※本記事は、石井食品株式会社の有価証券報告書(第85期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 石井食品ってどんな会社?
同社は無添加調理の技術を活かし、ハンバーグやミートボールなどの調理済食品を製造・販売しています。
■(1) 会社概要
1945年に石井電気工業として発足し、1949年に現商号に変更しました。1962年に東京証券取引所第二部に上場し、1970年に業界初の調理済チキンハンバーグを発売して急速に業績を伸ばしました。2013年にチルドミートボール等でFSSC22000を認証取得し、無添加調理と品質保証番号による情報開示を推進しています。
現在の従業員数は連結で405名、単体で395名です。筆頭株主は有限会社ケイアンドアイで、第2位は代表取締役社長執行役員の石井智康氏、第3位は千葉銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ケイアンドアイ | 12.79% |
| 石井智康 | 6.34% |
| 千葉銀行 | 4.98% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性4名の計9名で構成され、女性役員比率は44.4%です。代表取締役社長執行役員は石井智康氏が務めており、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石井智康 | 代表取締役社長執行役員 | 2006年アクセンチュア入社。アンダーワークスを経て2017年同社入社。同年取締役就任、2018年より現職。 |
| 久保啓介 | 取締役執行役員 | 1980年イシイフード(現石井食品唐津工場)入社。八千代工場長等を経て2025年より現職。 |
| 伊藤幸一郎 | 取締役執行役員 | 2001年同社入社。顧客サービス部総括マネージャー等を経て2025年より現職。 |
社外取締役は、知識賢治(ティーガイア代表取締役社長執行役員)、中村朱美(minitts代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食品事業」の単一セグメントを展開しています。
■(1) 製造部門
無添加調理や厳選素材を用いたハンバーグ、ミートボールなどの食肉加工品をはじめ、惣菜や地域商品、正月料理などの製造を行っており、全国の小売業者や消費者を主要顧客としています。
収益源は、自社工場で製造した調理済食品の販売代金です。運営は石井食品が担っており、八千代工場、京丹波工場、唐津工場の3工場体制で安全かつ高品質な製品を生産しています。
■(2) 販売部門
製造部門で生産された製品を、スーパーマーケットなどの量販店、百貨店、生協、飲食店、ならびに一般消費者向けに提供しています。
収益源は製品の販売による代金であり、卸売および小売販売を通じて収益を得ています。運営は主に石井食品の顧客サービス部が行っているほか、子会社のダイレクトイシイが通信販売事業を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は着実な成長を続け拡大傾向にありますが、経常利益は2024年3月期をピークに減益に転じています。当期においては原材料高騰や見積り変更の影響を受け、利益水準が低下し、最終赤字となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 88億円 | 95億円 | 105億円 | 109億円 | 110億円 |
| 経常利益 | 1.0億円 | 2.6億円 | 4.6億円 | 3.1億円 | 0.0億円 |
| 利益率(%) | 1.1% | 2.7% | 4.4% | 2.9% | 0.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.2億円 | 3.1億円 | 4.7億円 | 2.9億円 | -1.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が微増となったものの、売上総利益および営業利益は前年同期を下回る結果となりました。利益率の低下が課題となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 109億円 | 110億円 |
| 売上総利益 | 36億円 | 36億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.4% | 32.4% |
| 営業利益 | 2.7億円 | 0.1億円 |
| 営業利益率(%) | 2.5% | 0.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が8億円(構成比22%)、運搬費が7億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は食品事業の単一セグメントであるため、事業全体としての売上推移を示しています。当期は食肉加工品が堅調に推移し、増収を確保しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 食品事業 | 109億円 | 110億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.2億円 | 6.8億円 |
| 投資CF | -6.7億円 | -3.5億円 |
| 財務CF | -1.0億円 | -0.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「真(ほんとう)においしいものをつくる~身体にも心にも未来にも~」を企業理念に掲げています。また、「日本一、生産者と地域に貢献する食品会社になる」ことを目標とし、素材本来の味を活かす無添加調理、厳選素材の活用、品質保証番号による情報開示の3原則を基盤として事業活動を行っています。
■(2) 企業文化
同社は、環境や社会貢献、労働環境などのサステナビリティを巡る課題への対応を、企業理念の実現および経営戦略の実行と同一と捉える文化を持っています。性別や年齢、採用区分に関わらず多様な人材がそれぞれの能力を発揮できる環境整備を重視し、組織の創造性を高めることで食における新たな価値創出を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中期経営計画(2022年度〜2026年度)において、ISHII VISION2030「農と食卓をつなぎ、子育てを応援する企業に」を掲げています。収益力の改善を行い、利益体質の強化や純資産の効率的活用を図り、ROEの考え方など様々な経営指標を勘案しながら企業価値の向上に努めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後は、日本の各地域の生産者や行政と連携し、単なる食材調達ではなく商品開発から共創する「地域と旬」モデルの取組みを経営の中心に据えています。消費者の多様なライフスタイルや課題解決に寄り添う常温商品などの新たな価値創造を推進し、同時に生産設備の機械化や自動化、環境負荷軽減への投資を進めて生産性向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業環境の変化に対応し継続的に企業価値を高めるため、多様な人材が現場起点で改善・挑戦を重ねる組織づくりを推進しています。デジタルツールを活用した生産性向上、創造性を発揮できる職場環境の整備、働き方の柔軟化、育児等との両立支援に加え、給与や可処分所得の底上げを人的資本投資と位置づけて継続的に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.9歳 | 15.2年 | 5,520,864円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 30.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 67.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 85.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 69.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品の安全性に関するリスク
食に対する安全性を第一に考えFSSC22000を運用していますが、鳥インフルエンザや放射性物質、残留農薬などの外部要因による問題が発生した場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の供給体制・価格変動
主要原材料は外部企業から供給を受けており、天候不順や地政学リスク、災害等で供給が遅延した場合や、原材料価格が高騰した場合、生産遅延やコスト増加が生じ、財政状態に影響を与えるおそれがあります。
■(3) 疫病などによる従業員の疾病リスク
感染症対策として出勤停止やリモートワークを推奨していますが、工場で勤務する従業員に感染が拡大し、生産休止に伴う販売機会の損失が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) システムリスク
受注や出荷などの業務全般をコンピューターシステムで処理しているため、ウイルスの侵入や突発的な事故でシステム障害が発生した場合、販売機会の損失や復旧費用が発生し、業績に影響を与える可能性があります。



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