あじかん 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

あじかん 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、業務用玉子焼や水産練製品、農産物加工品等の製造販売を行う食品メーカーです。主力の業務用食品に加え、ごぼう茶などのヘルスフード事業も展開しています。直近の業績は、売上高510億円、営業利益20億円、親会社株主に帰属する当期純利益15億円と、増収増益で着地しました。


※本記事は、株式会社あじかん の有価証券報告書(第61期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. あじかんってどんな会社?


業務用玉子焼類を主力とする食品メーカーで、水産練製品や野菜加工品、ごぼう茶などの製造・販売を行っています。

(1) 会社概要


1965年に広島市で創業し、厚焼・玉子焼等の製造を開始しました。1978年に現社名へ変更し、1990年に広島証券取引所へ上場、2000年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、中国や米国への進出、農業法人や物流会社の設立などを経て事業を拡大し、2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は892名、単体では718名体制です。筆頭株主は創業家資産管理会社の足利興産で、第2位は従業員持株会、第3位は主要取引銀行の広島銀行です。創業家と従業員、地元金融機関が主要株主として名を連ねる安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
足利興産 23.27%
あじかん三栄持株会 9.41%
広島銀行 4.76%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表執行役社長は足利直純氏が務めています。社外取締役比率は約22%です。

氏名 役職 主な経歴
足利 直純 代表取締役社長執行役員 1998年入社。商品企画部長、ヘルスフード事業部長などを経て、2021年より現職。
江角 知厚 代表取締役専務執行役員 1987年入社。総務部長、開発本部長、営業本部長、経営管理本部長などを経て2023年より現職。
沖 浩志 取締役常務執行役員 1983年入社。生産本部長、あじかんアグリファーム社長などを経て2023年より現職。
吉野 元健 取締役常務執行役員ヘルスフード事業部長兼 開発本部長 1987年入社。中国現地法人総経理、米国法人CEO、開発本部長などを経て2025年より現職。
福島 幸治 取締役常務執行役員営業本部長 1987年入社。経営企画部長、営業企画部長、営業本部長などを経て2025年より現職。
足利 恵一 取締役会長 1995年入社。西日本営業部長、代表取締役社長を経て、2021年より現職。
山本 暢義 取締役常勤監査等委員 1983年入社。海外販売部長、経営企画部長、経営管理本部副本部長などを経て2023年より現職。


社外取締役は、松重弘志(元ひろしま信愛不動産社長)、松谷秀伸(元西広島開発社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「業務用食品等」「ヘルスフード」および「その他」事業を展開しています。

(1) 業務用食品等


玉子焼類、味付かんぴょう・しいたけ類、蒲鉾類などの食品を製造・販売しています。主な顧客はスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの中食産業や外食産業です。また、独自ブランド商品の開発や、米国・アジア・オセアニア等の海外市場向けの製品展開も行っています。

主な収益源は、顧客への製品販売による対価です。運営は、国内ではあじかんが主に行い、海外では中国の山東安吉丸食品有限公司や愛康食品(青島)有限公司、米国のAHJIKAN FOODS,INC.などが製造や販売を担っています。

(2) ヘルスフード


ごぼう茶関連製品を中心とした健康食品の製造・販売を行っています。通信販売を通じたダイレクトマーケティングと、ドラッグストアなどへの市販展開を行っており、機能性表示食品の開発にも注力しています。独自技術による焙煎ごぼう茶などが主力製品です。

収益は、一般消費者や小売店への製品販売によって得ています。運営は、あじかんが製品の製造・販売を行うほか、連結子会社のあじかんアグリファームが原材料となる農産物の生産などを担っています。

(3) その他


上記セグメントに含まれない事業として、主に冷凍・冷蔵食品の幹線輸送やチャーター便、倉庫内作業などの物流サービスを提供しています。

収益源は、物流業務の受託による運送料や作業料です。運営は、連結子会社の井口産交が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に2024年3月期以降は利益面でも大きく伸長しており、経常利益率は4%台を維持しています。直近の2025年3月期も増収増益を達成し、安定した収益基盤を築いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 426億円 453億円 474億円 502億円 510億円
経常利益 8億円 9億円 5億円 23億円 22億円
利益率(%) 2.0% 2.0% 1.0% 4.5% 4.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 7億円 3億円 15億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。営業利益も増加しており、増収効果に加えてコストコントロールが機能していることが伺えます。原材料価格の高騰等の影響を受けつつも、利益率を維持・向上させています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 502億円 510億円
売上総利益 126億円 136億円
売上総利益率(%) 25.0% 26.6%
営業利益 17億円 20億円
営業利益率(%) 3.4% 3.8%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運賃が22億円(構成比19%)、給料手当が23億円(同20%)を占めています。売上原価においては、原材料費等の製造費用が大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


主力の業務用食品等は、外食チェーンや自社製造製品の伸長により増収増益となりました。ヘルスフード事業は、通信販売や市販品が好調で増収となりましたが、原材料価格の高騰や広告宣伝費の増加により減益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
業務用食品等 464億円 470億円 34億円 37億円 7.8%
ヘルスフード 33億円 36億円 3億円 2億円 6.0%
その他 5億円 5億円 -0.2億円 0.1億円 2.7%
調整額 -6億円 -7億円 -20億円 -19億円 -
連結(合計) 502億円 510億円 17億円 20億円 3.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

あじかんのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の増加や減価償却費の計上などにより大幅に増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、生産設備への投資やデータベース再構築などにより使用額が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払いなどにより使用額が増加しました。これらの結果、現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 14億円 35億円
投資CF -11億円 -8億円
財務CF -2億円 -26億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「調和・創造・革新」を経営理念として掲げています。この理念のもと、「顧客、株主、従業員、社会への喜びを創造する企業になる」ことを経営の基本方針とし、全てのステークホルダーに対して価値を提供することを目指しています。

(2) 企業文化


「食」に携わる企業として、安全性の追求と高品質な食品による安心と健康の提供を最重要の使命としています。顧客との信頼関係の構築を通じて企業価値を高めることを重視しており、品質管理や安全確保に対する意識が根付いた文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


2030年3月期を着地点とする長期ビジョン「あじかんV30 ver.2.0」を掲げ、資本コストや株価を意識した経営に取り組んでいます。持続的な成長と企業価値向上を目指し、以下の数値目標を設定しています。

* 売上高:590億円
* 営業利益率:4.5%以上
* ROE:8%以上
* ROIC:6%以上
* DOE:3%以上
* PBR:1倍以上

(4) 成長戦略と重点施策


「需要創造」「収益構造改革」「経営品質向上」を軸に、「選ばれる企業」を目指しています。国内事業基盤の強化に加え、ヘルスフードや海外事業の成長、市販事業への本格参入などにより新たな価値を創造する方針です。また、サステナビリティ経営を推進し、環境配慮や人的資本への投資も強化しています。

* 収益構造改革の完遂
* 業務用事業の質的成長と拡大
* ヘルスフード事業、海外事業の成長拡大
* ごぼう事業、市販事業の新たな価値の創造
* 経営品質の向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「選ばれる企業」として持続的に成長するため、社員がいきいきと働く風土づくりを重視しています。ダイバーシティマネジメントを推進し、女性活躍や管理職登用、多様な人材が活躍できる職場環境の整備に取り組んでいます。また、従業員のエンゲージメント向上に向けた人材への成長投資も行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.3歳 15.9年 5,702,591円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.1%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 51.5%
男女賃金差異(正規) 76.6%
男女賃金差異(非正規) 80.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(2030年3月期目標値:5%以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 主要原材料の調達リスク


製品の主原料である鶏卵、干瓢、椎茸、ごぼう等は、自然災害や作況、鳥インフルエンザ等の影響を受けやすく、調達価格の高騰や数量確保の困難が生じる可能性があります。特に鶏卵は需給バランスの変動が大きく、業績への影響が懸念されます。

(2) 中食業界の競合激化


主要取引先である中食業界(スーパー、コンビニ等)では消費者の嗜好変化が激しく、同業他社との競争が激化しています。新製品投入や販促活動による競争力低下や、取引先の経営状況・販売政策の変化が販売機会に影響を与える可能性があります。

(3) 為替変動の影響


輸入品を取り扱っているため、為替相場の変動が仕入原価やデリバティブ評価に影響を与えます。為替予約によるヘッジを行っていますが、急激な変動は財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。