シマダヤ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シマダヤ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シマダヤは東証スタンダード市場に上場し、麺類の製造および販売を主力とする食品メーカーです。家庭用チルド麺や業務用冷凍麺で高いシェアを有しています。直近の業績では、価格改定や経費抑制の効果により増収増益を達成しており、安定した収益基盤と高いブランド力を背景に、更なる事業拡大と成長を目指しています。


※本記事は、シマダヤ株式会社の有価証券報告書(第71期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シマダヤってどんな会社?


同社は、1931年の創業以来「流水麺」などで知られる麺類の製造および販売を展開する食品メーカーです。

(1) 会社概要


1949年に名古屋市で島田屋として設立され、1988年には茹でずに食べられる「流水麺」を発売しました。その後、各地の製麺会社を子会社化しながら事業規模を拡大し、2018年にメルコホールディングスの完全子会社となりました。2024年10月には、スピンオフにより同社から独立し、東証スタンダード市場への新規上場を果たしています。

同社グループは、連結で832名、単体で298名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社のメルコグループであり、第2位は元親会社代表の牧寛之氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。全国に複数の製造拠点を持ち、長年にわたり培われた技術力とブランド力を武器に、日本の麺市場を強力に牽引しています。

氏名 持株比率
メルコグループ 33.94%
牧 寛之 13.64%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は岡田賢二氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
岡田 賢二 代表取締役社長執行役員 1993年同社入社。業務用営業本部長やマーケティング本部長などを歴任。2023年4月に代表取締役社長に就任し、2025年4月より現職。
相馬 紳一郎 取締役専務執行役員 1998年同社入社。経理部長や人事総務部長を務め、2018年より専務取締役人事総務部長。2025年4月より現職。
小原 伸之 取締役常務執行役員成長マーケット開発事業本部長 1986年同社入社。開発研究所長やマーケティング本部長などを経て、2025年4月より現職。
佐々木 敏夫 取締役常務執行役員業務用事業本部長 1980年同社入社。西日本営業本部副本部長や中野食品社長、家庭用営業本部長などを歴任し、2025年4月より現職。
曽根田 直基 取締役常務執行役員家庭用事業本部長 1994年同社入社。家庭用チルド首都圏営業部長や企画部長を経て、2025年4月より現職。
太田 智之 取締役執行役員経理部長 2005年バッファロー入社。2017年より同社へ出向し経理部専任部長。2023年より取締役経理部長を務め、2025年4月より現職。
加藤 優 取締役監査等委員 1985年同社入社。経営企画部長や経理部長などを歴任。2020年に常勤監査役に就任し、2023年5月より現職。
長瀬 吉昌 取締役監査等委員 1981年大和証券入社。大和証券グループ本社専務執行役員などを経て、バッファロー取締役監査等委員を務め、2025年6月より現職。


社外取締役は、深山隆(元味の素ヘルシーサプライ社長)、髙木康行(公認会計士・税理士事務所代表)、坂井愛(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「家庭用事業部門」「業務用事業部門」および「その他」事業を展開しています。

(1) 家庭用事業部門


一般家庭向けにチルド麺や冷凍麺などの製造および販売を行っています。ゆでずに水でほぐすだけで食べられる「流水麺」や健康志向の「健美麺」、長期保存が可能なLL麺などを展開しており、積極的な広告販促活動により高いブランド力と市場シェアを確保しています。

収益は主に食品スーパーなどの量販店への販売から得ています。製品の製造は主に連結子会社であるシマダヤ関東、シマダヤ東北、シマダヤ西日本が担い、販売は親会社の同社が行う体制をとっています。本州を中心に安定供給できる物流ネットワークを構築しています。

(2) 業務用事業部門


外食店や中食産業向けに、多様なメニューに対応できる高品質な冷凍麺の製造および販売を行っています。調理の効率化に貢献する「ミニダブル」や、時間経過後もおいしさを保つ「流水α麺」など、麺専業メーカーならではの付加価値の高い商品を提供しています。

収益は主に業務用卸店や商社、大手外食店等への販売から得ています。家庭用事業と同様に、連結子会社のシマダヤ関東、シマダヤ東北、シマダヤ西日本が製造を担い、同社が販売を行っています。全国規模での安定供給体制を整え、顧客の課題解決に向けた提案型営業を推進しています。

(3) その他


同社グループ内へ向けた車両等のリースや、消耗品等の物販、損害保険代理といった各種関連サービスを提供しています。

収益はこれらのサービス提供に対する対価として得ており、主に連結子会社であるシマダヤ商事が同社グループ内向けに事業を運営し、業務の効率化や管理をサポートしています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4年間の連結業績を見ると、売上高は着実に拡大を続けており、341億円から411億円へと成長しています。利益面でも、原材料価格の高騰といった逆風がある中で、価格改定や経費抑制の取り組みが功を奏し、経常利益および当期利益ともに増加傾向を力強く維持しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 341億円 390億円 396億円 411億円
経常利益 24億円 35億円 34億円 39億円
利益率(%) 7.0% 8.9% 8.7% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 12億円 19億円 21億円 25億円

(2) 損益計算書


売上高は396億円から411億円へと増収となっています。売上総利益率も29.2%から30.0%へと改善しており、原価低減や価格改定の効果が表れています。これに伴い、営業利益も34億円から38億円へと増加し、収益性の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 396億円 411億円
売上総利益 116億円 123億円
売上総利益率(%) 29.2% 30.0%
営業利益 34億円 38億円
営業利益率(%) 8.5% 9.2%


販売費及び一般管理費のうち、運賃が32億円(構成比38%)、従業員給与が15億円(同17%)を占めています。また、売上原価は287億円であり、売上高に対する原価率は70%となっています。

(3) セグメント収益


家庭用事業部門は経済性志向に対応した商品の拡売や涼味麺の好調により増収となりました。業務用事業部門も、外食需要の回復を追い風に主力ブランドが伸長したほか、海外向け売上も着実に増加し、両部門ともに前期を上回る実績を残しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
家庭用事業部門 249億円 254億円
業務用事業部門 148億円 156億円
連結(合計) 396億円 411億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」に該当します。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 31億円 40億円
投資CF -12億円 -29億円
財務CF -3億円 -23億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.0%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「おいしい笑顔をお届けします」を経営コンセプトに掲げています。食品事業を通じて「品質」と「ブランド」を重視し、安全・安心な商品の提供によって持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値の向上を目指しています。また、健康長寿社会への貢献や環境保全への取り組みを通じて、ステークホルダーとの共感を図っています。

(2) 企業文化


社是である「奉仕努力」のもと、7つのビジョンを掲げています。社員一人ひとりが「シマダヤブランド」を守り育てる意識を持ち、コミュニケーションを大切にしながら独自の技術で市場を創造する風土があります。また、アイデアを活かし、挑戦を後押しすることで、人を育て働きがいを実感できる職場環境の構築を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2031年の創業100周年に向けて、持続的成長を実現するための3カ年中期経営計画「Change95」を推進しています。本計画では、「コア事業の『深化』と『利益成長』に挑戦し、収益構造を変革する」ことを基本方針に掲げており、売上高、営業利益、経常利益を客観的な経営指標として継続的な改善を図っています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の利益成長と事業拡大に向け、家庭用事業部門の収益改善を重要課題としています。近年の気温上昇を商機と捉えた涼味商品の販売期間延長や、西日本地域での拡売を推進します。さらに、需要が高まる冷凍麺の生産キャパシティ確保に向けた工場への投資や、人手不足に対応するデジタル活用による業務効率化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「麺食を通して価値創造を実現し人を笑顔にする会社」という長期ビジョンのもと、従業員が主体的に学び、自律的に成長できる組織づくりを推進しています。階層別や職種別の研修を充実させるとともに、公正な評価制度を整備し、次世代管理職や経営人財の育成に注力しています。また、多様な人材が活躍できる柔軟な働き方も支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.5歳 17.9年 6,769,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.5%
男性育児休業取得率 85.7%
男女賃金差異(全労働者) 70.7%
男女賃金差異(正規雇用) 73.8%
男女賃金差異(パート・有期) 55.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める女性労働者の割合(27.0%)、男性の平均勤続年数に対する女性の平均勤続年数の割合(65.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サプライチェーンリスク


小麦粉などの主原料や包材、エネルギーの調達において、国際情勢や気候変動により価格高騰や供給不足が生じるリスクがあります。同社は集中購買や調達先の複線化、戦略的な在庫設定、さらには国産原料の比率向上などを進め、安定的な調達とコスト抑制に努めています。

(2) 人手不足リスク


少子高齢化に伴う労働人口の減少により、安定的な人員確保が困難になるリスクがあります。人材の流出や採用不足が生産・販売体制に影響を及ぼす可能性があるため、同社は賃金改定や職場環境の改善、省人化投資による業務効率化を図り、企業価値向上につなげています。

(3) 食の安全性に関するリスク


食品業界において異物混入やアレルギー誤表示などが発生した場合、大規模な商品回収や信用低下による売上減少に直結するリスクがあります。同社は食品安全マネジメントシステムの国際規格(FSSC22000等)に基づき、徹底した品質管理と教育を実施し、有事の際の対応体制も整備しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。