J-オイルミルズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

J-オイルミルズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、油脂事業(家庭用・業務用油脂等)およびスペシャリティフード事業を展開する企業です。2025年3月期の業績は、売上高2,308億円(前期比減収)、経常利益100億円(前期比増益)となり、減収増益でした。価格改定や構造改革の効果により利益体質が改善しています。


※本記事は、株式会社J-オイルミルズ の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. J-オイルミルズってどんな会社?


家庭用・業務用油脂製品を中心に、スターチや機能性素材などのスペシャリティフード事業も展開する食品メーカーです。

(1) 会社概要


同社は2002年4月、ホーネンコーポレーションと味の素製油の共同株式移転により株式会社豊年味の素製油として設立されました。2003年4月に吉原製油を完全子会社化して現社名に変更し、翌2004年に事業子会社4社を吸収合併しました。2022年4月に東京証券取引所プライム市場へ移行し、2023年10月には搾油工程を製油パートナーズジャパンへ承継しています。

2025年3月31日現在の連結従業員数は1,248名(単体994名)です。筆頭株主は同社製品の販売や原材料仕入等の取引関係にある事業会社の味の素で、第2位は同じく主要な取引先であり原材料仕入等を行う総合商社の三井物産、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
味の素 27.16%
三井物産 12.53%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表者は代表取締役会長の佐藤達也氏です。社外取締役比率は53.8%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤 達也 代表取締役会長 1983年味の素入社。同社常務執行役員などを経て、2021年J-オイルミルズ入社。専務執行役員、代表取締役社長執行役員、CEOを歴任し、2025年4月より現職。
上垣内 猛 取締役 1987年日本リーバ(現ユニリーバ・ジャパン)入社。同社CEO、西友CEOなどを経て、2021年J-オイルミルズ入社。油脂事業本部長、COOなどを歴任し、2022年6月より現職。
松本 英三 取締役 1986年味の素入社。同社バイオファイン研究所室長などを経て、2017年J-オイルミルズ入社。常務執行役員、生産・技術開発管掌などを歴任し、2023年7月より現職。


社外取締役は、佐々木達哉(味の素取締役執行役専務)、吉里格(三井物産理事)、石田友豪(元野村アセットマネジメント社長)、亀岡剛(元昭和シェル石油社長)、池田安希子(元ジョリーパスタ社長)、槙美冬(元ベネッセコーポレーション取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「油脂事業」「スペシャリティフード事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 油脂事業


主に家庭用油脂、業務用油脂、および油糧(ミール)の製造・加工・販売を行っています。家庭用ではオリーブオイルや「スマートグリーンパック」シリーズなどを展開し、業務用では長持ち油などの高付加価値品を提供しています。ミールは搾油工程の副産物であり、配合飼料の原料などとして販売されています。

収益は、スーパーマーケットなどの小売店や飲食・中食事業者、飼料メーカーなどの顧客に対する製品販売から得ています。運営は主にJ-オイルミルズが行っており、連結子会社であるJ-パックが充填包装等の業務を担っています。

(2) スペシャリティフード事業


乳系PBF(プラントベースフード)および食品素材の製造・加工・販売を行っています。乳系PBFではマーガリンやショートニング、粉末油脂などを扱っています。食品素材では、トウモロコシ等を原料としたスターチ製品や、大豆シート食品「まめのりさん」などの独自素材を展開しています。

収益は、製菓・製パンメーカーや加工食品メーカーなどの顧客に対する製品・素材の販売から得ています。運営は主にJ-オイルミルズが行っており、海外においてはタイのJ-OIL MILLS (THAILAND) Co., Ltd.やマレーシアのPremium Fats Sdn Bhdなどが製造・販売を行っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、主に不動産賃貸等を行っています。

収益は、保有する不動産の賃貸料収入などから得ています。運営は主にJ-オイルミルズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は2023年3月期をピークに変動しています。2022年3月期から2023年3月期にかけては原材料価格高騰等の影響で利益率が低迷しましたが、2024年3月期以降は適正価格での販売や構造改革が進み、経常利益率および当期利益率は回復傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,648億円 2,016億円 2,604億円 2,443億円 2,308億円
経常利益 74億円 6億円 14億円 90億円 100億円
利益率(%) 4.5% 0.3% 0.6% 3.7% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 53億円 59億円 6億円 60億円 70億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高は減少しましたが、売上原価の減少幅が大きく、売上総利益および営業利益は増加しました。これにより、売上総利益率は14.5%から16.5%へ、営業利益率は3.0%から3.7%へと改善しています。原材料価格の軟化やコストダウン、不採算事業からの撤退などの構造改革が奏功しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,443億円 2,308億円
売上総利益 353億円 380億円
売上総利益率(%) 14.5% 16.5%
営業利益 72億円 86億円
営業利益率(%) 3.0% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、製品発送費が120億円(構成比41%)、給与手当が53億円(同18%)を占めています。物流費の上昇等が販管費の増加要因となっています。

(3) セグメント収益


油脂事業は、販売単価の下落等により減収となりましたが、適正価格での販売や構造改革により増益となり、全社利益を牽引しました。スペシャリティフード事業は、不採算事業の整理等の影響で減収となりましたが、利益面では増益を確保しました。その他事業は減収増益でした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
油脂事業 2,200億円 2,092億円 70億円 82億円 3.9%
スペシャリティフード事業 233億円 206億円 1億円 1億円 0.7%
その他 10億円 10億円 2億円 2億円 19.5%
調整額 - - 2億円 2億円 -
連結(合計) 2,443億円 2,308億円 72億円 86億円 3.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローの状況は、本業で稼いだ資金で借入金の返済や投資を行っている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 225億円 183億円
投資CF -33億円 -38億円
財務CF -173億円 -69億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Joy for Life -食で未来によろこびを-」をビジョンとして掲げています。ステークホルダーや社会、環境の「Joy」を「おいしさデザイン」で創出し、社会課題の解決に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社はコミュニケーションブランド「JOYL」を導入し、企業活動やステークホルダーとのコミュニケーションにおいて活用しています。「おいしさ×健康×低負荷」を掲げ、植物の恵みを活用した新たな価値提供を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は第六期中期経営計画「Transforming for Growth」を推進しており、2026年度を最終年度としています。2025年度は「復活」から「成長」へと舵を切る転換期と位置づけています。

* 2026年度 営業利益:110億円
* 2026年度 ROE:8.0%
* 2026年度 ROIC:5.0%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「成長戦略」「構造改革」「経営基盤強化」の3つを柱としています。成長戦略では、「低負荷」を強みとした高付加価値品の拡販や、ASEAN・北米を中心とした海外展開に注力しています。構造改革ではDXによる業務プロセス改善や資産効率改善を進め、経営基盤強化では人的資本経営やサステナビリティ施策を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人財ポリシー」に基づき、「挑戦・成長する人と組織」および「多様な人財の働きやすさと心身の健康」の実現を目指しています。高度専門性を持つ人材の獲得、自律型人材の育成、女性管理職比率の向上などのDE&I推進、健康経営などを通じて、従業員のエンゲージメント向上と企業価値向上を図る方針です。2025年4月より「人財委員会」を設置し、戦略の実行性を強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 18.9年 8,206,569円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 63.8%
男女賃金差異(正規雇用) 72.0%
男女賃金差異(非正規) 53.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメント(47%)、ウェルビーイング(66%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料調達・為替相場等に関するリスク


主要原料である大豆・菜種等を海外から調達しているため、穀物相場や海上運賃、為替相場の変動が調達コストに直接影響します。価格転嫁が困難な場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、地政学リスクや気候変動による調達難のリスクもあります。

(2) 自然災害・感染症・事故等に関するリスク


大規模な地震、台風、集中豪雨などの自然災害や事故により、生産設備が損壊したり物流網が寸断されたりした場合、製品の安定供給に支障をきたす可能性があります。また、感染症の蔓延による操業停止リスクもあります。

(3) 海外展開に関するリスク


海外事業の拡大に伴い、進出地域の法規制変更、政治・社会情勢の変動、自然災害などのリスクがあります。また、海外子会社におけるガバナンス不全による不正等の発生リスクも存在します。

(4) 製品の安全、品質、安定供給に関するリスク


製品の品質不良、異物混入、表示違反などによる自主回収や、食品偽装などが発生した場合、ブランドの信頼失墜や業績悪化につながる可能性があります。外部委託先におけるトラブルもリスク要因となります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。