INPEX 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

INPEX 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

INPEXは東京証券取引所プライム市場に上場し、国内外で石油や天然ガスの探鉱、開発、生産、販売を展開する企業です。直近の業績では、原油の販売価格下落などの影響により売上収益は前期比で減収となり、親会社の所有者に帰属する当期利益も減益となるなど、厳しい事業環境のなかで堅実な運営を続けています。


※本記事は、株式会社INPEXの有価証券報告書(第20期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. INPEXってどんな会社?


国内外の広範な地域で石油・天然ガス事業を推進し、エネルギーの安定供給と低炭素化事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は2006年4月に国際石油開発と帝国石油の経営統合により設立され、東京証券取引所に上場しました。2008年10月に両社を吸収合併して国際石油開発帝石へと商号を変更し、事業基盤を強化しました。その後、2021年4月に現在のINPEXへと商号を変更し、グローバルな展開を続けています。

現在の体制として、従業員数は連結で3,720名、単体で889名となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は政府である経済産業大臣であり、第2位および第3位には資産管理業務などを行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
経済産業大臣 23.74%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.43%
日本カストディ銀行(信託口) 5.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長社長執行役員は上田隆之氏が務めています。取締役14名中、社外取締役は4名です。

氏名 役職 主な経歴
上田隆之 代表取締役社長社長執行役員 1980年通商産業省入省。資源エネルギー庁長官、経済産業審議官などを経て、2017年同社副社長執行役員。2018年より現職。
大川人史 取締役副社長執行役員総務本部長兼オセアニア事業本部長、海外事業統括 1984年日中石油開発入社。インドネシア石油を経て、2022年同社オセアニア事業本部長。2025年より現職。
滝本俊明 取締役副社長執行役員経営企画本部長、法務担当、コンプライアンス担当、低炭素事業統括 1987年帝国石油入社。同社ユーラシア・中東事業本部ロンドン事務所長等を経て、2024年経営企画本部長。2026年より現職。
山田大介 取締役専務執行役員財務・経理本部長 1984年日本興業銀行入行。みずほフィナンシャルグループ専務執行役員等を経て、2019年同社入社。2024年より現職。
藤井洋 取締役顧問 1980年ジャパン石油開発入社。同社代表取締役社長等を経て、2025年同社代表取締役副社長執行役員。2026年より現職。


社外取締役は、柳井準(元三菱商事代表取締役副社長執行役員)、飯尾紀直(元三井物産代表取締役専務執行役員)、森本英香(元環境事務次官)、ブルース・ミラー(元駐日豪州大使)です。

2. 事業内容


同社グループは、国内および海外における石油・天然ガス事業を主たる事業として展開しています。

国内石油・天然ガス事業(国内O&G)


日本国内における石油・天然ガスの探鉱、開発、生産を展開しています。南長岡ガス田や直江津LNG基地などの自社インフラ施設を活用し、国内の需要家に向けてエネルギーを安定的かつ効率的に供給しています。

主な収益源は、顧客である都市ガス事業者等への天然ガスなどの販売代金です。事業の運営は、主に子会社であるINPEX JAPANやINPEXパイプラインが担っています。

海外石油・天然ガス事業(海外O&G)- イクシスプロジェクト


豪州におけるイクシスガス・コンデンセート田および周辺の探鉱プロジェクトを対象としています。同社グループが主体となるオペレーターとして、LNGプラントの建設や大規模な生産施設の運営を推進しています。

主な収益源は、生産されたLNGや液化石油ガス、コンデンセートなどの販売代金です。事業の運営は、子会社であるINPEX Ichthys Pty Ltdなどを通じて行われています。

海外石油・天然ガス事業(海外O&G)- その他のプロジェクト


イクシスプロジェクトを除く、豪州、東南アジア、欧州、アブダビなどの海外地域における石油・天然ガスの探鉱、開発、生産プロジェクトを展開しています。多様なパートナーと共同で事業を遂行しています。

主な収益源は、各地域で生産された原油や天然ガスの販売代金です。事業の運営は、ジャパン石油開発やINPEX北カスピ海石油などの各プロジェクトを管轄する子会社が担っています。

その他


石油・天然ガス開発以外の領域として、地熱発電や洋上風力発電などの再生可能エネルギー・電力関連事業や、CCS・水素事業、原油販売代理仲介事業などを展開し、脱炭素社会に向けた取り組みを進めています。

主な収益源は、再生可能エネルギー事業による売電収入や業務受託収入などです。事業の運営は、INPEX地熱開発などの子会社や関連会社を通じて行われています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は2024年12月期に増加したものの、2025年12月期は原油の販売価格下落などの影響により減収に転じています。税引前利益も同様の傾向を示しており、利益率は50%台後半の高い水準で推移していますが、当期利益は直近で減益となっています。

項目 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上収益 21,645億円 22,658億円 20,114億円
税引前利益 12,534億円 12,988億円 11,735億円
利益率(%) 57.9% 57.3% 58.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 3,217億円 4,273億円 3,938億円

(2) 損益計算書


売上収益の減少に伴い、営業利益も減少していますが、営業利益率は56%台の高い水準を維持しています。一方で、売上総利益については前期から増加しており、売上総利益率も改善を見せています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 22,658億円 20,114億円
売上総利益 1,178億円 1,540億円
売上総利益率(%) 5.2% 7.7%
営業利益 12,718億円 11,354億円
営業利益率(%) 56.1% 56.5%


販売費及び一般管理費1,180億円のうち、社員給与が255億円(構成比21.6%)、研究開発費が158億円(同13.4%)、輸送費が145億円(同12.3%)を占めています。

(3) セグメント収益


すべての報告セグメントにおいて、販売価格の下落や販売数量の減少などにより減収となっています。利益面では、国内およびイクシスプロジェクトの事業が探鉱費の減少等により増益を確保した一方、その他のプロジェクト事業は減益となりました。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期)
国内O&G 2,170億円 1,922億円
海外O&G-イクシスプロジェクト 3,952億円 3,349億円
海外O&G-その他のプロジェクト 16,579億円 14,869億円
その他 247億円 244億円
調整額 -290億円 -270億円
連結(合計) 22,658億円 20,114億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、探鉱・開発活動等に多額の資金を必要とするため、内部留保に加え外部からの資金調達を基本方針としています。

営業活動では、営業債権等の減少により資金収入が増加しました。投資活動では、投資取得支出の増加等により資金使用額が増加しました。財務活動では、コマーシャル・ペーパーや短期借入金の増加等により資金使用額が減少しました。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 6,547億円 6,939億円
投資CF -2,904億円 -6,687億円
財務CF -3,499億円 -1,107億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「エネルギーの開発・生産・供給を、持続可能な形で実現することを通じて、より豊かな社会づくりに貢献します」という経営理念を掲げています。社会に不可欠なエネルギーを安定的かつ効率的に供給するとともに、持続可能な社会の実現に向けた役割を果たすことを目指しています。

(2) 企業文化


経営理念を体現するため、役員や従業員が共通に大切にする価値観として「INPEXバリュー」を定めています。「安全第一」「多様性の尊重」「開拓者精神」「誠実」「社会とともに」という5つの行動指針を通じて、既成概念に縛られず自由闊達に意見を出し合い、イノベーションを起こせる組織文化の構築を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は長期戦略「INPEX Vision 2035」および「2025-2027年中期経営計画」を策定し、2050年ネットゼロの実現とエネルギーの安定供給を両立させる目標を掲げています。

* 総還元性向50%以上
* 2027年に温室効果ガス排出原単位を2019年比で35%低減

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、ネットゼロへの移行過程において「現実的な移行期の燃料」として重要性が高まる天然ガスおよびLNGの供給をクリーンな形で推進する成長戦略を描いています。

* 既存の石油・天然ガス生産施設へのCCS導入の推進
* クリーン水素・アンモニア等の低炭素化ソリューションの提供
* 地熱や風力など再生可能エネルギーおよび電力関連分野の取組み強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「INPEX HR VISION」として、多様性の受容、成長意欲、自律的行動をもとにビジネス現場で価値を創出する人材の育成を目指しています。「現場力」「技術力」「国際性」という強みを磨き、グローバル企業として責任ある経営を持続的に実施し、高い国際競争力を有する組織づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 39.2歳 11.4年 13,233,495円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 78.1%
男女賃金差異(全労働者) 66.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 64.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 93.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、高エンゲージメント者の割合(19.7%)、心理的安全性(52.4)、新規採用者に占める女性の割合(32.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 資源の探鉱・開発・生産に成功しないリスク

鉱区権益の取得や資源の発見を目的とした探鉱活動には多額の費用が必要となります。しかし、近年の技術進歩をもってしても商業生産が可能な規模の資源が発見できる確率は低く、開発が成功しない場合には同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 油価・天然ガス価格の変動によるリスク

原油や海外における天然ガスの販売価格の大部分は国際市況により決定されます。世界的な需給バランスや経済情勢、産油国政府の方針など多様な要素によって価格が著しく変動した場合、同社グループの収益に大きな影響を与える可能性があります。

(3) 気候変動への対応に伴うリスク

温室効果ガス排出削減に向けた世界的な環境規制の強化やカーボンプライシング制度の導入により、事業コストが増加するリスクがあります。また、再生可能エネルギーへの移行が加速し、長期的には石油・天然ガスの需要が減少する可能性があります。

(4) 海外事業活動におけるカントリーリスク

同社グループは日本国外で多数の探鉱・開発事業を遂行しています。事業を展開する産油国やその周辺国において、政治・経済情勢の変化、法制度や税制の変動、あるいは国際紛争などが発生した場合、操業が停止するなど事業活動に多大な影響が及ぶリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。