石井食品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

石井食品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

石井食品は東証スタンダード市場に上場し、「イシイのミートボール」等の調理済食品を製造販売する食品メーカーです。主力製品である食肉加工品や地域商品が堅調に推移し、売上高は109億円と前期比で増収を達成しました。一方、原材料価格の高騰や人件費等のコスト増加により、利益面では減益となっています。


※本記事は、石井食品株式会社 の有価証券報告書(第84期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 石井食品ってどんな会社?


石井食品は、「イシイのおべんとクン ミートボール」等の無添加調理商品で知られる、千葉県船橋市に本社を置く食品メーカーです。

(1) 会社概要


1945年、創業者石井毅一氏により前身となる石井電気工業が発足し、翌年には佃煮の製造を開始しました。1962年に東証二部(現スタンダード)へ上場を果たし、1970年には業界初の調理済チキンハンバーグ、1974年にはミートボールを発売し大きく成長しました。1997年からは「無添加調理」への取り組みを開始し、2000年には品質保証番号システムを導入するなど、食の安全・安心を追求し続けています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は403名(単体394名)です。筆頭株主は有限会社ケイアンドアイであり、第2位には現社長の石井智康氏、第3位には千葉銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
㈲ケイアンドアイ 12.79%
石井 智康 5.49%
㈱千葉銀行 4.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性4名の計9名で構成され、女性役員比率は44.4%です。代表取締役社長執行役員は石井智康氏が務めています。なお、社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
石井 智康 代表取締役社長執行役員 アクセンチュア、株式会社セレッテ等を経て、2017年に同社入社。取締役執行役員などを経て、2018年6月より現職。
久保 啓介 取締役執行役員 1980年に株式会社イシイフード(現唐津工場)入社。営業部販売第一部東京西営業所所長、八千代工場長などを経て、2025年4月より現職。
伊藤 幸一郎 取締役執行役員 2001年に同社入社。営業部販売2部静岡営業所所長、執行役員顧客サービス部総括マネージャーなどを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、知識賢治(株式会社ティーガイア副社長執行役員CSO)、中村朱美(株式会社minitts代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 食品事業(主力製品)


「イシイのおべんとクン ミートボール」や「チキンハンバーグ」に代表される食肉加工品を中心に、一般消費者向けの調理済食品を提供しています。厳選された素材と無添加調理技術を強みとし、子育て世代のお弁当需要や家庭の食卓を支えています。

収益は、主にスーパーマーケット等の量販店や百貨店、生協などの小売業者への製品販売による対価を得ています。運営は主に石井食品が行っており、千葉県(八千代)、京都府(京丹波)、佐賀県(唐津)の3工場体制で生産を行っています。

(2) 食品事業(その他・販売)


食肉加工品以外にも、ごぼうサラダなどの惣菜、おせち料理などの正月料理、地域食材を活かした地域商品、非常食、食物アレルギー配慮食などを展開しています。また、消費者への直接販売(D2C)やオフィス向けサービスも行っています。

収益は、小売業者への販売に加え、通信販売サイト「ダイレクトイシイ」を通じた消費者からの直接購入代金等から構成されています。運営は石井食品および子会社の株式会社ダイレクトイシイが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は83億円から109億円へと着実に成長を続けています。利益面では、2021年3月期には赤字でしたが、翌期以降は黒字化し、売上拡大に伴い利益額も増加傾向にありました。しかし、直近の2025年3月期においては、売上高は過去最高を更新したものの、コスト増等の影響により営業利益および経常利益は減少に転じており、利益率も低下しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 83億円 88億円 95億円 105億円 109億円
経常利益 -1.6億円 1.0億円 2.6億円 4.6億円 3.1億円
利益率(%) -2.0% 1.1% 2.7% 4.4% 2.9%
当期利益(親会社所有者帰属) -8.0億円 0.0億円 3.1億円 4.7億円 2.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の105億円から109億円へ増加し、売上総利益も35億円から36億円へと微増しました。一方で、販売費及び一般管理費の増加により営業利益は4億円から3億円へと減少し、営業利益率は3.9%から2.5%へ低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 105億円 109億円
売上総利益 35億円 36億円
売上総利益率(%) 33.8% 33.4%
営業利益 4億円 3億円
営業利益率(%) 3.9% 2.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が8億円(構成比23%)、運搬費が7億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は食品事業の単一セグメントですが、製品別の売上状況を見ると、主力の食肉加工品はタイアップ企画や販促活動が奏功し増収となりました。地域商品や非常食も伸長しています。一方で、惣菜は生産拠点集約や原材料調達難の影響で減収となり、正月料理も価格上昇の影響で売上を落としています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
食肉加工品 90億円 94億円
惣菜 6億円 5億円
地域商品 3億円 4億円
正月料理 3億円 3億円
非常食 2億円 2億円
配慮食 0.4億円 0.5億円
その他 0.5億円 0.5億円
連結(合計) 105億円 109億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

石井食品は、売上高が増加したものの、営業活動による資金は減少しました。これは、税金等調整前当期純利益の計上や、仕入債務の減少、棚卸資産の増加などが主な要因です。投資活動では、有形固定資産や無形固定資産の取得による支出が資金の減少につながりました。財務活動では、リース債務の返済や自己株式の取得、配当金の支払いにより資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 12.5億円 1.2億円
投資CF -6.1億円 -6.7億円
財務CF -1.2億円 -1.0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「真(ほんとう)においしいものをつくる~身体にも心にも未来にも~」を企業理念として掲げています。この理念のもと、消費者と生産者をつなげる活動を通じ、「日本一、生産者と地域に貢献する食品会社になる」ことを目標として活動しています。

(2) 企業文化


同社は、「無添加調理」の技術、「厳選素材」、そして原材料の履歴情報を開示する「品質保証番号」の3つの原則を基本として活動しています。素材本来の味を活かす技術と、社員自らが確認した安全な素材、透明性の高い情報開示を重視する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2022年度-2026年度)において、長期ビジョンであるISHII VISION2030「農と食卓をつなぎ、子育てを応援する企業に」を掲げています。収益力の改善と株主を含む全てのステークホルダーの満足度向上を目指し、ROE等の経営指標を勘案しながら利益体質の強化を図る方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、地域の生産者や行政と連携した「地域と旬」モデルの深化や、子育て世代の課題解決につながる商品開発に注力しています。また、不採算商品の見直しや生産設備の機械化・自動化による生産性向上、IT技術の活用による生産体制の抜本的見直しを推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


少子高齢化に対応するため、デジタルツールを活用した生産性向上や、創造性を発揮できる職場環境の整備を進めています。また、正社員やパートを含む従業員の働き方の多様化・柔軟化を促進する制度創設や、給与の底上げ等の積極的な投資を行い、人財の確保と雇用の維持を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.1歳 15.4年 5,471,133円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 30.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.8%
男女賃金差異(正規雇用) 84.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 71.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 疫病などによる従業員の疾病リスク


工場勤務の従業員が感染症等に感染し、工場内で感染が拡大した場合、生産休止に伴う販売機会損失等が発生する可能性があります。同社では、従業員等の健康安全を第一に考え、出勤停止やリモートワークの推奨などの対応を行っていますが、予期せぬ事態が業績に影響を与える可能性があります。

(2) 製品の品質評価および食品の安全性


食の安全を第一にFSSC22000等の認証取得や厳格な仕入基準を設けていますが、予期せぬ製品トラブルや、鳥インフルエンザ・残留農薬等の問題が発生した場合、製品回収や社会的信用の失墜により、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料の調達および価格変動


主要原材料を外部から調達しており、天候不順や災害、感染症等により供給が滞った場合、生産遅延等が発生するリスクがあります。また、原材料価格の高騰や為替変動によるコスト増が、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。