※本記事は、株式会社J-オイルミルズの有価証券報告書(第24期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. J-オイルミルズってどんな会社?
家庭用・業務用油脂や食品素材の製造販売を手がけ、食を通じて社会課題の解決を目指す企業です。
■(1) 会社概要
同社は2002年にホーネンコーポレーションと味の素製油の共同株式移転により設立されました。2003年に吉原製油を完全子会社として現在のJ-オイルミルズに社名を変更し、2004年に各社を吸収合併しました。2023年には日清オイリオグループと合弁会社を設立し、搾油工程を承継するなど事業基盤を強化しています。
現在の従業員数は連結で1222名、単体で975名です。筆頭株主は事業会社の味の素で、第2位も同じく事業会社の三井物産、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 味の素 | 27.16% |
| 三井物産 | 12.53% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 4.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長執行役員CEOは春山裕一郎氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 春山 裕一郎 | 代表取締役社長執行役員CEO | 住友化学入社後、大日本住友製薬などを経て2025年より現職。 |
| 佐藤 達也 | 取締役会長 | 味の素入社後、同社常務執行役員などを経て2025年より現職。 |
| 近藤 一也 | 取締役副社長執行役員CTO | 味の素入社後、生産統括センター技術部長などを経て2025年より現職。 |
社外取締役は、佐々木達哉氏(元味の素執行役専務)、吉里格氏(元三井物産食料本部油脂・主食事業部長)、石田友豪氏(元野村アセットマネジメント執行役社長)、槙美冬氏(元ベネッセコーポレーション執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「油脂事業」「スペシャリティフード事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 油脂事業
家庭用・業務用の食用油脂や、搾油工程で生じるミール(油粕)を製造・販売しています。一般消費者向けのほか、外食産業や食品メーカーなど幅広い顧客に製品を提供しています。
顧客への製品販売による代金を収益源としています。運営は親会社であるJ-オイルミルズが中心となり、関係会社と連携して行っています。
■(2) スペシャリティフード事業
植物性の油脂加工技術を活かしたマーガリンやショートニングなどの乳系PBF事業、機能性スターチや食品素材を扱う食品素材事業を展開しています。主に製菓・製パン業や食品メーカーに提供しています。
顧客への加工油脂や食品素材の販売代金を収益源としています。運営はJ-オイルミルズや、マレーシアの子会社であるPremium Fats Sdn Bhdなどが担っています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、主にその他付帯業務や不動産賃貸などを行っています。
不動産の賃貸料などを収益源としています。運営は主にJ-オイルミルズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は2023年3月期にピークを迎えましたが、以降は減少傾向にあります。経常利益も2025年3月期にかけて大きく改善したものの、直近の2026年3月期はコスト上昇などの影響を受けて減益に転じました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2016億円 | 2604億円 | 2443億円 | 2308億円 | 2266億円 |
| 経常利益 | 6億円 | 14億円 | 90億円 | 100億円 | 58億円 |
| 利益率(%) | 0.3% | 0.6% | 3.7% | 4.3% | 2.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 59億円 | 6億円 | 60億円 | 70億円 | 46億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となりましたが、為替の円安進行や原料コストの上昇により売上原価が高止まりし、売上総利益は減少しました。結果として営業利益も半減しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2308億円 | 2266億円 |
| 売上総利益 | 380億円 | 341億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.5% | 15.0% |
| 営業利益 | 86億円 | 44億円 |
| 営業利益率(%) | 3.7% | 1.9% |
販売費及び一般管理費のうち、製品発送費が131億円(構成比44%)、給与手当が54億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力の油脂事業は業務用が堅調だったもののミール相場の下落で微減となりました。スペシャリティフード事業も構造改革の影響で減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 油脂事業 | 2092億円 | 2068億円 |
| スペシャリティフード事業 | 206億円 | 190億円 |
| その他 | 10億円 | 7億円 |
| 連結(合計) | 2308億円 | 2266億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金で借入の返済を行い、投資も手元資金で賄っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 183億円 | 30億円 |
| 投資CF | -38億円 | -35億円 |
| 財務CF | -69億円 | -82億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社はコミュニケーションブランド「JOYL」の下、「Joy for Life -食で未来によろこびを-」のビジョン実現を目指しています。植物の恵みを活用した新たな価値の提供により、社会課題の解決とサステナブルな社会の実現に貢献することを経営の基本方針として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は「おいしさ×健康×低負荷」を重視した「おいしさデザイン」を通じて、ステークホルダーや社会、環境のよろこびを創出する文化を持っています。また、多様な人材が活躍できるインクルーシブな組織風土や、従業員の心身の健康とウェルビーイングを大切にする価値観が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2030年の目指す姿を見据え、2026年度を最終年度とする第六期中期経営計画「Transforming for Growth」を推進しています。基礎収益力の向上や次期中計に向けた持続的成長の強化を図り、以下の数値目標を掲げています。
* 営業利益:110億円
* ROE:8.0%
* ROIC:5.0%
* EPS:260円
■(4) 成長戦略と重点施策
足元の収益力強化として販売価格適正化とDXの推進による業務革新に最優先で取り組みます。さらに次期中計を見据え、家庭用オリーブオイルや機能性表示食品の拡販、海外市場(特にASEAN)での加工油脂分野への展開など「おいしさデザイン」の対象範囲を広げた価値創出を進めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本経営を重視し、「挑戦・成長する人と組織」と「多様な人財の働きやすさと心身の健康」を実現するための人事戦略を展開しています。次世代経営人財の育成や多様な価値観を持つ人財の確保・適正配置を進め、従業員エンゲージメントの向上を通じた組織力の強化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.6歳 | 18.7年 | 8,401,533円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女の賃金の差異(全労働者) | 66.8% |
| 男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 72.7% |
| 男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 58.4% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(51%)、成長機会の好意的回答割合(62%)、ウェルビーイング好意的回答割合(69%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化に関するリスク
国内の少子高齢化による油脂市場の縮小や、顧客の統合・再編による取引先政策の変更が事業に影響を及ぼす可能性があります。同社は高付加価値品の開発や海外市場への展開、非可食領域の新規事業開拓で対応しています。
■(2) 原材料調達・為替相場等に関するリスク
大豆や菜種などの原料コストは海外の穀物相場や為替相場の変動により大きく変動します。地政学リスクや気候変動による調達困難が生じた場合、収益を圧迫する懸念があり、同社は産地の多角化や先物取引でヘッジしています。
■(3) 海外展開に関するリスク
成長市場である海外への展開を進める中で、各国の法規制変更や地政学リスク、自然災害の発生が影響を与える可能性があります。また、海外子会社でのガバナンス不全による不正行為のリスクに対しても内部統制を強化しています。



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