※本記事は、株式会社サンウェルズの有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サンウェルズってどんな会社?
同社は、パーキンソン病に特化した「PDハウス」など、専門的な医療ケアを提供する介護施設の運営を展開しています。
■(1) 会社概要
2006年に通所介護サービスの提供を目的としてケア・コミュニケーションズ(現同社)が設立されました。2011年に現社名へ変更し、住宅型有料老人ホームを開設しました。2018年にパーキンソン病患者専門フロアを開設後、2019年には専門の「PDハウス」の全国展開を開始しました。その後、2022年に東証グロース市場へ上場を果たしています。
従業員数は単体で3,570名です。大株主については、筆頭株主が創業者であり代表取締役社長である苗代亮達氏の資産管理会社である杏であり、第2位も創業者の苗代亮達氏となっています。第3位は金融機関の保管口座です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 杏 | 41.62% |
| 苗代 亮達 | 12.04% |
| BNYM SA/NV FOR BNYM FOR BNYM GCM CLIENT ACCTS M ILM FE(常任代理人 三菱UFJ銀行) | 5.92% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は苗代亮達氏です。社外取締役比率は71.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 苗代 亮達 | 代表取締役社長 | 2006年にケア・コミュニケーションズ(現同社)を設立し、代表取締役に就任。2011年より同社代表取締役社長。 |
| 上野 英一 | 取締役コーポレート本部長 | 1976年に北陸銀行へ入行し、常任監査役等を歴任。2018年に同社社外取締役に就任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、新俊彦(元国立社会保障・人口問題研究所企画部長)、山本英博(元北國総合リース社長)、畠善昭(元青山財産ネットワークス金沢社長)、中西祐一(中西祐一法律事務所開設)、中島恵子(中島恵子税理士事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「介護事業」の単一セグメント事業を展開しています。
■(1) 介護施設の運営事業(PDハウス)
パーキンソン病患者を対象とした専門の有料老人ホーム「PDハウス」を全国で展開しています。専門医の監修による特化したリハビリプログラムや、24時間体制での看護師による服薬管理・医療処置を提供し、利用者に安心で安全な生活環境を整備しています。
入居者からの自己負担金(施設家賃、食事代等)に加え、介護保険や医療保険、障害福祉サービスによる保険給付が主な収益源です。当事業の運営は同社が行っており、各都道府県の国民健康保険団体連合会等から報酬を受け取っています。
■(2) 介護施設の運営事業(医療特化型住宅・その他)
がん等の難病患者や認知症患者を対象とした医療特化型住宅「太陽のプリズム」や、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、通所介護(デイサービス)、訪問看護などの各種介護・生活支援サービスを展開しています。
これらのサービスにおいても、利用者からの自己負担金と、審査支払機関から得る介護保険・医療保険による給付が収益となります。各施設の運営やサービスの提供は、同社が主体となって行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間において、主力である「PDハウス」の全国展開を背景に売上高は継続して成長しています。一方、利益面では新規開設に伴う先行投資や事業構造の転換等により、直近2期間は経常損失および当期純損失を計上しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 82億円 | 132億円 | 201億円 | 265億円 | 281億円 |
| 経常利益 | 1億円 | 7億円 | 17億円 | 4億円 | -22億円 |
| 利益率(%) | 1.4% | 5.1% | 8.6% | 1.5% | -7.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.2億円 | 3億円 | 8億円 | -9億円 | -17億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年同期比で増加したものの、新規施設の開設に伴う人件費等の増加により売上総利益は減少しました。また、業務規模拡大による本社従業員の採用費等が増加し、営業赤字に転じています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 265億円 | 281億円 |
| 売上総利益 | 49億円 | 28億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.5% | 9.8% |
| 営業利益 | 11億円 | -12億円 |
| 営業利益率(%) | 4.2% | -4.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比33%)、採用費が6億円(同14%)、租税公課が4億円(同11%)を占めています。売上原価においては、労務費が184億円(構成比73%)、経費が48億円(同19%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力であるPDハウス事業の売上高が大きく成長し、全体の収益を牽引しています。一方、医療特化型住宅などの既存事業の売上は微減から横ばいで推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| PDハウス | 233億円 | 252億円 |
| 医療特化型住宅 | 20億円 | 18億円 |
| グループホーム | 2億円 | 2億円 |
| デイサービス | 5億円 | 5億円 |
| 福祉用具事業 | 5億円 | 5億円 |
| 加圧トレーニング事業 | 0.3億円 | 0.3億円 |
| 連結(合計) | 265億円 | 281億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続する「勝負型」となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 19億円 | -3億円 |
| 投資CF | -44億円 | -13億円 |
| 財務CF | 48億円 | 1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されておらず、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は15.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は経営理念として「自らが輝き、人を元気にする」を掲げています。介護という仕事を通して利用者の「心」を元気にするためには、まず従業員自身が仕事を通じて自らを磨き、自分らしく輝いて生きることが必要不可欠であると考えています。
■(2) 企業文化
「福祉の職場をもっと魅力的に!」「介護サービスに進化と変化を!」「未来を作る『人』を育成する!」というミッションを定めています。介護の常識にとらわれることなく、クリエイティブに発想し自ら行動する「輝く大人」の育成を目指す文化を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目的としており、収益力の強化と経営の効率化を図るため、売上高および経常利益率を重要な経営指標と位置づけています。また、「PDハウス」を中心とした有料老人ホームにおける提供可能室数および稼働率も主要な指標として捉えています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「PDハウス」を経営戦略の中心に位置づけ、パーキンソン病専門施設としての提供サービスを磨き上げ、大都市圏や地方の中核都市を中心に全国展開を計画しています。大学病院や研究機関との共同研究を進め、より効果的な新サービスを創造することで差別化を図り、安定的かつ持続的な成長を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「自らが輝き人を元気にする」という理念への共感性と専門ケアへの適性を重視し、リファラル採用等を通じて定着につながる人材確保を進めています。また、社内資格制度「PDライセンス」の導入や役職別研修体系の整備により、専門性の向上と組織基盤の強化に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.6歳 | 2.4年 | 4,842,157円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 29.1% |
| 男性育児休業取得率 | 77.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 88.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 90.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 93.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(74.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コンプライアンスおよび内部管理体制のリスク
事業に関係する法令や企業倫理の遵守を最重要課題とし、専門部署の設置や内部監査の実施を通じて体制強化を図っています。事業拡大に伴い内部管理体制の構築が追いつかない場合や法令違反等が生じた場合、社会的信頼の失墜や行政処分等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 高齢者への虐待防止や事故に係るリスク
介護度の高い高齢者に対するサービス提供において、介護事故や感染症、従業員による不適切な身体拘束等が発生するリスクがあります。同社は研修の実施やマニュアル整備により未然防止に努めていますが、事象が発生した場合は損害賠償や指定の取消しなどにより事業活動に支障が生じる可能性があります。
■(3) 資金調達と有利子負債に関するリスク
新規施設の開設に伴う設備資金等について、金融機関からの借入やリース取引を活用しているため、有利子負債の比率が高くなっています。現行の金利水準が変動した場合や、借入契約に付随する財務制限条項への抵触による影響が生じた場合、財務状態やキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。



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