林兼産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

林兼産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。ハム・ソーセージ等の食品事業と、養魚用・畜産用飼料の製造販売を行う飼料事業を展開する企業です。直近の業績は、養魚用飼料の販売数量増加や価格改定効果に加え、有形固定資産や投資有価証券の売却益計上もあり、売上高は493億円、経常利益は14億円と増収増益を達成しました。


※本記事は、林兼産業株式会社 の有価証券報告書(第86期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 林兼産業ってどんな会社?


飼料の生産から食品の加工・販売までを一貫して手掛ける垂直型メーカーです。「霧島黒豚」などのブランド肉や機能性素材も展開しています。

(1) 会社概要


1941年に山口県合同缶詰として設立され、1955年に林兼産業へ商号変更しました。1967年に東京証券取引所市場第一部に上場。その後、養豚・種鶏事業の分社化や養鰻事業の子会社化などを経て事業を拡大しました。近年では、2021年に太幸物産を子会社化するなど、グループ体制の強化を進めています。

連結従業員数は449名、単体では302名です。筆頭株主は創業家に関連する公益財団法人中部財団、第2位は主要取引先であるマルハニチロです。第3位の恵比須商会は、同社代表取締役社長が議決権の100%を所有する資産管理会社であり、同社工場設備の賃貸等を行っています。

氏名 持株比率
公益財団法人中部財団 9.30%
マルハニチロ 6.69%
恵比須商会 5.04%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は中部哲二氏が務めています。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
中部 哲二 代表取締役社長 1994年入社。取締役開発部担当、常務取締役経営企画室担当、専務取締役管理本部長などを歴任。2019年代表取締役副社長を経て、2020年4月より現職。
三代 健造 専務取締役事業統括本部長兼飼料事業部長 1991年入社。飼料事業部研究開発部長、同事業部長、常務取締役、経営管理本部長などを歴任。2024年6月より現職。
戸倉 信一 取締役事業統括本部食品事業部長 1991年入社。食品事業部業務部長、ベツケイ代表取締役社長、経営管理本部経理部長、経営管理本部長などを歴任。2025年6月より現職。
中 嶋 一 貴 取締役経営管理本部長 山口銀行入行。北九州銀行取締役常務執行役員などを経て、2022年同社常任監査役、取締役監査等委員に就任。2025年6月より現職。
安 部 克 彦 取締役事業統括本部食品事業部副事業部長 ベニレイ、ローソン等を経てウォーターベアーズ代表取締役社長(現任)。2022年同社取締役就任。2024年6月より現職。
鈴 田 修 士 取締役経営管理本部副本部長 オリックス、ジャパンインベストメントアドバイザー執行役員、ミカタ税理士法人執行役員等を経て、2023年同社取締役就任。2024年6月より現職。


社外取締役は、田中姿子(元バレーボール日本代表)、岩村修二(元名古屋高等検察庁検事長)、山尾哲之(元テラオカ代表取締役社長)、三田村知尋(元マルハニチロ取締役常務執行役員)、伊勢﨑俊博(元ワイエム証券代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」、「飼料事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 食品事業


機能性素材(エラスチン等)、加工食品(魚肉練り製品、ハム・ソーセージ等)、および食肉(豚肉等)の製造・仕入販売を行っています。顧客は主に食品商社や量販店等です。自社グループ農場での養豚から加工まで一貫体制をとっています。

収益は、製品や商品の販売代金として顧客から受け取ります。運営は、主に林兼産業が行うほか、養豚事業をキリシマドリームファーム、と畜処理を都城ウエルネスミート、加工食品製造の一部を林兼フーズが担当しています。

(2) 飼料事業


養魚用飼料および畜産用飼料の製造・販売に加え、ブリや鰻などの水産物の養殖・加工・販売を行っています。養魚用飼料は主に自社で製造し、畜産用飼料は外部委託や仕入販売が中心です。

収益は、飼料および水産物の販売代金として顧客から受け取ります。運営は林兼産業が中心となり、養魚用飼料製造の一部を太幸物産、水産加工を平安海産、鰻の養殖を桜林養鰻が行っています。

(3) その他の事業


同社が所有する不動産の賃貸や、倉庫業などを行っています。

収益は、不動産の賃貸料や保管料として受け取ります。運営は林兼産業が不動産賃貸を行い、関連会社の林兼冷蔵が冷蔵倉庫事業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は83期に一度減少したものの、その後は増加傾向にあります。特に直近の86期には売上高が493億円に達しました。利益面では、経常利益が84期に落ち込みましたが、その後回復し、86期は14億円と過去5年間で最高水準となっています。当期純利益も86期は13億円と高い水準を記録しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 444億円 404億円 425億円 474億円 493億円
経常利益 8億円 9億円 5億円 9億円 14億円
利益率(%) 1.9% 2.3% 1.1% 1.9% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 8億円 1億円 6億円 13億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益率は2.2%となり、前期から上昇しました。これは価格改定や養魚用飼料の販売数量増加などが寄与した結果です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 474億円 493億円
売上総利益 52億円 57億円
売上総利益率(%) 11.0% 11.5%
営業利益 7億円 11億円
営業利益率(%) 1.5% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、発送・配達費が14億円(構成比31%)、従業員給与が9億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


食品事業は、魚肉ねり製品の海外向け販売減少や肉類の販売数量減により微減収となり、利益面でも農場肥育成績悪化等により大幅な減益となりました。一方、飼料事業は養魚用飼料の販売増や価格改定効果により増収となり、利益面でも生産効率改善等により大幅な増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
食品事業 226億円 224億円 8億円 5億円 2.1%
飼料事業 248億円 268億円 9億円 17億円 6.2%
その他事業 0.4億円 0.4億円 0.3億円 0.3億円 71.1%
調整額 - - -1億円 1億円 -
連結(合計) 474億円 493億円 7億円 11億円 2.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

林兼産業は、営業活動、投資活動による資金増加を主因に、連結ベースの現金及び現金同等物が前期末比で増加しました。営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益の計上により増加しました。投資活動による資金は、有形固定資産の売却収入が事業譲受による支出を上回ったことで増加しました。一方、財務活動による資金は、短期借入金の純減少やリース債務の返済により減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 36億円 11億円
投資CF -4億円 9億円
財務CF -12億円 -14億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「売り手によし、買い手によし、世間によし、三方よし」を規範とし、飼料の生産から食品の販売まで取り扱う垂直型メーカーとして「安全・安心」で「良質」な製品を提供することを通じて、豊かな食文化の実現に貢献することを経営理念としています。また、2024年5月にパーパス「『生きる力』を生みだす食糧品メーカーである林兼産業は 食の可能性をひろげる商品を生みだすことで 誰もが幸せに生きられる未来をつくるために活動します。」を公表しています。

(2) 企業文化


同社は行動指針として「1.お互いを支えあい、共に成長します。」「2.自然の恵みと命に感謝し、生きる力を生み出します。」「3.健康と幸せな日常のために、変化し続けます。」を掲げています。また、コンプライアンス経営宣言のもと、法令遵守を重要な企業の責務と認識し、役員・全社員が法令遵守と企業倫理の徹底に取り組む風土づくりに努めています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2024年4月からの2カ年を新中期経営計画「Challenge2026」の期間と位置付け、事業基盤の盤石化に取り組んでいます。以下の経営指標を目標として掲げています。

* ROA(総資産経常利益率):当面の目標5%(計画期間中の目標3.2%)
* EBITDA:当面の目標6%
* ネットD/Eレシオ:計画期間中の目標0.7以下

(4) 成長戦略と重点施策


新中期経営計画「Challenge2026」では、「成長投資の推進」「財務戦略」「コーポレート・ガバナンス」をベースに、ESG経営の視点を取り入れ、地域社会とともに持続的に発展・成長することを目指しています。具体的には、成長事業への集中投資、DX推進、資産の戦略的組み替えによる財務体質の強化を進めます。食品事業では機能性素材の拡販や「霧島黒豚」のブランド戦略強化、飼料事業では低魚粉飼料の開発や養殖魚の疾病対策強化に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「生きる力」を生みだすのは従業員であるとの考えに基づき、人材への投資を成長戦略に組み込んでいます。専門性向上を促す研修制度の充実、人事ローテーションによる組織活性化、女性や外国人の採用・登用を進めています。また、従業員満足度の向上が業績向上につながると考え、2020年度より「従業員意識調査」を導入し、職場環境や組織風土の改善に役立てています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.9歳 18.7年 5,764,981円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.6%
男性育児休業取得率 57.1%
男女賃金差異(全労働者) 55.8%
男女賃金差異(正規雇用) 80.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 79.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員における女性の構成比率(21.6%)、平均残業時間(10.49時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の取引先への依存


同社グループの売上高において、特定の取引先への依存度が高くなっています。2025年3月期では、青島天乙吉星国際貿易有限公司が15.6%、マルハニチロが11.5%、兵殖が11.0%を占めています。これらの取引先との取引に支障が生じた場合、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 農畜水産物相場の変動


製品の販売や原材料の仕入れにおいて農畜水産物を多く取り扱っており、市場の需給状況、天候不順、自然災害、疾病発生などにより相場が大きく変動するリスクがあります。これらの変動が予想を超えた場合、売上の減少や原材料価格の上昇により業績に影響が出る可能性があります。

(3) 農畜水産物の疾病や育成成績に関するリスク


子会社が運営する農場での豚熱などの疾病発生や、養魚用飼料の供給先における魚病発生のリスクがあります。防疫対策や予防措置を講じていますが、万が一大規模な疾病が発生し、肥育豚の大量処分や養魚用飼料の供給停止などの事態に至った場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。

(4) 法令・規制に関するリスク


事業活動において食品衛生法や飼料安全法など多数の法令規制を受けています。コンプライアンス経営を推進していますが、予期せぬ法令違反や規制強化への対応が必要となった場合、社会的信用の失墜やコスト増加により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。