シマダヤ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シマダヤ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の製麺メーカー。「流水麺」などの家庭用チルド麺や冷凍麺、業務用冷凍麺の製造・販売を主力事業とします。直近の業績は、商品価格改定や販売拡大により売上高は396億円で前期比増収となりましたが、上場関連費用の計上などにより経常利益は34億円で減益となりました。


※本記事は、シマダヤ株式会社 の有価証券報告書(第70期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シマダヤってどんな会社?


創業から90年以上の歴史を持つ製麺大手。「流水麺」をはじめとする高品質な麺製品を家庭や外食産業に提供しています。

(1) 会社概要


1949年に名古屋で株式会社島田屋として設立され、1955年に東京へ進出しました。1988年には看板商品となる「流水麺」を発売し、市場を開拓。2018年にメルコホールディングスの完全子会社となりましたが、2024年10月にスピンオフにより独立し、東京証券取引所スタンダード市場へ新規上場を果たしました。

同社の連結従業員数は853名(単体293名)です。筆頭株主は株式会社メルコグループで、第2位は個人株主の牧寛之氏、第3位は公益財団法人牧誠財団となっており、創業家や元親会社関連が上位を占めています。

氏名 持株比率
メルコグループ 37.85%
牧 寛之 13.76%
公益財団法人牧誠財団 3.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は岡田賢二氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
岡田 賢二 代表取締役社長執行役員 1993年同社入社。マーケティング本部長、生産物流本部長などを歴任し、2023年4月より現職。
相馬 紳一郎 取締役専務執行役員 1998年同社入社。経理部長、人事総務部長などを経て、2025年4月より現職。
小原 伸之 取締役常務執行役員 1986年同社入社。開発研究所長、マーケティング本部長などを経て、2025年4月より成長マーケット開発事業本部長。
佐々木 敏夫 取締役常務執行役員 1980年同社入社。業務用営業や家庭用営業の要職を歴任し、2025年4月より業務用事業本部長。
曽根田 直基 取締役常務執行役員 1994年同社入社。家庭用チルド首都圏営業部長や企画部長などを経て、2025年4月より家庭用事業本部長。
太田 智之 取締役執行役員 2005年バッファロー入社。同社経理部長を経て2025年4月より現職。
加藤 優 取締役監査等委員 1985年同社入社。経営企画部長、経理部長などを歴任し、2023年5月より現職。
長瀬 吉昌 取締役監査等委員 大和証券にて常務執行役員などを歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、深山隆(元F-LINE社長)、髙木康行(公認会計士・税理士)、坂井愛(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「家庭用事業部門」「業務用事業部門」および「その他」事業を展開しています。

(1) 家庭用事業部門


一般家庭向けに「流水麺」や「健美麺」、生麺、ロングライフ麺などのチルド麺および冷凍麺を製造・販売しています。主な顧客は食品スーパーなどの量販店です。

収益は量販店等への商品販売から得ています。運営は主にシマダヤが行い、製造は連結子会社のシマダヤ関東、シマダヤ東北、シマダヤ西日本が担当しています。原材料仕入は同社が購買窓口となり、子会社へ有償支給する体制をとっています。

(2) 業務用事業部門


外食・中食産業向けに、調理の手間を省ける高品質な冷凍麺などを製造・販売しています。顧客は業務用卸店や商社、大手外食チェーンなどです。

収益は卸店や外食店への商品販売から得ています。運営はシマダヤが行い、製造は家庭用と同様にシマダヤ関東、シマダヤ東北、シマダヤ西日本などの連結子会社が担っています。多様なメニューに対応できるラインナップや提案型営業を強みとしています。

(3) その他


同社グループ内向けのサービス提供などを行っています。主な顧客はグループ会社です。

収益はグループ会社への車両等のリース、消耗品の物販、損害保険代理サービスなどから得ています。運営は連結子会社のシマダヤ商事が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は堅調な拡大傾向にあります。経常利益も30億円台で安定して推移しており、利益率も8%台後半と高い水準を維持しています。当期は売上高が増加しましたが、上場関連費用の計上などにより経常利益は微減となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 311億円 313億円 341億円 390億円 396億円
経常利益 16億円 15億円 24億円 35億円 34億円
利益率(%) 5.0% 4.7% 7.0% 8.9% 8.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 11億円 12億円 19億円 21億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上総利益率はほぼ横ばいでした。営業利益は微増となりましたが、営業利益率は8.5%と前期よりわずかに低下しました。原材料価格の高騰などが影響していると考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 390億円 396億円
売上総利益 117億円 116億円
売上総利益率(%) 29.9% 29.2%
営業利益 34億円 34億円
営業利益率(%) 8.6% 8.5%


販売費及び一般管理費のうち、運賃が32億円(構成比39%)、従業員給与が14億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


家庭用事業部門は、主力ブランドの拡販や価格改定により増収となりました。業務用事業部門も、外食需要への対応強化により微増収となっています。全体として安定した成長を見せています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
家庭用事業部門 242億円 249億円
業務用事業部門 147億円 148億円
連結(合計) 390億円 396億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た現金を借入金の返済や投資に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 47億円 31億円
投資CF 48億円 -12億円
財務CF -107億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社是「奉仕努力」のもと、「おいしい笑顔をお届けします」を経営コンセプトとして掲げています。「品質」と「ブランド」を重視し、安全・安心な商品の提供を通じて、顧客だけでなく従業員や社会など関わる全ての人々に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


経営コンセプト実現のため、「シマダヤブランドを守り育てよう」「独自の技術で市場を創造しよう」「組織を越えて話し合おう」「お客様の満足を追求しよう」「常に成長し高収益を上げよう」「アイデアカンパニーを目指そう」「チャンスを与え人を育てよう」という7つのビジョンを掲げています。

(3) 経営計画・目標


2025年3月期より新たな3ヵ年中期経営計画「Change95」をスタートさせ、「コア事業の『深化』と『利益成長』に挑戦し、収益構造を変革する」を基本方針としています。経営上の目標達成状況を判断する指標として、売上高、営業利益、経常利益を重視しています。

(4) 成長戦略と重点施策


家庭用事業の収益改善を重要課題とし、特にチルド麺では秋冬期や西日本地域での販売拡大、業務改善に取り組みます。需要が高まる冷凍麺については、生産キャパシティの確保や海外展開を含めた販売拡大を進めます。また、生産体制の再構築やDX推進人材の育成、商品力の強化にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


商品を安定供給し利益成長を実現するため、専門性の高い人財の育成や確保を重要課題としています。特にDX推進に必要な人財育成に向けた研修制度の充実や、公正な人事制度の確立に取り組んでいます。また、多様な人材が活躍できる環境整備や、賃金制度改定による確保・定着にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.0歳 17.8年 6,660,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 66.6%
男女賃金差異(全労働者) 72.5%
男女賃金差異(正規) 74.0%
男女賃金差異(非正規) 58.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める女性労働者の割合(27.0%)、男女の平均勤続年数の差異(67.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化と消費動向


人口減少や少子高齢化、経済情勢による消費低迷、消費者の嗜好変化などが業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は開発キーワード『7K』を掲げ、ブランド価値向上や新コンセプト提案、付加価値型商品による市場活性化に取り組むことで対応しています。

(2) 物流業界の課題とコスト


ドライバー不足による供給力低下や物流コストの上昇が懸念されます。納品リードタイム延長やパレットサイズ見直し等の効率化、新センター活用による配送距離短縮、モーダルシフト(船舶・鉄道輸送)の検討・運用により、供給確保とコスト抑制に努めています。

(3) 原材料・エネルギー価格の変動


ウクライナ情勢や気候変動による主原料(小麦・そば粉)の調達難や価格高騰、エネルギーコスト上昇のリスクがあります。集中購買の継続、国産原料比率の向上、調達先の複数化による安定調達を図るとともに、価格改定時には品質・価値に見合った商品提供を行います。

(4) 食品の安全性と品質管理


食中毒や異物混入等の品質事故が発生した場合、コスト負担や信用の低下により業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。食品安全マネジメント規格FSSC22000の運用や検査装置の導入により、食品安全の強化と事故の未然防止を徹底しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。