丸大食品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

丸大食品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

丸大食品は、東京証券取引所プライム市場に上場する総合食品メーカーです。ハム・ソーセージなどの加工食品事業と、食肉の加工・販売を行う食肉事業を主力としています。直近の業績では、価格改定や販売促進の効果もあり、売上高・営業利益ともに前年を上回る増収増益のトレンドを維持しています。


※本記事は、丸大食品株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 丸大食品ってどんな会社?


ハム・ソーセージや惣菜などの加工食品と、食肉の販売を両輪とする老舗の総合食品メーカーです。

(1) 会社概要


1954年に創業し、魚肉ハム・ソーセージの製造販売を開始しました。1958年に会社設立後、1961年より畜肉ハム・ソーセージにも参入し業容を拡大しました。2009年には子会社の合併により丸大ミート、丸大フードを設立して販売体制を強化し、2020年にはトーラクを買収するなど、加工食品分野の拡充を進めています。

従業員数は連結で1,928名、単体で668名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は丸大共栄会、第3位は仕入取引等を行う事業会社の兼松です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.25%
丸大共栄会 8.08%
兼松 4.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は佐藤勇二氏が務めています。取締役9名中2名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤勇二 代表取締役社長 1983年入社。安曇野食品工房代表取締役社長、同社常務執行役員などを経て、2021年より現職。
福島成樹 専務取締役食肉事業部長品質保証部担当 1987年入社。同社常務取締役、丸大ミート代表取締役社長などを経て、2025年より現職。
森本芳史 取締役経理部長 1991年住友銀行入行。2023年同社執行役員経理部長、上席執行役員経理部長を経て、2025年より現職。
池田知功 取締役ハムソー事業部長 1995年入社。同社食肉事業本部長、経営戦略室長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、淵﨑正弘(元日本総合研究所代表取締役社長)、中野由里(スプラウト税理士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「加工食品事業」および「食肉事業」の2つの報告セグメントと「その他」事業を展開しています。

加工食品事業


ハム・ソーセージやハンバーグなどの調理加工食品、デザート・飲料等の製造および販売を行っています。スーパーなどの量販店やコンビニエンスストア、外食産業が主な顧客です。

自社商品の販売代金が主な収益源です。事業の運営は、丸大食品のほか、戸田フーズ、安曇野食品工房、トーラク、マルシンフーズなどのグループ会社が担当しています。

食肉事業


牛肉、豚肉、鶏肉といった食肉の加工および販売を行っています。全国の販売網を活かし、量販店から外食産業、給食など幅広い顧客に向けて展開しています。

食肉の販売代金が主な収益源です。事業の運営は、丸大食品のほか、丸大ミート、丸大フード、ミートサプライなどが担当しています。

その他


加工食品や食肉事業に関連する付随業務として、保険代行事業などの各種サービス業務を展開しています。

サービスの提供に対する手数料が主な収益源です。事業の運営は、主に丸大サービスが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は安定して成長を続けています。経常利益と当期利益については、原材料価格の高騰等の影響で一時的に赤字を計上したものの、価格改定やコスト削減策の効果が表れ、近年は順調に黒字転換と利益率の改善を果たしています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2186億円 2220億円 2288億円 2350億円 2384億円
経常利益 -4億円 -9億円 36億円 61億円 79億円
利益率(%) -0.2% -0.4% 1.6% 2.6% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 -41億円 -122億円 42億円 81億円

(2) 損益計算書


売上高の微増に対し、売上総利益と営業利益が大きく伸びており、収益性が改善していることが読み取れます。価格転嫁の進展や高付加価値商品の販売拡大が利益率向上に寄与しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2350億円 2384億円
売上総利益 371億円 396億円
売上総利益率(%) 15.8% 16.6%
営業利益 55億円 75億円
営業利益率(%) 2.3% 3.1%


販売費及び一般管理費のうち、配送費が126億円(構成比39%)、給与手当が57億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


加工食品事業は、ハム・ソーセージの販売促進やデザート・飲料分野の伸びにより増収となりました。食肉事業も、相場高に対応した適正価格での販売や国産ブランド肉の強化などにより、前年を上回る売上高を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
加工食品事業 1577億円 1605億円
食肉事業 772億円 778億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 2350億円 2384億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、本業の利益や資産の売却で得た資金を使って借入金の返済を進める改善型の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 54億円 105億円
投資CF -29億円 4億円
財務CF -32億円 -101億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.8%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.1%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「日々の活動に精一杯の真心を込め、誠意を尽くすことにより、社会に貢献します」という経営理念を掲げています。また、「美味しさと健康を追求し、安全、安心な食品を通してお客様の幸せな食生活に貢献します」という方針のもと、事業を展開しています。

(2) 企業文化


「至誠通天(誠意はいつか必ず天に通じる)」を社是とし、「お客様に喜ばれる美味しさを創ります」「夢と働きがいのある企業を創ります」「時代の変化に対応し、新しい価値を創ります」という3つの価値観を重視しています。安全・安心な商品づくりと、従業員が自己成長できる職場環境づくりに取り組む文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2029年3月期に向けた「中期三ヵ年経営計画」において、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:2,550億円
* 営業利益:90億円
* 営業利益率:3.5%
* ROE:7.6%

(4) 成長戦略と重点施策


「新たな顧客価値の創造」「収益構造の改革」「事業領域の拡大」「人財の育成」「持続可能な社会への貢献」の5つを基本方針としています。顧客視点での簡便・時短商品の開発やDXによる生産性向上、事業展開エリアの拡大、海外市場の開拓などを進める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


階層別研修や次世代幹部候補の選抜研修等を通じた「人財育成」に注力しています。また、多様な働き方を推進するため、複線型キャリアを想定した専門職制度の設計やダイバーシティ・女性活躍推進に取り組んでおり、従業員が能力を発揮できる健康的な職場環境の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.6歳 17.5年 5,943,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.1%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 53.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 92.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、食品廃棄物再生利用実施率(92.8%)、エンゲージメントスコア(62.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品の安全・安心に関するリスク


社会全般にわたる品質問題など予測が困難な事故や、品質クレーム等による社会的信頼の低下リスクがあります。同社は食品安全マネジメントシステムの外部認証取得の拡大や、品質保証部門による徹底した品質管理体制を構築することで、安全性の確保と信頼の維持に努めています。

(2) 原材料調達と市況変動に関するリスク


畜産物の疫病発生やセーフガード発動、原油価格変動等による仕入価格の上昇懸念があります。調達ルートの分散化で安定的な原材料確保に努めるとともに、人権や環境に配慮した持続可能な原材料調達を推進し、サプライチェーンのリスク耐性を高めています。

(3) 生活者のライフスタイルの変化に関するリスク


価値観の多様化や世帯構成の変化への対応が遅れた場合、成長機会を損失するリスクがあります。多様化するニーズや少子高齢化を見据え、健康に配慮した商品の提供やプラズマローゲン等の研究開発により、新たな顧客価値の創造と市場の開拓を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。