ウッドワン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウッドワン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するウッドワンは、床材や造作材などの総合木質建材や住宅設備機器の製造販売、ニュージーランドでの山林経営を主軸とし、バイオマス発電事業も展開しています。2026年3月期は増収かつ経常増益を達成したものの、海外子会社の事業再編に伴う特別損失計上により最終減益となりました。


※本記事は、株式会社ウッドワンの有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ウッドワンってどんな会社?


同社は総合木質建材の製造販売と山林経営を主軸とし、バイオマス発電なども手掛ける企業です。

(1) 会社概要


同社は1935年に個人による木材業として創業し、1969年に住建産業へと商号を変更しました。1978年に株式上場を果たし、1990年にはニュージーランドに現地子会社を設立して山林経営への参画を本格化させています。その後、2002年に現在のウッドワンへと商号を変更し、事業を拡大してきました。

現在の従業員数はグループ全体で2,173名、単体で1,175名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理等を行うとみられる中本不動産で、第2位は従業員持株会である住建持株会、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
中本不動産 9.42%
住建持株会 4.52%
日本マスタートラスト信託銀行 4.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性15名、女性0名の計15名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長戦略統括本部本部長商品企画開発部長資材部長は中本祐昌氏が務めています。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
中本祐昌 代表取締役社長戦略統括本部本部長商品企画開発部長資材部長 1984年入社。1995年常務取締役、1997年専務取締役を経て、2001年に代表取締役社長に就任。フィリピンや香港の子会社の代表等を歴任し、2022年より現職。
川戸宏之 常務取締役海外経営企画本部長 1981年入社。ニュージーランドや中国の子会社での工場長や代表等を歴任し、2020年に常務取締役に就任。2024年より現職。
奥田清人 常務取締役営業本部本部長 1979年入社。福岡支店長や物流部長などを経て、2016年に執行役員。2020年に常務取締役に就任し、2026年より現職。
久保好永 取締役構造システム営業部長 1983年入社。東京支店長や営業推進部長などを経て、2018年取締役に就任。2023年より現職。
向原政昭 取締役総務人事部長 1983年入社。総務人事部や社長室長などを経て、2015年に執行役員。2020年より現職。
松本真明 取締役製造本部本部長東海製造部長 1983年入社。中国やフィリピン子会社の工場長などを歴任。2016年執行役員を経て、2023年より現職。
野口貴博 取締役経理部長 広島銀行での支店長や融資企画部長を経て、2019年同社に入社し執行役員に就任。2020年より現職。
伊永成伸 取締役情報システム部長 日本興業銀行(現みずほ銀行)での参事役等を経て、2020年同社に入社し執行役員に就任。2021年より現職。
坪井寿之 取締役Juken New Zealand Ltd.担当 1984年入社。フィリピン子会社の工場長や各工場次長を経て、2022年執行役員に就任。2024年より現職。


社外取締役は、秦清(弁護士)、石橋三千男(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「住宅建材設備事業」および「発電事業」を展開しています。

住宅建材設備事業


床材・造作材などの総合木質建材や、厨房機器などの住宅設備機器の製造・販売を行っています。また、ニュージーランドにおける植林を含む山林経営を通じて、原材料の安定確保を図りながら環境に配慮した製品を国内外の顧客へ提供しています。

収益源は、一般消費者向け住宅や商業施設向けの木質建材および設備機器の販売代金です。国内の事業運営は主に同社が担い、海外においてはニュージーランドのJuken New Zealand Ltd.やインドネシアのPT.Woodone Integra Indonesiaなどの子会社が生産と販売を行っています。

発電事業


同社グループの工場残材や建設資材廃棄物、間伐材由来の木質バイオマス燃料を活用したバイオマス発電および売電事業を展開しています。再生可能エネルギーの供給を通じて、カーボンニュートラルの実現に貢献しています。

収益源は、発電した再エネ電力を固定価格買取制度(FIT)を利用して電気事業者へ全量売電することで得る電力販売代金です。当事業の運営は、主に同社が本社敷地内に設置したバイオマス発電設備を用いて行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は640億円から660億円台で安定的に推移していますが、経常利益は外部環境の変化により変動が見られます。直近の2026年3月期は、国内外での販売強化や好調な海外子会社の寄与により増収かつ経常増益となりましたが、海外子会社の事業再編に伴う減損損失等を計上したため最終赤字となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 666億円 658億円 648億円 652億円 660億円
経常利益 21億円 7億円 -13億円 5億円 18億円
利益率(%) 3.2% 1.0% -2.0% 0.8% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 4億円 -23億円 18億円 -15億円

(2) 損益計算書


売上高は微増した一方で、売上総利益率はほぼ横ばいの26.7%から27.1%台で推移しています。原材料費や物流コストの高騰に対して販売価格の適正化や経費削減に努めていますが、営業利益率は約2%程度にとどまっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 652億円 660億円
売上総利益 177億円 176億円
売上総利益率(%) 27.1% 26.7%
営業利益 13億円 12億円
営業利益率(%) 2.0% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が45億円(構成比28%)、運送費が36億円(同22%)を占めています。

(3) セグメント収益


住宅建材設備事業は、高付加価値商品の販売や海外子会社の好調により増収となりましたが、国内市場の需要低下やコスト高の影響で減益となりました。発電事業は、燃料代の高止まりが続く中でも製造経費の大幅な減少により、増益を達成し利益率も大きく改善しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
住宅建材設備事業 641億円 649億円 13億円 10億円 1.6%
発電事業 11億円 11億円 0.6億円 2億円 19.5%
連結(合計) 652億円 660億円 13億円 12億円 1.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 40億円 26億円
投資CF -36億円 -53億円
財務CF 0.7億円 14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-3.3%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も42.5%といずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「業界一流のメーカーとして、本業を極め、本業に徹し、一流の商品をお客様にご提供することを通じて、社会の発展に貢献する」を経営理念に掲げています。この理念のもと、顧客ニーズに寄り添った商品開発に注力するとともに、自然環境の保護と社会の発展が循環共生する持続可能な社会を目指した企業活動を展開しています。

(2) 企業文化


木材を扱うプロフェッショナルとして、常に木材が持つ「安心・安全・快適」という本質的価値を追求する姿勢が根付いています。また、経営に対する考え方や仕事への取り組み方を全従業員の日々の規範とし、高い企業倫理の育成と健全な企業風土の醸成に努め、コンプライアンスを重視した公正かつ健全な事業活動を実践しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、企業価値の向上と財務体質の強化を図るため、労働生産性の向上などによる収益性の改善や自己資本比率の維持・向上に取り組んでいます。また、事業の拡大と安定的な収益を獲得するため、中長期的な経営目標として以下の数値を掲げています。

・グループ全体での連結売上高1,000億円

(4) 成長戦略と重点施策


人口減少等による既存市場の縮小に対応するため、新築戸建市場への依存から脱却し、国内外の新たな市場開拓を最優先課題としています。国内では無垢内装材や省施工商品の提案を加速し、リフォーム・非住宅市場でのシェア拡大を図ります。海外ではニュージーランド子会社によるオセアニア市場への外販や、インドネシア子会社による欧米市場への販路拡大を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、事業環境の変化に自律的に対応し、高い専門性と創造性をもって新たな価値を創造し続ける「自律型人材」の育成と確保を人材戦略の中核に据えています。階層別研修や専門教育の充実を通じて従業員の主体的な成長を促すとともに、多様な人材が能力を最大限発揮できるよう、心身の健康維持を図る健康経営や職場環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.1歳 20.3年 5,148,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.6%
男性育児休業取得率 93.3%
男女賃金差異(全労働者) 76.8%
男女賃金差異(正規労働者) 75.1%
男女賃金差異(非正規労働者) 99.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給取得率(68.4%)、CO2排出量売上高100万円あたりの原単位(0.055t-CO2)、電気使用量売上高100万円あたりの原単位(0.533千kWh)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新設住宅着工戸数の減少や職人不足による影響


国内における新設住宅着工戸数の減少や、職人不足に伴う工期遅れにより、同社グループの販売が減少し業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、リフォーム市場や非住宅市場、海外での販路拡大に注力するとともに、職人不足に対応した省施工商品の開発を進めることで影響の軽減を図っています。

(2) 原材料の調達および価格変動リスク


床材や造作材の製造において、原材料である木材の調達が困難になったり価格が高騰したりした場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、ニュージーランド子会社において30年サイクルの循環型山林経営を行い、主要な木材供給元とすることで、調達リスクや価格変動リスクを抑え安定供給に努めています。

(3) 海外展開にともなうリスク


ニュージーランドやフィリピン、インドネシアなどでの海外事業展開は、各国の法規制変更や政治経済の混乱、為替や市況の変動による影響を受けます。特にニュージーランド子会社では近年の市況変動等により経常損失が続いており、同社グループは不採算事業の見直しや高付加価値製品へのシフトなど、収益改善と構造改革を推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。