ハウス食品グループ本社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハウス食品グループ本社 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ハウス食品グループ本社は、東京証券取引所プライム市場に上場する食品メーカーです。香辛・調味加工食品や健康食品の製造販売、国内外でのカレーレストラン運営等の外食事業を展開しています。直近の業績は、価格改定などで売上高は増加したものの、原材料など事業コスト上昇の影響を受け、増収減益の決算となりました。


※本記事は、ハウス食品グループ本社株式会社の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ハウス食品グループ本社ってどんな会社?


同社は、香辛・調味加工食品や健康食品の製造販売、国内外でのレストラン運営等を行う食品メーカーです。

(1) 会社概要


1947年に浦上糧食工業所として設立され、1963年に「バーモントカレー」を発売しました。1971年に東京・大阪の両証券取引所市場第2部に上場し、1973年に第1部へ指定されました。2013年に持株会社体制へ移行し現在の社名へ変更し、2015年には壱番屋を子会社化して外食事業を強化しています。

同社グループの従業員数は連結で6,564名、単体で470名です。大株主の状況は、筆頭株主が資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)となっており、第2位および第3位には創業家や役員等の資産管理を行うハウス興産やHKLが名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.64%
ハウス興産 9.28%
HKL 8.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は浦上博史氏が務めています。また、社外取締役比率は33.3%となっています。

氏名 役職 主な経歴
浦上博史 代表取締役社長経営戦略部担当 1991年住友銀行入行、1997年同社入社。2002年取締役、2004年代表取締役副社長等を経て、2009年より代表取締役社長。2024年4月より現職。
大澤善行 代表取締役専務管理本部長兼秘書部担当 1982年同社入社。2014年人事部長、2018年取締役、2021年常務取締役を経て、2024年4月より現職。
川崎浩太郎 専務取締役 1994年同社入社。2020年コーポレートコミュニケーション本部長、同社取締役等を経て、2025年4月より現職。
宮奥美行 取締役大豆系バリューチェーン担当兼国際事業本部担当 1983年同社入社。2018年取締役、研究開発本部長等を経て、2026年4月より現職。
山口竜巳 取締役研究開発本部長兼品質保証統括部・新規事業開発部・アグリビジネス推進部担当 1988年同社入社。2018年ハウスフーズホールディングUSA社長等を経て、2020年取締役、2024年4月より現職。
佐久間淳 取締役機能性素材系バリューチェーン担当兼コーポレートコミュニケーション本部長兼デジタル戦略本部担当 1989年同社入社。2023年コーポレートコミュニケーション本部長、同社取締役を経て、2026年4月より現職。
岡本雄一 取締役スパイスバリューチェーン調達・生産戦略本部長兼国内関係会社事業推進部担当 1990年同社入社。2024年スパイスバリューチェーン調達・生産戦略本部長、同社取締役を経て、2026年4月より現職。
久保田恒夫 監査等委員である取締役(常勤) 1984年同社入社。2011年知的財産部長、2017年法務部長等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、岡島敦子(元内閣府男女共同参画局長)、関根福一(元住友大阪セメント社長)、川嵜靖之(元SMBC日興証券会長)、山田美和(日本貿易振興機構アジア経済研究所上席主任調査研究員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「香辛・調味加工食品事業」「健康食品事業」「海外食品事業」「外食事業」「その他食品関連事業」を展開しています。

(1) 香辛・調味加工食品事業


ルウカレーやルウシチュー、レトルト食品、スナック食品などの香辛・調味加工食品の製造販売を行っています。一般家庭向けの製品に加え、外食産業や給食向けの業務用製品も幅広く提供し、多様な顧客ニーズに対応しています。

収益源は、製品の販売代金です。同事業の運営は主に中核企業であるハウス食品が担っており、ハウスギャバンやマロニー、サンハウス食品などのグループ各社と連携して製品の開発から製造、販売までを一貫して行っています。

(2) 健康食品事業


健康維持をサポートする機能性飲料やゼリー飲料などの健康食品の製造販売を行っています。ビタミンCを配合した飲料や、独自素材である乳酸菌L-137株などを活用した製品を、健康志向の高まる一般消費者に提供しています。

収益源は、スーパーやコンビニエンスストア等を通じた製品の販売代金です。同事業の運営は主にハウスウェルネスフーズが担っており、研究開発から製造販売までを一貫して行い、顧客の健康的な生活に貢献しています。

(3) 海外食品事業


米国、中国、東南アジアを中心に、カレー製品や豆腐をはじめとする大豆関連製品、機能性飲料などの製造販売を行っています。現地の食文化や消費者の嗜好に合わせた製品開発により、グローバルな市場開拓を進めています。

収益源は、現地市場での製品販売代金です。運営は米国で豆腐事業を展開するハウスフーズホールディングUSA、中国でカレー事業を推進するハウス食品(中国)投資、タイで機能性飲料を展開するハウスオソサファフーズ等の子会社が担っています。

(4) 外食事業


カレー専門店「カレーハウスCoCo壱番屋」などの外食レストランを、日本国内および海外で展開しています。幅広い年齢層の顧客に対し、多様なメニューと質の高いサービスを提供する店舗運営を行っています。

収益源は、直営店における飲食代金や、フランチャイズ加盟店からのロイヤルティ収入および食材の販売代金などです。同事業の運営は主に壱番屋が担っており、国内外の子会社と連携して多店舗展開を推進しています。

(5) その他食品関連事業


香辛野菜などの農産物・食品原料の輸出入販売や、グループの製品輸送、倉庫管理等の物流事業、さらには食品の栄養成分分析など、食品に関連する幅広いサービスをグループ内外の顧客に提供しています。

収益源は、原材料の販売代金や物流業務の受託料、分析等のサービス提供に対する対価です。運営は食材調達を担うヴォークス・トレーディングや、物流事業を担うハウス物流サービス、分析業務を行うハウス食品分析テクノサービスなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の売上高は、直近5年間で継続的な成長を見せており、安定した需要と価格改定の効果が寄与しています。一方で、経常利益は原材料など事業コスト上昇の影響を受け、増減を繰り返しながら推移しています。利益率は6%台から8%台で推移しており、環境変化に柔軟に対応しつつ収益性の維持に努めていることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,534億円 2,751億円 2,996億円 3,154億円 3,170億円
経常利益 211億円 183億円 211億円 214億円 195億円
利益率(%) 8.3% 6.7% 7.0% 6.8% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 131億円 68億円 55億円 90億円 128億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で微増となりましたが、売上総利益も増加し、売上総利益率は37%台を維持しています。一方で、事業基盤強化のための成長投資や広告宣伝費などのコスト増により、営業利益は減少しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,154億円 3,170億円
売上総利益 1,159億円 1,181億円
売上総利益率(%) 36.7% 37.3%
営業利益 200億円 182億円
営業利益率(%) 6.3% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が301億円(構成比30%)、運送費及び保管費が130億円(同13%)、広告宣伝費が82億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の香辛・調味加工食品事業は、価格改定後の需要喚起により底堅く推移し、増益を確保しました。外食事業は店舗での販売施策等が奏功し増収となったものの、食材価格や人件費の高騰により減益となっています。また、海外食品事業は中国での営業戦略の転換などが寄与し、増収増益と好調に推移しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
香辛・調味加工食品事業 1,262億円 1,268億円 128億円 128億円 9.7%
健康食品事業 165億円 163億円 24億円 15億円 9.1%
海外食品事業 618億円 629億円 30億円 34億円 5.3%
外食事業 608億円 654億円 36億円 34億円 5.2%
その他食品関連事業 498億円 454億円 12億円 9億円 1.8%
調整額 2億円 2億円 -31億円 -38億円 -
連結(合計) 3,154億円 3,170億円 200億円 182億円 5.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなる「改善型」の傾向を示しています。本業で安定して資金を生み出しつつ、資産の売却や定期預金の払い戻し等の資金回収を進め、その資金を借入金の返済や株主還元に充てている状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 266億円 245億円
投資CF -123億円 3億円
財務CF -91億円 -194億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、創業理念として「日本中の家庭が幸福であり、そこにはいつも温かい家庭の味ハウスがある」を掲げています。また、グループ理念として「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします」と定めています。一企業市民として「お客様に対して」「社員とその家族に対して」「社会に対して」の3つの責任を果たし、人々の健やかな暮らしに貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、「誠意・創意・熱意を持とう。」という社是と「ハウス十論」で構成される「ハウスの意(こころ)」を大切にしています。多様な価値観を尊重し、社員一人ひとりが個性を発揮しながら組織の壁を超えて協働・共創する「ダイバーシティを力に変える」風土づくりを推進しています。また、多様性を受け入れてチャレンジを後押しする組織風土や、健康経営を通じた働きやすさの促進を継続的に行っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、第八次中期計画(2024年度〜)において、「グローバルなバリューチェーン構築で成長をめざす」をスローガンに掲げています。資本コストや株価を意識した経営に向けて、ROIC(投下資本利益率)マネジメントを導入し、収益性の向上を図っています。

* 2027年3月期目標 ROE:6.0%
* 2027年3月期目標 ROIC:4.3%
* 2027年3月期目標 EBITDAマージン:9.9%
* DOE(純資産配当率)3%以上を目安とした持続的な還元

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」の3つのバリューチェーンに経営資源を集中し、グローバル展開による成長加速を目指しています。特にスパイス系事業では、ハウス食品への機能移管によるグローバル戦略立案体制の構築や、インドネシアでの第2工場建設を通じた市場開拓を進めています。

* スパイス系バリューチェーンへの経営資源集中
* 成長戦略を実現する組織改革の推進
* 利益成長と自己資本マネジメントの両輪による資本効率向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様性をイノベーションの創出力に変換するため、「ダイバーシティを力に変える」をテーマとした人材戦略を推進しています。役割に基づくオープンな人事制度(役割等級制度)をグループ内に展開し、人材の流動性を高めるとともにキャリア採用の受け入れを促進しています。また、公募施策の拡大やキャリア申告制度を通じて自律的なキャリア開発を支援し、次世代リーダーの育成や女性管理職の拡充に向けたプログラムも実行しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.9歳 14.3年 8,404,405円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.4%
男性育児休業取得率 106.7%
労働者の男女の賃金の額の差異(全労働者) -
労働者の男女の賃金の額の差異(正規雇用労働者) -
労働者の男女の賃金の額の差異(非正規雇用労働者) -


※同社は公表義務の対象ではないため、有報には労働者の男女の賃金の額の差異の記載がありません。

また、同社は「社員とその家族に対する責任」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、チャレンジ・公募施策に応募した社員の割合(33.5%)、「多様性受容風土」の項目への肯定回答割合(70.3%)、「チャレンジ促進風土」の項目への肯定回答割合(66.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内市場動向に関するリスク

景気減速や人口減少による国内需要全体の低下や、消費者のライフスタイル・節約志向の変化が挙げられます。同社は売上の7割以上を国内販売が占めているため、市場の縮小や顧客ニーズへの対応遅れが業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、3つのバリューチェーンのグローバル展開や新価値創出を推進しています。

(2) 事業拡大に関するリスク

外食事業や香辛料事業など、M&Aや事業出資を通じたバリューチェーンの拡大を進めています。一方で、取得した企業の事業計画が未達となった場合や、想定したシナジー効果が得られない場合には、計上したのれんや無形資産等の減損損失が発生し、財政状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 海外事業展開に関するリスク

米国、中国、東南アジア各国において、カレーや豆腐、機能性飲料などの事業を展開しています。しかし、進出先の食文化への浸透が想定を下回る場合や、各国法令の発布・改正への対応遅れ、カントリーリスクの顕在化などが発生した場合には、収益の低下やガバナンス機能不全等が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。