※本記事は、株式会社サンウェルズ の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サンウェルズってどんな会社?
石川県金沢市発祥の介護企業で、パーキンソン病専門ホーム「PDハウス」の全国展開を主力事業としています。
■(1) 会社概要
2006年に設立され、デイサービス事業を開始しました。2011年に現社名へ商号変更し、2018年にはパーキンソン病専門フロアを開設しました。2019年に福岡で「PDハウス」を開設し全国展開を本格化。2022年に東証グロース市場へ上場し、2024年7月に東証プライム市場へ区分変更しました。
同社(単体)の従業員数は3,302名です。筆頭株主は創業者である苗代亮達氏の資産管理会社である杏で、第2位は苗代亮達氏本人、第3位はUBSの投資部門となっています。創業家が過半数の株式を保有するオーナー系企業です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 杏 | 41.62% |
| 苗代 亮達 | 12.04% |
| UBS AG LONDON ASIA EQUITIES | 5.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は苗代亮達氏です。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 苗代 亮達 | 代表取締役社長 | アイテム代表取締役等を経て、2006年に同社(旧ケア・コミュニケーションズ)設立、代表取締役社長より現職。 |
| 上野 英一 | 取締役コーポレート本部長 | 北陸銀行石川地区事業部副本部長兼金沢支店長、EIZO社外取締役等を経て、2018年同社入社より現職。 |
| 山本 英博 | 取締役(常勤監査等委員) | 北國銀行取締役兼執行役員経営管理部長、北國総合リース代表取締役社長等を経て、2023年同社社外取締役より現職。 |
社外取締役は、畠善昭(税理士法人畠経営グループ会長)、中西祐一(中西祐一法律事務所代表弁護士)、中島恵子(中島恵子税理士事務所代表税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「介護事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 介護施設の運営事業
パーキンソン病専門ホーム「PDハウス」を中心に、医療特化型住宅、認知症対応型グループホーム、デイサービス、訪問看護・介護事業所等を運営しています。主な顧客は要介護認定を受けた高齢者や特定疾患の患者です。「PDハウス」では専門医監修のリハビリや24時間看護体制を提供しています。
収益は、介護・医療保険制度に基づく保険給付(国保連等からの報酬)と、利用者からの自己負担金(利用料、家賃、食費等)から構成されています。運営は主に同社が行っています。
■(2) その他事業
福祉用具のレンタル・販売、住宅リフォーム、加圧トレーニングジムの運営を行っています。福祉用具事業では利用者に最適な用具の提案やバリアフリー工事を行い、加圧トレーニング事業では専用スタジオを運営しています。
収益は、福祉用具のレンタル・販売料や住宅改修費、トレーニングジムの会費や利用料等です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。※同社は連結財務諸表を作成していないため、単体の数値を記載します。
■(1) 業績推移
売上高は「PDハウス」の新規開設により順調に拡大しており、特に直近の2025年3月期は大幅な増収となりました。一方で、利益面では2024年3月期まで経常増益基調でしたが、2025年3月期は診療報酬返還に伴う費用や特別調査費用等の計上により大幅な減益となり、当期純利益は赤字に転落しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 54億円 | 82億円 | 132億円 | 201億円 | 265億円 |
| 経常利益 | 3.0億円 | 1.2億円 | 6.7億円 | 17億円 | 3.9億円 |
| 利益率(%) | 5.5% | 1.4% | 5.1% | 8.6% | 1.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.1億円 | 0.2億円 | 3.1億円 | 8.0億円 | -9.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、新規開設に伴う人件費等の増加により営業利益は減少しました。特に当期は特別損失の計上が大きく、最終赤字となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 201億円 | 265億円 |
| 売上総利益 | 51億円 | 49億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.6% | 18.5% |
| 営業利益 | 23億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 11.3% | 4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比29%)、採用費が6億円(同15%)を占めています。売上原価については、労務費が160億円(構成比74%)を占め、人件費の負担が大きい構造となっています。
■(3) セグメント収益
「PDハウス」の新規開設が進み、同サービスの売上高が大幅に増加しました。その他のサービスも概ね堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| PDハウス | 171億円 | 233億円 |
| 医療特化型住宅 | 19億円 | 20億円 |
| グループホーム | 1.7億円 | 1.7億円 |
| デイサービス | 4.3億円 | 4.7億円 |
| 福祉用具事業 | 4.8億円 | 5.0億円 |
| 加圧トレーニング事業 | 0.3億円 | 0.3億円 |
| 合計 | 201億円 | 265億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 26億円 | 19億円 |
| 投資CF | -57億円 | -44億円 |
| 財務CF | 38億円 | 48億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できませんが(前期は16.3%で市場平均を上回る)、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は22.0%で市場平均(プライム非製造業平均24.2%)をやや下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は経営理念として「自らが輝き、人を元気にする」を掲げています。お客様の心を元気にするためには、職員自身が仕事を通じて自らを磨き、輝いて生きることが必要であると考えています。社員が輝くことで、利用者の心も更に輝き出すという考えに基づいています。
■(2) 企業文化
同社はミッションとして「福祉の職場をもっと魅力的に!」「介護サービスに進化と変化を!」「未来を作る「人」を育成する!」の3つを定めています。夢と誇りを持って仕事に取り組み、介護の常識にとらわれないサービスづくりに挑戦する文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指し、売上高および経常利益率を重要な経営指標と位置づけています。また、「PDハウス」を含めた有料老人ホームにおける提供可能室数および稼働率も主要な指標として重視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「PDハウス」のブランド構築と事業拡大を戦略の中心としています。大学病院等との共同研究による新サービスの創造や、大都市圏・地方中核都市への全国展開を推進しています。一方で、訪問看護事業における不正請求問題を受け、リスク管理体制の再構築やコンプライアンス教育の徹底など、再発防止策と内部統制強化を最優先課題として取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「PDハウス」の全国展開に伴う雇用の創出と、働き手の待遇改善に取り組んでいます。専門医監修の社内資格「PDライセンス」制度を導入し、パーキンソン病ケアの専門家育成に注力しています。また、コンプライアンス研修の充実や、定期的な従業員アンケート(再発防止策対応のため一時見送りあり)を通じた職場環境の改善を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.4歳 | 2.0年 | 4,838,140円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 28.9% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 74.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 89.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 92.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 86.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(13.6%)、年次有給休暇取得率(66.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コンプライアンスに関するリスク
同社は、訪問看護事業において過大な診療報酬請求が行われた事実が判明し、過年度決算の訂正を行いました。法令違反や不正行為が発生した場合、行政処分や社会的信用の失墜により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。再発防止策の徹底が急務となっています。
■(2) 虐待等の防止への取組とリスク
同社は高齢者虐待防止法に基づく取り組みを進めていますが、虐待や不適切な身体拘束が発生した場合、法令による処罰や社会的信用の失墜により、業績に影響を与える可能性があります。研修やマニュアル整備で防止に努めています。
■(3) 内部管理体制のリスク
急速な事業拡大に対し、内部管理体制の構築が追いつかないリスクがあります。実際、内部統制報告書において開示すべき重要な不備が確認されました。適切な業務運営体制やガバナンスが機能しない場合、不正の発生や経営判断の誤りにつながる恐れがあります。
■(4) 有利子負債に関するリスク
同社は施設開設等の資金調達により、有利子負債の割合が株主資本に対して高くなっています。金利水準の変動や、財務制限条項への抵触(2025年3月期末時点で一部抵触あり)などが生じた場合、業績や資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。



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