※本記事は、林兼産業株式会社の有価証券報告書(第87期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 林兼産業ってどんな会社?
同社は、食品と飼料の2本柱で事業を展開し、飼料の生産から食品の販売までを手がける垂直型メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1941年に山口県合同缶詰として設立され、1955年に林兼産業を吸収合併して現在の社名となりました。1962年に東京証券取引所に上場しています。その後、養豚事業の移管や加工食品・肉類を扱う子会社の設立を進め、飼料の生産から食品の販売までを幅広くカバーする現在の事業体制を構築しました。
従業員数は連結で462名、単体で310名です。筆頭株主は同社元会長の遺志により設立された公益財団法人中部財団で、第2位は主要取引先であるUmios、第3位は代表取締役社長が議決権を100%所有する恵比須商会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 公益財団法人中部財団 | 9.87% |
| Umios | 6.93% |
| 恵比須商会 | 5.21% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は中部哲二氏で、社外取締役比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中部哲二 | 代表取締役社長 | 1994年同社入社。開発部担当取締役、常務取締役、専務取締役管理本部長等を経て、2019年に代表取締役副社長に就任。2020年より現職。 |
| 三代健造 | 専務取締役事業統括本部長兼飼料事業部長 | 1991年同社入社。飼料事業部研究開発部長、常務取締役飼料事業部長等を経て、2024年に専務取締役事業統括本部長兼飼料事業部長に就任。2025年より現職。 |
| 戸倉信一 | 取締役事業統括本部食品事業部長 | 1991年同社入社。食品事業部業務部長、ベツケイ社長等を経て、2024年に同社取締役経営管理本部長に就任。2025年より現職。 |
| 中嶋一貴 | 取締役経営管理本部長 | 1984年山口銀行入行。北九州銀行取締役常務執行役員等を経て、2022年に同社常任監査役に就任。2023年に取締役監査等委員となり、2025年より現職。 |
| 安部克彦 | 取締役事業統括本部食品事業部副事業部長 | ローソンやウォーターベアーズ社長等を経て、2022年に同社取締役食品事業部長補佐に就任。2023年に取締役となり、2024年より現職。 |
| 鈴田修士 | 取締役経営管理本部副本部長 | オリックスやミカタ税理士法人等を経て、2023年にとこしえラボ代表に就任。同年同社取締役に就任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、田中姿子(スノーバレーボールジャパン代表理事)、岩村修二(元名古屋高等検察庁検事長)、山尾哲之(元寺岡ハカリ社長)、三田村知尋(元マルハニチロ常務)、伊勢﨑俊博(元ワイエム証券社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食品事業」「飼料事業」および「その他」事業を展開しています。
■食品事業
機能性素材、加工食品、肉類の製造および仕入販売を行っています。自社で肥育した豚肉のほか、顧客の要望に応じた加工食品や、科学的根拠に基づいた機能性表示食品、高齢者向けの介護食などを幅広い顧客に向けて提供しています。
自社で製造・仕入れた製品を販売することで収益を得ています。事業の運営は同社が主体となり、豚肉の肥育はキリシマドリームファーム、と畜は都城ウエルネスミート、加工食品の一部製造は林兼フーズが担うなど、グループ一体で展開しています。
■飼料事業
養魚用飼料および畜産用飼料、ならびに水産物の製造および仕入販売を行っています。水産資源の保全に配慮した低魚粉飼料の開発や、疾病予防に寄与する高付加価値な飼料を生産者に提供し、生産された水産物の買取・販売も行っています。
自社で製造または外部から仕入れた飼料や水産物を販売することで収益を得ています。養魚用飼料の製造と同社および得意先への販売は同社と太幸物産が行い、水産物の加工・販売は平安海産、鰻の養殖受託および販売は桜林養鰻が行っています。
■その他
不動産賃貸事業および冷蔵倉庫事業を展開しています。同社が所有する大阪府などの不動産を外部顧客へ賃貸するほか、グループの得意先から預かった原料などの保管サービスを提供しています。
不動産の賃貸料や、倉庫での保管料を顧客から受け取ることで収益を得ています。不動産の賃貸は同社が行い、原料などの保管業務については、持分法適用会社である林兼冷蔵が主体となって運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は安定して400億円台で推移しており、原材料相場の変動や経済環境の変化を受けつつも底堅い事業基盤を維持しています。利益面では、一時的な減益の期間があったものの、直近では高付加価値化や収益構造の改善が進み、経常利益・利益率ともに上昇傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 404億円 | 425億円 | 474億円 | 493億円 | 456億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 5億円 | 9億円 | 14億円 | 17億円 |
| 利益率(%) | 2.3% | 1.1% | 1.9% | 2.8% | 3.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 1億円 | 6億円 | 13億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の損益状況を見ると、売上高は減少したものの、売上総利益および営業利益は増加しています。ブランド豚の肥育成績改善などにより原価率が低下し、収益性の向上が図られていることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 493億円 | 456億円 |
| 売上総利益 | 57億円 | 61億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.5% | 13.5% |
| 営業利益 | 11億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 2.9% |
販売費及び一般管理費のうち、発送・配達費が14億円(構成比29%)、従業員給与が9億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、食品事業は肉類の販売数量増加などにより前年並みの水準を維持しています。一方、飼料事業は養魚用飼料の販売数量減少などにより減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 食品事業 | 224億円 | 224億円 |
| 飼料事業 | 268億円 | 232億円 |
| その他 | 0.4億円 | 0.1億円 |
| 連結(合計) | 493億円 | 456億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を投資や借入金の返済に充てる「健全型」のパターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 7億円 |
| 投資CF | 9億円 | -6億円 |
| 財務CF | -14億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「売り手によし、買い手によし、世間によし、三方よし」を規範とし、飼料の生産から食品の販売まで取り扱う垂直型メーカーとして「安全・安心」で「良質」な製品を提供することを通じて、豊かな食文化の実現に貢献することを経営理念として掲げています。また、「おいしさを、生きるちからに。」をコーポレートスローガンとしています。
■(2) 企業文化
同社は、『「生きる力」を生みだす食糧品メーカーである林兼産業は食の可能性をひろげる商品を生みだすことで誰もが幸せに生きられる未来をつくるために活動します』というパーパスを事業活動の基軸としています。「お互いを支えあい共に成長する」「自然の恵みと命に感謝する」といった行動指針を定着させ、人的資本の価値を高める組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は2026年4月からの2年間を新中期経営計画「Challenge2028」の期間と位置付け、以下の数値目標を掲げて事業基盤の盤石化に取り組んでいます。
・ROIC:5.0%以上
・EBITDA:6.0%を継続
・配当性向:30%以上を志向
・政策保有株式縮減方針:連結純資産の20%以下
■(4) 成長戦略と重点施策
新中期経営計画では、前期までの財務健全化を経て、資本コストをより強く意識した経営へとシフトしています。事業ポートフォリオの「選択と集中」を通じて、「株主還元の強化」「収益性(ROIC)の向上」「人的資本投資の強化」の3つの重点戦略を推進します。食品事業では高付加価値化や海外展開を加速し、飼料事業では水産資源保全に対応した低魚粉飼料の開発を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人財戦略」を経営基盤の柱と位置づけ、従業員一人ひとりが自律的に学び続ける組織風土の醸成に努めています。階層別研修や若手向けの疑似役員会(ジュニアボード制度)を通じて次世代リーダーを育成するほか、従業員意識調査を活用したエンゲージメント向上や多様な人材が活躍できる働き方改革を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.8歳 | 19.3年 | 6,378,418円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 76.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 83.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員における女性の構成比率(21.4%)、平均残業時間(12.7時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替変動リスク
製品の輸出や原材料などの輸入取引は、為替相場の変動による影響を受けます。同社グループは為替予約によるリスクヘッジを行っていますが、主に外貨に対する円安傾向が長期化した場合、原材料価格の上昇などが業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 農畜水産物の疾病や育成成績に関するリスク
同社グループが運営する農場や飼料の供給先において、豚熱などの疾病が発生するリスクがあります。防疫対策や診療行為を講じていますが、想定外の自然環境の変化や疾病の発生により、肥育豚の大量処分や飼料の供給停止が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法令・規制に関するリスク
食品を扱う企業として、コンプライアンス経営を重視し法令遵守の徹底に取り組んでいます。しかし、個人的な不正行為を含め、コンプライアンスに関するリスクを完全に回避できない可能性があり、万一法令違反等が発生した場合には、社会的信用の失墜により業績に影響を及ぼす可能性があります。



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