※本記事は、株式会社CaSy の有価証券報告書(第12期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. CaSyってどんな会社?
家事代行サービスのマッチングプラットフォーム「CaSy」を運営し、「おもてなし×テクノロジー」で家事負担の軽減を目指す企業です。
■(1) 会社概要
2014年に設立し、東京都内でお掃除代行サービスを開始しました。2016年にはお料理代行サービスを開始し、対応エリアを関西や東北へ拡大。2022年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2025年にはハウスクリーニング等を行う企業2社を子会社化し、連結決算を開始しています。
同グループは連結74名、単体61名の従業員で構成されています。筆頭株主は、同社と業務提携を行う医療用リネンサプライ等の事業会社です。第2位、第3位には、同社の創業者で現代表取締役の2名が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ワタキューセイモア | 19.22% |
| 加茂 雄一 | 16.27% |
| 池田 裕樹 | 13.72% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役CEO兼CFOは加茂雄一氏、代表取締役COOは池田裕樹氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加茂 雄一 | 代表取締役CEO兼CFO | 2005年中央青山監査法人入所、2007年太陽ASG監査法人入所。2014年同社創業代表取締役就任より現職。 |
| 池田 裕樹 | 代表取締役COO | 2003年NTTコムウェア入社、2008年NTTデータ入社。2014年同社創業代表取締役就任より現職。 |
| 白坂 ゆき | 取締役CHRO | 2004年リンクアンドモチベーション入社、リクルートホールディングス等を経て、2018年同社入社。同年12月取締役就任より現職。 |
社外取締役は、平野圭二(ワタキューホールディングス執行役員)、加藤智久(Zuitt Technologies取締役社長)、中尾隆一郎(中尾マネジメント研究所代表取締役)、大森愛久美(法律事務所ZeLo弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「家事支援サービス事業」および「その他」事業を展開しています。
**家事支援サービス事業**
お掃除代行、お料理代行、およびハウスクリーニングなどを提供するマッチングプラットフォームを運営しています。主な顧客は家事支援を必要とする個人や世帯です。スマホアプリ等を通じて、キャスト(サービススタッフ)と利用者をマッチングし、独自アルゴリズムによる最適化やダイナミックプライシング機能なども導入しています。
収益は主にキャストが行ったサービスの利用料です。運営は同社が行うほか、子会社のすっきりマイスターが専門器具を用いたハウスクリーニングを、サンジュが地域密着型の家事支援サービスを提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第12期より連結財務諸表を作成しているため、当期のみの表示となります。連結初年度の売上高は約19億円、経常利益は約0.6億円となりました。M&Aによる事業規模の拡大や、自治体との連携強化が進んでいます。
| 項目 | 2025年11月期 |
|---|---|
| 売上高 | 19.2億円 |
| 経常利益 | 0.6億円 |
| 利益率 | 3.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.5億円 |
■(2) 損益計算書
連結初年度の損益構造を見ると、売上高に対し売上総利益率は約37%となっています。販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益は約0.5億円を確保しています。
| 項目 | 2025年11月期 |
|---|---|
| 売上高 | 19.2億円 |
| 売上総利益 | 7.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.5% |
| 営業利益 | 0.5億円 |
| 営業利益率(%) | 2.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料賃金が1.9億円(構成比28%)、業務委託費が1.0億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは家事支援サービス事業の単一セグメントですが、サービス別の内訳として、主力のお掃除・お料理代行が売上の大半を占めています。
| 区分 | 売上(2025年11月期) |
|---|---|
| お掃除代行・お料理代行 | 18.0億円 |
| その他 | 1.2億円 |
| 連結(合計) | 19.2億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで、本業で現金を獲得しています。一方で、M&Aやシステム投資等のため投資キャッシュ・フローはマイナス、資金調達により財務キャッシュ・フローはプラスとなっており、成長のための積極的な投資姿勢(積極型)が見られます。
| 項目 | 2025年11月期 |
|---|---|
| 営業CF | 0.5億円 |
| 投資CF | -1.0億円 |
| 財務CF | 0.8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「笑顔の暮らしを、あたりまえにする。」をビジョンとし、「大切なことを、大切にできる時間を創る。」をミッションとして掲げています。社名のCaSyは、家事をEasy(簡単)にCozy(安心)して依頼できるようにし、笑顔あふれる暮らしを楽しんでほしいという思いが込められています。
■(2) 企業文化
創業当初から、提供価値を「Omotenashi(おもてなし)×Technology」と定義しています。キャストのエンゲージメントを高めるための「キャストクレド」の制定や表彰制度、全社員によるメッセージ返信等の取り組みを行う一方、テクノロジーを活用したマッチング最適化やアプリのUI/UX改善を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
「時間を創る」会社として、売上高からサービス提供者への報酬を控除した「売上総利益」を経営上の目標達成状況を判断する重要な指標として採用しています。これは、顧客が生み出した時間を創出する量として売上総利益が適切であると判断しているためです。
■(4) 成長戦略と重点施策
中期的には家事支援サービス事業の成長を加速させ、強固な収益基盤と顧客基盤の構築を目指しています。Web集客に加え、福利厚生導入の推進や知名度向上による集客戦略、キャストのブランディングを強化します。また、「イエナカ(家の中)」における様々なサービスを提供するプラットフォームの構築を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
キャストとの契約継続率維持や新規獲得に加え、安定的な供給力確保のため「正社員キャスト」の採用や、国家戦略特別区域事業を活用した外国人材の受入れを推進しています。また、従業員の成長が不可欠と考え、ナレッジ共有や内部管理体制の強化による組織的な能力向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 44.5歳 | 2.2年 | 4,092,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。前事業年度末に比べ従業員が増加していますが、これは主に家事支援スタッフ(キャスト)の正社員採用を開始したことによるものです。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 0.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 100.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 58.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 62.2% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 190.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、「えるぼし認定」三つ星(2024年6月取得)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) サービスの安全性と品質
キャストが顧客のプライベート空間に入ってサービスを提供する性質上、物損や事故、トラブルが発生するリスクがあります。これに対し、採用基準の明確化や研修、本人確認の徹底などを行っていますが、万一のトラブル発生時には損害賠償や社会的信用の低下により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 個人情報の漏洩
顧客およびキャストの個人情報を多数保有しており、システムへのサイバー攻撃や予期せぬ事態により情報が漏洩するリスクがあります。ISMS認証の取得など管理体制を強化していますが、漏洩が発生した場合はブランドイメージの悪化や法的責任により、事業運営に支障をきたす可能性があります。
■(3) キャスト(人材)の確保
サービスの提供にはキャストの確保が不可欠ですが、労働力不足の深刻化により必要な人材を確保できないリスクがあります。正社員採用や外国人材の受入れを進めていますが、計画通りに進まない場合、サービスの供給制約や品質低下を招き、競争力が低下する可能性があります。



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