※本記事は、株式会社FPパートナー の有価証券報告書(第16期、自 2024年12月1日 至 2025年11月30日、2026年2月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. FPパートナーってどんな会社?
「マネードクター」ブランドで全国展開する訪問型乗合保険代理店です。集客と販売の分業体制が特徴です。
■(1) 会社概要
同社は2009年に設立され、2019年に屋号を「マネードクター」へ変更しました。2022年9月に東京証券取引所グロース市場へ上場し、翌2023年9月にはプライム市場へ区分変更を果たしています。近年は、同業他社の契約譲受ビジネスや、住宅ローン比較サービスとの連携、金融教育事業など、事業領域の拡大を進めています。
2025年11月30日現在の従業員数は単体で2,601名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社である合同会社FPコンサルティングで、第2位は代表取締役社長の黒木勉氏です。第3位は信託銀行であり、創業者とその資産管理会社で過半数の株式を保有するオーナー系企業と言えます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 合同会社FPコンサルティング | 43.04% |
| 黒木 勉 | 17.54% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 3.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は黒木 勉氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒木 勉 | 代表取締役社長 | メットライフ生命保険等を経て、2005年エフピーコンサルティング設立。2018年1月より現職。 |
| 田中 克幸 | 専務取締役 | T&Dフィナンシャル生命保険、メットライフ生命保険、ほけんの窓口グループ等を経て、2026年1月より現職。 |
| 安達 健二 | 取締役兼経営企画部長 | T&Dフィナンシャル生命保険、メットライフ生命保険、東京海上日動あんしん生命保険等を経て、2026年1月より現職。 |
| 桑原 隆 | 取締役兼新規事業開発部長 | T&Dフィナンシャル生命保険、メットライフ生命保険、東京海上日動あんしん生命保険等を経て、2020年2月より現職。 |
| 齋藤 巧 | 取締役兼リスクマネジメント部長兼管理部長 | 安田生命保険(現明治安田生命保険)、メットライフ生命保険、東京海上日動あんしん生命保険等を経て、2025年3月より現職。 |
| 藤井 喜博 | 取締役 | T&Dフィナンシャル生命保険、東京海上日動あんしん生命保険を経て、2017年同社入社。2026年1月より現職。 |
社外取締役は、井阪 喜浩(元東京証券取引所常務執行役員)、鈴木 正規(元環境事務次官・イオン銀行会長)、田中 尚幸(弁護士)、中川 真紀子(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「保険代理業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 保険代理業
同社は「マネードクター」のブランドで、個人・法人向けにファイナンシャルプランニングサービスを提供しています。生命保険・損害保険会社43社の商品を取り扱い、訪問型営業を軸に、店舗「マネードクタープレミア」やオンライン相談も展開しています。集客と販売の分業体制を確立しており、会社が組織的に顧客開拓を行っています。
収益源は、保険会社からの代理店手数料(初年度手数料、継続手数料、業務品質支援金)です。運営は主にFPパートナーが行っています。営業社員はライフプランニングを通じて顧客ニーズに合った保険商品を提案し、契約成立時に保険会社から手数料を受け取るビジネスモデルです。
■(2) その他事業
保険以外の領域として、投資信託等の金融商品仲介業や、契約譲受ビジネスなどを展開しています。契約譲受ビジネスは、廃業する保険代理店から顧客・契約を引き継ぎ、アフターフォローや追加提案を行うものです。また、銀行代理業として住宅ローンの取り扱いや、IFA(金融商品仲介業)としての資産運用相談も行っています。
収益源は、金融商品の販売仲介手数料や、譲り受けた契約から発生する継続手数料などです。運営はFPパートナーが行っており、保険販売で培った顧客基盤や営業網を活用し、金融サービスをワンストップで提供することで収益の多角化を図っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は第15期まで順調に拡大してきましたが、第16期において減収に転じました。利益面でも、経常利益・当期利益ともに第14期をピークに減少傾向にあり、特に第16期は大幅な減益となっています。利益率も低下傾向が見られます。
| 項目 | 2021年11月期 | 2022年11月期 | 2023年11月期 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 209億円 | 256億円 | 306億円 | 356億円 | 321億円 |
| 経常利益 | 18億円 | 38億円 | 56億円 | 55億円 | 32億円 |
| 利益率(%) | 8.7% | 14.9% | 18.4% | 15.4% | 9.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 12億円 | 24億円 | 40億円 | 39億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高が減少した一方で、販管費が増加したため、営業利益率は大きく低下しました。コスト構造の変化により収益性が圧迫されている状況がうかがえます。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 356億円 | 321億円 |
| 売上総利益 | 121億円 | 107億円 |
| 売上総利益率(%) | 34.1% | 33.2% |
| 営業利益 | 53億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 15.0% | 9.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が19億円(構成比25%)、広告宣伝費が13億円(同17%)を占めています。売上原価においては、労務費が200億円(売上原価比93%)を占めており、人件費中心のコスト構造となっています。
■(3) セグメント収益
同社は保険代理業の単一セグメントですが、サービス別の売上高が開示されています。主力の生命保険代理店業が減収となった一方、損害保険代理店業は増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年11月期) | 売上(2025年11月期) |
|---|---|---|
| 生命保険代理店業 | 340億円 | 304億円 |
| 損害保険代理店業 | 12億円 | 14億円 |
| その他の事業 | 4億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 356億円 | 321億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、保険代理店業を主軸に事業を展開しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益の計上により資金が増加したものの、法人税等の支払額により減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産や非連結子会社株式の取得による支出により使用されました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額により資金が減少した一方で、長期借入れにより増加しました。
| 項目 | 2024年11月期 | 2025年11月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 44億円 | 23億円 |
| 投資CF | -24億円 | -19億円 |
| 財務CF | -52億円 | -16億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「私たちは『本来あるべき保険業』を追求し、本気で取り組み、お客さまの大切な人生を保険で守り続けます。」という経営理念を掲げています。営業社員が顧客に寄り添い、一生涯を保障で守り、安心に満ちた豊かな人生の時間を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「お客さま本位の業務運営」を根底に据え、保険募集管理の透明性と健全性を確保する文化を重視しています。また、コーポレートスローガン「NEXT」のもと、「会社の実務価値はお客さまのために発揮されるもの」との認識を全社員で共有し、価値ある企業への変革を目指す姿勢を示しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は事業拡大と企業価値向上のために、以下の指標を重要な経営目標としています。
* 売上高
* 営業利益
* 営業社員数
* 新規契約件数
* 新規顧客数
* 会社集客件数
* 契約譲受移管合意件数
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、本業である保険代理業の「営業基盤の強化」と「事業領域の拡大」をメインテーマとしています。特に、営業社員の増強と質的向上、廃業代理店からの契約譲受ビジネスの拡大、損害保険ビジネスの強化、そしてDXと教育を組み合わせた基盤強化を重点施策として推進しています。
* DX+教育:システム刷新やCDP(顧客データ基盤)活用による効率化と、社員教育・研修の強化。
* 契約譲受ビジネス:廃業代理店の顧客引き継ぎによるストック収益の積み上げと新規提案機会の創出。
* 損害保険ビジネス:専任営業社員の増員や非対面販売の強化による業績拡大。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は営業社員数の増加を業績拡大の重要要素と位置づけ、リファラル採用や新卒採用を強化しています。育成面では、入社時研修やOJT、階層別研修を通じてスキル向上を図っています。また、柔軟な働き方の推進や女性管理職の登用、健康経営に取り組み、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年11月期 | 46.4歳 | 4.4年 | 7,680,000円 |
※平均年間給与は、報酬、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.7% |
| 男性育児休業取得率 | 61.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.6% |
| 男女賃金差異(正社員) | 71.9% |
| 男女賃金差異(契約社員) | 73.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、月平均残業時間(3時間39分)、有給休暇取得率(105.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法規制の変更
保険業法や監督指針、自主規制等の変更により、従来の営業手法が制限される可能性があります。特に2025年に業務改善命令を受けており、法令遵守体制の不備等は、代理店登録の取り消しを含む行政処分につながり、経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定人物への依存
代表取締役社長である黒木勉氏は創業者として経営方針決定等に重要な役割を果たしています。同氏の業務遂行が困難になった場合、意思決定や事業運営に影響を及ぼす可能性があります。組織的な経営体制の構築を進めていますが、依存リスクは存在します。
■(3) 風評リスク
報道やSNS等により、同社に関するネガティブな情報が流布した場合、社会的信用やブランドイメージが毀損され、営業活動や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に保険代理店としての信頼性は事業の根幹に関わるため、重要なリスク要因となります。



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