※本記事は、中部飼料株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 中部飼料ってどんな会社?
畜水産飼料の製造販売を核に、日本の食卓へ安心と美味しさを届ける独立系配合飼料メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1949年に愛知県半田市で設立され、飼料および雑穀の製造販売を開始しました。1961年に東京・名古屋両証券取引所市場第2部に上場し、2006年には同市場第1部へ指定替えを果たしました。その後、畜産用機器の開発や海外展開を進め、2022年の市場区分見直しに伴い、東証プライム市場および名証プレミア市場へ移行しています。
2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は497名、単体では435名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は大手生命保険会社となっており、安定的な株主構成といえます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.97% |
| 日本生命保険相互会社 | 5.02% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は藤田京一氏が務めています。社外取締役比率は約27%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤田 京一 | 取締役社長(代表取締役) | 1980年入社。八戸工場長、飼料本部長、事業本部長等を歴任し、2019年取締役副社長を経て2025年3月より現職。 |
| 伊藤 敏宏 | 取締役副社長事業本部長管理本部長 | 1985年日本生命保険入社。同社法人営業推進部長等を経て2015年同社入社。営業推進部長、管理本部長等を歴任し、2025年4月より現職。 |
| 全屋 和夫 | 専務取締役飼料本部長 | 1985年入社。本社工場長、鹿島工場長等を歴任。2020年取締役飼料副本部長を経て、2025年4月より現職。 |
| 平野 晴信 | 取締役 | 1995年名古屋銀行入行。スマック社長を経て2010年同社取締役就任。飼料本部長等を歴任し、2019年社長就任。2025年3月より現職。 |
社外取締役は、亀井淳(メヂカルフレンド社社長)、柴田由紀(元アイシン監査室長)、束村博子(名古屋大学名誉教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「飼料」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 飼料事業
鶏・豚・牛用の畜産飼料および魚用の水産飼料の製造、販売を行っています。畜産および水産事業者に対し、高品質な配合飼料を供給することで日本の食の基盤を支えています。
収益は、顧客への飼料販売代金等から得ています。運営は主に同社が行っていますが、連結子会社の有限会社豊洋水産が水産用飼料の研究開発等を、持分法適用関連会社の三通中部飼料(山東)有限公司が中国での水産用飼料の製造・販売を担っています。
■(2) その他事業
消費者向けの畜水産物の販売、畜産用機器の販売、配合肥料の製造・販売、保険代理業などを展開しています。セサミンを含む「ごまたまご」等の特性ある畜産物の委託生産・販売や、畜糞発酵処理機の開発なども手掛けています。
収益は、畜水産物や機器、肥料の販売代金および保険手数料等から得ています。運営は同社のほか、中部エコテック(機器開発)、吉林華中緑色生態農業開発有限公司(肥料製造)、中部チムニー(畜水産物販売)、ダイコク(保険代理業)などのグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は2,000億円台で推移していますが、原材料価格や販売価格の影響を受け変動しています。第78期は前期比で減収となりました。利益面では、第76期に大きく落ち込んだものの、その後回復傾向にあり、第78期の経常利益は48億円となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,814億円 | 1,934億円 | 2,435億円 | 2,342億円 | 2,098億円 |
| 経常利益 | 57億円 | 46億円 | 21億円 | 45億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 2.4% | 0.8% | 1.9% | 2.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 38億円 | 32億円 | 8億円 | 33億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しましたが、売上原価の減少幅が大きく、売上総利益は増加しました。これに伴い売上総利益率は改善しています。一方、営業利益は増加しており、収益性は向上傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,342億円 | 2,098億円 |
| 売上総利益 | 167億円 | 186億円 |
| 売上総利益率(%) | 7.1% | 8.9% |
| 営業利益 | 39億円 | 43億円 |
| 営業利益率(%) | 1.7% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、飼料価格安定基金負担金が52億円(構成比37%)、運賃が34億円(同24%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の製造費用が大部分を占めており、売上原価率は91.1%となっています。
■(3) セグメント収益
飼料セグメントは、販売数量の増加は見られましたが平均販売価格の下落などにより減収減益となりました。一方、その他セグメントは、畜産用機器の販売増や鶏卵販売の強化、肥料事業の好調などにより大幅な増収増益となり、全体の利益成長に貢献しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 飼料 | 2,189億円 | 1,914億円 | 43億円 | 40億円 | 2.1% |
| その他 | 153億円 | 184億円 | 8億円 | 14億円 | 7.6% |
| 調整額 | -0億円 | -0億円 | -6億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 2,342億円 | 2,098億円 | 45億円 | 50億円 | 2.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
中部飼料は、営業活動により潤沢な資金を獲得し、事業基盤を強化しています。営業活動によるキャッシュ・フローは、増収増益や売上債権・棚卸資産の減少により大きく増加しました。一方、投資活動では、固定資産の取得に資金を使用しましたが、有価証券の売却により一部を賄いました。財務活動では、借入金の増加により資金を調達し、配当金の支払いを行いました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 104億円 | 120億円 |
| 投資CF | -46億円 | -38億円 |
| 財務CF | -48億円 | 8億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「飼は食を司る」との使命感のもと、配合飼料の総合メーカーとして事業を展開しています。「特性ある仕事をして社会に貢献する」という社是を掲げ、日本の畜水産業界を担うパートナーとして、食卓に安心と美味しさを届けること、そして持続的な発展に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、お客様と共に課題を見つけ出し、これを解決することを何より大切にしています。独立系メーカーとして自社一貫生産設備を活かし、お客様と確かな信頼関係を築き、共に成長することが創業以来培ってきたDNAです。
■(3) 経営計画・目標
2025年3月期から2027年3月期までの中期経営計画において、「収益力向上と規模拡大により強い収益基盤を構築する」「資本コストを意識した経営を実践する」という基本方針を掲げています。具体的な数値目標として、温室効果ガス排出量の削減目標などを設定しています。
* 2030年度に温室効果ガス排出量(Scope1+2)を2020年度比30%削減
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画に基づき、飼料セグメントでは製造・販売・研究一体の取り組みや環境配慮型飼料の拡販、その他セグメントでは特殊卵や肥料、畜産用機器の販売強化を推進しています。また、サステナビリティ経営として、環境対応や人的資本への投資、ガバナンス強化にも注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員一人一人が企業の成長を生み出すと考え、自ら考え行動する人材の確保・育成を目指しています。採用では多様性を重視し、育成面では階層別研修や専門性を高める研修を実施しています。また、管理職登用においては性別や国籍等を問わず能力・実績を評価する方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.8歳 | 15.6年 | 6,977,895円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 1.2% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 60.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 70.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 72.7% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 55.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用者に占める女性の割合(28%)、管理職候補者である係長級の役職者に占める女性の割合(2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 家畜等の疾病発生リスク
鳥インフルエンザや豚熱などの家畜伝染病や赤潮等の発生により、飼育数量が減少したり消費者の買い控えが起こったりした場合、飼料需要の減少や取引先の経営悪化を通じて、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人口動態と人材確保のリスク
人口減少による国内飼料需要の減少への対応が遅れた場合や、労働人口減少の中で多様な人材の確保・育成が困難になった場合、長期的な競争力が低下し、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 環境規制等の強化
気候変動対応としての炭素税導入などの環境規制強化や、市場からの環境対応評価が悪化した場合、レピュテーションリスクが生じる可能性があります。また、想定を超える環境対応費用の発生が業績に影響を及ぼす可能性があります。



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