金下建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

金下建設 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

金下建設は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、土木・建築工事などの建設事業を主力とするほか、建設資材の製造販売や飲食事業を展開しています。直近の業績は、受注工事高の減少等の影響により前年同期比で減収となり、それに伴う売上総利益の縮小から営業利益および経常利益も減益となる厳しい経営環境にあります。


※本記事は、金下建設株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2025年1月1日 至 2025年12月31日、2026年3月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 金下建設ってどんな会社?


土木・建築を中心とした建設事業を主力に、資材の製造販売等も展開する企業です。

(1) 会社概要


1935年に土木請負業として創業し、1951年に金下建設として設立されました。1954年に道路舗装工事部門、1960年に建築工事部門へ進出し、事業領域を拡大してきました。1973年には大阪証券取引所市場第二部に株式を上場しています。直近では2024年に回転寿司店をオープンし、飲食事業にも参入しました。

現在の従業員数は連結で171名、単体で163名となっています。筆頭株主は事業会社の上原成商事で、第2位は同社代表取締役社長の金下昌司氏が名を連ねています。第3位には信託銀行の退職給付信託口が続いており、事業会社や経営陣を中心とした安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
上原成商事 9.44%
金下昌司 7.04%
日本カストディ銀行(三井住友信託銀行再信託分・ライト工業退職給付信託口) 5.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は金下昌司氏が務めており、社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
金下昌司 取締役社長(代表取締役) 1989年4月同社入社。2003年3月取締役副社長等を経て、2006年3月より現職。
芦原寿彦 取締役常務執行役員管理部門統括 1988年4月同社入社。土木部工務部長、取締役執行役員土木部門統括などを経て、2025年3月より現職。
井上芳一 取締役常務執行役員営業部門統括京都支店長 1993年4月同社入社。執行役員大阪支店長、取締役上席執行役員営業部門統括などを経て、2025年3月より現職。
金下和司 取締役上席執行役員経営企画部長 2020年11月同社入社。2023年3月より現職。
浮穴勝 取締役執行役員土木部門統括土木部長 1990年4月同社入社。土木部工事部長、執行役員土木部副部長などを経て、2025年3月より現職。
近藤克信 取締役執行役員建築部門統括建築部長 1994年4月同社入社。建築部部門長補佐、執行役員建築部副部長などを経て、2025年3月より現職。


社外取締役は、田中彰寿(弁護士法人田中彰寿法律事務所代表社員)、岡野勲(岡野税理士事務所所長)、今井賀南子(三洋商事代表取締役専務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」および「製造・販売事業等」を展開しています。

(1) 建設事業


土木工事、建築工事を中心とする建設事業を展開し、官公庁および民間企業を顧客としています。多種多様な工事の受注・施工を通じて、豊かな社会環境と安心で安全な生活空間の創造に貢献するサービスを提供しています。

官公庁や民間企業からの工事請負代金を主な収益源としています。事業の運営は金下建設が主体となって行い、一部の工事については関係会社へ発注するほか、司建設や和田組などの関係会社が受注した工事の施工協力も行っています。

(2) 製造・販売事業等


建設事業に関連する附帯事業として、アスファルト製品等の製造販売や産業廃棄物の中間処理(リサイクル)、生コンクリート等の建設資材の販売を行っています。また、直近では回転寿司店の運営による飲食事業も展開しています。

建設資材の販売代金やリサイクル処理費用、および飲食店での顧客からの代金を主な収益源としています。金下建設がアスファルト製品の製造販売や飲食事業を運営するほか、橋立生コンクリート工業が生コンクリートの製造販売、ソーゴーギケンが建設コンサルタント事業を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の売上高は、2023年12月期にピークを迎えた後、足元では減少傾向にあります。利益面でも、売上高の変動に連動する形で2024年12月期まで経常利益と利益率が順調に改善してきましたが、当期は受注工事高の減少等の影響により減益に転じ、利益率も低下しています。厳しい受注競争や建設コスト上昇等の環境変化が業績に影響を及ぼしていることが窺えます。

項目 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 76億円 99億円 107億円 97億円 88億円
経常利益 0.3億円 2.9億円 4.1億円 4.8億円 3.3億円
利益率(%) 0.4% 2.9% 3.9% 4.9% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.5億円 1.9億円 2.5億円 3.0億円 2.2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しており、それに伴い売上総利益も縮小しています。売上総利益率自体もわずかに低下しており、資材価格や労務単価の高騰による原価上昇の影響が推察されます。結果として、営業利益は前期から大きく減少し、営業利益率も1.1%に留まるなど、本業の収益性低下が課題となっています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
売上高 97億円 88億円
売上総利益 12億円 10億円
売上総利益率(%) 12.5% 11.9%
営業利益 2.7億円 1.0億円
営業利益率(%) 2.8% 1.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が3.9億円(構成比42%)、役員報酬が1.6億円(同17%)を占めています。また、主力の建設事業における完成工事原価では、外注費が42億円(構成比60%)、経費が16億円(同23%)、材料費が10億円(同15%)となっており、外部協力会社への委託費用が原価の大部分を占める構造となっています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業は、受注工事高の減少により前期比で減収となり、売上総利益の縮小からセグメント利益も減少しました。一方で、製造・販売事業等においては、アスファルト合材の販売や飲食事業により売上高は増加したものの、資材価格の高騰等が影響し、利益面では大幅な減益となっています。

区分 売上(2024年12月期) 売上(2025年12月期) 利益(2024年12月期) 利益(2025年12月期) 利益率
建設事業 93億円 84億円 7.7億円 6.5億円 7.8%
製造・販売事業等 4.0億円 4.5億円 0.4億円 0.1億円 2.7%
連結(合計) 97億円 88億円 2.7億円 1.0億円 1.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

金下建設は、安定した営業活動によるキャッシュ・フローを生み出し、事業運営の基盤を強化しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、将来の成長に向けた戦略的な投資を示唆しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、健全な財務基盤の維持に貢献しています。

項目 2024年12月期 2025年12月期
営業CF 6.5億円 0.7億円
投資CF -2.5億円 2.8億円
財務CF -1.1億円 -2.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「一、まず『健康』であること 一、人には『親切』にすること 一、受けた『恩義』を忘れないこと」を社訓として掲げています。さらに経営理念として、社会から必要とされ続ける企業であるために、関わるすべての人々に感謝し、親切・丁寧なものづくりを通じて世の中に貢献する企業を目指すことを基本方針として定めています。

(2) 企業文化


社会や顧客からの信用を第一とし、親切で丁寧なモノづくりを重視する姿勢が企業文化として根付いています。また、従業員の行動指針として社訓を重んじ、コンプライアンスの徹底や高い倫理観に基づいた誠実な行動を求めています。社会や地域から信頼される企業市民としての自覚を持ち、安全管理や環境への配慮を徹底する風土が特徴です。

(3) 経営計画・目標


同社は、企業価値の向上のため、安定的な収益確保を重要な目標として掲げています。具体的な中短期の数値目標としては、成長の原動力や収益性のバロメーターとなる売上高および営業利益を重要な経営指標として位置づけ、その達成と向上を目指して事業活動を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


建設市場における競争激化やコスト上昇に対応するため、既存顧客との関係強化に加え、新規顧客の開拓や有望市場への営業活動、設計施工案件の獲得に注力します。また、全社的なDX化の推進による生産性向上や現場管理体制の強化を通じて収益性の改善を図ります。さらに、再生可能エネルギーや飲食事業への取り組みを継続し、持続的な成長と地域社会の活性化に寄与していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を経営理念を実現するための最も重要な経営資源と捉え、その力を最大限に発揮できるような環境づくりに投資しています。「自ら成長しようとする従業員に力を貸し、耳を傾け、実行できる支えとなる」を人材育成方針とし、長期インターンシップの受け入れや奨学金返済支援制度等の導入による多様な人材確保と、外部講習の受講支援など適時必要な教育機会の提供に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年12月期 48.5歳 21.0年 6,182,840円


※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.7%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率および男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設市場の縮小と競争激化


建設事業にかかる環境の変化等によって建設市場が著しく縮小した場合、競合他社との受注競争が激化し、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、同社は官民を問わずあらゆる市場を事業領域と定め、市場動向の変化を早期に察知できるよう情報収集に努めています。

(2) 資材価格の高騰と労働力不足


原材料価格や資材価格、労務単価の高騰が生じた際、その価格変動を請負金額に反映することが困難な場合や、資材・労働者の不足が発生した場合、建設コストの上昇を通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は最新の動向を把握するため情報交換を行い、生産性の向上に努めています。

(3) 取引先の信用リスク


貸倒れが懸念される取引先や債務者について、予想を超える規模の貸倒れが発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は、取引先の倒産予測値や新規取引先の経営状況を継続的に把握し、貸倒れが懸念される場合には貸倒実績率や個別検討に基づき適切に貸倒引当金を計上してリスクに備えています。

(4) 情報セキュリティリスク


事業活動において、サイバー攻撃による重要情報の漏洩やシステム障害が発生した場合、事業の停止や社会的信用の失墜により業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はアンチウイルスソフトの導入といった技術的なセキュリティ対策に加え、従業員に対する定期的なセキュリティ教育を実施してリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。