ハウス食品グループ本社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハウス食品グループ本社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、食料品の製造販売を主軸に、香辛・調味加工食品、健康食品、外食事業などを展開しています。2025年3月期の連結業績は、価格改定効果や業務用事業の拡大等により、売上高、営業利益、経常利益がいずれも増加し、増収増益となりました。


ハウス食品グループ本社転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、ハウス食品グループ本社株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ハウス食品グループ本社ってどんな会社?


カレーやスパイスでおなじみの食品メーカー大手です。「食で健康」をテーマに、加工食品や外食など多角的に事業を展開しています。

(1) 会社概要


1947年に株式会社浦上糧食工業所として設立され、1963年に主力製品となる「バーモントカレー」を発売しました。1973年には東京証券取引所市場第1部に指定されています。2013年に持株会社体制に移行し、現社名に変更しました。2015年には「カレーハウス CoCo壱番屋」を展開する株式会社壱番屋を連結子会社化するなど、グループの拡大を進めています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は6,666人、単体では480人です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位はハウス興産株式会社です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 9.00%
ハウス興産株式会社 8.94%
株式会社HKL 8.36%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名、計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は浦上博史氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
浦上  博史 代表取締役社長経営戦略部担当 住友銀行(現三井住友銀行)を経て1997年に入社。2004年に代表取締役副社長に就任し、2009年4月より現職。
大澤  善行 代表取締役専務管理本部長兼秘書部担当 1982年入社。人事部長、人材開発部長等を歴任し、2021年に常務取締役、2023年に専務取締役を経て、2024年4月より現職。
川崎 浩太郎 専務取締役 1994年入社。コーポレートコミュニケーション本部長等を歴任し、2023年に常務取締役およびハウス食品株式会社代表取締役社長に就任。2025年4月より現職。
宮奥  美行 取締役国際事業本部長 1983年入社。研究開発本部長等を歴任し、2018年に取締役に就任。2024年4月より現職。
山口  竜巳 取締役研究開発本部長兼品質保証統括部・新規事業開発部・アグリビジネス推進部担当 1988年入社。ハウスフーズホールディングUSA社社長、国際事業本部長等を歴任し、2020年に取締役に就任。2024年4月より現職。
佐久間 淳 取締役コーポレートコミュニケーション本部長兼デジタル戦略本部・国内関係会社事業推進部担当 1989年入社。コーポレートコミュニケーション本部長等を歴任し、2023年に取締役に就任。2024年4月より現職。
岡本 雄一 取締役スパイスバリューチェーン調達・生産戦略本部長 1990年入社。2024年4月に経営役スパイスバリューチェーン調達・生産戦略本部長に就任し、同年6月より現職。
久保田 恒夫 監査等委員である取締役(常勤) 1984年入社。知的財産部長、監査部長、法務部長等を歴任し、2023年6月より現職。


社外取締役は、蒲野宏之(弁護士)、岡島敦子(元内閣府男女共同参画局長)、関根福一(住友大阪セメント会長)、川嵜靖之(元三井住友銀行副会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「香辛・調味加工食品事業」、「健康食品事業」、「海外食品事業」、「外食事業」、「その他食品関連事業」の5つの報告セグメント事業を展開しています。

香辛・調味加工食品事業


ルウカレー、レトルトカレー、ねりスパイス、スナック製品などの製造販売を行っています。家庭用製品に加え、外食産業向けの業務用スパイスや調味料なども取り扱っており、国内市場における中核事業となっています。

主な収益源は、製品の販売対価です。運営は主にハウス食品株式会社、ハウスギャバン株式会社、マロニー株式会社、サンハウス食品株式会社などが担当しています。

健康食品事業


「ウコンの力」シリーズや「C1000」シリーズ、「1日分のビタミン」シリーズなど、スパイスやビタミンの知見を活かした機能性食品・飲料の製造販売を行っています。

主な収益源は、製品の販売対価です。運営は主にハウスウェルネスフーズ株式会社が担当しています。

海外食品事業


米国、中国、アセアン地域を中心に事業を展開しています。米国では豆腐や植物由来代替肉(PBF)製品、中国ではカレー製品、タイなどのアセアン地域では機能性飲料やカレー製品などの製造販売を行っています。

主な収益源は、各地域における製品の販売対価です。運営はハウスフーズホールディングUSA社、ハウスフーズアメリカ社、ハウス食品(中国)投資社、ハウス食品グループアジアパシフィック社などが担当しています。

外食事業


「カレーハウス CoCo壱番屋」などのレストランチェーンを国内外で展開しています。カレー専門店としてのブランド力を活かし、多様なメニューやトッピングを提供しています。

収益源は、直営店におけるお客様からの飲食代金、フランチャイズ加盟店に対する食材等の卸売やロイヤリティ収入などです。運営は主に株式会社壱番屋が担当しています。

その他食品関連事業


グループ外を含む食品メーカー等への農産物や食品素材の輸入販売、コンビニエンスストア向けの惣菜等の製造販売、グループ製品の物流・倉庫業務などを行っています。

収益源は、商品の販売対価や運送・保管料などです。運営は株式会社ヴォークス・トレーディング、株式会社デリカシェフ、ハウス物流サービス株式会社などが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益は2023年3月期に一時減少したものの、その後は回復基調にあり、2025年3月期は増収増益(経常利益ベース)を達成しました。一方、当期純利益は特別利益の反動減や減損損失の影響により変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,501億円 2,534億円 2,751億円 2,996億円 3,154億円
経常利益 198億円 211億円 183億円 211億円 214億円
利益率(%) 7.9% 8.3% 6.7% 7.0% 6.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 106億円 131億円 68億円 176億円 125億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の伸長に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移していますが、営業利益率はわずかに低下しました。原材料価格の上昇などを増収効果と価格改定で吸収し、利益額を確保している構図です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,996億円 3,154億円
売上総利益 1,090億円 1,159億円
売上総利益率(%) 36.4% 36.7%
営業利益 195億円 200億円
営業利益率(%) 6.5% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が285億円(構成比30%)、運送費及び保管費が134億円(同14%)、広告宣伝費が83億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


2025年3月期は、主力の香辛・調味加工食品事業が価格改定の浸透や業務用事業の拡大により大幅な増益となり、全体の業績を牽引しました。外食事業も増収増益です。一方、その他食品関連事業はコスト増の影響等で減益となり、健康食品事業や海外食品事業は利益面で横ばいまたは微減となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
香辛・調味加工食品事業 1,263億円 1,314億円 108億円 128億円 9.8%
健康食品事業 169億円 170億円 25億円 24億円 14.3%
海外食品事業 564億円 624億円 31億円 30億円 4.9%
外食事業 551億円 610億円 34億円 36億円 5.9%
その他食品関連事業 550億円 544億円 19億円 12億円 2.3%
調整額 -101億円 -108億円 -22億円 -31億円 -
連結(合計) 2,996億円 3,154億円 195億円 200億円 6.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金で投資を行い、財務活動においても自己株式取得や配当支払などの支出が上回っていることから、基本的には「健全型」のキャッシュ・フローと言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 256億円 266億円
投資CF -23億円 -123億円
財務CF -74億円 -91億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.3%でプライム市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.3%でプライム市場平均(製造業平均46.8%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。」をグループ理念として掲げています。この理念に基づき、一企業市民として果たすべき「お客様に対して」「社員とその家族に対して」「社会に対して」という「3つの責任」を企業活動の柱と位置づけています。

(2) 企業文化


同社は「誠意・創意・熱意を持とう。」という社是と「ハウス十論」から成る「ハウスの意(こころ)」を大切にしています。また、多様な人材が個性を発揮し協働・共創することが求められる中、「ダイバーシティを力に変える」を取組テーマに据え、多様性を受け入れチャレンジを後押しする組織風土づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


2024年4月からスタートした第八次中期計画では、2027年3月期までの3カ年で成長の礎を築くことを目指しています。資本コストや株価を意識した経営を推進し、以下の数値目標を掲げています。

* ROIC:6.0%以上
* 事業ROIC:6.7%
* ROS:7.5%
* EBITDAマージン:11.4%
* ROA:6.2%
* ROE:7.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「食で健康」クオリティ企業への変革の第二章として、グローバルなバリューチェーン(VC)構築による成長を目指しています。「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」「付加価値野菜系」の4つのVCを価値提供領域と定めています。

特にスパイス系VCでは、グループ各社の共創によるVC統合とグローバル市場での顧客接点拡大を進めています。機能性素材系VCではビタミン・乳酸菌等の海外展開を加速し、大豆系VCでは収益構造改革とPBF市場でのプレゼンス拡大に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「ダイバーシティを力に変える」をテーマに、多様性をグループの成長に変換する人材戦略を推進しています。「役割等級・役割給」を軸とした新人事制度の導入により人材流動性を高めるとともに、女性活躍支援や障がい者雇用の促進など、多様な人材が活躍できる環境整備に取り組んでいます。また、自律的なキャリア開発を支援し、グローバルなVC構築に向けた人材ポートフォリオの構築を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 14.9年 8,280,916円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.9%
男性育児休業取得率 91.7%
男女賃金差異(全) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※労働者の男女の賃金の差異については、女性活躍推進法の規定による公表義務の対象ではないため、有報には記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、主体的なチャレンジ行動(25.3%)、組織風土診断結果における多様性受容風土の肯定回答割合(66.0%)、チャレンジ促進風土の肯定回答割合(62.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内市場動向に関するリスク


国内売上が全体の約7割以上を占めているため、人口減少や高齢化による国内需要の低下が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、消費者のライフスタイルの変化や原材料価格の高騰に伴う物価上昇に対し、迅速な対応ができなければ、提供価値が毀損するリスクがあります。これに対し、グローバル展開の加速やバリューチェーン統合による競争力強化を進めています。

(2) 事業拡大に関するリスク


M&Aやコーポレートベンチャーキャピタルを通じた事業拡大を進めていますが、事業計画の未達や市場環境の変化により期待したキャッシュ・フローやシナジーが得られない場合、のれんや無形資産の減損損失が発生する可能性があります。投資委員会等による事前の検証や投資後のモニタリング体制を強化し、リスク管理に努めています。

(3) 技術革新に関するリスク


食品産業においても異業種参入や新技術の台頭により競争環境が変化しています。R&D機能の強化やデジタル化への対応が遅れた場合、競争優位性が低下し、製品やサービスが陳腐化する恐れがあります。研究開発への資源集中投下やオープンイノベーションの推進、デジタル投資の積極化により、新たな価値創出と競争力維持に取り組んでいます。

(4) 海外事業展開に関するリスク


米国、中国、アセアン等での事業展開を加速していますが、各国の食文化への浸透が想定通り進まない場合や、カントリーリスク、法規制の変更等により、事業計画に遅れが生じる可能性があります。緻密な市場調査に基づく戦略立案や、現地経営人材の育成、リスクマネジメント体制の構築を通じて、海外事業の基盤強化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。