※本記事は、MITホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第16期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年02月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. MITホールディングスってどんな会社?
社会インフラ系システム開発やCAD・デジタルブック等のDXソリューションを提供する持株会社です。
■(1) 会社概要
同社の源流は1990年の株式会社システムイオ設立に始まります。2009年に単独株式移転により持株会社として同社を設立し、グループ体制へ移行しました。2020年にJASDAQ(スタンダード)へ上場を果たし、2022年には東京証券取引所の市場再編に伴いスタンダード市場へ移行しました。M&Aも積極的に行い、株式会社エーピーエスなどを子会社化しています。
同社グループの従業員数は連結382名、単体18名です。筆頭株主は会長の鈴木浩氏が代表を務める資産管理会社の7ベルティーピー株式会社で、第2位は鈴木浩氏個人、第3位は朝日生命保険相互会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 7ベルティーピー | 12.02% |
| 鈴木 浩 | 11.98% |
| 朝日生命保険相互会社 | 6.36% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は増田典久氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 増田 典久 | 代表取締役社長 | 大倉建設、日本アクティシステムズ等を経て1999年にシステムイオ入社。グループ各社の代表を歴任し、2022年より現職。 |
| 鈴木 浩 | 取締役会長 | 1990年にシステムイオを設立し取締役就任。同社およびグループ各社の代表を経て、2024年より現職。 |
| 三方 英治 | 常務取締役経営推進センター長 | 積水ハウスを経て2004年にシステムイオ入社。営業部長や執行役員を務め、2022年より現職。 |
| 野山 真二 | 取締役 | ライト工業を経て2001年にシステムイオ入社。事業部長や執行役員を経て、2020年より現職。 |
社外取締役は、菅千恵(元株式会社ヒューマンウェア代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「情報サービス事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) システムインテグレーションサービス
公共、金融、通信、エネルギー、運輸物流などの社会インフラを支える基幹システム開発やネットワーク基盤構築を行っています。大手メーカーやSIerからの受託開発を中心としつつ、中小規模事業者向けの直請け案件やコンサルティングも手掛けています。
開発や運用保守の対価として収益を得るモデルです。運営は主に株式会社システムイオ、株式会社エーピーエスが行っています。
■(2) DXソリューションサービス
デジタルブック作成ツール「Wisebook」によるデジタルマーケティングや、汎用CADソフト「DynaCAD」シリーズの開発・販売、図面電子化、ドローン講習などを提供しています。また、顔認証システムや教育ICT支援などのクラウドサービスも展開しています。
ライセンス料、クラウドサービス利用料、制作費などを収益源としています。運営は主に株式会社ビーガル、株式会社ネットウィンクスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2022年11月期から2025年11月期にかけて、売上高は48億円から51億円へと緩やかに拡大しましたが、直近では微減しています。利益面では変動があり、2024年11月期に大きく伸長したものの、直近では減益となりました。利益率は概ね1%台後半から3%台で推移しており、安定的な収益基盤の構築と利益率改善が課題となっています。
| 項目 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 44億円 | 48億円 | 52億円 | 51億円 |
| 経常利益 | 1.2億円 | 0.9億円 | 1.9億円 | 1.6億円 |
| 利益率(%) | 2.8% | 2.0% | 3.6% | 3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.5億円 | 0.2億円 | 0.7億円 | 0.5億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は52億円から51億円へとわずかに減少しました。売上総利益および営業利益も減少しており、減収減益となっています。売上総利益率は22.4%から21.5%へ、営業利益率は3.8%から3.3%へとそれぞれ低下しており、収益性の低下が見られます。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 52億円 | 51億円 |
| 売上総利益 | 12億円 | 11億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.4% | 21.5% |
| 営業利益 | 2.0億円 | 1.7億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 3.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.6億円(構成比27%)、役員報酬が1.4億円(同16%)を占めています。また、売上原価の構成比については詳細データがありませんが、人件費や外注費が主要なコストであると考えられます。
■(3) セグメント収益
主力のシステムインテグレーションサービスは、主要顧客からの受注は堅調でしたが、一部大型案件の終了やエンジニア不足による機会損失等により売上高は横ばいとなりました。DXソリューションサービスは、ストック型ビジネスは安定推移したものの、大型案件の反動減等により減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年11月期) |
|---|---|---|
| システムインテグレーションサービス | 44億円 | 44億円 |
| DXソリューションサービス | 8億円 | 7億円 |
| 連結(合計) | 52億円 | 51億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスで推移しています。これは、本業で稼いだ現金を投資に回しつつ、借入金の返済なども進めている状態であり、一般的に健全な財務運営が行われている「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.5億円 | 3.1億円 |
| 投資CF | -0.7億円 | -0.6億円 |
| 財務CF | -0.6億円 | -4.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「企業価値向上に貢献する Vitalize Company グループ」を掲げています。グループ全社が「知的アスリート集団」を目指し、持てる知識を結集して創造力を発揮することで、最高品質のサービスによるイノベーションとビタミンを社会に提供し続けることを理念としています。
■(2) 企業文化
グループ共通コンセプトとして「Pro’s TeQ(プロズテック)」を掲げています。これは、収益力(Profit)、営業力(Sales)、技術力(Technology)、品質力(Quality)を高めるための取り組みを示すものであり、プロフェッショナルとしての技術と品質を追求する文化の醸成を図っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、利益の株主還元と社員還元を図るために収益力の向上を目標としています。特に主力のシステムインテグレーションサービスにおいては、「売上高」と「人月工数」を重要な経営指標(KPI)と位置づけています。期首に月次目標を提示し、進捗管理を行うことで業務拡大を明確化しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存顧客との信頼関係維持に加え、上流工程を担うプライム案件の拡大や高付加価値サービスの提供を目指しています。また、人材育成による技術力強化、DXソリューション分野における自社プロダクト(Wisebook、DynaCAD)への選択と集中、M&Aの活用による事業領域拡大などを重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Pro’s TeQ」コンセプトのもと、人材育成を最重要課題と位置づけています。スキルアップ研修や資格取得支援などの教育体制を充実させるとともに、処遇改善を通じてエンゲージメント向上と定着を図っています。次世代リーダーや高度技術者の育成にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 44.2歳 | 9.4年 | 4,335,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 50.0% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 76.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 64.6% |
※男性育児休業取得率について、HTML原文には「-」と記載されています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(77.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不採算案件の発生及び売上計上
システム開発において、納期遅延や工数増加、納品後の不具合対応等により追加コストが発生し、採算が悪化する可能性があります。これにより受注損失引当金の計上が必要となる場合など、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はプロジェクト管理の徹底等で対策を進めています。
■(2) 人材の確保
事業拡大には優秀な技術者や管理者の確保が不可欠ですが、IT人材の不足や流出が生じた場合、事業運営に支障をきたす可能性があります。同社は採用強化や研修制度の充実、処遇改善等により人材確保に努めています。
■(3) 特定顧客への依存
システムインテグレーションサービスにおいて、特定の大手顧客(株式会社日立社会情報サービス等)への売上依存度が高くなっています(直近で売上の15.3%)。当該顧客の経営方針変更や取引縮小等があった場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。



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