※本記事は、日本食品化工株式会社の有価証券報告書(第105期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本食品化工ってどんな会社?
とうもろこし加工事業を主力とし、澱粉や糖化品など多様な製品を展開する素材メーカーです。
■(1) 会社概要
日本食品化工は1948年にとうもろこしの加工事業を目的として設立されました。1961年には三菱商事と製品販売の代理店契約を締結するとともに株式を上場しています。その後、糖化部門への進出や事業拠点の拡充を進め、2007年には三菱商事が株式公開買付けにより親会社となり、事業基盤を強化しました。
現在の連結従業員数は452名、単体従業員数も452名規模の体制で事業を展開しています。筆頭株主は親会社であり主要な取引先でもある三菱商事で、第2位および第3位にも関連する事業会社が名を連ねており、安定した経営体制を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 60.49% |
| 三和澱粉工業 | 4.11% |
| 堀内運輸 | 2.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役は荒川健氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 荒川 健 | 代表取締役 | 1987年三菱商事入社。同社執行役員消費財本部長等を経て、2021年日本食品化工代表取締役社長に就任。2026年より現職。 |
| 伊藤 剛 | 取締役常務執行役員業務・調達担当 | 1989年日本食品化工入社。業務部長、総務部長等を歴任し、2021年執行役員に就任。2024年より現職。 |
| 丹野 格 | 取締役執行役員経営企画・海外事業・営業担当 | 1993年三菱商事入社。同社グローバル食品本部等を経て、2022年日本食品化工取締役に就任。2025年より現職。 |
| 石川 宏明 | 取締役執行役員サステナビリティ・総務人事・経理・情報システム担当 | 1992年三菱商事入社。独国三菱商事等を経て、2023年日本食品化工取締役に就任。2024年より現職。 |
| 浅見 彰宏 | 取締役 | 1998年三菱商事入社。伊藤ハム米久ホールディングス常務執行役員等を経て、2025年より現職。 |
| 中庭 聡 | 取締役(監査等委員) | 1993年三菱商事入社。ローソン取締役上級執行役員CFO等を経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、佐藤幸一郎(元三井化学執行役員)、嵜山淳子(合同会社サキコンサルティング代表社員)、井上惠子(中外合同法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「とうもろこし等加工事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 澱粉部門
とうもろこし等を原料とした澱粉製品を製造し、食品用途や製紙を中心とした一般工業用途の顧客に対して販売しています。多様化するニーズに応えるため、独自技術による高付加価値な加工製品の提供を推進しています。
主に顧客である食品メーカーや製紙会社等への製品販売から収益を得ています。本事業の運営は主に日本食品化工と親会社の三菱商事、およびタイの関連会社が担っています。
■(2) 糖化品部門
とうもろこし等から作られる糖化品を製造し、清涼飲料や酒類、食品、調味料などの幅広い分野のメーカーに対して素材として提供しています。健康志向の高まり等に合わせた機能性糖質の開発にも取り組んでいます。
飲料・食品メーカー等への業務用販売を中心とした製品代金が主な収益源です。本事業の運営は主に日本食品化工および三菱商事が行っています。
■(3) ファインケミカル部門
高度な加工技術を用いたファインケミカル製品(シクロデキストリンやオリゴ糖など)を製造し、医薬品原料や化粧品、特殊な食品用途などの付加価値の高い分野に向けて提供しています。
高機能素材の販売代金から収益を得ています。本事業の運営は主に日本食品化工および三菱商事が担っています。
■(4) 副産物部門
とうもろこしの加工工程で生じるコーンオイルなどの副産物を有効活用し、配合飼料などの用途として顧客に提供しています。
製品製造の過程で生じる副産物の販売代金から収益を得ています。本事業の運営は主に日本食品化工および三菱商事が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
連結決算に移行した直近2期間の業績を比較すると、製品価格の適正化などにより売上高は安定して推移しています。一方、製造費用の増加や副産物の販売価格下落などの影響を受け、経常利益および利益率はやや低下傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 627億円 | 630億円 |
| 経常利益 | 19億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 3.1% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
売上総利益率は16%台で安定して推移しており、営業利益率も約2%を維持しています。原料価格の高騰などの外部環境の変化に対して、製品価格への転嫁や適切なコスト管理が機能していることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 627億円 | 630億円 |
| 売上総利益 | 100億円 | 103億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.0% | 16.3% |
| 営業利益 | 12億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 1.9% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、発送・庫移費が38億円(構成比42%)、給料賃金手当が13億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
売上の多くを糖化品部門が占めており、次いで澱粉部門が事業の主要な柱となっています。当期は猛暑による飲料向け需要などの影響で糖化品部門が底堅く推移したほか、副産物部門やファインケミカル部門の売上が伸長しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 澱粉 | 140億円 | 143億円 |
| 糖化品 | 400億円 | 396億円 |
| ファインケミカル | 22億円 | 23億円 |
| 副産物 | 65億円 | 68億円 |
| 連結(合計) | 627億円 | 630億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は健全型のキャッシュ・フロー・パターンを示しています。営業利益等により資金を創出し、その資金で借入金の返済や必要な設備投資を賄っている安定した財務基盤の企業と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 37億円 | 69億円 |
| 投資CF | -58億円 | -31億円 |
| 財務CF | 21億円 | -37億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「多様なWell-beingのために」をコーポレートメッセージとして掲げています。でん粉や糖の事業を通じて、生活者の多様なWell-beingに資する価値提供を推進し、長期的な企業価値の向上に努めることを経営の基本方針としています。社会的・環境的な潮流変化を的確に捉え、将来あるべき姿の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「日食行動指針」において「公明正大を旨とする」ことを定め、役職員行動規範を遵守する企業文化を持っています。また、人材の行動特性(コンピテンシー)として「当事者意識」「利他の精神」「イノベーション・挑戦」「個の尊重」「公明正大」の5つの要素を重視し、失敗や変化を恐れず自律的に価値創出へ挑戦し続ける組織づくりを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期の実行計画である中期経営計画「中経2027」において、資本効率の向上と持続的な成長を目指し、以下の経営指標を目標として掲げています。
* 連結経常利益:20±3億円
* ROE:5~6%
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長戦略として「重点領域の具現化と新規事業創出」や「収益構造の見直しと設備の最適化」を掲げています。具体的には、食の高度化・多様化や未病領域に資する機能性糖質や、脱炭素・資源循環に貢献する環境配慮型素材の市場展開に注力します。さらに、タイの関連会社を通じたグローバル市場への製品・技術展開を推進し、社会課題の解決を通じた企業価値の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人事ビジョン」を策定し、従業員一人ひとりの成長と事業の発展が共にある姿を目指しています。「成長機会の提供」「DE&I」「適材適所」の3本柱を基盤に、研修制度の拡充やキャリアカウンセリングの導入を実施しています。役割・成果・行動特性を適切に反映する処遇制度を運用し、自律的に挑戦し続ける人材の育成を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.8歳 | 17.8年 | 7,599,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.2% |
| 男性育児休業取得率 | 71.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 61.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(3.1%)、係長級以上の女性比率(7.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原材料価格の変動と安定調達
主原料のとうもろこしの価格は海外の穀物相場や為替、海上輸送運賃の変動影響を強く受けます。また、天候不順や地政学的リスクによる調達不安が生じた際、コスト増加を製品価格に適切に転嫁できない場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 農政関連の法的規制等への対応
国内産いも澱粉等の保護を目的とした制度により、異性化糖調整金が継続的に発生しています。これによる負担増や制度変更に伴う対応が販売価格へ反映できない場合、収益を圧迫するリスクがあります。
■(3) 競合激化と市場ニーズの変動
原燃料相場の高止まりが続く中、競合する輸入品の動向や国内消費者の節約志向により市場環境は不透明です。多様化する市場ニーズに適応した製品提供が遅れた場合、競争力低下により事業へ影響が生じる恐れがあります。
■(4) 物流課題に伴うコスト上昇
働き方改革に伴う物流費の値上げや燃料費の高騰により、配送網の維持に課題が生じています。物流効率化法への対応負担や安定的な製品供給体制の維持が困難となった場合、事業活動に支障をきたすリスクがあります。



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