※本記事は、ヱスビー食品株式会社 の有価証券報告書(第112期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヱスビー食品ってどんな会社?
日本のスパイス産業の草分けとして創業し、カレー粉や香辛料、チューブ調味料などを展開する食料品メーカーです。
■(1) 会社概要
1923年に創業者がカレーの調合に成功し、1940年に株式会社日賀志屋として設立されました。1949年にヱスビー食品へ商号変更し、1961年に東京証券取引所市場第二部に上場しています。その後、各地に工場を建設し生産体制を強化するとともに、海外現地法人を設立するなど事業を拡大しました。2022年に東証スタンダード市場へ移行し、直近では2024年に調理済食品事業を譲渡しています。
同社グループの従業員数は連結で2,058名、単体で1,537名です。筆頭株主は創業家一族の資産管理会社と思われる山崎兄弟会で、第2位以降には株式会社三菱UFJ銀行や農林中央金庫といった金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山崎兄弟会 | 9.93% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.49% |
| 農林中央金庫 | 4.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は池村 和也氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 池村 和也 | 代表取締役社長マーケティング企画室担当兼海外事業部担当 | 1986年同社入社。営業本部上席マネージャー、執行役員、取締役常務執行役員、常務取締役首席執行役員などを経て2022年6月より現職。 |
| 田口 裕司 | 専務取締役営業グループ管掌兼ハーブ事業部担当 | 1985年同社入社。商品部上席マネージャー、執行役員、取締役常務執行役員、常務取締役などを経て2025年6月より現職。 |
| 小島 和彦 | 常務取締役開発生産グループ担当兼品質保証室担当 | 1985年同社入社。商品本部上席マネージャー、執行役員、取締役執行役員、取締役上席執行役員などを経て2022年6月より現職。 |
| 加治 正人 | 取締役管理サポートグループ担当兼人事総務室担当兼指名諮問委員会委員兼報酬諮問委員会委員 | 1993年同社入社。人事総務室長、執行役員、取締役執行役員を経て2023年6月より現職。 |
| 横井 実 | 取締役上席執行役員経営企画室担当兼業務改革推進室担当兼管理サポートグループ営業管理・IT担当兼情報統括担当役員 | 1995年同社入社。経営企画室長、執行役員、取締役執行役員を経て2025年6月より現職。エスビーガーリック食品社長を兼務。 |
| 山﨑 崇弘 | 取締役執行役員管理サポートグループ法務・ガバナンス室担当 | 1999年同社入社。財経管理室長、執行役員を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、大嶽 佐由美(有限会社Office Otake設立)、瀧野 敏子(医療法人ラ・クォール会理事長)、葛山 康典(早稲田大学社会科学総合学術院教授)、松家 元(松家法律事務所所長・指名諮問委員会委員長・報酬諮問委員会委員長)、鵜高 利行(鵜高公認会計士事務所設立)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食料品事業」を展開しています。
■食料品事業
各種香辛料、即席カレー、チューブ製品、レトルトカレー等の製造・販売を行っています。また、これらに関連する原材料の調達も行っています。家庭用から業務用まで幅広い顧客層に向け、スパイスやハーブを核とした多様な食料品を提供しています。
収益は主に製品の販売対価として顧客から得ています。運営は、製造・販売を行う同社のほか、製造を担当するエスビーガーリック食品、ヱスビースパイス工業、ヱスビーサンキョーフーズ、大伸、原材料調達を行うヱスビー興産、海外での販売を担うS&B INTERNATIONAL CORPORATIONなどが連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2025年3月期は、調理済食品事業の譲渡により売上高は減少しましたが、高付加価値製品の販売増や価格改定の効果により利益率は改善し、各利益段階で増益となりました。過去の推移を見ると、売上高は増加傾向にありましたが、原材料価格の高騰等の影響を受けつつも、利益確保に向けた取り組みが進められています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,143億円 | 1,180億円 | 1,207億円 | 1,264億円 | 1,235億円 |
| 経常利益 | 94億円 | 87億円 | 55億円 | 81億円 | 97億円 |
| 利益率(%) | 8.2% | 7.4% | 4.5% | 6.4% | 7.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 67億円 | 62億円 | 41億円 | 67億円 | 76億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高は減少したものの、売上原価の減少により売上総利益は増加しています。販売費及び一般管理費は若干増加しましたが、売上総利益の増加がこれを上回り、営業利益は増益となりました。これにより営業利益率も改善しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,264億円 | 1,235億円 |
| 売上総利益 | 317億円 | 338億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.1% | 27.4% |
| 営業利益 | 78億円 | 94億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 7.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が49億円(構成比20.2%)、荷造運搬費が36億円(同14.7%)、広告宣伝費が30億円(同12.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは食料品事業の単一セグメントであり、製品別等の利益は開示されていません。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業の営業活動で得た資金により借入金の返済や配当支払いを行い、設備投資等の支出も賄っている健全型です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 46億円 | 85億円 |
| 投資CF | 8億円 | -23億円 |
| 財務CF | -44億円 | -88億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「美味求真」という創業理念のもと、本物のおいしさを追求し続けています。また、「食卓に、自然としあわせを。」を企業理念とし、高い品質と新たな価値の創出、顧客満足の追求、自然への感謝を通じて、幸せな生活と豊かな社会づくりに貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「『地の恵み スパイス&ハーブ』の可能性を追求し、おいしく、健やかで、明るい未来をカタチにします。」というビジョンを掲げています。従業員一人ひとりが理念とビジョンのもと同じ方向に向かって活動することで組織力を高め、持続的な成長と社会から必要とされる企業になることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
第3次中期経営計画(2026年3月期最終年度)において、スパイスとハーブに関する事業を通じて世界の人々の暮らしに貢献し、社会課題解決に取り組むことを掲げています。数値目標としては以下を設定しています。
* 売上高:1,270億円
* 営業利益:96億円
* 売上高営業利益率:7.6%
■(4) 成長戦略と重点施策
香辛料のトップメーカーとしての技術力と開発力を活かし、「地の恵み スパイス&ハーブ」を進化させるとともに、マーケティング強化や顧客視点での開発により多様なニーズに対応していく方針です。特に海外市場への販売を強化し、2043年に海外売上高比率40%超を目指しています。また、スパイスやハーブの健康への寄与に着目した研究の加速、産地開発、グローバル・デジタル人財の育成、環境負荷低減などの社会課題解決にも注力していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「個性のミックススパイス」である社員が多様な強みを発揮できる体制を追求し、公正かつ透明な環境下で成長機会と仕組みを提供することを方針としています。次世代を担う中核人財の育成、デジタル・グローバル分野のスキル獲得、スパイス&ハーブに関する専門教育、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、健康経営などを通じて、組織力の向上と持続的な成長を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.2歳 | 13.7年 | 6,764,288円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.3% |
| 男性育児休業取得率 | 95.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 72.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 75.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用比率(45.1%)、年次有給休暇取得率(78.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境の変化
国内人口の減少や世帯構造の変化、生活習慣・嗜好の多様化が進む中、パンデミックや自然災害、国際紛争等の地政学リスク、経済的緊張などにより市場環境が大きく変化し、消費行動が急激に変わった場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の調達
世界的な気候変動や需給バランスの変化、不作、調達国の政情不安や紛争、為替変動などにより、原材料の大幅な価格上昇や調達量不足が生じるリスクがあります。産地の分散化等で安定調達に努めていますが、想定を超える事態が発生した場合は影響を受ける可能性があります。
■(3) 食の安全性の問題
FSSC22000を取り入れた品質管理やトレーサビリティの充実、フードディフェンス等に取り組んでいますが、これら取り組みの範囲を超えた食の安全性や品質に関わる社会的な問題が発生した場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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