※本記事は、養命酒製造株式会社の有価証券報告書(第108期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 養命酒製造ってどんな会社?
同社は「養命酒」などの製造販売と、「くらすわ」ブランドによる店舗・通信販売を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1923年に天龍舘として設立され、塩澤家に受け継がれてきた養命酒の事業を継承しました。1925年には東京支店を開設して全国販売を開始し、1951年に現在の養命酒製造へと商号を変更しています。1955年に東京証券取引所へ上場し、2010年には商業施設「くらすわ」を開設しました。2026年にはレノによる株式公開買付け(TOB)が成立し、同社が親会社となったことで上場廃止となりました。
同社単体の従業員数は289名です。筆頭株主は投資業や有価証券等の保有・運用を行う事業会社の湯沢で、第2位および第3位は資産管理等を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 湯沢 | 33.33% |
| JP JPMSE LUX RE NOMURA INT PLC 1 EQ CO(常任代理人 三菱UFJ銀行) | 5.63% |
| 三菱UFJ信託銀行 | 4.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は田中英雄氏が務めており、社外取締役の比率は33.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田中英雄 | 代表取締役社長 | 元三菱信託銀行審査部副部長。同社経理部長、管理本部長等を経て2025年より現職。 |
| 神林敬 | 取締役常務執行役員生産、薬事・品質保証、駒ヶ根施設担当 | 1984年同社入社。設備管理室長、営業本部長、マーケティング本部長等を経て2024年より現職。 |
| 斉藤隆 | 取締役常務執行役員事業担当 | 元三井住友銀行執行役員、大正製薬ホールディングス執行役員。同社監査役を経て2025年より現職。 |
| 宮下克彦 | 取締役上席執行役員 事業戦略部長 | 元八十二銀行執行役員。同社経理部長、営業本部長、海外事業部長等を経て2024年より現職。 |
| 清水政明 | 取締役上席執行役員 人事総務部長、情報システム担当 | 1984年同社入社。監査室長、人事総務部長を経て2025年より現職。 |
| 井川明 | 取締役上席執行役員 経営企画部長 | 元三菱UFJ信託銀行本店営業部長。同社常勤監査役、経理部長等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、田中昌之(元三菱UFJ信託銀行経営管理部長)、須永明美(丸の内監査法人代表社員)、佐藤敦子(高崎経済大学経済学部国際学科教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「養命酒関連事業」および「くらすわ関連事業」を展開しています。
■(1) 養命酒関連事業
主に国内外への「養命酒」および酒類・食品の製造販売を行っているほか、太陽光発電による売電事業や不動産賃貸事業を展開しています。卸店やドラッグストア等の小売店と協働して販売チャネルの強化を図っています。
収益源は、顧客や卸売業者からの製品・商品の販売代金、太陽光発電による売電収入、および保有する不動産からの家賃収入です。運営は主に養命酒製造が行っています。
■(2) くらすわ関連事業
食を通じた「広げる、すこやかなくらしの輪」をコンセプトとする「くらすわ」ブランドにより、小売りやサービス事業を展開しています。直営の商業施設での商品販売やレストランの運営、インターネットなどを通じた通信販売を行っています。
収益源は、店舗での商品販売代金や飲食代金、および通信販売の利用代金です。運営は主に養命酒製造が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は概ね100億円前後で推移していましたが、直近では物価上昇による消費行動への影響などから減収傾向となっています。経常利益も減少傾向にあり、当期は減損損失等の特別損失を計上したことで最終赤字に転落しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 106億円 | 106億円 | 102億円 | 100億円 | 96億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 15億円 | 9億円 | 6億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 12.9% | 13.9% | 9.3% | 6.3% | 9.3% |
| 当期純利益 | 9億円 | 10億円 | 10億円 | 7億円 | -23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益も減少しています。一方で、広告宣伝費の圧縮などにより販売費及び一般管理費が減少した結果、営業利益および営業利益率は前期から改善しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 96億円 |
| 売上総利益 | 57億円 | 52億円 |
| 売上総利益率(%) | 57.3% | 54.5% |
| 営業利益 | 1億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 1.3% | 2.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が12億円(構成比23%)、広告宣伝費が10億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である養命酒関連事業は、国内「養命酒」の販売不振などにより減収となりました。一方で、くらすわ関連事業は新規出店などの効果もあり、前期を上回る売上を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 養命酒関連事業 | 88億円 | 82億円 |
| くらすわ関連事業 | 13億円 | 14億円 |
| 連結(合計) | 100億円 | 96億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と資産売却等によって得た資金で借入の返済等を進める改善型の局面といえます。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていませんが、前期は1.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「生活者の信頼に応え、豊かな健康生活に貢献する」を経営理念として掲げています。お客様の満足と信頼を第一に考え、健康生活に貢献できる企業を目指して事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社は、企業ビジョンとして「健全で、強い、良い会社」を目指しています。また、「すこやかでより良い時間を願う人々を応援する」という事業ビジョンのもと、「養命酒」を中心とした高い安心と、社会から求められる有用な商品やサービスの提供に努める文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画において、最終年度の営業利益率10%、ROE4%を目指していました。しかし、事業環境の変化等に伴い、レノおよび湯沢とともに株式の非公開化を進め、ツムラの子会社となることを決定し、これに伴い中期経営計画および目標とする経営指標を取り下げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、国内の少子高齢化や原材料価格の高騰といった事業環境の変化に対応するため、ツムラの子会社となることで経営課題の早期解決と企業価値の向上を図る方針です。既存事業の収益力強化と新たな事業基盤の構築を同時に進める戦略を抜本的に見直し、新たな体制の下での成長を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な人材の積極的起用による活力ある企業文化の醸成と、人権やダイバーシティを尊重した組織風土づくりを重視しています。社外人材の活用やリスキリングによる能力開発を進め、事業戦略の遂行に必要な人材を確保するとともに、キャリア自律の意識醸成や後継者の育成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与は非上場市場のため一概には比較できませんが、およそ592万円の水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.1歳 | 20.0年 | 5,923,371円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.0% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 63.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 89.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育休からの復職率(男性100%、女性100%)、男性育休1カ月以上取得率(100%)、社員研修参加率(97.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内景気と人口減少の影響
同社は「養命酒」をはじめ国内販売が中心であるため、今後の国内景気の動向や、少子高齢化に伴う人口減少によって想定以上に製品の消費量が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 製品の安全・品質トラブル
主力商品の「養命酒」は第2類医薬品であり、徹底した品質管理・安全管理のもとで製造されていますが、予期し得ない品質問題等が発生した場合には、企業の信頼低下や業績悪化につながるリスクがあります。
■(3) 「養命酒」への売上依存
同社の売上高に占める「養命酒」の割合は約7割と高く、サプリメントやエナジードリンクなどとの競争激化や、消費者の嗜好変化、暖冬などの気候変動による販売不振が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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