Japan Eyewear Holdings 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Japan Eyewear Holdings 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、眼鏡の製造・販売を行う企業グループです。「金子眼鏡」と「フォーナインズ」の2大ブランドを展開し、製造から販売までを手掛けるSPA体制や高価格帯戦略が強みです。2025年1月期の業績は、インバウンド需要の回復や出店拡大により、大幅な増収増益を達成しています。


※本記事は、Japan Eyewear Holdings株式会社 の有価証券報告書(第6期、自 2024年2月1日 至 2025年1月31日、2025年4月28日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. Japan Eyewear Holdingsってどんな会社?


Japan Eyewear Holdingsは、「金子眼鏡」と「フォーナインズ」という日本を代表する高級アイウェアブランドを傘下に持つ持株会社です。福井・鯖江の職人技術を活かした自社製造(SPA)体制と、強力なブランド力が特徴です。

(1) 会社概要


1958年に創業した金子眼鏡商会をルーツとし、2019年に投資ファンド(NIC)の支援を受けて持株会社体制へ移行しました。2021年には高級ブランド「フォーナインズ」グループを買収し、事業基盤を拡大。2023年に東京証券取引所スタンダード市場へ上場しました。直近では2024年に鯖江のフレーム製造事業者である株式会社タイホウを子会社化し、製造能力の強化を進めています。

連結従業員数は580名、単体では11名の体制です。筆頭株主は代表取締役社長の金子真也氏が代表を務める金子インベストで、第2位には日本企業成長投資がアドバイザーとして関与する投資ファンドが名を連ねています。第3位も投資ファンドとなっており、創業家とファンドが大株主となっています。

氏名 持株比率
金子インベスト 37.70%
日本企業成長投資1号投資事業有限責任組合 14.33%
Camellia Fund I Cayman, LP 7.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は金子真也氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
金子 真也 代表取締役社長 1981年金子眼鏡入社。1999年より同社代表取締役社長。金子ホールディングス社長等を経て2023年5月より現職。
柴田 俊一 取締役管理本部長兼管理部長 日本政策金融公庫、日本マクドナルド、すかいらーく等を経て2019年金子眼鏡入社。2023年5月より現職。
秋里 英寿 取締役(監査等委員) ボストンコンサルティンググループ等を経て日本企業成長投資パートナー。2023年5月より現職。


社外取締役は、中井ちはる(公認会計士)、森口倫(弁護士・パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金子眼鏡事業」および「フォーナインズ事業」を展開しています。

(1) 金子眼鏡事業


世界的な眼鏡産地である福井・鯖江の職人技術を背景に、クラシックなデザインを中心とした眼鏡の企画・製造・販売を行っています。主な顧客は国内外の幅広い層で、年齢・性別を問わず支持されています。

収益は主に直営店における一般消費者への小売販売と、眼鏡専門店やアパレル業者への卸売販売から得ています。製造から販売までを一貫して行うSPA体制を構築しており、高い収益性を実現しています。運営は主に金子眼鏡が行っています。

(2) フォーナインズ事業


「眼鏡は道具である。」をコンセプトに、機能性とモダンなデザインにこだわった高級眼鏡フレームの企画・販売を行っています。主な顧客は40代~50代の男性を中心としています。

収益は直営店での小売販売および国内外の取扱店への卸売販売から得ています。企画・デザインを自社で行い、製造は主に鯖江の協力工場へ委託してきましたが、近年は製造会社を買収し内製化も進めています。運営は主にフォーナインズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりで成長を続けています。特に利益面では、利益率が年々向上しており、高い収益性を確立していることがわかります。当期利益も順調に拡大基調にあります。

項目 2022年1月期 2023年1月期 2024年1月期 2025年1月期
売上収益 71億円 107億円 135億円 167億円
税引前利益 5億円 13億円 33億円 49億円
利益率(%) 7.3% 12.2% 24.4% 29.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 1億円 3億円 22億円 40億円

(2) 損益計算書


売上収益の大幅な増加に伴い、各利益段階でも増益を達成しています。売上総利益率が高水準で推移しており、ブランド力の強さが窺えます。営業利益率も向上しており、効率的な経営が行われています。

項目 2024年1月期 2025年1月期
売上収益 135億円 167億円
売上総利益 105億円 131億円
売上総利益率(%) 77.5% 78.9%
営業利益 37億円 53億円
営業利益率(%) 27.3% 32.0%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が33億円(構成比42%)、減価償却費及び償却費が17億円(同21%)を占めています。売上原価においては、原材料及び商品の仕入が31億円(売上原価の89%)を占めています。

(3) セグメント収益


両セグメントともに増収増益を達成しました。金子眼鏡事業はインバウンド需要の拡大や新規出店が寄与し、大幅な増益となりました。フォーナインズ事業も価格改定や直営店の回復により好調に推移しています。

区分 売上(2024年1月期) 売上(2025年1月期) 利益(2024年1月期) 利益(2025年1月期) 利益率
金子眼鏡事業 86億円 108億円 29億円 41億円 37.7%
フォーナインズ事業 49億円 59億円 13億円 18億円 30.2%
調整額 - - -5億円 -5億円 -
連結(合計) 135億円 167億円 37億円 53億円 32.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**健全型**:営業で利益を出し、借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2024年1月期 2025年1月期
営業CF 34億円 53億円
投資CF -9億円 -24億円
財務CF -4億円 -34億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は26.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、アイウェアを通して世界中の人々に「夢」「感動」「幸福」を提供し続けることを企業目的としています。また、アイウェアを通して世界中の人々の文化的生活の向上に寄与し、もたらされる繁栄を関係する全ての人々と共有し、共に成長し社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「クラフツマンシップの伝統と革新を世界へ」という長期ビジョンのもと、純粋な情熱と妥協なき精神でアイウェアを作る職人気質を重視しています。また、フォーナインズブランドにおいては「眼鏡は道具である。」をコンセプトに、機能性やモダンデザインへのこだわりを大切にする文化があります。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と高い収益性の実現を目指し、経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標としてEBITDA(営業利益+減価償却費+識別可能資産償却費)を重視し、これらの向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


日本発の世界トップクラスの高価格アイウェアブランドを目指し、既存店の収益拡大、新規出店、インバウンド需要の取り込みを軸に国内売上の拡大を図ります。また、中国出店を足掛かりとしたアジア展開により海外売上の伸長を目指します。

* 継続的な単価の向上(戦略的なプライシング、高付加価値商品の提案)
* 着実な店舗網の拡大(年間数店舗程度の新規出店)
* 海外展開、インバウンド需要への対応(中国及び周辺諸国でのブランド認知向上)
* 内部管理体制の強化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


クラフツマンシップを原点とし、全ての従業員が職人としての気質を持つことを重視しています。多様化する顧客要望に対応するため、国籍・性別を問わず優秀な人材を確保し、働きやすい職場環境の整備に注力しています。また、業務を通じたOJTを中心に、専門スキル取得のための研修や資格取得支援を行い、従業員のスキルアップをサポートしています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年1月期 45.0歳 5.3年 6,340,606円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.2%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.3%
男女賃金差異(正規) 76.9%
男女賃金差異(非正規) 152.5%


※上記は連結子会社である金子眼鏡の数値です。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料価格の変動に係るリスク


製品の主要原材料であるアセテート、セルロイド、チタンなどの価格が市場環境により変動するリスクがあります。価格上昇時は製品価格への転嫁を基本方針としていますが、急騰により転嫁が遅れた場合や転嫁できない場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外展開・インバウンド需要の変動


中国や周辺諸国を中心とした海外展開を進めていますが、各国の政治・経済情勢や法規制の変更等のリスクがあります。また、パンデミック等による渡航制限でインバウンド需要が減少した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) のれん及び無形資産の商標権


総資産の過半を占める多額ののれん及び商標権を計上しています。これらは償却されず毎期減損テストが行われますが、事業の収益力が低下し減損損失を計上することになった場合、財政状態及び経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人材の確保について


業容拡大には優秀な人材の確保と育成が不可欠です。労働力人口の減少による競争激化や賃上げ圧力によるコスト増、または人材の流出や採用難が生じた場合、事業運営や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。