※本記事は、ヱスビー食品の有価証券報告書(第113期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026-06-22 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヱスビー食品ってどんな会社?
ヱスビー食品は、各種香辛料やカレー、チューブ製品などの製造・販売を国内外で展開する食品メーカーです。
■(1) 会社概要
1923年にカレーの調合に成功して自家営業に着手したことが始まりで、1940年に日賀志屋として設立されました。1949年にヱスビー食品へ商号変更し、1961年には東京証券取引所に上場しました。その後は海外にも事業を広げ、米国やシンガポール、カナダなどに子会社を設立してグローバルに展開しています。
現在の従業員数は連結で2,082名、単体で1,538名です。筆頭株主は創業者一族の資産管理会社とみられる山崎兄弟会であり、第2位および第3位には金融機関である三菱UFJ銀行と農林中央金庫が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山崎兄弟会 | 9.93% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.48% |
| 農林中央金庫 | 4.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は池村和也氏が務めています。社外取締役の比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 池村和也 | 代表取締役社長 | 1986年4月同社入社。執行役員、常務取締役首席執行役員等を経て、2022年6月より現職。 |
| 田口裕司 | 専務取締役営業グループ管掌兼ハーブ事業部担当兼マーケティング企画室担当 | 1985年4月同社入社。執行役員等を経て、2025年6月専務取締役に就任。2026年4月より現職。 |
| 小島和彦 | 常務取締役開発生産グループ担当兼品質保証室担当 | 1985年4月同社入社。執行役員等を経て、2022年6月常務取締役に就任。品質保証室担当として現職。 |
| 加治正人 | 取締役管理サポートグループ担当 | 1993年4月同社入社。人事総務室長、執行役員管理サポートグループ担当を経て、2023年6月より現職。 |
| 横井実 | 取締役上席執行役員経営企画室担当兼業務改革推進室担当兼管理サポートグループ担当兼情報統括担当役員 | 1995年4月同社入社。経営企画室長、執行役員等を経て、2024年6月現職に就任。2026年4月より管理サポートグループ担当。 |
| 山﨑崇弘 | 取締役執行役員海外事業管掌兼管理サポートグループ財経管理室担当兼法務・ガバナンス室担当 | 1999年4月同社入社。財経管理室長、執行役員を経て、2024年6月現職に就任。2026年4月より海外事業管掌等。 |
社外取締役は、大嶽佐由美(元EMCジャパンコーポレートコミュニケーションマネージャー)、瀧野敏子(医療法人ラ・クォール会理事長)、葛山康典(早稲田大学社会科学総合学術院教授)、松家元(松家法律事務所所長)、鵜高利行(鵜高公認会計士事務所設立)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内事業」および「海外事業」を展開しています。
■(1) 国内事業
各種香辛料、即席カレー、チューブ製品、レトルトカレー等の製造・販売のほか、関連する原材料の調達を行っています。お客様の健康と幸せに貢献する製品づくりを進めています。
製品の販売収益を主な収益源としています。製品の製造および販売は主に同社が行い、製造の一部はエスビーガーリック食品、ヱスビースパイス工業、ヱスビーサンキョーフーズ、大伸が担当しています。また、原材料の調達はヱスビー興産や峯栄興業が行っています。
■(2) 海外事業
各種香辛料、即席カレー、チューブ製品、レトルトカレー等の販売を海外市場に向けて行っています。世界中の食卓で選ばれ、使われる存在となることを目指しています。
海外における製品の販売収益が主な収益源です。同社が直接販売を行うほか、同社から供給された製品をS&B INTERNATIONAL CORPORATION、S&B FOODS SINGAPORE PTE.LTD.、S&B SPICE CANADA INC.が各地域で販売しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績をみると、売上高は安定した推移を示しており、一時的な落ち込みはあったものの全体として増加傾向にあります。経常利益および当期利益についても、一時的な減益を経て直近では回復し、利益率も改善傾向にあります。継続的な事業活動の成果が着実に業績へと結びついています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1180億円 | 1207億円 | 1264億円 | 1235億円 | 1290億円 |
| 経常利益 | 87億円 | 55億円 | 81億円 | 97億円 | 107億円 |
| 利益率(%) | 7.4% | 4.5% | 6.4% | 7.8% | 8.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 57億円 | 32億円 | 67億円 | 64億円 | 69億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に伸びており、売上総利益率は上昇傾向にあります。また、営業利益も増加し、営業利益率も改善していることから、効率的なコストコントロールと本業の収益力強化が図られていることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1235億円 | 1290億円 |
| 売上総利益 | 338億円 | 361億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.4% | 28.0% |
| 営業利益 | 94億円 | 103億円 |
| 営業利益率(%) | 7.6% | 8.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が49億円(構成比19%)、荷造運搬費が35億円(同14%)、広告宣伝費が34億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高をみると、国内事業および海外事業ともに前期と比較して増収となっています。特に海外事業は伸びが目立っており、海外市場への製品供給と販売活動の強化が売上の増加に寄与していることがわかります。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内事業 | 1112億円 | 1154億円 |
| 海外事業 | 124億円 | 136億円 |
| 連結(合計) | 1235億円 | 1290億円 |
直近のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で稼いだ資金を元に、借入も活用しながら積極的な投資を行っている「積極型」の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 85億円 | 93億円 |
| 投資CF | -23億円 | -53億円 |
| 財務CF | -88億円 | 16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も60.2%で市場平均を上回っています。総じて収益力と財務健全性の両面で安定した水準を維持しています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「創業理念」として「美味求真」(お客様に喜んでいただくために、ただひたすら真っすぐに“本物のおいしさ”を追い求めます)を掲げています。また、「企業理念」として「食卓に、自然としあわせを。」を掲げ、常に研究を怠らず高い品質を創出し、お客様の視点で満足される製品を追求するとともに、自然に感謝し豊かな社会づくりに貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、100年の節目にコーポレートメッセージ「そこに、スパイス&ハーブ」を制定しました。「S&B」の由来である太陽(SUN)と鳥(BIRD)のように、日が昇る勢いと大空を駆け巡る自由さをもって、自社製品が津々浦々まで行き渡るという願いを受け継いでいます。従業員一人ひとりが同じ方向に向かって活動し、組織力を高めながら持続的に成長する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、経営戦略2033の実行計画として第4次中期経営計画を策定しています。ビジョンの実現に向けた長期目標として、2043年までに売上高2,000億円超、海外売上高比率40%超を目指しています。また、2029年3月期の目標値として以下の数値を設定し、資本効率を意識した経営を進めています。
・売上高:1,420億円
・営業利益:120億円
・売上高営業利益率:8.5%
・海外売上高比率:14.8%
・ROE:8.0%超
■(4) 成長戦略と重点施策
経営戦略2033のテーマに「スパイス&ハーブの価値で食の世界を変える」を掲げ、成長の源泉を磨き、事業を伸ばし、価値を広げる「3つのGrowth」を推進しています。第4次中期経営計画では「価値を創造し続けるための体制構築」をテーマに、「強みを伸ばす」「成長を支える」「効率を高める」「基盤を固める」の4つの重点戦略のもと、事業の質を高めて持続的な成長体制への転換を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、社員を会社にとっての「財産」と考え、「個性のミックススパイス」である社員が多様な強みを発揮し、生き生きとやりがいをもって働ける環境を重視しています。「S&B人事ポリシー」に基づき、次世代を担う中核人財の育成やデジタル人材・グローバル人材の育成、さらにスパイス&ハーブに関する基本教育など、積極的な人財投資とキャリア自律の促進を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.4歳 | 13.8年 | 6,972,819円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.3% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 75.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 73.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 79.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用比率(42.9%)、年次有給休暇取得率(83.2%)、社員意識調査回答率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 取引先の経営状態による影響
同社グループは、債権保全のため情報収集や与信管理を徹底し、債権の回収不能という事態の未然防止に注力しています。しかし、予期せぬ取引先の経営状態の悪化が生じ、貸倒れなどが発生した場合には、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の調達リスク
原材料については産地を分散化し安定的な調達に努めていますが、世界的な気候変動や需給バランスの変化、不作、調達国における政治的混乱や長期間に及ぶ大きな為替変動などにより、大幅な価格上昇や調達量不足が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 食の安全性や品質に係る問題
製品の安全・安心を最重要課題とし、FSSC22000を取り入れた品質管理体制の整備やトレーサビリティの充実、フードディフェンスに取り組んでいます。しかし、これらの取組みの範囲を超えた社会的な食の安全・品質に関する問題が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外事業展開に伴うリスク
世界各地域に向けて事業を展開しており、各地域の特性や法規制、市場ニーズを考慮して活動しています。しかし、進出各国の法律の変更や政治的混乱、関税の変動、国際紛争などの予期せぬ事象が発生した場合には、事業活動が制限され業績に影響を及ぼす可能性があります。



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