日清オイリオグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日清オイリオグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日清オイリオグループは東京証券取引所プライム市場に上場しています。主にグローバル油脂・加工油脂事業、油脂・油糧および加工食品・素材事業、ファインケミカル事業を展開しています。直近の業績は、売上高が5,543億円で増収となった一方、営業利益はコスト上昇などの影響を受け170億円と減益になりました。


※本記事は、日清オイリオグループの有価証券報告書(第154期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日清オイリオグループってどんな会社?


同社グループは、植物のチカラを活かした油脂製品や加工食品、機能素材などの製造と販売を行っています。

(1) 会社概要


同社は1907年に日清豆粕製造として創立し、大豆油などの製造を開始しました。1918年に日清製油へ社名を改め、1949年に東京証券取引所へ上場しました。その後、事業の多角化や関連会社の吸収合併を進め、2002年に純粋持株会社へと移行し、現在の社名である日清オイリオグループへと変更しました。

同社の従業員数は連結で3,286名、単体で1,295名です。筆頭株主は事業会社であり同社の事業基盤強化において協力体制にある丸紅で、第2位と第3位には資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
丸紅 16.94%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.88%
日本カストディ銀行(信託口) 9.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表取締役社長は久野貴久氏です。取締役9名中3名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
久野 貴久 代表取締役社長 1985年4月同社入社。加工油脂事業部長、取締役を経て、2017年6月より現職。
三枝 理人 取締役 1984年4月同社入社。東京支店長を経て、2021年6月より現職。
佐藤 将祐 取締役 1991年4月同社入社。横浜磯子工場長を経て、2024年6月より現職。
寺口 太二 取締役 1989年4月同社入社。業務用広域営業部長を経て、2025年6月より現職。
小池 賢二 取締役 1991年4月同社入社。原料部長を経て、2025年6月より現職。
竹島 智春 取締役 1992年4月丸紅入社。同社食品原料部長を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、山本功(起業投資代表取締役)、江藤尚美(日本冶金工業社外取締役)、志濟聡子(アイシスコンサルティング代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「グローバル油脂・加工油脂事業」「油脂・油糧および加工食品・素材事業」「ファインケミカル事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) グローバル油脂・加工油脂事業


マレーシアの子会社を中心に、パーム油を活用したチョコレート用油脂をはじめとする加工油脂製品の製造・販売を展開しています。欧州などの高い品質基準を求める顧客を中心に、付加価値品の拡販に努めています。また、北米でも加工用・業務用油脂事業の基盤構築を行っています。

顧客に対するチョコレート用油脂などの加工油脂製品の販売から収益を得ています。運営は主にIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.やNisshin OilliO America Inc.などの海外子会社が担当しています。

(2) 油脂・油糧および加工食品・素材事業


国内において、家庭用および業務用の食用油、大豆ミールや菜種ミールなどの油脂・油糧製品を製造・販売しています。また、チョコレート関連製品やドレッシング、中鎖脂肪酸(MCT)を活用した機能素材・食品などの展開も行っています。

外食・中食産業や一般消費者に対して製品を販売し、その代金から収益を得ています。事業の運営は同社のほか、チョコレート事業を担う大東カカオや、ドレッシングを製造販売するピエトロなどのグループ会社や関連会社が担っています。

(3) ファインケミカル事業


化粧品用の原料である油剤を主力製品として展開しており、国内外の多くの化粧品メーカーに製品を供給しています。高付加価値なスペシャリティオイルを中心に、テクニカルサポート機能を活かしたソリューションを提供し、グローバル市場でのシェア拡大を図っています。

化粧品メーカー等への原料販売を通じて収益を上げています。運営は同社に加え、欧州における開発生産拠点であるスペインのIndustrial Quimica Lasem, S.A.U.や、中国での販売を担う現地子会社などが担当しています。

(4) その他


不動産賃貸や情報システムの開発・保守、洗浄・消毒剤の製造販売、食品の販売促進、損害保険代理業など、主力事業を補完しグループの基盤を支える多様なサービスを提供しています。

各サービスの提供対価として収益を得ています。運営は同社のほか、洗浄・消毒剤を手掛けるセッツや情報システムを担うNSP、販売促進を行うマーケティングフォースジャパンなどの子会社が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は原材料価格の上昇に伴う販売価格の改定などにより増加傾向にあります。一方、利益面はコスト上昇の影響を吸収しきれず増減を繰り返していますが、直近では固定資産の売却益計上などにより親会社株主に帰属する当期純利益が大幅な増益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,328億円 5,566億円 5,135億円 5,309億円 5,543億円
経常利益 126億円 162億円 200億円 181億円 160億円
利益率(%) 2.9% 2.9% 3.9% 3.4% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 86億円 112億円 151億円 129億円 240億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を見ると、売上高は増加していますが、エネルギーコストや物流費などの高騰により売上総利益は横ばいにとどまっています。その結果、販売費及び一般管理費の増加を吸収できず、営業利益は減益となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,309億円 5,543億円
売上総利益 748億円 748億円
売上総利益率(%) 14.1% 13.5%
営業利益 193億円 170億円
営業利益率(%) 3.6% 3.1%


販売費及び一般管理費のうち、製品運賃、運搬費及び倉庫料が202億円(構成比35%)、給料賃金が100億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の油脂・油糧および加工食品・素材事業は、コスト上昇分の価格転嫁が難航し、販売数量も減少したことで減収減益となりました。グローバル油脂・加工油脂事業は販売単価上昇により大幅な増収となりましたが、時価評価の影響などで減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
グローバル油脂・加工油脂事業 1,154億円 1,388億円 52億円 48億円 3.4%
油脂・油糧および加工食品・素材事業 3,904億円 3,896億円 127億円 111億円 2.9%
ファインケミカル事業 145億円 155億円 16億円 16億円 10.1%
その他 105億円 103億円 7億円 5億円 5.1%
調整額 -億円 -億円 -10億円 -9億円 -%
連結(合計) 5,309億円 5,543億円 193億円 170億円 3.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 212億円 105億円
投資CF -96億円 -98億円
財務CF -139億円 82億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.6%で市場平均をわずかに下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「企業価値の追求と、その最大化を通じた人々・社会・経済の発展への貢献」などを経営理念に掲げています。また、無限の可能性をもつ植物資源と最高の技術によって、健康で幸福な美しい生活(Well-being)を提案・創造し、市場に先駆けて新しい価値を創り続けることを約束しています。

(2) 企業文化


同社は「ビジョン2030」の実現に向け、行動の基本となるValuesとして「真摯な姿勢」「つながる」「究める」「切り拓く」「しなやかに強く」という5つの価値観を定めています。これらの行動指針をグループ内に浸透させ、社員一人ひとりの多様な視点や価値観を尊重し、イノベーションを生み出す風土を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年度から2028年度を対象とする新中期経営計画「Value UpX」を推進しています。持続的な利益成長と資本効率の改善に取り組み、最終年度の2028年度には以下の経営目標の達成を目指しています。

* 営業利益 280億円
* ROE 8%以上
* ROIC 6%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「これまでもっとお客さまの近くでビジネスを展開する」ことを基本方針としています。資本収益性の向上を最優先課題とし、国内油脂事業における収益力の抜本的強化や、グローバル市場での利益成長の加速を図ります。また、サステナビリティ課題の解決を通じた多様な共有価値の創造を成長ドライバーと位置づけています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人的資本を企業価値創造の源泉と位置づけ、グローバルな舞台で新たな価値を創造し続けるエネルギッシュな精鋭集団の育成を目指しています。一人ひとりの多様な個性と能力を引き出すため、教育研修の充実や経験者採用による高度専門人材の獲得を進めるとともに、健康経営や柔軟な働き方の環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.6歳 17.3年 7,706,494円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.0%
男性育児休業取得率 95.0%
男女賃金差異(全労働者) 70.2%
男女賃金差異(正規雇用) 72.8%
男女賃金差異(パート・有期) 54.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経験者採用者比率(34%)、グローバル人材登録者(41名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の安定調達と相場変動リスク


同社は、大豆、菜種、カカオなどの主要原料の全量を海外から輸入しています。そのため、異常気象による不作や地政学リスクの高まり等により十分な量が調達できなくなるリスクや、為替変動および原油価格高騰による輸送コストの上昇が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は調達先の複線化や先物取引等によるヘッジ取引を行い、リスクの低減に努めています。

(2) 品質および安全性に関するトラブル


食品の品質や安全性に対する社会的な関心が高まる中、厳格な品質管理体制が求められています。万が一、大規模な品質問題が発生した場合、同社グループへの信頼が低下し、業績や財政状態に悪影響を及ぼすおそれがあります。同社は国際規格であるISO9001やFSSC22000の認証取得を進めるなど、厳しい品質保証体制を構築して製品の安全確保に努めています。

(3) 消費者ニーズへの適応力の低下


近年の消費者ニーズは変化が早く、多様化しています。同社がこうした変化を早期に認識できず、適切な商品開発やソリューション提案が遅れた場合、競争力が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は生活者へのアンケートや市場概況の定期的な分析を通じてニーズを把握し、健康志向や簡便性などの要求に応える製品開発を推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。