※本記事は、株式会社あじかんの有価証券報告書(第62期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. あじかんってどんな会社?
玉子焼などの業務用食品やごぼう茶などのヘルスフードの製造・販売を主力とする食品メーカーです。
■(1) 会社概要
1965年に広島市で三栄製玉として設立され、厚焼などの食料品製造を開始しました。1978年に現在のあじかんに商号変更しています。1990年の株式上場を経て、2012年にはあじかんアグリファームを設立し農業分野へ参入しました。2021年には米国に食品卸売の子会社を設立し、海外事業も強化しています。
現在の従業員数はグループ全体で887名、単体で716名体制で事業を展開しています。筆頭株主は資産管理等を行う足利興産で、第2位はあじかん三栄持株会となっています。また、第3位には主要取引金融機関である広島銀行が名を連ねており、安定した資本基盤を構築しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 足利興産 | 23.66% |
| あじかん三栄持株会 | 9.57% |
| 広島銀行 | 4.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員の足利直純氏がトップを務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 足利直純 | 代表取締役社長執行役員 | 1998年入社。商品企画部長、ヘルスフード事業部長などを歴任。2014年取締役、2019年常務取締役を経て、2021年より代表取締役社長執行役員に就任。 |
| 足利恵一 | 取締役会長 | 1995年入社。2004年取締役、西日本営業部長、取締役副社長を経て、2017年に代表取締役社長に就任。2021年より取締役会長に就任。 |
| 福島幸治 | 代表取締役専務執行役員経営管理本部長 | 1987年入社。経営企画部長、営業企画部長、営業本部長などを歴任。2024年取締役執行役員を経て、2026年より代表取締役専務執行役員および経営管理本部長に就任。 |
| 江角知厚 | 取締役専務執行役員 | 1987年入社。総務部長、業務推進本部長などを歴任。2008年取締役となり、ごぼう茶事業推進室長や営業本部長を経て、2026年より取締役専務執行役員に就任。 |
| 吉野元健 | 取締役常務執行役員ヘルスフード事業部長兼 開発本部長 | 1987年入社。商品企画部長や海外事業部長などを歴任。2023年に取締役執行役員となり、2025年より取締役常務執行役員およびヘルスフード事業部長兼開発本部長に就任。 |
| 山本暢義 | 取締役常勤監査等委員 | 1983年入社。営業企画部長、海外販売部長、経営企画部長、経営管理本部副本部長などを歴任し、2023年より取締役常勤監査等委員に就任。 |
社外取締役は、松重弘志(元ひろしま信愛不動産代表取締役社長)、松谷秀伸(元西広島開発代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、業務用食品等、ヘルスフードおよびその他の事業を展開しています。
■(1) 業務用食品等
スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の中食業態向けを中心に、玉子焼などの鶏卵加工製品や、味付かんぴょうなどの野菜加工製品、かに風味蒲鉾などの水産練製品の製造・販売を行っています。また、海外市場向けにも玉子製品などを輸出しています。
製品の販売による収益を主な収入源としています。自社工場での製造による直販体制を強みとし、運営は主にあじかんが担うほか、海外では中国の山東安吉丸食品有限公司や愛康食品(青島)有限公司が製造を、米国のAHJIKAN FOODS,INC.が販売を行っています。
■(2) ヘルスフード
健康志向の高まりに応えるため、農産物の生産や加工、ヘルスフードの製造・販売を展開しています。主力の焙煎ごぼう茶シリーズをはじめ、通信販売やドラッグストア等の市販向けにごぼうの機能性を活かした付加価値の高い製品を提供しています。
通信販売や小売店等への製品販売から収益を得ています。通信販売では定期購入などによる継続的な収益基盤を構築しています。事業の運営はあじかんが主体となって行い、原料となる農産物の一部はあじかんアグリファームが生産を担っています。
■(3) その他
業務用食品等やヘルスフードの主力セグメントに含まれない事業として、運輸業を展開しています。主にグループ内の物流機能の補完や外部向けの輸送サービスを提供しています。
冷凍・冷蔵食品の幹線輸送便やチャーター便などの輸送業務、および倉庫内作業の受託による運賃や業務委託料を収益源としています。この事業は主に子会社の井口産交が運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な増加傾向にあり、直近5年間で順調に規模を拡大しています。一方、経常利益は原材料価格の高騰などの影響により年度ごとの変動が見られ、直近ではコスト上昇の影響を大きく受け減益となりました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 453億円 | 474億円 | 502億円 | 510億円 | 514億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 5億円 | 23億円 | 22億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 2.0% | 1.0% | 4.5% | 4.4% | 3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 3億円 | 15億円 | 15億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
増収を確保したものの、主要原材料である鶏卵価格が高水準で推移したことや、人件費・物流コストの増加により、売上総利益および営業利益は前年度を下回る結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 510億円 | 514億円 |
| 売上総利益 | 136億円 | 129億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.6% | 25.1% |
| 営業利益 | 20億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 2.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が24億円(構成比20.3%)、荷造運賃が22億円(同18.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
業務用食品等セグメントは、国内需要減少の影響などにより売上が微減となりました。一方、ヘルスフードセグメントは機能性表示食品の通信販売や市販向け製品の好調により、売上を大きく伸ばし全体の増収を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 業務用食品等 | 470億円 | 470億円 |
| ヘルスフード | 36億円 | 40億円 |
| その他 | 5億円 | 5億円 |
| 連結(合計) | 510億円 | 514億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で得た資金内で投資と借入金の返済を賄っている、健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 35億円 | 17億円 |
| 投資CF | -8億円 | -12億円 |
| 財務CF | -26億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「調和・創造・革新」の経営理念のもと、顧客、株主、従業員、社会への喜びを創造する企業になることを経営の基本方針としています。常に安全性を追求し、高品質な食品で安心と健康を顧客ならびに消費者の方へお届けすることを企業活動の最重要な使命として掲げています。
■(2) 企業文化
共に咲く喜びを実現するという創業の精神のもと、人々の健康、おいしいものを食べる喜び、食文化の向上に貢献する文化があります。また、おやくだちの精神でお客さまや取引先、社会へ貢献し、社員がいきいきと働く風土づくりを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年3月期を着地点とする長期ビジョン「あじかんV30 ver.2.0」を策定しており、以下の経営目標を掲げています。
* 売上高 590億円
* 営業利益率 4.5%以上
* ROE 8%以上
* ROIC 6%以上
* DOE 3%以上
* PBR 1倍以上
■(4) 成長戦略と重点施策
需要創造型食品メーカーへの挑戦と、収益構造改革と経営品質の向上を基本戦略としています。既存事業での生産効率向上やマーケティング強化による需要創造に加え、持続的な成長に向けたサステナビリティ経営を推進しています。
* 収益構造改革の完遂
* 業務用事業の質的成長と拡大
* ヘルスフード事業、海外事業の成長拡大
* ごぼう事業、市販事業の新たな価値の創造
* 経営品質の向上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営ビジョンの実現に向けて、戦略展開に必要な人材を過不足なく配置し、成長に向けた育成投資を積極的かつ計画的に行うことで、人材面の競争優位性を高めていくことを人材開発・育成の基本方針としています。組織貢献と働きがいの向上に向け、人事制度の改訂やeラーニング導入による自律的な学習環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.4歳 | 16.0年 | 5,502,427円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.2% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 54.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 82.2% |
※男性育児休業取得率は対象となる従業員がいないため記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 主要原材料の調達リスク
鶏卵、干瓢、椎茸などの主原料は、自然災害や鳥インフルエンザ、飼料価格高騰等の影響を受けやすく、安定調達の困難や価格変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 中食業態の業界動向と競合リスク
主要取引先であるスーパーやコンビニ等の業界動向や消費者の嗜好変化、同業他社との販売競争激化により、販売機会の減少や価格競争が生じる可能性があります。
■(3) 食品の安全性に関するリスク
品質保証や衛生管理システムを構築し万全を期していますが、社会全般での食品安全問題や固有の品質問題が発生した場合、業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。
■(4) 海外展開に伴うカントリーリスク
中国や東南アジアでの生産や、米国等での販売事業において、不測の政治・経済的環境変化、法規制の変更などが発生した場合、生産や販売に支障を来す可能性があります。



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