974年三菱信託銀行入社。2004年同社取締役執行役員に就任し、管理本部長、生産本部担当、コーポレート本部長などを経て2024年より現職。
神 林 敬 取締役常務執行役員 1984年同社入社。駒ヶ根工場担当部長、営業部長、マーケティング本部長、営業本部長などを経て2024年より生産、薬事・品質保証、駒ヶ根施設担当として現職。
斉 藤 隆 取締役常務執行役員 1978年住友銀行入行。三井住友銀行執行役員、大正製薬執行役員などを経て2015年同社取締役執行役員に就任。2025年より事業担当として現職。
宮 下 克 彦 取締役上席執行役員 1979年八十二銀行入行。2012年同社経理部長として入社し、営業本部長、海外事業部長などを経て2024年より事業戦略部長として現職。
清 水 政 明 取締役上席執行役員 1984年同社入社。2012年人事総務部長に就任し、監査室長などを兼務。2024年より人事総務部長として現職。


社外取締役は、田中 昌之(元三菱UFJモルガン・スタンレー証券常勤監査役)、須永 明美(公認会計士・税理士)、佐藤 敦子(高崎経済大学准教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「養命酒関連事業」および「くらすわ関連事業」事業を展開しています。

(1) 養命酒関連事業


主に国内外に向けて、薬用酒「養命酒」をはじめとする酒類・食品の製造販売を行っています。また、その他に太陽光発電による売電事業および不動産賃貸事業も行っています。

収益は、卸売業者や小売店等の顧客に対する商品・製品の販売対価、電力会社への売電収入、および賃貸不動産からの賃貸料収入から得ています。運営は養命酒製造が行っています。

(2) くらすわ関連事業


食を通じた「広げる、すこやかなくらしの輪」をコンセプトとした「くらすわ」ブランドによる小売り・サービス事業を展開しています。直営の商業施設において商品販売やレストラン運営を行う店舗運営、およびインターネット等を通じた通信販売や外販を行っています。

収益は、直営店舗における一般消費者への商品販売および飲食サービスの提供対価、通信販売による商品販売対価、および他社販売チャネルを通じた外販による商品販売対価から得ています。運営は養命酒製造が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は100億円台前半で推移していますが、直近では減少傾向にあります。利益面では、2023年3月期をピークに減少が続いており、2025年3月期は大幅な減益となりました。利益率は低下傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 104億円 106億円 106億円 102億円 100億円
経常利益 10億円 14億円 15億円 9億円 6億円
利益率(%) 9.7% 12.9% 13.9% 9.3% 6.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 9億円 10億円 10億円 7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の減少に加え、売上原価率の上昇により売上総利益が減少しました。また、販売費及び一般管理費の負担が相対的に重くなり、営業利益は前期比で大きく減少しています。営業利益率は低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 102億円 100億円
売上総利益 61億円 57億円
売上総利益率(%) 59.9% 57.3%
営業利益 5億円 1億円
営業利益率(%) 4.6% 1.3%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が17億円(構成比30%)、給料手当が12億円(同21%)を占めています。

(3) セグメント収益


養命酒関連事業は、国内「養命酒」の販売不振等により減収減益となりました。くらすわ関連事業は、新施設の開業等により大幅な増収となりましたが、開業に伴う費用増などにより損失(赤字)が拡大しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
養命酒関連事業 91億円 85億円 25億円 24億円 27.7%
くらすわ関連事業 11億円 15億円 -4億円 -6億円 -42.5%
調整額 - - -16億円 -16億円 -
連結(合計) 102億円 100億円 5億円 1億円 1.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

養命酒製造は、主に営業活動によるキャッシュ・フローを源泉とする自己資金で、原材料購入や人件費、広告宣伝費等の営業費用に係る運転資金、及び設備更新・拡充等の設備資金を賄っております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前利益や減価償却費の増加要因があったものの、投資有価証券売却益や法人税等の支払額の減少要因等により、前年同期比で減少しました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金や有価証券の償還、投資有価証券の売却による収入があった一方で、有形固定資産の取得による支出が大きかったため、大幅な減少となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いにより、前年同期比で減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7億円 5億円
投資CF 23億円 -12億円
財務CF -8億円 -6億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」を経営理念として掲げています。顧客の満足と信頼を第一に考え、健康生活に貢献できる「健全で、強い、良い会社」を目指しています。また、事業ビジョンとして「すこやかでより良い時間を願う人々を応援する」を掲げ、有用な商品やサービスの提供に努めています。

(2) 企業文化


「すこやかでより良い時間を願う人々を応援する」という事業ビジョンのもと、高い安心と社会に求められる有用な商品やサービスを提供することを重視しています。既存事業の深化と新規事業の探索を同時に行う「両利きの経営」を推進し、新たな企業価値の創造に取り組む姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2022年4月~2027年3月)において、以下の経営指標を目標として掲げています。なお、売上高200億円以上の目標については、経営環境の変化により達成困難と判断し、取り下げています。

* 営業利益率:10%
* ROE(自己資本利益率):4%

(4) 成長戦略と重点施策


「次の100年に向けた成長投資と持続的成長基盤の確立」を基本戦略とし、既存事業の収益力強化と新たな事業基盤の構築に取り組んでいます。マーケティング戦略の展開強化やデジタル技術の活用による生産性向上、体験型施設「くらすわの森」を通じたブランド強化などを推進します。

* 効率を重視した既存事業の収益力強化
* 「くらすわ」ブランドを軸としたダイレクトチャネル事業の構築
* サステナビリティ経営の推進
* 事業領域の拡大に向けた多様な人材活用と人的資本・知的財産等の無形資産への投資

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様な人材の積極的起用による活力ある企業文化の醸成を目指しています。「既成の概念に捉われない創造性ある人材、自律し自己研鑽を惜しまない人材、職務に真摯な姿勢で取り組む人材」を理想像とし、社外人材の活用やリスキリング、次世代リーダーの育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 18.4年 5,572,224円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.1%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 56.2%
男女賃金差異(正規) 61.9%
男女賃金差異(非正規) 90.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育休からの復職率(男性 100%女性 100%)、社員研修参加率(63.6%)、自己啓発支援制度利用率(25.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内景気の動向及び人口減少


主力商品「養命酒」をはじめ国内販売が中心であるため、国内景気の動向や人口減少により消費量が想定以上に減少した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。アジア主要国での市場拡大に取り組んでいますが、国内市場への依存度が高い状況です。

(2) 特定製品への依存


売上高の約8割を「養命酒」が占めており、特定製品への依存度が高い事業構造です。サプリメントや健康食品との競争激化、消費者の認識・嗜好の変化、また最需要期である冬季の暖冬などの要因により「養命酒」の販売が悪影響を受けた場合、業績に影響が出る可能性があります。

(3) 原料の調達及び価格高騰


「養命酒」の原料生薬は中国等の海外および国内から調達しています。中長期的な原料確保や調達先の拡大に取り組んでいますが、天候不順や災害、規制等により必要量の確保が困難になった場合や価格が高騰した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。