日清オイリオグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日清オイリオグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の植物油脂大手。「ヘルシーリセッタ」等の食用油や加工食品、ファインケミカル事業を展開。当連結会計年度の業績は、売上高が価格改定効果等により増収となる一方、オリーブオイル等の原材料コスト上昇が響き経常減益となりました。


※本記事は、日清オイリオグループ株式会社 の有価証券報告書(第153期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日清オイリオグループってどんな会社?


「植物のチカラ」をスローガンに、家庭用食用油から業務用油脂、加工食品、化学品まで幅広く展開する油脂メーカーです。

(1) 会社概要


1907年に日清豆粕製造として設立され、1918年に日清製油へ改称しました。2002年に持株会社体制へ移行し現社名へ変更、2004年に事業会社を吸収合併しました。2011年にはスペインのIndustrial Quimica Lasem, S.A.U.を子会社化し、2023年にはJ-オイルミルズとの合弁で製油パートナーズジャパンを設立するなど、事業基盤の強化を進めています。

連結従業員数は3,254名、単体では1,268名です。筆頭株主は、資本・業務提携関係にある総合商社の丸紅で、第2位および第3位は信託銀行です。大手商社との強固なパートナーシップを持ちつつ、安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
丸紅 15.96%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.40%
日本カストディ銀行(信託口) 8.50%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長は久野 貴久氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
久 野 貴 久 代表取締役社長 1985年同社入社。加工油脂事業部長、取締役を経て、2017年6月より現職。
尾 上 秀 俊 代表取締役 1983年同社入社。経営政策部長兼製油統括部長、取締役を経て、2019年6月より現職。
小 林 新 取締役 1985年同社入社。人事・総務部長を経て、2016年6月より現職。
三 枝 理 人 取締役 1984年同社入社。東京支店長を経て、2021年6月より現職。
岡 野 良 治 取締役 1987年丸紅入社。同社飼料畜産事業部長を経て、2019年6月より現職。
佐 藤 将 祐 取締役 1991年同社入社。横浜磯子工場長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、山本 功(元メリルリンチ日本証券MD)、江藤 尚美(元ブリヂストン執行役員)、志濟 聡子(元中外製薬上席執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「油脂事業」「加工食品・素材事業」「ファインケミカル事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 油脂事業


家庭用食用油(「日清キャノーラ油」「BOSCOオリーブオイル」等)や業務用・加工用油脂、ミール(油糧)製品を製造・販売しています。家庭やレストラン、コンビニ、食品メーカー等が主な顧客です。マレーシア等の海外拠点ではパーム油由来の加工油脂製品も展開しています。

製品の販売対価や加工賃が主な収益源です。国内の油脂・油糧事業は主に日清オイリオグループが製造販売を行い、販売の一部を日清商事等の子会社が担っています。加工油脂は同社およびマレーシアの連結子会社Intercontinental Specialty Fats Sdn.Bhd.等が製造販売を行っています。

(2) 加工食品・素材事業


チョコレート関連製品、ドレッシング、MCT(中鎖脂肪酸)関連食品、高齢者・介護関連食品、食品大豆などを製造・販売しています。製菓メーカーや外食産業、一般消費者が顧客です。高付加価値な素材や食品を提供することで収益を得ています。

製品の販売対価が収益源です。チョコレート関連は連結子会社の大東カカオ等が、食品大豆等は日清商会が販売を行っています。また、関連会社のピエトロがドレッシング等の製造販売を行っています。同社もMCT関連食品やドレッシング等の製造販売を担っています。

(3) ファインケミカル事業


化粧品原料、化学品(潤滑油添加剤等)を製造・販売しています。国内外の化粧品メーカーや化学メーカーが主な顧客です。植物資源由来の素材技術を活かした高機能製品を提供しています。

製品の販売対価が収益源です。国内およびスペインの連結子会社Industrial Quimica Lasem,S.A.U.等が製造販売を行っています。また、中国などの海外拠点を通じた販売も展開しており、グローバル市場での収益拡大を図っています。

(4) その他


不動産賃貸業、情報システムの開発保守、食品の販売促進、損害保険代理業などを行っています。グループ各社の事業活動を支援する機能としての側面も持っています。

賃貸料やサービス提供の対価、手数料等が収益源です。不動産賃貸は同社が、情報システムは連結子会社のNSPが、販売促進はマーケティングフォースジャパンが、損害保険代理業は日清ファイナンスがそれぞれ運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間において、2021年3月期から2023年3月期にかけて大きく伸長した後、2024年3月期には一旦減少しましたが、当期は再び増加し5,300億円台となりました。利益面では、経常利益が2021年3月期以降増加傾向にありましたが、当期は前期比で減少しました。利益率は3〜4%台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 3,363億円 4,328億円 5,566億円 5,135億円 5,309億円
経常利益 138億円 126億円 162億円 200億円 181億円
利益率(%) 4.1% 2.9% 2.9% 3.9% 3.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 79億円 41億円 64億円 124億円 89億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しましたが、売上原価の増加率が売上高の増加率を上回ったため、売上総利益率は若干低下しました。営業利益は前期の208億円から193億円へと減少し、営業利益率も低下しました。原材料価格の高騰などが利益を圧迫する要因となった形です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,135億円 5,309億円
売上総利益 743億円 748億円
売上総利益率(%) 14.5% 14.1%
営業利益 208億円 193億円
営業利益率(%) 4.1% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、製品運賃、運搬費及び倉庫料が199億円(構成比36%)、給料賃金が94億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の油脂事業は増収となりましたが、加工食品・素材事業およびファインケミカル事業も売上を伸ばしており、全セグメントで増収基調となりました。特に加工食品・素材事業の伸びが目立ちます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
油脂事業 4,220億円 4,290億円
加工食品・素材事業 701億円 787億円
ファインケミカル事業 189億円 208億円
その他 26億円 24億円
連結(合計) 5,135億円 5,309億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ現金を元手に、将来のための投資を行いつつ、借入金の返済も進めている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 367億円 212億円
投資CF -161億円 -96億円
財務CF -146億円 -139億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「企業価値の追求と、その最大化を通じた人々・社会・経済の発展への貢献」「『おいしさ・健康・美』の追求をコアコンセプトとする創造性、発展性ある事業への飽くなき探求」「社会の一員としての責任ある行動の徹底」を経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


2030年に目指す姿に至るために、行動の基本とするValuesとして「真摯な姿勢」「つながる」「究める」「切り拓く」「しなやかに強く」を定めています。また、理念を実践していくための行動指針として「日清オイリオグループ行動規範」を定め、グループ内での浸透を図っています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「日清オイリオグループ ビジョン2030」において、ROE10%、ROIC7%を2030年度の経営目標としています。また、新中期経営計画「Value UpX」の最終年度である2028年度の経営目標として、以下の数値を掲げています。

* 営業利益:280億円(利益率5%以上)
* ROE:8%以上
* ROIC:6%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「Value UpX」では、「Marketing×Technology×Globalization」の基本方針を深化させ、成長戦略、基幹戦略、基盤戦略の3階層からなる戦略を展開します。油脂ソリューションの創出力最大化と展開領域・エリアの拡大により、グローバルトップレベルの油脂ソリューション企業への飛躍を目指します。

* 成長戦略:将来の利益成長の柱となる戦略の推進
* 基幹戦略:Value UpXの成長ドライバーとなる取り組み
* 基盤戦略:グループの安定的・持続的な成長を支える基盤強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ビジョン2030」の実現に向け、「人材マネジメント」を経営戦略の中核に位置付けています。「強固でレジリエントな人材基盤の構築」および「選び選ばれる、魅力ある会社・組織風土づくり」の方針のもと、多様な人材が活躍できる環境整備や、高度専門人材の育成・獲得、健康経営の推進に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 17.8年 8,612,123円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.4%
男性育児休業取得率 95.0%
男女賃金差異(全労働者) 67.8%
男女賃金差異(正規雇用) 71.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 48.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替・原材料相場の変動


大豆、菜種、カカオ等の主要原材料を全量海外から輸入しているため、為替相場や原材料の国際価格、海上運賃の変動が業績に影響を与える可能性があります。同社は為替予約や先物市場を利用したヘッジ取引を行うとともに、適正な販売価格の形成やコスト削減により影響の抑制を図っています。

(2) 製品市況の変動


特に油脂事業において、国内外の製品市況の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。油脂・ミール製品の国内価格は国際市況に概ね連動するため、市況に応じた適正価格での販売や、高付加価値商品の拡販を進めることで、業績への影響低減に努めています。

(3) 自然災害・異常気象リスク


地震や津波に加え、異常気象による風水害等のリスクが高まっています。生産拠点や物流設備等の被災により製品の安定供給に支障が生じる可能性があります。安否確認システムの導入、BCPの構築、設備の耐震補強、護岸・電力調達の対策強化等を進め、被害の最小化に努めています。

(4) 食品の品質・安全性


食品の品質・安全性に対する社会的関心の高まりを受け、品質問題が発生した場合には信頼や業績に影響を及ぼす可能性があります。品質マネジメント委員会による方針審議や、ISO9001、FSSC22000等の認証取得を通じ、厳格な品質保証体制を構築しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。